共和国より脱出したアクシズへと向かった艦隊だが、艦隊の生命線ともいえるパゾク、パプワ両艦を損失した。その事により、艦隊内において深刻な物資不足が起きる事になるのはある意味では仕方ない事でもあろう
この艦隊の首脳部は自分達の取り分は確保しながら、『選別』を行なっていた
ひとたび宇宙へと出てしまえば、殆どの者に出来る等ありはしない
艦の運営に携わっているブリッジクルーないしは、整備クルー
それに加えて、『この艦隊自体の運用責任者』
そのくらいだろう、出来る事がある者達は
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この逃亡艦隊とも言える艦隊
内訳は脆弱極まりないものであり、旗艦こそチベ級だがその他の艦艇は全てムサイ級
しかも、開戦時の所謂『旧ムサイ級』とも呼ばれるものであった
『MS運用を前提とした』良くも悪くも開戦前のジオン軍艦政本部の思想が反映された戦闘艦だ
純粋な砲撃能力で言えば、連邦軍のサラミス級と『
…しかし、逃亡艦隊の上層部とてMSの確保まで万全にできた訳ではなく、艦艇数に対してのMS充足率は正規軍であれば「論外」と一蹴されてしまう程に悲惨なものであった
というのも、共和国にとって防衛隊としての戦力保持しか認められない以上、最低限の艦艇数こそ必要である
が裏を返せば『それ以上は余剰戦力』としかカウント出来ない
しかし、MSは機動戦力であり、各コロニーに分散配置する予定だった為にそれなりの数が必要だった
加えて、MS技術においては戦争の勝者である連邦軍から見てもジオン軍のそれは決して侮れるものではない
その為、終戦条約の条項に『旧公国軍のMSの連邦軍への引き渡し』というものもあった
最悪武装などを完全に排除する事でモビルワーカーとして転用する事もザクシリーズであれば可能
「奴等には過ぎたものだよ、MSなどは」
この計画を主導したダルシア・バハロ、ジオン共和国初代総理の言葉である
当初の予定であれば、道中会合予定の木星船団から物資などを購入する事になっていた
が、その為に必要であった対価は共和国防衛隊の猛攻により喪失している
「共食いとなるか」
「仕方ありますまい」
艦隊上層部は『航海の支障にならない』のであれば『物資の奪い合い』を許容したのである
彼等にとっては許容できる話だったから
そう
彼等にとっては
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「物資が不足するかも知れない」
そんな噂が艦内に出始めたのは、まだ地球圏から離脱する少し前の事だった
基本的に民間人が多く乗艦している逃亡艦隊
言うまでもないが、彼等は戦闘時や緊急時において役に立つ事はほぼ無い
寧ろ無駄に混乱を助長するだけ、とすら思われている
それでもアクシズへと共に向かうのは、言ってしまえば艦隊司令部を分不相応にも名乗る者達の思惑故
アクシズとて、資源や食糧面においてそこまで余裕のあるものでは決してない
先発した離脱艦隊はあくまでも『
中でも、やはりと言うべきか今は亡きドズル・ザビの妻であるゼナ・ザビ。そして二人の間に産まれたミネバ・ザビ
アクシズが真に公国の後継足らんと欲するのであれば、これ以上ない切り札となる
加えて、キシリアの側近であったトワニング少将や『赤い彗星』の名でジオン、連邦軍双方に名の知れているシャア大佐の存在も決して見逃せない
此処に常に過酷な戦場にあって、生き延びてきたシーマ中佐とその麾下の部隊である『シーマ海兵隊』の存在は戦闘を知らないアクシズの者達の練度向上にも大きく寄与する事も期待されている
感覚派であるシャアとシーマだが、特定の部隊を率い続けて来たシーマの方が教導能力は高い
更に試験兵器の実戦テストを行ない続けた技術士官もいる
決して彼等、彼女達は『無駄飯ぐらい』になりはしないのだ
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それに比べて逃亡艦隊はどうだろうか?
確かに艦隊自体は運用できている
では、サイド3離脱時における共和国防衛隊との戦闘において、彼等が緊密な艦隊機動や各艦同士による連携などがあったのか?
と言われると
殆どなかった
あくまで旗艦などが無事だったのは『防衛隊が輸送艦を優先的に攻撃した』事と『殲滅よりも戦力保持に重きを置いた』からに過ぎない
見逃されただけなのだ、彼等は
更に戦闘時において、一部の民間人が動揺
迎撃行動にすら支障の出た艦も少なからず存在した
ごく一部の民間人などは『艦隊に乗る』事の意味を知ってなお逃亡艦隊に参じた者
だが、大半の民間人は『逃げ出したい』というだけの考えを持つ者であった訳だ
…さて、そんな者達が『食糧面に不安がある』などと言う噂を耳にしたとして
噂を聞いた民間人の一部の者は
「どういうことだ!
「物資が不足してるなんて、嘘よね?
まだ食事をしていないのよ?」
と立ち入りを禁じられているはずの区画に踏み込んできた
勿論、許可なき民間人の立ち入りはルール違反
一応最初は穏便に済ませようとクルー達もした
だが
「アンタらじゃ話にならん!
艦長を呼べ!」
「私達は食事をきちんと食べたいだけなのよ!
どうして話を聞いてくれないのよ!」
と引き下がる様子を見せなかった
その場にいた警備担当の人物は
「艦の秩序維持の為の行動の許可を求める」
と
そして艦長は確認を取ったのち
「…構わん。やりたまえ」
そう口にした
そして、その通信から僅か1分足らずも経たない内に彼等の抗議は唐突に終わりを告げた
「くだらん手間をかけさせる
所詮喚く事しか出来ない者など、あちらに行っても何も出来んわ」
警備担当の男はそう吐き捨てた
その翌日からだ
それまでは一人ずつの配給であった食事の方式が変わったのは
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指定された時間にとある部屋へと民間人達は急いで向かう
その部屋に食糧が用意されているのだ
…食べられなかった者?
一日3回チャンスがある
つまり、そういう事だ
そうなってくると民間人の中でも色々な事が起きる様になる
盗難、窃盗、恐喝、そして暴力による搾取
しかし、彼等は決してそれを艦のクルー達に言うことはない
勿論、この方式に変更された直後
不平不満を持った者達が抗議しようとした
答えは返って来た
「民間人達の
荷物なのだ」
艦隊司令部よりの発言だった
しかし、彼等は監視カメラなどで民間人の中で『選別作業』を行なっており、その中には共和国から逃れて来たトト家の姿もあった
時に共和国から持ち出した通貨や夫からのプレゼントである貴金属などで息子グレミーの食べる分を何とか確保し、母親は民間人の中でも大きなグループに息子と共に身を寄せた
そうやって、何とか自分と息子の安全を確保しようと躍起になったのである
が、彼女は共和国にいた頃から『敵を作りやすい』言動を意識せず行なう悪癖がついており、それは悲しいかな艦における生活でも遺憾無く発揮される事となった
孤立しかけた彼女に対して艦隊上層部は
…言うまでもなく、更に孤立を深めてもらう事と彼女自身の精神を消耗させ、現実逃避じみた言動をする様に誘導する為だ
艦隊に乗り込んだ民間人は上層部が『その情報を確認』出来た者ばかりであり、もう少し踏み込んだ言い方をすると
操り人形に仕立てやすい者を用意する為のものでもあった。彼等は今でこそ追われる身であるが、『サイド3独立運動の功労者』であるとの自負がある
…まぁ、そんな自負があるのならそのサイド3を捨てて逃げ出す事自体が色々アレだと思わなくもないが
アクシズの現在の最高責任者はかつての同志であったマハラジャ・カーン。となれば自分達を粗忽に扱う事はない
そう言った思惑があったのと、『曲がりなりにも人員を連れて来た』事実をもって、アクシズ内でのある程度の地位を獲得しよう
という
マハラジャやハスラー達からすれば
「お前達は何を言っている?」
と真顔で問いただしたくなる様な考えを本気で持っていたのである
…げに恐ろしきは自分の都合
なお、彼等はクラヴァス夫妻の
仮にジオンやデギンが生きていたとすれば
「同志?アレがか?
…勘弁してもらいたい。幾ら私とて
「同志?
ふん、肉壁にすらならず自分よりも幼いラウムを犠牲にする様な連中が作ろうとする世の中がマトモであろうはすもなかろうよ
奴等に任せられる事がなかったから共和国政府時代や公国時代にも声をかけなかったのだ」
と二人揃って嫌悪の感情を露わにする事だろう
そんな者達であっても、精神的に弱った人物や子供程度を操るのならば平然とこなせるものなのだから始末に終えない
幼いグレミーは母親が少しずつ
だが、確実に周りの者達の悪意によって壊されていくのを見ている事しか出来なかった
彼とて幾度も母親を助ける為に行動しようとした
だが、彼の母親は言うのだ
「ダメよ、グレミー
貴方はあんな連中に関わるべきじゃない。貴方はもっと大きな、それこそこの
…貴方の父の様に」
アクシズへと到着する頃にはグレミーの母親の正気は殆ど失われており、グレミーは父親の事をあまり知らない事も相まって『サイド3の要職にあった人物』であると考える様になっていった
つまり自分の母親に周りの者達が辛く当たるのは嫉妬などが原因であり、父が亡くなったから母親を護るものがなくなったのではないか?と
グレミーの母親がサイド3で彼に施していた教育もまたグレミーの勘違いを助長させる事に一役買ってしまう
礼儀作法はともかくとして、ダンスなど一般的な家庭で覚えさせる事など中々ない事だ
そしてグレミーも母親の影響を強く受けており、『貴族などの特権階級』にある人間はそういった教育を受けるもの
というかなり歪な考えを持つに至ってしまっていた
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アクシズへと着いたグレミーであったが、既に母親は出歩くのも難しい状態になっており、グレミーはアクシズにおいて母親の治療を願い出た。グレミーにとってはある意味当然の事といえよう
が、受け入れる側からすればとんでもない事である
事前に何の相談もなく勝手に乗り込んできておいて、しかもその半数以上は何の技能や知識もない民間人ばかり
では何か物資を持って来たのか?と言えばそうでもない
「貴様らは何をしに此処へ来たのだ!?」
マハラジャは艦隊の責任者である者達との話し合いの席において、そう発言したとされる
「…厄介者ばかり増やしおって」
マハラジャからすれば本国からの補給の目処が立たない以上、木星船団との取引を増やす必要があった
が、木星船団側としてもそこまで物資に余裕がある訳ではない
必然的にアクシズが船団側から購入するとなると、それなり以上の資源を支払う必要が出てくる
しかし、アクシズにとって資源とはそのまま生命線となり得るもの
おいそれと資源を削る訳にもいかないのが現状だった
トワニング等の艦隊はグラナダからゼナやソロモンの将兵を避難させて来た者達がキシリアの指示で潤沢とまではいかないものの、かなりの物資をアクシズへと運んできた事で多少息がつけた
そう思った矢先の出来事
ゼナが死亡した事からもわかる様に、アクシズにおいて医療設備はそこまで大きくないし、医療機関にかける予算や人員もアクシズの規模から考えると少ないくらいである
そこにいきなり押しかけて来た者達の治療行為を命じると言うのは流石に問題があり過ぎる
ゼナは自身の死期を悟ったのか
「私の治療は、良いのです
そんな事にリソースを使うくらいならば、もっと助かるだろう命を助けてはくれませんか?
…まだ幼い娘を置いていく情けない女ですが、夫をいつまでも待たせる訳にもいきません
どうか、皆壮健で」
とゼナを説得に訪れたマハラジャ、ハスラー、トワニング、シャア、シーマに医療スタッフとソロモンから彼女を守り続けて来た兵達に告げ、その僅か翌日に息をひきとった
ゼナはドズルの影にいた為に気付く者こそ少なかったが、兵達にも分け隔てなく話をする人物だった
その為、ゼナの死を悼む者は多く
それ故に『ゼナ様ですら治療を断ったのに、奴等は何を考えている?』と言った意見が出る事は避けられない
しかも、仮に治療出来たとしてもそれは『延命処置』にしかならず、アクシズの医療体制を圧迫し続ける事にもなり得る
だが、見捨てれば間違いなく逃亡艦隊の者達、特に民間人達からの猛反発は確定的
グレミーの母親の取り扱いはとても
…本来民間人のグループの輪から外れていたグレミーの母親だ
さして気にされないと思われたが、それでも『アクシズが頼れるか否か?』を測る指標となると民間人達は考えたのである
結局治療する事となり、ただでさえ少ない医療リソースをグレミーの母親に注ぎ込まねばならなくなってしまう
だが、グレミーの母親は結果として亡くなってしまい、その死をグレミーは『自分の母親をアクシズが助けようとしなかったから』だ
と考える様になる
…そう吹き込んだ者達がいたのだ
そうなると、現在のアクシズ統治体制に対してグレミーが不満を抱くのも時間の問題となっていた
おりしも、ハスラー少将がデラーズ・フリート
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「何故我々がハスラーに従わねばならない!」
「…貴官らはアクシズへと来てまだ日が浅い
今回の件は非常に難しい判断をせねばならん。それが出来ると思うのか?」
マハラジャの所へと乗り込んだ者はアクシズ先遣艦隊の人事に不満の声を上げた
しかし、マハラジャは取り合うつもりなどない
そもそもアクシズと連邦の関係は微妙なものである。『公国の後継者』を名乗っているアクシズ。『公国の存在を過去のものとしたい』連邦。当然共存できるはずもない
あくまでも今回の派兵は『地球圏における不穏分子となりえるデラーズ・フリートの将兵の回収』が名目であり、そうであるからこそ連邦政府もアクシズの介入を認めたのだ
仮にデラーズ・フリートへの
デラーズの作戦通りに推移するのであれば、艦隊が地球圏に到達した頃連邦軍や連邦政府から余裕は失われている事だろう
仮に作戦が失敗、或いは連邦側の混乱が予想よりも小さい場合はノイエ・ジールの供与すら取りやめる事を決断せねばならなくなるし、地球圏よりの退去も考慮せねばならなくなる
将兵の回収とて、連邦軍が混乱から回復すれば相手側からの圧力も露骨にかかってくるだろう
その状況下で可能な限り時間を稼ぎ、尚且つ連邦軍との衝突を回避せねばならない
それがアクシズ先遣艦隊の司令官に必要なものなのだ
あくまでも艦隊としているのは、デラーズの兵達を回収する為には旗艦であるグワンザンだけでは手狭になるからと言うだけの理由であり、決して連邦軍に対する示威行為の為ではない
当然、各艦の艦長にもそれは徹底させねばならないしハスラーの指揮に従う事など
仮に一隻でも連邦軍に発砲しようものならば、その瞬間に先遣艦隊は元よりアクシズの未来すら危うくなりかねない
そんな任務に何故『信用ならない者』を同行させねばならないと言うのか?
マハラジャはそれが出来ないと判断したからこそ、彼等を先遣艦隊から外したのだ
「デラーズの戦力と我々の戦力があれば、連邦打倒など」
「叶うはずもなかろう
そのデラーズの艦隊よりも遥かに強大だったジオン公国軍ですら連邦に敗れたのを忘れたか?」
マハラジャとしては『現実を認識していない連中』に何一つ任せられる事はないと思っている
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彼の意見は退けられ、彼等は判断した
マハラジャの存在は邪魔だ、と
幸いと言うべきか、
副官であるハスラーは有能であるが、それも先遣艦隊司令官として間もなくアクシズを離れる
ならば
此処アクシズであれば『病死』として処理されるだろう
更にゼナ・ザビの従者であり、マハラジャの娘であるマレーネも邪魔だ。『赤い彗星』に近付いているセラーナも
全ては自分達の復権の為に
彼等は動き始めた
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そして先遣艦隊がアクシズを離れると彼等は動き出す
『赤い彗星』にはそれとなく、『クラヴァスの息子の生存』を伝えた。ほぼ間違いなく死んでいるだろうが、真実などどうでも良い
彼がアクシズを離れる事が重要なのだから
彗星が離れ、マハラジャは衰弱死すると彼等はアクシズの掌握の為に動き出す
だが、彼等は甘く見ていた
トワニング等やシーマ海兵隊達の覚悟を
本来、マハラジャの娘達3人全員を始末する予定だったが、彼女達の護衛を務めていたコッセルの機転により、危うい所であったがハマーンは命を助けられた
更にアクシズの
結局、アクシズの実質的指導者はマハラジャの次女であるハマーンが引き継ぐ事となり、暗躍していた彼等の中からも何人かの犠牲者を出す事となった
彼等はこのままでは危険と判断して、自分達がアクシズへと連れて来た民間人の中でアクシズの生活に未だ不満の声をあげる者達を
これにより、混乱の収束に協力した形を取ったのである
彼等は暫く行動を自粛し、グレミーの取り込みに注力する事とした
彼等が次に動くのは、先遣艦隊が帰還して暫くのち
先遣艦隊司令官ユーリ・ハスラーを亡き者にする時であった
グレミーも純粋だった
故に付け込まれた
まぁ、それでも死んでもらうんだけどね(無慈悲)
あと一話か二話になるかと思います
お気に入り千件突破とか、目ん玉ぐるぐるになるぅ
何で?(混乱MAX)
いや、本当にありがたい事ではあるのですが
IFルート
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狂った者(公国ルート)
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潜む刃(ソフィルート)
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悪意の先に(アクシズグレミー討伐ルート)
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その他