「さて、私は義弟殿から呼ばれてきた訳だが
…なるほど。そういう事かな?」
ギレンは周りを見回して、ニヤリと笑った
ただ、ギレンは笑っただけ
にも関わらず
(っっ!何というプレッシャーだ!
これでニュータイプではなくオールドタイプだというのか!?)
(ちっ!これが父のよく話していた公国の指導者としてのこの男の姿だという訳か)
(…相変わらず、心臓に悪い事をしてくれる
寧ろこの状態のこの男のそばで平然としていられる兄上はどんな経験をしてきたというのか?)
その場に同席しているシロッコ、ハマーン、シャアはそれぞれ圧を感じたのだ
なお、この場には見届け人としてラウムが同席している
「しかし、義弟殿も中々面白い事を考えたものだ
『未来への展望』について話をしてみる。しかも各勢力の曲がりなりにもトップだった者達と
とはな。相変わらず発想が面白い」
と隣にいるラウムにも笑いかけるギレン
その笑いはシロッコ達に向けられたものとさして変わらない
少なくとも彼等にはそう見えた
「そうは言いますけどね、
いえ、ギレン総帥殿。私はあなた方が目指したものは知っていても、彼等の目指したものが分からんのですよ
となれば聞くのも一興かと思いまして」
「『聞くはいっとき、聞かぬは一生の恥』とやらだったか
先人達が残した言葉と言うものは含蓄のあるものが多いものの様だな」
ラウムは飄々とその圧を受け流している
そう見えた
「どうやらお前達は少し誤解をしている様だな?
確かに私はラウム・クラヴァスの義理の兄である事は事実だ
だが、私やサスロ。それに父上がラウムに期待をしていたのはドズルとゼナが会う前の頃の話だ」
「それがそもそも分からない
その頃のラウム殿は聞くところによればシャアやその妹の相手をしていただけではないのか?」
シロッコの言葉に
「ふむ。では逆に聞くが
当時『子供の相手
----
当時のコロニーにおいて完全な自治や独立を求める運動というのは統治側や連邦にとって、相当頭の痛い問題となっていた
元々宇宙に進出した大きな理由として『人類の生存圏を拡大する』などと御題目を掲げていたものの、その実態は『棄民政策』であり『新たな資源獲得の為』であった
地球環境は悪化の一途を辿り、地下資源なども枯渇こそしていなかったものの、地球のみに人類が住み続けた場合未来においてそれが欠乏する事は明白だったのだから
彼等にとってコロニーとは資源採掘地と工業製品などの生産拠点であり、流刑地ともいえるものでしかなかった
後年
「彼等は対価を払えと言うが、私達の家族みたいに好んで移住したならいざ知らず、強制的に移住させた住民に対価を払え。と言うのは些か乱暴な理屈じゃ無いか?」
とラウムは話している
----
「そもそも、ティターンズという組織は『先鋭化するスペースノイドに対応する』為に発足された組織だと私は認識しているが、パプティマス・シロッコ。貴様はそれを掌握してどうしようとしたのかね?」
「…私は時代を創るのは女性だと思っていた。それによる秩序を」
シロッコの言葉に
「ふ、冗談はよせ
それは連邦政府の殆どの政治屋を信じろと言うくらい信用ならぬ事だという事は他ならぬ貴様がわかっているだろう?」
ギレンは嘲笑ともいえる笑いで応えた
「ま、そうでしょうね
女性による秩序を作るのであれば、そこにシロッコ。君の居場所はあるまいよ
おおかた自分の意のままに操れる女性を立てて、その裏で実権を握るつもりだったのでしょう
…出来るかどうかは別ですけどね」
「私に出来ないと?」
ラウムの言葉にシロッコは反発した
「
誰かを立てようとする奴ってのは、大抵『自分の意に従わないなら別を立てれば良い』と考えるもんだ。そう言う関係ってのは余程の信頼関係がないと成立しねぇよ
…そうだろう、ハマーン・カーン?」
「…確かにそうだろうな
些か自意識過剰とも言えるかも知れないが、ミネバ様から信任頂いていたと思ってはいる」
ラウムの言葉にハマーンも言葉を選びながら応じる
「組織なんてのはシロッコ。お前さんが思うほどに楽なもんでは無い。事実お前さんはヤザンに命じてジャミトフ亡き後のティターンズ指揮官バスクを除いたろう?
それがお前さんの正体さ」
ラウムは嗤う
「女性による秩序?笑わせる
緊急時だとしても、いや緊急時だからこそ守らねばならぬ筋はあろうに。本来お前がティターンズの指揮を取るのではなく、バスクの補佐をしてティターンズを統制すべきだった
お前さんは『下につけない人間なのさ』。だから人の醜さや愚かさ、悍ましさを知らん
なんでそんな綺麗事しか言えない人間が組織を操れると思ったのか?」
「ぐっ」
「断言しても良い。仮に新体制を作れたとしても、お前さんはいつかそれすら煩わしくなるだろう
その果てにあるのは更なる混乱だけだ」
「…ふむ。権力や自身の能力で何もかも黙らせると思っていた。そういう訳かな?
もしもそうならば、何も見えていない人間にしか見えんな」
「…」
シロッコは黙り込むしか無い
「それがダメなんだがな。反論出来ないと言う事はその時点で『相手の意見が正しい』と認めているようなもの。お前さんがどう思おうと、な?」
「『一握りの天才が時代を動かしてきた』だったか?
ならば言わせてもらうが、あまりにも不勉強に過ぎるだろうよ
確かに時代を進めてきたのは天才と呼ばれる人間かも知れない。が、天才のみで成し得たことなどそこまで多くはない」
「旧世紀の事を少しでも調べたか?
四六時中戦争ばかりしていたわけでもないだろうに
…そうだな。此処にいる者なら誰でも知っているだろう?ミノフスキー粒子は」
「…勿論知っている」
ラウムの息をつかせぬ口撃にシロッコは圧倒される
「その粒子を発見したミノフスキー博士はお前さんの定義で言えばどうなる?凡人か?天才か?」
「間違いなく一つの状況を作り出した。天才としか言えないだろう」
シロッコの答えに
「なら、ミノフスキー粒子は元々地球で発見されていた。それを知っているか?」
「…何だと?」
ラウムの言葉にシロッコ、ハマーン、シャアは目を見開いた
----
宇宙世紀確か40年頃だったか、俺もうろ覚えだが当時アナハイムがスポンサーとなってミノフスキー・イヨネスコ型の試製核融合炉の開発中にミノフスキー博士が検出したと主張したそうだ
にわかに新しい粒子発見に学会創設も議論されそうになったが、共同研究者であるイヨネスコ博士は
「その様な粒子を検出した事実はない」
と発言。その後の検査においてもその粒子は発見される事がなかった為にイヨネスコ博士の主張が通り、ミノフスキー博士は物理学会で『詐欺師』との汚名を着ることとなったそうだ
ところが、その当時サイド3に優秀な研究者などの取り込みを主導していたデギン公はミノフスキー博士をサイド3に招き、そこでミノフスキー粒子に関する研究を続けてもらう事にしたそうだ
その後の事は語るまでもないだろう
さて、シロッコ。その博士を招聘したデギン公はお前さんの基準では天才なのかね?
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「付け加えておくと、どうやらシロッコ
貴様には傲慢さを隠すと言う配慮もない様に見えるな。『強く見せる』のは必要だろう
だが、『余計な敵を作らない』と言う事も組織を動かす身であるならば必要な事だろうと私は思うがね」
と『独裁者』として名を残すギレンに指摘される
事実としてティターンズが崩壊してジャミトフの精神的後継者はいたものの、シロッコのソレは少なくともラウムの知る限り存在しない
寧ろティターンズ支持者の中ではパプティマス・シロッコという人間は『存在しない扱い』となっているくらいであった
流石のシロッコもそれを聞かされてしまっては
「う、ぐ」
うめき声を上げることしかできなかった
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そもそも先にも触れた様に地球連邦軍内に存在する一組織であったティターンズはあくまで『地球連邦市民』の事を最優先しなければならない。勿論連邦に恭順する各サイドに対する
しかし、ティターンズが設立された背景は『スペースノイド弾圧』ではなく『テロリスト予備軍と判断しなければ
卵が先か鳥が先か?
ではない
ジオン残党による各地のゲリラ行為や『水天の涙』『星の屑』といった明らかに放置し得ないテロ行為を働いたが故の非常措置だったともいえよう
確かにジオン公国が敗戦したことにより、ジオン共和国と改めさせ軍事力も制限した
が、その一方で旧ジオン系のジオニックなどを始めとした軍事企業群の売却などを認め、賠償金の支払いも敗戦国としては異例とも言える速さで支払い終えている
加えて
住居も奪わぬ、金も奪わぬ、その上お前達が破壊したコロニー再生により雇用まで確保してやったのだ
これ以上敗戦国として恵まれた国もあるまいに
とは当時の連邦政府高官の発言であった
ところがそれに対する返礼が先に挙げた作戦や仕舞いにはコロニー再生計画の一環としてサイド3から輸送中のスペースコロニー二基をコロニージャックして地球に落としたのだ
ふざけるなよ
と言った感情を抱くな
という方が無理であろう
更に言えばかの『30バンチコロニー』はサイド1
そう、ジオンによって壊滅させられたサイド。つまり『連邦によって再生した』サイドなのだ
そこで大規模な反連邦運動が行われたというのだから
は?
と連邦政府が怒り心頭になったとしてどうして不思議だろうか?
「お前達はたった数年前に行なわれた非情で卑怯極まるテロ行為を忘れたのか?
それを知りながらもなお反連邦を掲げるのか?」
となったとしておかしくはないだろうか?
カミーユは
「アングラのサイトでは有名」とシャアの事を語っていたが、その話ぶりから察するに好意的な内容ではなかっただろうか?
とどめは
ガンダムが襲撃されたコロニーが再建された後の名称をこういう
『グリーン・ノア』と
連邦軍の一部としておきながら、かつての連邦軍の醜態を想起させる様な事をしたエゥーゴ。それを支持するかの様なスペースノイドにどうやって好意を持てというのだろう?
そしてその理屈はそのまま木星から帰還したシロッコにも当てはまるのだ
木星船団。貴重なヘリウム3を木星圏から地球に輸送することにより、中立の立場を保障された組織である
つまり、一年戦争時ジオンにも協力していた
という事でもあるわけだ
そんなところから来た男がいきなり自分達の上官として『大きな顔』をしていたとして、果たしてどれだけの人間が素直に従えるだろうか?
シロッコは一年戦争にも参加していなければ、デラーズ紛争にも参加していない
なんならティターンズの軍事行動に彼が参加している方が少ないとさえいえるのだ
それがいきなり
『ジャミトフ閣下の遺言』だ『ジャミトフ閣下の意志を受け継ぐ』などと言ったところで信用できようか?
余談ではあるが、グリプス最終決戦に参加しながら生還したティターンズのパイロットのほぼ全ては原隊である連邦軍への復帰を
「私兵はいらん」
連邦軍の者達はそう言って彼等の復隊を認めなかった
この場合の私兵はジャミトフのではない
指揮系統が混乱したままシロッコについた事に対する皮肉なのだ
指揮系統が混乱している中で新しい指揮系統を作るなど正気の沙汰ではない
常ならばジャミトフの腹心であるバスク大佐がまず全軍を掌握。その後に指揮系統の再編
それが近代国家の軍隊としてあるべき姿なのだ
ジャミトフは正式に連邦政府からの要請に基づき、ティターンズを創設した
そこには少なからぬ信頼や実績が確かにあったのだ
悪名高いバスクとして、連邦士官としての経験を重ねたからこそティターンズのNo.2となり得たわけである
政府からすれば
「シロッコ?誰よそれ
木星船団の人間?まず下積みからだな」
程度の扱いしか受けないのは当然である
----
「MSの設計をしたというが、その設計はジュピトリスでしたのか?」
「…いや、メッサーラは木星圏にいた時にしている」
ラウムの疑問にシロッコは少し警戒しながら答える
(…今更警戒したとしても、既に手遅れなのだがな
既にシロッコとやらはラウムに圧倒されている。致命的に対処が遅い
ふっ、これで天才だというのだから笑えないな)
ギレンはシロッコの今までの醜態とこれから起きるであろう事態を想像、いや予測して笑う
----
これが『独立運動における狂人』か
ハマーンは父マハラジャから聞いたラウムの渾名を思い返していた
ラウムの両親は
だがラウムは狂人として一部の者から畏怖されてもいた
何せダイクン過激派からの魔の手から逃げおおせたのだから
故に過激派達はあらゆる手を使ってラウムの姿を求めた
が、まさか同じサイド3内に潜伏しているなどとは彼等には想像も出来なかったのである
彼等は元々他のサイド群における独立運動の指導者やそれに近しい者達。故にこそ『敵の足元』にいるということがどれだけ危険で無謀なものなのかを骨身に染みて理解していた
そして彼等は命からがら逃げ出したのだから
元々クラヴァス夫妻やジオンやデギンに対して隔意を持っていた上に、それを隠そうともしなかった彼等である
いつまでも過去の栄光に縋って、独立運動の足手纏いにしかならない者に構っていられるほどにジオンやデギン達は暇ではなかった
「失敗したというのに、なぜ改善しないのだ?」
とは当時のデギンの発言である
そう言った連中に与えられる役割など、それこそ『誰でも出来る』様なものであるのは当然ともいえる
現実を直視する事なく、過去に浸り続ける者達に何を期待出来ようか?
だが、彼等からすればその扱いは不当なものと映った
「地球からの人間は重用するのに、なぜ我々はされないのか?」
そう彼等は集まってジオンやデギンに抗議した
しかし、ジオンやデギンが動くまでもなく彼等の近くで真剣に独立運動をしている者達が反応
彼等は
そう聞いている
----
その逸らした矛先にいたのが
勿論既にケイム達は地球に戻れないし、戻ったとしても間違いなく命はない
だが、そんな事など知らない者達からすれば『自分達をおもちゃにしている気に食わない連中』と見えたのだろう
ジオンやデギンは事あるごとにケイムやセリア、ラウムの重要さを話して理解を求めようとした
が、それは『ジオンやデギンを盾にして己が立場を誇示しようとする者』に見えてしまう
元より独立運動に参加する多くの者は感情に任せて身を投じている者が多く、悪く言えば『考えなし』の人間が多かったとも言えるだろう
そしてそれは起きた
起きてしまった
----
その日、ラウムは計画に沿って合流地点へと向かっていた
既に官憲からは逃れており合流してアジトの一つに戻る予定だった
ところが
「いたぞ!」
「逃すな!」
「子供?どうしてこんな所に」
「バカ!あれが連中に協力している子供なんだよ」
合流地点には官憲どころか、連邦の駐留部隊がいたのである
そしてラウムは悟った
(ああ、俺は売られたのか)
と
ラウムという独立運動に携わっている人物を密告したとなれば、その人物は政府や官憲などから『協力者』として扱われると思ったのだろう
そんな訳はない。彼等は
「何故それを知っていたのか?」
と必ず疑いの目を向けるだろう。今回合流予定の連中ははっきり言えば『お荷物』だ
隠蔽工作や陽動なども下手であり、その癖自己主張だけは無駄に大きい声で叫ぶ
そんな連中が、果たしてヘマをせずに隠し通せるとは思わない
自分に向く銃口を見つめながら
(終わったな)
当時のラウムは死を覚悟した
----
だが、予定の時刻になっても帰還しないラウムに不安を覚えたジオンやデギンは自身の信頼する味方であるジンバとアンリにそれぞれラウムの捜索を命じていた為に、ギリギリのところで難を逃れた
しかし、その後が問題だった
「どういう事だ!ラウムから話を聞いたが、合流地点は
温厚な人物として知られていたケイムであったが、自分の息子を明らかに切り捨てるかの様なやり方を聞くと、ジオンとデギン達が話し合いしている場所に怒鳴り込んだ
「…すまない。連絡に不備があったと」
ジオンは苦しそうにそう言うが
「連絡に不備だと!ふざけた事をぬかすな!!そうならば何故
ケイムの怒りがそれで収まるはずもない
「しかし現にあったのだから仕方あるまい」
ジオンのそばに居た人物はそう言った
…言ってしまったのだ
「…そうか。貴様達は仕方ない
そう言うのだな?
ならば俺達は此処を去らしてもらうとしよう
どうやら俺達は此処まで一緒に戦ってきたつもりだったが、そうではなかった様だからな」
「待て、ケイム。私がしっかり調べる
君の怒りは尤もな事だと思うが堪えてはくれんか?」
デギンはケイムとセリアの持つ情報の重要さをこの場にいる誰よりも理解していた。その為必死で止めようとする
…もし、此処にギレンやサスロがいたのであればまた違った未来もあったのかも知れない
が、彼等は『情報を漏洩』させた『裏切り者』の調査を急いで進めていた為にこの場にはいなかった
「デギン。ならばお前はギレン君やサスロ君を無駄に危険な目に遭わされても我慢できるのか?」
「…すまぬ。軽率であった」
「今度ジオンが選挙に出るから俺達は邪魔なのだろう?
なら喜んで出て行ってやるさ
…心配するな。話す気はない」
そう言い残して、ケイムは去って行った
その後、サイド3政府の首相となったジオンであったが対連邦政策案の作成者は他ならぬクラヴァス夫妻であった事からジオン達が想定していた予定よりもかなり連邦政府の態度を硬化させてしまう事になる
それは翌年連邦による経済の締め付けや連邦宇宙軍の創設。といった形でジオン達に降り掛かることとなる
サイド3政府改めジオン共和国は強大な連邦政府に対して、ほぼ単独で事に当たらねばならなくなる。というジオンやデギンらが想定していた中でかなり悪い方の状態に陥った
更に
----
「すまないとは思うが、俺はもうついていけない
これからは国民の一人として力を貸すとするよ」
「…そうか、君
いや此処までの尽力と協力に感謝する」
「…ああ
ここを去る私がいうのも何だが、元気でなジオン。デギン達や奥方と仲良くな」
ジオンは自分と共にサイド3に移住してきた友人をそうして見送った
----
『そちらもか
私の方でもそういった者は出ておる
…特に一番最初から戦ってくれた者達に多い気がするが』
「…もはや統制は取れていないも同然か」
ジオンは友人であるデギンと自宅で連絡しながらため息をつく
本来ならば、地球の事情に明るいケイムとセリア
寧ろこれからが2人の活躍の場であったはず
本来友人として、自分達の助けになってくれたはずの2人はいなくなり、更に当初から一緒に戦っていた友人達もその多くが離れてしまった
それはそのままジオンやデギンの求心力の低下を招く。元々サイド3に地盤を有していたデギンは痛手にこそなったものの、致命傷には程遠かった
だが、元々サイド3に移住してきたジオンにとって、彼の影響力を担保していたのはジオンと共に移住してきた者達やデギンらとは別のサイド3の住民やジオンの様に他のサイドから移住してきた者だった
そしてこの時期に離脱した者の多くは
彼等はサイド3が独立した事により、如何にコロニー独立が困難なものであり、その為に犠牲となる物の多さを漸く自覚した者だった
故郷のコロニーに戻った者もいたが、大半はサイド3で自分達が行なった事を見届けようと心を決めた者達
マハラジャの様に共和国政府に明日の為に協力しようと決めた者
自分達の名声を高める事で、第二第三の共和国を夢見た者
様々な思いを抱えた者達を何とか纏めてジオンとデギンはジオン共和国という組織を運営していく
しかし、ジオンにせよ、デギンにせよ他の政府関係者にせよ『連邦高官』と対話した事はあっても、彼等を動かせる唯一の『連邦市民』については余りにも知識が不足していたのである
----
「…これが私が父上やラウムから聞いた独立運動の話だ
…さて、その上で問おう」
ギレンは語り合えた後、少しだけ目を瞑り
そして
「パプティマス・シロッコ。ハマーン・カーン。シャア・アズナブルいやキャスバル・レム・ダイクン
君達の中でこれを知っている。或いは知ろうとした者はいるかな?」
そう3人を見渡した
ラウムはそんな圧倒的ともいえる雰囲気を発しているギレンのそばにあって、目を瞑り何一つ語る事はない
「新しい秩序。ジオンの復興。地球市民の粛清
大いに結構だろう。私とてある意味ではそれらを君達よりもさきになそうとした結果、『宇宙世紀
ギレンは笑う
たとえ自身のした事がどれだけ残酷で非道なものであったとしても、それを信じて、命を落とした者達もまたいるのだ
傲慢と
冷血漢と
冷酷非道と
謗りたければ思う存分謗れば良い
だが、それにより命を落とした者がいる限りギレンは反省はしたとしても後悔する事を選ぶ事はない
誰しも明日を求めていた
より良い明日が
自分達の弟や妹、子供達が胸を張って生きていける
そんな世界が見たかった。その想いで闘った者をギレンもまた知っているのだから
「パプティマス・シロッコ
貴様はとかく傲慢であり、『弱者』というものを知らぬ。そしてそれをあっさり切り捨てられる
故に貴様もまた『
「な」
「泥臭い、『なぜ自分が』などと思っているうちは貴様に着いて行く者など、高が知れているだろうさ」
絶句するシロッコに
「自分のしている事を見下す人間に貴様は好き好んでついて行きたいかね?」
ギレンは言葉の刃を容赦なく振り下ろした
----
ギレン・ザビという男は独裁者として名を馳せている
ジオン軍総帥という立場故に大きな影響力と権力を持つ。故にそれが彼の者の武器
そう思う者は多い
しかし、彼最大の武器は『
そしてこの場にはもう1人同じ武器を携える者がいた
----
「ところで、シロッコ
お前さんは『女性を重用』したかったのだろうけど、質問がある」
「な、何だというのだ」
「であれば、お前さんを慕う女性とやらがいるはずなのだが
どこにいるよ?」
「…ぐっ」
「おおかた自分の死んでから客観視して違和感に気付いたか、或いは余りにも無様なお前の死に様に失望したか。だろうがな」
ラウムは容赦しない
基本ラウム・クラヴァスという人間は『他人を操る人間』というのを好まない
それならばまだ『自分も手を汚す覚悟のある』者の方が好感が持てる
そうラウムは思っているくらいなのだから
そしてシロッコは己が思うほどに賢くない事を自分自身で証明してしまっている
故に
「木星船団の思惑すら理解できない癖に天才とは中々笑わせてくれるジョークじゃないか?」
それを叩きつけた
----
「木星船団の思惑すら理解できない癖に天才とは中々笑わせてくれるジョークじゃないか?」
木星船団の思惑?
兄と慕う人物の発した言葉に私は戸惑ってしまう
言葉をぶつけられたシロッコも困惑気味。隣のハマーンを見るが
首を横に振るばかりだ
訳が分からなかった
「思惑だと?」
「そうさ。木星船団の団長を務めたお前さんなら向こうの環境がどれだけ厳しいものかは理解しているんじゃないか?」
「確かに木星圏の生活は苦しいと聞く
それがどうしたというのだ?」
シロッコのその言葉に
「聞く?つまりお前さん自身は『木星圏における一般的な生活をしていなかった』
私にはそう聞こえたが?」
「…仮にも木星船団の団長までする人間がそういう生活を送るはずもないだろう」
心底不本意そうにシロッコは言い捨てた
「…なるほどな。どうやらお前さん、木星圏の連中にすら仲間と認識されていなかったんじゃないか?
色々伝手があって彼らの話を聞くが、大抵『良い人そうだった』か『昏い憎悪を抱えている』と言った話ばかりだったんだがな」
良い人と憎悪を抱えている?
矛盾している評価だと思うのは私だけではないはず
「…彼等は地球に対して憧憬の念を抱くと共に、憎悪も抱いていたのだよ。
それを見事に彼等は隠していた様だったがな」
総帥は苦々しく話した
憎悪、どういうことだ?
ハマーンも首を傾げている
「貧しいってのは本当にしんどい事だ
何もかもが忌々しくなり、それは他者への敵意に変わる。本当に容易くだ。それが『自分達より若いのに良い待遇を当たり前の様に受け入れている人物』が居ればどうなるよ?」
「だが、私は」
シロッコは悔しそうに言い返そうとする
「分からなくもない
お前さんとしては『出来る事を当たり前にやった結果に対する対価』なんだからな」
ラウムは珍しくシロッコに同意する
「しかし、それでは困る連中がいたのだろうな
同胞であるシロッコに敵意を受けられる。それは間違いなく組織に致命的な溝を生じかねん
故に選んだという訳だな」
…選んだ?どういう事だ、それは
私は総帥の発言に疑問を持った
「でしょうよ
組織内のいざこざを防ぐ為にシロッコを団長として地球に派遣
更に地球の混乱を助長する為にティターンズへと送り込む
憎悪の的であり、仮想敵である地球圏に混乱を巻き起こし、シロッコ如何では木星船団の発言権の増加も見込める
仮にシロッコが失敗しても木星側としては何の問題もない。不安要素が一つ消える上に『同胞が地球圏の動乱で死んだ』だけなのですから」
…恐ろしい話だと思った
「…なるほど
違和感があったのだが、それが理由だったか」
ハマーンは逆に納得した様だったが
私には意味が分からなかった
「ジオン・ダイクンの息子であり、公国軍のトップエースである貴様に理解しろという方が酷かもしれんな
アクシズにせよ、木星圏にあるコロニーにせよさして変わらん。生活に困窮しているのだ
…一部の者を除いてな」
「…そういう事か。ようやく合点がいった」
憂鬱そうなハマーンの発言を聞いたシロッコも納得したらしい
「パプティマス・シロッコという男は木星船団を危険視する者からすれば崩す為の有効な一手になる
それを地球圏に
それらに対する不平不満すら連邦への隔意、敵意に転嫁出来れば大き過ぎる力となる
シロッコらが死んだとしても連邦の権力抗争に巻き込まれて死んだ
そう喧伝する事で更なる団結を呼びかける事も出来よう」
実に狡猾
実に効率的な手法と言えるだろう
「地球圏における混乱
…それが狙いだったという訳か」
「そうだろうよ?
何せそうでもなくば、貴重過ぎる木星船団の団長やジュピトリスすら連邦軍側に渡す理由がどこにある?」
「…確かにそれは妙な話だな
今思えば、だが」
ジュピトリス型超大型輸送艦
ヘリウム3という重要資源を大量に輸送する為。としては余りにも巨大過ぎる輸送艦である
その実ジュピトリス艦内のみで一つの街と言っても過言ではないレベルの設備を備えており、地球圏ー木星圏を往復する際にどうしても避ける事の出来ないストレスなどへの対処法の一つの答えと言っても差し支えあるまい
如何に木星船団の人間が理性的であったとしても、
航空機や船舶において機長ないし、艦長に絶大な権限が与えられるのも密閉空間におけるそれらが時としてその集団の生死を左右しかねない程に危険なものである事も関係しているのではなかろうか?
言うまでもなく、惑星間航行とも言える事を行なっているジュピトリスにおいてもその管理は重要な事であり、それらを統括する艦長や船団団長の責任は尋常ならざるものとなるだろう
己を天才と称するシロッコはそれだけの実力を持っている。それだけは疑いようのない事実なのだ
が、天才とはある意味においては異端者であり、それは大衆との溝を生む
天才とは大衆に利を齎すうちは賞賛されるものである
が、ひとたび権力者などと衝突するとそれは一瞬のうちに形を変えて彼等に襲いかかる
天才とはある意味で
シロッコがいうところの『一握りの天才が時代を動かす』というのは大袈裟ではあるものの、ある意味では正しくもある
が、天才とは『機会を得られた者』でもある
シロッコならば木星船団団長として、MSパイロットと技術者として
ハマーンであればアクシズの指導者として、MSパイロットとして
それぞれが『己が才覚』を発揮する場を得たが故に大きくなれた
そう言っても決して大袈裟でもない
当然世の中には優れた才能を持ちながらも、それを活かすことなく消えていく者もいる
…遺伝子などにより、才能のあるなしを把握、認識できるのであれば或いはその全てを活用できるのかも知れないが、そこに自由はないだろう
----
「しかし、木星圏の者にも智慧があるとは思わなかったがな、ラウム」
「どうやら、彼等の手や耳は俺たちが思う以上に長く性能も良い様でしてね?」
「…なるほどな。声がかかったか?」
「まぁ、世間話に匂わせ程度でしたがね」
あのギレン・ザビと親しげに話をするラウム氏
…正直なところとしては、どう接すれば良いのか戸惑うばかりだ
ゼナ、本人からそう呼ぶ様に言われた訳だが、彼女と話をしたところかなり風変わりなところがある御仁だとは聞いていた
事実、目の前にいる
しかも、明らかに裏を知りながらも平然と受け入れている時点で異常としか言いようがない
私達は人を殺すという禁忌を犯している。が、この男がそれをしているか否かくらいは分かる
…間違いなく、この男は人の死を見つめ続けた者である
…それくらいはこの混沌極める連中の中にあってもハマーンとて分かる
が、やはりどう考えても歪な御仁だと思う
とはいえ、だ
ハマーンにとっての恩人であるシーマ。そのシーマが尊敬してやまないゼナの兄であり、ハマーン自身も養育したミネバの叔父ともなれば流石に関わらないと言う選択肢はない
…ついでに義理の弟
甚だ不愉快過ぎる響きだが、妹セラーナの伴侶となればハマーンにとってあの赤いダメンズはそうなってしまう
姉マレーネはそれを見越してか、赤いのに対して効果的であるかの御仁との関係を深めようとしている
…その過程で何故ドズル・ザビと懇意になる必要があるのかについては最早疑問を持つ気もない
疲れるからである
というか、曲がりなりにも仕えていた主人であるゼナの夫に手を出そうとするというのは流石のハマーンであっても驚くと共に呆れる他ない
どうやら姉も死んでから割と自由になってしまった様で、何度となく
(何故死んでからも苦労せねばならないのだ?)
と我が身の不幸を呪ったものである(八つ当たり)
その思念の先が
----
なお、言い寄られているドズルにとっては本当に勘弁してほしいと言うのが本音である
慕われているのは素直に嬉しい
が、それ以上に恐ろしい
笑顔の
その話題になると
何せソロモンの
「兄さんを本気で怒らせたら、ですか?
…その場合はどうなるか私にも全く予想がつきません」
と言わしめる程のものらしい
ドズルとて、何度かラウムに常識はずれの事を嗜められた事はあったが、何というか逆らい難い
ある時ハマーンは見てしまった
ドズルの反論を何も言う事なく、ただ見つめるだけで封殺したあの姿を
----
はっきり言おう
ハマーン・カーンはラウム・クラヴァスが怖いのだ
それは親や兄に怒られる子供の感じるものに近いのだろうとは思う。が、生憎とハマーンはクェスの様に
「えへへっ、おじさんごめんなさい」
とラウムに怒られてもなんだかんだ慕う事をやめないクェスの様には出来ないとも思ってしまっていた
実のところ、その点においてはクェスと赤いのはある意味同類であるのだが、クェスはラウムを長い事結果として苦しめていたシャアに少しだが敵意を持つ様になり、シャアはシャアで
「
と何ともいえない理屈を根拠にクェスと反発しあっていたりする始末
これには完全に傍観者に徹しているヤザンは大爆笑。シーマは頭を抱えていたりする
「ハッ、なんだありゃ?
女を乗り換えしていたと思えば、今度はラウムを巡ってやり合うつもりってか!?
…随分と愉快な連中が多いみたいだな?シーマ」
「…情けないったらありゃしないよ
器用じゃないとは思っていたけど、まさか年下趣味の上にブラコンも拗らせていたってのかい?!
…勘弁しておくれよ、ホント」
との事である
余談だが
「…これがジオンの遺児でダイクンの継承者、なのか?」
「…ガトー。貴公の戸惑いも無理はあるまい
が、人とは様々な面を持つものよ。あれもまたキャスバル・ダイクンの素顔なのだろう」
とそのシャアの醜態を見て肩を落としていた某悪夢さんや元親衛隊隊長がいたとかなんとか
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なので、ハマーンとしてはとにかく
その為ならば、勿論赤いのを差し出す事など躊躇うつもりなどなかったとか
今日も虹の向こうは平和です
書いては消し、書いては消しを繰り返して何とか出来た
次はダイクン家の面談、ですかねぇ(なおプラスαいる模様)
こういった短編、要ります?
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いる
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いらね
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書けるなら書いて、ほら役目でしょ?