宇宙世紀0080
俺にとって人生を狂わせた激動の79年が終わった年だ
ジオン共和国から国名と体制を改めたジオン公国
その自治独立の為の戦争はジオンの全面降伏という形をもって終結した。名目上こそ『停戦条約』としているが、あの状況でそれを形通りに取るわけがない
現実を見てない連中はやれ
「まだグラナダや本国にも艦隊や戦力が残っている!
ジオンは負けていない!!」
などとほざくが、逆に『その程度の戦力』で連邦軍に勝てるわけもない事すら分からないなら、いっそ哀れにすら思える
というより、敵地に踏み込んで戦わねば国力が疲弊する
それが僻地や産業的に支障のないところならいざ知らず、『本土決戦』などを主張する者は間違いなく狂人の類だろう
仮にそれで勝ったとしても、所詮一時凌ぎにしかならない
相手は悠々と本拠や各地で戦力の回復が出来る
それに対して、自軍はまず重要区画を破壊されないようにしなければならない
この時点で相手に対して行動面においてすら優位に立たれるだろう
守らねばならない。という事は選択肢が減る事と同義なのだから
相手側とて、継戦能力を断ち切るべく必ず軍事拠点
とりわけ生産拠点などの工廠関連を狙ってくる事だろう
それを守れるならば
守らなければその復旧から始めねばならなくなる
当然その場所で働いている人員にも被害が出る事だろう
その状況下でどうしてマトモな戦闘が出来ようか?
更に義兄殿を始めとしたザビ家は全滅
有力な指揮官も軒並み戦死若しくは離脱しているというのに、どうやって連邦軍と戦おうと言うのやら
聞くところによると、最終決戦において敗北が避けられないと見た一様の艦隊司令官クラスは独自に撤退を指示
結果としてテロリスト予備軍が地球圏全土にばら撒かれた訳だ
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ジオン共和国独立時代に闘った多くの者は
「これもまた結果。仕方ない」
と自分自身を納得させようとした
確かに完全な自治独立の道は途絶えた
だが、限定的ながらに連邦政府は共和
そもそもあの戦乱の通称が一年
つまり、連邦政府はその時点でサイド3を一個の脅威として認識していたという事でもある
連邦としても一定の
脅威なればそれを名目に締め付けることも容易いのだから
が、それこそ好機でもある
間違いなくそうなれば連邦内での足の引っ張り合いは加速してくれるだろう
地球圏を構成する一員として連邦政府に協力し続ければ、彼等とていつまでも共和国に予算や人員を割く必要がない事にも気付くはず
そこに漸く自治権の拡大や独立性の回復が叶う可能性も生まれるというものだ
やれコロニーの独立だ
解放だ
そう嘯く前にもう少し真剣に考えて欲しいものだ
連邦の土俵に上がった時点で『ジオンの勝利』ではなく、『如何に相手から譲歩を引き出すか』と戦略目標が変わったのだと思うがなぁ
く
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しばらく後、俺はかつての同志達から呼び出しを受けた
何でも
現共和国首相ダルシア・バハロからの
一応彼とも知らぬ仲ではないので、面倒ながらも顔を出す事とした
「…共和国の相談役ぅ?」
「そうだ。君はザビ家に縁続きでありながらも、ダイクンの活動家にも影響力を持っている
更に地球の事情にも私たちより詳しい
…どうだろうか?私を助けてはもらえないかね?」
「はぁ、なんというか明らかに俺がやる事ではなさそうですけど」
「無論承知しているよ
が、情けない事に余裕がないのだよ」
ダルシアの表情を見たラウムは
「…平常運転、か」
そう呟いた
「受ける事自体、不満はあるが構わない
が一つ条件がある」
「…分かった
皆、今から私が何をされようとも手出し無用だ
いいな?」
ラウムの目を見たダルシアは自分の護衛達にそう厳命する
そして
「んじゃ、ケジメつけろよ?
ダルシア・バハロ」
「…ああ」
ラウムはそう言うと拳を握り
バキィッ!!
ダルシアの腹を手加減抜きで殴った
「ぐっ」
ダルシアは少しよろけたが、それでも膝こそついたものの倒れる事は無かった
護衛達は唖然としたが
「いつぞや言ってたよな?
『デギンやジオンのやり方では危険すぎる!私はもっとより良い方法を見つけてみせる!』って
その結果がコレかよ?笑わせんな」
「…返す言葉もない」
「挙句、ギレンの影に隠れ続けてやった事と言えばジオン公国に引導を渡すだけ?
それが公国首相ダルシア・バハロの精一杯だったのかよ!?」
ダルシアもまたサイド3独立運動に参加していた
ジオンやデギンに比べれば発言力も影響力も格段に低かったがそれでも当時の彼は『自分にできる事』を常に探し続けていた
故にこそジオンやデギン、その補佐をしていたギレンも彼の事を認めていたのである
ところが共和国政府が発足した際、ダルシアに与えられたポストは些細なものだった
当時の彼はそれに腐り、ただ共和国やジオンに反発する者達に迎合していた
しかし、クラヴァス夫妻の死やラウム等への仕打ちを見て、漸く目を覚ましたと言える
結果、彼はその後は精力的に働き、公国に移行した際公国首相の席を用意される事となった
が、公国議会などとは形ばかりのもの
公国の実権は公王であるデギン。そして総帥であるギレンが握っており彼等の決定を追認するだけのイエスマンである事以上の働きなど求められていなかったのである
そんな状況でどれだけの者が己が責務に真剣に向き合えるだろう?
殆どの者は自分の立場に胡座をかくようになり、連邦との対立などの問題はギレンに丸投げする様になった
まぁ、ギレンやデギンとしても『自分達に責任を被せる』為にも公国議会に機能されても困った訳だが
ダルシアも水が低きに流れる様に楽な方に流されてしまった
そして、ジオン軍の勝勢に乗っかってしまい結果ギレン達の戦争計画の邪魔すらしてしまう
そんな堕落したダルシアの姿は彼と共に独立運動をしてきた者達からすれば到底見れた者ではなかったのである
故にラウムはダルシアを躊躇う事なく殴ったし、声高に非難もする
ラウム達の鉄の掟
『けして諦める事なく無様に足掻いても明日を目指す』
というものにダルシアは反していたのだから
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その後ダルシアの相談役としてラウムは共和国の政治に携わる事となり、デラーズ紛争やグリプス戦役において共和国は一貫して『地球圏の秩序安定』の為の行動を選択し続けた
…たとえそれがかつての同胞達に銃口を向けるものだとしても
アクシズが地球圏に帰還した際、共和国の使者としてラウムはアクシズへと赴いた
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「貴様が共和国からの使者か
こちらにおられるのが、ザビ家の正統なる後継者ミネバ・ラオ・ザビ様である!」
「お初にお目にかかります。ミネバ様
アクシズの地球圏帰還、かつての同胞としてお祝い申し上げます」
「うむ、ありがとう
して、使者殿の名はなんと言うのだ?」
摂政であるハマーン同席の元、ラウムはミネバと初めて対面した
が、不思議とラウムにミネバへの感情など感じる事はなかったのである
既にラウムは共和国の要人
となれば、私情よりも共和国の利益を追求せねばならない立場だ
そして、ミネバは自分の意思でアクシズの
無論、周りの者の意思である事は理解している。が、口まで拘束されている訳でもない
…であるならば、今更何を言おうというのか
「は、ラウム・クラヴァスと申します。今後は共和国の外務担当が来る事になるかと思いますが、どうぞお見知りおきを」
そして、ラウムはハマーンとミネバとの話をしてアクシズを後にした
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その直後、ハマーンはシーマよりラウムがミネバの叔父である事を聞かされラウムとミネバの再度の会談を求めた
が、ラウムはその要請をひたすら黙殺し、結局ラウムがアクシズに赴いたのは最初の一度きりとなった
元よりドズルやゼナの思いを無視するが如きアクシズに対してラウムが好意を持つはずもなかったのだから
結果、ラウムは首相補佐官として
「アクシズと結ぶは危険」
と提言する事となったのである
その提言を受けたダルシアはラウムの胸中を思うと複雑な気持ちになったが、既に引き返せない所にまでラウムを連れてきた事を痛感するとアクシズに対する禁輸措置を議会に提案
議会も旧公国の亡霊ともいえるアクシズを受け入れるは今までの労苦を全て投げ捨てるものであるとし、これを可決させた
この決定に対して、連邦政府はアクシズに対する措置への礼として旧ティターンズのMSの一部を共和国に提供する事を打診
加えて、今まで制限してきた軍備に対する制限の一部を取り消す事も併せて打診した
エゥーゴを認めていない連邦としては、ティターンズとエゥーゴにより人員や予算を取られて弱体化した連邦軍単独ではアクシズの撃破は叶わないと判断。装備こそ旧式だが、それに不釣り合いな程の練度を誇る共和国防衛隊の戦力化を目論んだのである
無論一部からは危険との指摘もあったが、デラーズ紛争時において共和国は一切の支援をデラーズ・フリートにしない事をデラーズの演説の翌日には表明
貴重とも言えるチベ級を中心とした艦隊を地球軌道上戦において参戦させ、コロニー破壊の一助となっていた
無論、元同胞である彼等の参戦はデラーズ・フリート将兵の怒りの的となり、ともすれば連邦軍よりも苛烈な攻撃を受ける事になる
旗艦チベは大破
参戦したムサイ級各艦も良くて中破という有様であり、艦隊責任者であるラウムもまた重傷を負う程の被害を受けた
それにより連邦軍や連邦政府内において、共和国が地球圏の秩序維持に血を流す覚悟があると見て多少なりとも好意的感情を持つ者が増えたのである
その際、ラウムは片腕を失ったが逆にそれが連邦政府からすれば『クラヴァスなりの覚悟』と受け止める事となり、グリプス戦役においても共和国は一度としてエゥーゴを支援する事なく動いた事もプラスに働いた訳である
アクシズとの戦闘においても、宇宙に自軍に対して好意的でない組織がある以上、アクシズの地球侵攻はどうしても全戦力を投入する事が出来なくなる
それは連邦にとって喜ばしい事であった
勿論、アクシズにとっては好ましくない事であった為サイド3への攻撃も考えられたがサイド3外縁のコロニーは徹底的に強化されており、その堅牢さとて突破できなくもないがアクシズにとって貴重とも言えるMS隊の損害を許容せねばならない程だった
更に首相補佐官となったラウムはかつての同志達と共にその外縁部のコロニーに駐留し、全滅すら辞さない覚悟を持って防衛戦にあたるつもりであった
必要となれば、ラウムの素性を侵攻してくるアクシズ軍に対して晒す事すら作戦に盛り込まれていたのである
ハマーンとしても地球圏支配の為に連邦政府を早期に打倒せねば、一年戦争における公国と同じ最期となるだろう事は予想していた。それ故に共和国に構う余裕はなかったともいえる
結果、アクシズにハマーンはシーマ達を残すほか無くなった
何せアクシズには
はっきり言えば信用できるはずもない
アクシズ内に目を向けると、危険なものも見えてきた
一部の者達がマシュマーの部下である青年士官に頻繁に接触しているのだ
更に面倒な事だが、かつて反乱の容疑で始末したアサクラ大佐の部下の一部が蠢動しているとの話もハマーンの耳に届く
「くだらん事を。後にしろ!」
とハマーンとて怒鳴りたくなる
内輪揉めなどする程の余裕はアクシズにない
それだけの余裕があるのならば態々幼いミネバ様を立てる事なく自分がトップにいれば良い話だ
それすら出来ない
それだけアクシズは危ういと言うのに
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結果、ハマーンの懸念はあたってしまいダブリンに対するコロニー落としは共和国軍の強攻によりコロニー奪取の為の艦隊が敗北
連邦に対するコロニー落としは不発に終わった
一連の戦闘において、共和国側のムサイ級「キャンベラ」が戦没
同艦に座乗していたクラヴァス補佐官も戦死した
それをハマーンは地球圏全土に発せられた演説により知る事となる
これに対して連邦政府は連邦議員であるセルヴァ・クラヴァス議員をトップに据えた弔問団を共和国に派遣
共和国の戦没者に対する弔意を伝えると共に、それ等に対する補償を話し合う事となった
皮肉と言うべきか、最大の懸念であったラウムが死んだ事により連邦政府のラウムに警戒していた者達もその警戒を解く事になったのである
この報がアクシズに齎したモノは余りにも多く
ミネバの影武者を務めている少女は
「…そうですか
いえ、報告ご苦労でした」
と言葉少なくシーマを労った
コロニー奪取においてシーマが指揮を取るほかなく、結果としてシーマは亡き主君であるゼナの遺命に背いたばかりか他ならぬラウムを手にかけてしまったのだ
「…これも戦場のならいとはいえ
……本当に堪えるねぇ」
と嘆いたとされる
逆にこの報を受けて意気を挙げたのが、グレミー達であり
「ハマーン等はジオンとザビ家の精神的後継者であるラウム・クラヴァスを亡き者とした!
これはかつてのジオンの栄光に対する裏切りそのものであり、許されるべきではない!!
私はザビ家の意志を継ぐ者として此処にハマーンを倒すべく決起することを宣言する!」
と自身の艦であるサンドラにて演説を行ない、旧公国関係者などを多く迎える事となった
とはいえ、コア3における決戦はハマーン軍、グレミー軍、ガンダムチームのみならずノルド・ランゲル大将率いる共和国艦隊と共和国艦隊を見捨てる事の出来ない連邦軍による大規模なものとなった
ガンダムチームは共和国艦隊や連邦軍と共同作戦をとる事により、消耗を可能な限り抑えながらもグレミー軍、ハマーン軍を撃破
戦後、連邦政府は共和国に対して自治の拡大を許可する事になり、シャアの反乱における功績を加味して共和国の完全な自治独立を認める事になる
というか、ラウムが死ぬなりした方が国家として良くなるのはバグですか?(白目)
なお、オードリーとシャア、セイラは間違いなく曇る模様
どうしてこうなったのやら(ため息)
IFルート
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狂った者(公国ルート)
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潜む刃(ソフィルート)
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悪意の先に(アクシズグレミー討伐ルート)
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その他