親の想いを子に届けよう
そう願った1人の男が作り出した
「おやすみなさいバナージ」
「ああ。おやすみオードリー」
俺はそう言って眠りについた
その筈だったんだけどなぁ
「貴様がバナージ・リンクスとやらか」
「ハマーン。キチンと認識しな
バナージ・K・リンクスだろう?
アンタがいきなりやらかしたせいでお冠なんだが?アタシはフォローしないからね。先に言っておくけどさ」
「…ハマーン?」
「も、申し訳ない
少し気が逸りました」
「私に謝ってどうしますか?
謝る相手が違うのでは?」
何で俺、妙な空間にいて、しかも女性3人に囲まれてるんだ?
混乱するバナージの災難は此処から始まる
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「久し振りだな。元気にしてるか?バナージ」
「父さん!?」
俺は思わず父さんに飛びついた
だってそうだろう?死んだはずの父さんにもう一度会えたんだから
…正直これをオードリーに知られた時の事を考えると怖い気もするけど、それよりも父さんにもう一度会えた喜びが
「っとと
全くお前なぁ。いきなりすぎて驚くだろう?」
頭の上からしてくる少し呆れの入った
それでも俺やオードリーが好きな声がした。その時点で泣きそうになったんだけど
「ちょっと、おじさんに馴れ馴れ過ぎない?」
いきなり、引き剥がされたんだ
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「クェス」
「う、でも」
「クェス?」
「…はい。ごめんなさい
バナージだったっけ?悪かったわよ」
父さんに見つめられて名前だけ呼ばれて俺を父さんから引き剥がした女性は観念したのか、俺に謝ってきた
…分かる。その気持ちは本当に良くわかる
父さんは注意する時理由をいう事は殆どない
名前だけ言って『自分で理由を考えろ』ってそう伝えてくるんだ
「言葉だけの謝罪に意味があるか?
何が悪いか?どこを直せばいいか?それが分からなきゃ謝るなんて
俺はそうやっても大丈夫だと思う奴にしかそういう事はしない
…お前達は大丈夫だろう?」
って
本当に父さんはこういう事がうまいと思う
でもそうって事は
「私はクェス・パラヤ
…まぁそのうちクェス・クラヴァスになるのかな?
それともおじさんがラウム・パラヤになるの?
…それも良さそうね」
…落ち着け
落ち着くんだバナージ
俺は冷静にならないといけない
此処にオードリーが居なくて本当に良かった
『バナージ止めないで
これはお父様の娘として譲れない
…いえ、決して退いてはならない戦いです
負けることは絶対に許しません。必ず私の元に勝利を手に戻ってくるのです
この約束を
とか言いそうだから
何やら混線した気もするけど、そこまで間違ったないと思う
オードリーは父さん関係になると文字通り『人が変わるからなぁ』
…まぁ、そこも含めて愛しているけどさ
このバナージのメンタルの硬さには思わずラウム達もニッコリであろう
…ところで父さん。あっちで金髪の女性と黒髪の女性に挟まれて怒られている桃色の髪の女性はいったい?
「あー
…うん。バナージ一つだけアドバイスだ」
「はい」
まさか父さんが死んでからもアドバイスがもらえるなんて思わなかったけど俺は素直に頷いた
「ありのままを受け入れろ
その方がダメージは少ない。これは俺の実体験に基づくものだ。信用してくれていい」
「?
父さんの言葉を俺は疑おうと思いませんけど?」
俺の困惑気味の答えに
「ああ、もう。バナージは素直で優しくて可愛いなぁ」
と父さんは俺を抱きしめてきました
…嬉しくはあるんだけど、もしかして父さん
元々はこんなに愉快な人だったのかな?
俺はまた一つ父さんのことを知る事が出来た喜びを噛み締めながら、父さんの抱擁を受け入れた
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「コホン。失礼した
私はハマーン・カーンと言う。畏れ多くもミネバ様の養育係を務めた事もある」
「貴女がハマーンさんですか
オードリーから話を聞いています。本当にありがとうございます
俺は貴女達のお陰でオードリーと巡り会えたから」
「…う、うむ
ラウム殿から聞いた通り、随分と礼儀正しく真っ直ぐな性分の様だな」
父さんがもし、俺の事をそう言ってくれたたなら本当に嬉しい
俺はあの人にとって自慢の息子だって誇ってもらえる人間なんだから
「あの坊やとは似ても似つかないねぇ。ガンダムのパイロットってのは割と拗らせている奴がなるものとばかり思っていたよ、アタシは
でも真っ直ぐ気持ちの良いところは似ているかも知れないか。アタシはシーマ・ガラハウ
よく分からんままにアクシズくんだりまで辿り着いちまったはぐれものさね」
「貴女の事も聞いています。頼り甲斐のある、少し不器用な優しさを持つ人だったと」
「…そうかい。んな風に思ったてくれたのかい
本当にアタシの人生なんぞには勿体ないくらい眩しい子達だねぇ」
シーマさんはそう言って顔を伏せました
父さんは視線で
(気にしてやるな。それもまた優しさだ)と言ってきたので金髪の女性と視線を合わせました
「娘ミネバや兄ラウムがお世話になっています」
もしかして、この人は
俺はその言葉で理解しました
「私はゼナ・K・ザビ。世間ではミネバの母やドズルの妻の方が通りは良いのでしょうね」
俺はようやく挨拶しなきゃならない人の1人に出会う事が出来た
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ゼナ・ザビ
オードリーことミネバ・ザビの母親にしてラウムさんの妹
「初めまして、ですね
バナージ・K・リンクス」
その人と俺は初めて出会った
「先ずはお礼を
私達の娘であるミネバを光溢れる道へと共に歩く決意をしてくれた事に感謝します
…ありがとう」
「いえ、俺いや私こそ彼女やラウムさんには本当にお世話になりっぱなしで」
「謙遜せずとも良いのです
それと私の前だからとあまり緊張する事もありません。いつも通りの飾る事ないあなたの素顔が私は見たいのですから」
「は、はい」
「シーマ姉さん。あの人は誰でしょうか?」
「バカ言ってんじゃないよ。ゼナ様だって公私の区別くらいつけるさ。偶々アンタがそれを知らなかった。それだけの事さ」
…あの、良いんだろうか?
内緒話しているつもりなんだろうけど、俺には聞こえてるんだよ
って事は
「後で覚えていなさい」
あ、これダメな奴だ
俺はそう直感すると心の中で十字を切った
意味はよく分からないけど、たまに父さんがやっていたのを見て俺やオードリーだけでなく、ジュドーさん達もいつの間にかする様になっている、謎の習慣だ
「さて、バナージ。敢えて呼び捨てにさせて貰いますが、かまいませんね?」
「はい。勿論です」
「本当に素直で真っ直ぐな良い子ですね
兄が構い倒すのも無理はないでしょう」
「あ、ありがとうございます?」
「…ただこの場にはまだ足りない人がいるのです
兄が今迎えに行っているでしょうが」
「…ドズルさん、でしょうか?」
「いいえ?あの人からは全て任せられています
…ああ、来ましたね」
…え?
俺は目を疑った
そこには
「大きくなったな、バナージ」
俺の父さん、カーディアス・ビストがいたのだから
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「まさかバナージの事で呼ばれるとは思いませんでしたよ?」
「非礼は承知しておりますし、申し訳ないとも感じております
ですが、貴方にとっても自慢の息子。ならばこの場に居られるべきかと思いましてね?少し色々協力してもらったのですよ」
父さんとお義父さんが楽しそうに会話している
それだけでもう泣きそうだった
「やれやれ。お前も家庭を持つ様になったとラウムさんから聞いていたのに」
「死に別れた父親と再会する
なんてどこぞの小説でもびっくりの内容でしょう?」
「この涙は彼の優しさの証明とも言えるもの
そこまで言う事はないと思いますよ?カーディアスさん」
「いや、本当にラウムさんとゼナさんにはいくら感謝しても足りませんよ。まさか我が子の立派な姿をこの目に出来、しかも言葉を交わせるのですから」
俺は楽しそうに会話する父さんとお義父さんとゼナさんの会話を聞くだけでもう精一杯だった
「しかし、可能性の獣でしたか?」
「ええ」
「兄さん的にはあまり好きそうでない話よね?」
「『人間のみが神を持つ。今を超える力。可能性という名の内なる神を』でしたか?」
「ラウムさんとしてはどう考えられましたか?」
カーディアスの質問にラウムは少し考えてから
「概ね理解できます
ですが些か過ぎるほどに危険な考え方でもあるとも思えますね」
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「と、仰られますと?」
「確かに私達人間には『明日を変えよう』とする意思があるのは間違いないでしょう
しかし、人とは基本的に生きながらにして悪性に染まっていくものであると私は思っております
人は憧れます
空に、海に、そして広大過ぎる宇宙にも
思いを馳せ、それに挑み続けました。その結果人は鳥よりも早く、魚達よりも深く、星々にすら手を届かせんとしています
正に可能性という内なる神あっての事でしょう」
お義父さんの言葉に皆黙ります
「しかし、人間というものは堕落もします
権力を得んが為に他者を陥れる」
ゼナの脳裏に幼い頃亡くなった両親の姿が
「邪魔と判断すれば血を分けた肉親すらも平気で殺すでしょう」
カーディアスの脳裏に亡くなった兄の姿が
「己が選んだ選択の結果であっても誰かのせいにしたくなる
自分は被害者のままでいたいという身勝手な思い」
姉や妹を同時に失ったハマーンの絶望した姿が
「カーディアス氏の言われた事は正しく歩き続ける者にとっては至言でしょう。ですが、悲しいことに人はそこまで強くも賢くもない
だから虚像を、偶像を求める」
『赤い彗星の再来』として最期まで振る舞い続けた男の姿が
それぞれの脳裏をよぎる
「一角獣の獣。旧世紀においてユニコーンと呼ばれた生き物が伝承上に存在します
資料によってその様は諸説ありますが、後年に伝わったものは『清らかなる乙女を求め』『その角は解毒作用があった』というものが多いそうですね
これらはどうなったと思いますか?」
「あまり良い想像は出来ませんな」
「そうね
…多分狩り尽くされたんじゃないかしら?」
「ゼナの言う通りだ。その稀少性や角の効能などから囮などを使った数多く捕えられたそうだ
まぁ、ユニコーンではなく別の生き物だったとする説もあるらしいがな」
「ユニコーンガンダムとやらはNT-Dを発動時赤い光を発したと聞いた。これは自己防衛の為のもの。つまり敵のニュータイプなどの敵意に反応して発生する怒りの象徴ではないか?と私は後付けながら思っている」
「となると緑色は違うと考えておられるのですね?」
「ええ。こちらに来てキャスバルと話をしました。そこで彼から聞いたのがサイコフレームの共振により発生した光。これはあたたかい感情を感じ、そして緑色だったと」
「未来への真摯な祈りや願い
そう言う訳でしょうか?」
「だとしたら皮肉なものね
怒りを乗り越えないとそれに辿り着けない
そう言っている様なものにしか聞こえないわ」
「
ラウムやゼナ、カーディアスはニュータイプではない
それ故に彼等がこの世界をどう感じているか?は聞くより他になく、それとて彼等の気遣いがあれば分からないもの
だが、それでいい
それが良いのだ
人は神になれない
なってはならない
いつか人は更に遠くへと行けるのだろうから
ラウムとゼナ、カーディアスは笑い合うと
「その日が来るかどうかは分からない」
「でもそれを目指し続ける限り」
「可能性はこの
「「「若人達。メビウスの輪すら超えて明日を掴め」」」
そう楽しそうにバナージへと、ここに居ない者達へとエールを送ったのである
「…はい」
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「…夢、なのか?」
バナージは深夜目を覚ました
隣には
とすら思えてくる
だが
「…あ」
バナージは自分の肩に微かな湿り気を確かに感じた
それはバナージを抱きしめた父ラウムが流した涙の跡
「いつか、俺達も虹の向こうに行く
でも、今は見守ってて下さい。父さん達」
バナージは託された想いと祈りを胸に生きていこうと決意を新たにした
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「バナージ!どういう事ですか!?
お父様達の夢を見たとは!?」
「昨日父さん達の夢を見たんだ」
と無意識のうちに呟いたらしく、予想通りオードリーから凄い勢いで詰め寄られていました
「い、いやだから夢なんだって」
バナージにはあれが夢ではない確信はある
だが、それを口にしてしまったが最後。間違いなく目の前の愛しい女性は機嫌を損ねてしまうだろう
なお
「あの、なんでオードリーには会わないのですか?
間違いなく喜ぶと思うんですが」
との疑問に対して
「…あの子は今幾つですか?バナージ」
「えっと、もう20歳になったと思いますけど」
勿論妻であるオードリーの年齢を忘れるわけはない
が
「いいな、バナージ
女性の年齢について聞かれたとしてもぼかせ」
「ぼかす、ですか」
「そうだ。決して明言してはならん
本当に怖い事になりかねんからな」
とのラウムの助言をしっかりと守っていた
「そうです
その歳にもなって、まだ兄から離れられないのは問題しかありません。それが改められるまでは」
「いや、お前がそれを言うか?
ドズルくんと付き合ってからも頻繁に俺の寝床に入ってきたお前が?」
とのラウムの指摘に顔や真っ赤にしながらも
「…とにかくもう少し自覚が出るまでは会わせる訳にはいきません!」
「いやそれ、ゼナ様が甘えたいだけじゃないのかい?」
「うわぁ、おばさんキツ」
「は!?誰がおばさんですか!?
寧ろ私は貴女を認めた訳ではありませんよ!」
シーマの言葉は流したゼナであったが、続くクェスの言葉は流石に聞き流せなかった模様
「いやもう俺達もいい歳なんだから、諦めろよ」
と呆れた表情のラウムが妙に哀愁を誘ったとか何とか
なお、今回の功労者はカーディアスやラウム達の意識を届ける事に全面協力したララァとシャアであったりする
「共同作業ですね、大佐。いえシャアさん」
「そ、そうだな。ララァ」(セラーナの視線が物凄く痛いのだが!?)
因みに少し離れたところでマハラジャがハスラーに羽交締めされて止められていたり、ジオンが最大にデギンから
「女にだらしない息子を持った気持ちはどうじゃ?ん?」
とすご〜く煽られていたりする
なお反論したくともギレンはセシリアとの愛を貫いたし、ドズルはゼナ一筋。ガルマもイセリナのみ
見事に純愛派である
キシリアとサスロ?
やめたまえ、明確な相手がいない人物を論うのは止めるんだ
ジオンとしても
手を出せば負けを認めるに等しい(なお勝負にすらなっていない)ので
『手を出したら負け手を出したら負け手を出したら負け手を出したら負け』と念仏の様に唱えて暴発を辛うじて防いでいる
なお、ララァとシャアの空気に耐えかねてセラーナが乱入する事によりこの均衡は容易く崩壊する事となる
赤いのはマハラジャとハスラー、更にジオンからボコボコにされる模様
ザビ家の皆さんはそれを見て爆笑
後でセラーナから
「お父様嫌いです!!」
と言われて落ち込んだマハラジャがラウムに助けを求めるまであと30分だったりする
こういった短編、要ります?
-
いる
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いらね
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書けるなら書いて、ほら役目でしょ?