「娯楽がない」
「え?」
「はぁ?」
「えっと、お父さん?」
相変わらずわちゃわちゃしてるラウム達
そんなある日、ラウムはふと気がついた
「娯楽が少ないから、人心が乱れるのではなかろうか?」
と
「あー、確かに地球に比べると娯楽が少ない様に思えるわね」
地球育ちでありながらネオジオンに参加したクェスはラウムに同意する。事実ネオジオン時代において娯楽といえば精々がトランプなどのカードゲーム程度。食事や会話すら娯楽になる事に当時衝撃を受けたものだ
恐らく自分に好意を寄せていたであろうギュネイも一緒に食事を食べるなどアピールしてきた気がするが、何というか正直なところとして
『え?それだけなの?』
と当時思ったものだ
今にして思えば自分も余裕が無かった為に随分手酷い相手の仕方をしてしまったとは思う
まぁ、それを抜きにしても『相手の好きな人を論う』のはどうかと思わなくもないが
あと、例えアムロを倒したとしても当時の自分が靡くとも思えないので、努力の方向音痴だとは今でも思っている訳なのだが
そもそもギュネイ自身MSパイロットとして、また強化人間として己を鍛え上げる事に必死であった為に娯楽に関してそこまで興味があったとも思えない
「それはそうだろ?あたし達は『戦う為に生み出された』んだから
クェスには理解しづらいかも知れないけど、『戦いこそが自分の存在証明』だったんだ
当時のあたし達は。だからそのギュネイって奴もそこまで変わらなかったんじゃないか?」
「…確かに
私はあの後色々あったが、娯楽なんてあったためしがないな
マスター達と過ごした時も娯楽と言えるものは精々食事と会話くらいだった様な気がする」
「(ピキピキ)
兵士のメンタルケアも碌にできない。なのに軍組織としてはテロリスト。これは戦争になった方がおかしいわな
…今度キャスバルへのお仕置き増やさないといかんか」
クェス、プルツー、マリーダの話を聞いたラウムは額に青筋を浮かべながら弟分に対する折檻を内心決めた
(ま、いっか。大佐だし)
(ほっとくか、巻き込まれたら嫌だしな)
(…
…いやいやいや。落ち着くんだ私
お父さんにも自分の時間があるべきだ。娘だとしてもそこら辺は弁えるべきだろう)
何気に一番酷い事を考えているマリーダが一番人間味に溢れているとか、これはもうラウムによるスペシャルお仕置きフルコース決定ですわ
「少し話をしてみるか」
ラウムはそう呟いた
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「何?娯楽だと」
「…なる程。それは考えた事がなかったな」
ラウムより疑問を投げかけられたサスロとギレンは自分達の考えに『抜け』があった事に気が付いた
「確かに国営放送などの放送でその手の番組をさせた事はなかった気がするな」
「失敗したな。どうしてもコロニーに住む者達には精神的余裕がない事が多い
それを軽減させる為の娯楽が必要だったかも知れん」
「いや俺も全く盲点でしたわ」
三者三様に当時を振り返って反省するサスロとギレンにラウム
元々根が真面目な彼等だ
『終わった事』で済ませられない性分なのだろう
ある意味苦労性とも言えなくもないが
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「ふむ、私達のところでストレス発散はどうしていたか?ですか」
「いや、ふと気になりまして」
「私のところではやはり飲酒や愚痴
あとはパイロットの場合だと模擬戦でしょうか」
「俺のところもさして変わらんぞ、ラウムの兄上
妻帯者や恋人がいる者はそれ以外にもあったがな」
「私の場合だと、山や海などを見て気分転換する者もいましたね
やはり地球の風景は私達が思う以上に凄いものだったのでしょう」
「パイロット以外は酒などに浸るか
うーん、これは根が深いなぁ」
というより、こんな疑問解決の為にザビ家一族へ聞いて回れるラウムという男がおかしいとこの時ヤザンやハマーン達は思ったとかなんとか
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「んで、俺に話を聞きに来たって訳かい?」
「や、だってヤザン
お前さんなんだかんだ言っても部下には割と配慮するだろ?
そういう事を知っていてもおかしくないと俺は思ってるが」
「ふ、ふははははっ!!
やっぱりお前は最高だな、ラウム!色んな意味でぶっ飛んでやがる」
宇宙側の事情をある程度把握したラウムは連邦軍の中で話の通じる相手としてヤザンを選んだ
シロッコ?
アレに一般的な価値観を期待する方が人選を間違えているとしか言いようがないだろう
「ま、あれだ。昔からのお決まりだな
その辺は」
「…だよなぁ。女、酒、お金か」
「まぁそうなるだろうよ。何せMSパイロットってのに限らず軍人ってのはとかく反感を買いやすい仕事だからな」
「だが、スポーツもあっただろう?」
「そりゃそうだがな、何せ俺達は軍人なんだ
なら、実益も兼ねた方が節約にもなるだろうさ」
「…うーん、これは種族軍人ですわ
間違いなく」
「確かにな。骨の髄まで軍人やってた気がするぜ俺は」
「…となると、アリかも知れんな」
「どうした?
悪だくみなら、付き合うぜ?」
ヤザンはラウムの様子を見てそれに乗ることとした
「そうか?
なら聞きたいが」
その後、ラウムとヤザンは話し合いという名の打ち合わせをする事になる
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そのしばらく後
「という訳でみんなでスポーツをしようと思うわけです」
「へぇ?久しぶりじゃない
楽しみね」
「すぽーつ?何だそれは」
「わ、私にもわかりません。プルツー姉さん」
「すぼーつ?ダンスではなく?」
「グレミーって私達に社交ダンスとか教えようとしてたらしい
睡眠学習にあった気がする」
「私もこっちなのね、兄さん」
「…アタシまでこっち側とかいいのかねぇ?」
ラウムの言葉に嬉しそうなクェスと困惑気味のプルツーとマリーダ
プルスリーとプルフォーはかつての睡眠学習で習ったダンスと違う様なそれに戸惑うばかり
それ以下の妹達は目を丸くして狼狽える
久しぶりに兄と一緒のことができる事に舞い上がるゼナとひたすら困惑しながらも楽しそうなシーマ
「ふむ、体を動かすのは苦手なのだがな」
「少しは体を動かせとあれほど言っただろうが」
「よく分からんが、ラウムの兄上とゼナが楽しそうなら俺は構わん!」
「何をするか聞いているのか?シャア」
「…いや、私にもさっぱりだ。ガルマ」
「…何故私がこっちなのだ。明らかに場違いだろうに」
「ハマーン様とシーマ教官に呼ばれて来てみたが、一体これは?」
「ぐっ『勝者のいう事を聞くのが敗者の務め』と言われては断れん
グレミーはどこにいる?奴も参加させるべきだろうに」
「…諦めろ、オウギュスト
今グレミーがここに来れば間違いなく血を見るぞ?とは言え、生前の失態を今なお悔いねばならんとは」
「…閣下、これはいったい?」
「ガトーよ。ギレン総帥があれほど楽しそうにされているのだ
我等がお支えせねばならぬ」
気乗りしないギレンに苦言を言うサスロ
妻と義理の兄も参加しているという事で楽しそうなドズルと楽しそうにしながらも、内容を気にしているガルマになんだかんだ楽しみにしているシャア
明らかに仲間のいない状況を嘆くシロッコに
そしてセシリアから話を聞いて飛んできたデラーズとガトー
なんともちんばらホイなメンバーである
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「さて、ここに集まってもらったのは他でもない。皆にあるスポーツをしてもらおうと思ってな?」
「スポーツ、だと?」
ラウムの言葉にシロッコが反応する
「そ、スポーツ
今回はジオンさんやデギンさん、マハラジャさんにハスラーさんも会場設営の手伝いをしてもらった」
「久しぶりに汗を流したのは新鮮だった」
「そうは言うが、ジオン。お前未だに不器用なままなのか?」
「懐かしい気持ちになったよ、ラウム君
肉体労働などそれこそ独立運動以来だったから楽しかったよ」
「こういった事をするのも中々悪くない」
それぞれが楽しそうにコメントしている
「因みに設営監督はヤザンに頼みました」
「まさか、こんなメンツを集めてやる事がコレとは驚いたぜ」
ヤザンはヤザンで凄い笑顔だった
「因みに念のための医療スタッフとしてセシリアさんとハマーン、マレーネ、セラーナにララァにも頼んでいます
総指揮はキシリア姉さん、宜しくです」
「任されよう」
ラウムに任されたキシリアは自信ありげに頷く
「それでラウム兄さん。何をするのだ?」
シャアはそう聞くと
「サッカーだ」
「????」
殆どの者はその意味を理解できなかった様である
「んじゃ、ルールを説明しよう。ヤザン手伝ってくれ」
「任せな」
そしてラウムとヤザンによる『サッカー講義』が行われる事となった
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「くっ、あの連携はどうしろというのだ!?」
試合後、シロッコは膝をついて凹んでいた
何せ『女性チーム』は体格や体力面で『男性チーム』に劣っていたものの、連携の練度が高すぎた
特にプルツー、マリーダ達プルシスターズによる連携は脅威でしかなくゴールキーパーがギレンでなければ間違いなく失点していた事だろう
ディフェンダーの指揮をとっていたサスロとそれに従うドズル、デラーズ、ガトーの守備と合わさり女性チームはそれを崩す事が遂に出来なかった
ミッドフィルダーのシロッコ、シャア、ガルマ、マシュマーだがシロッコの我が強過ぎたこともあって試合の主導権を殆ど握られ続けていた
ツートップのフォワードであるラカン、オウギュストも何度かシュートを放つ好機に恵まれたが、意外な事に相手キーパーであるゼナの好セーブに阻まれる事となってしまう
逆に女性チームはフィジカル面で劣るところをひたすら連携により補う事で互角以上の試合として見せた
なお
「ねぇ、兄さん?」
「どした?ゼナ」
「何ならこれMSでしても面白くないかしら
…そうね。強いて名前を付けるなら
『バトルサ』」
「妹よ、その先は色々面倒な事になるからやめるんだ」
とラウムが真顔でゼナの発言を遮ったりしたとか何とか
最後はみんなで歌を合唱(勿論ズレてる)して大盛り上がりの中その日は終わった
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後にこちらで一大ブームになっていくのだが、それはまた別の話
おまけ
「ならラウム。『人狼ゲーム』ってのはどうだ?
中々ハマるらしいが」
「あのメンバーでの『人狼ゲーム』
ヤザン。お前あのメンツ相手に勝てると思うか?」
「…すまん。それは無理かも知れんな
というか、ギレン・ザビあたりに人狼されても村人されても勝てる気がしないな、確かに」
「あと、私怨持ち込んで固定で噛みとかしそうじゃないか?」
「…ゲームにならんな。それでは」
という事で没になったらしい
頭を空っぽにして書きたかったので満足
その内ハマーン様やプルツー辺りがノリノリで(顔を真っ赤にして)歌ってくれるかも知れない
IFルート
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狂った者(公国ルート)
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潜む刃(ソフィルート)
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悪意の先に(アクシズグレミー討伐ルート)
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その他