ラウム氏が亡くなってそろそろ半年が経つ
私が連邦軍を退役して、妻のミライと息子のハサウェイに娘のチェーミンと共にこのアパートへと引っ越してきてからそろそろ2ヶ月ほどとなった
ラウム氏とはアムロやセイラ、カミーユやジュドー達との再会の時が最期の話をする機会となってしまったが、どうやら私がバナージくんとオードリー嬢との結婚式の時に言っていた事を覚えていたらしい
ラウム氏が生前書き残していた旧世紀からの様々な料理のレシピ。それをオードリーさんとバナージから受け取る事となった
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「これはお父様が書き残していたレシピになります
もしもブライトキャプテンがレストランなりを開く時には遠慮せず活用してほしい、と」
「…いや、しかしそれは君のお父さんの数少ない遺してくれたものではないのか?
勿論ラウム氏や君達の気持ちは嬉しいが」
「『長年戦場で生きる。それがどれだけ苦しい事か私には分からん。が死に別れる辛さだけは分かるつもりだ
新しい門出を祝するという事で受け取ってもらいたい』
そう父さんは言ってましたので」
バナージのその言葉に
「…分かった。だがレシピは受け取るが、この本は2人が持っておくべきだろうと私は思う
暫く貸してもらって書き写させてもらうとしよう」
「…ありがとうございます」
流石に親族のいなくなったオードリー嬢から唯一の肉親であるラウム氏が遺したものを貰おうとは思わない
…だが、ラウム氏が私の話を聞いてそれに対して準備してくれていた。その気持ちもまた嬉しかった
叶うならば
「…色々と話をしてみたかったな」
とはラウム氏が亡くなってから何度思ったか定かではない程
息子ハサウェイの考えを糾してくれた事もそうだし、レシピもそう
連邦軍を退役する事でようやく妻ミライの心労も和らいだという
既に一民間人の身ではあるが、せめて彼の大切な娘と義息子を守りたいとは思う
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それから暫く後
「…地球からですか?」
「ええ、ご苦労様です」
シャトルのゲート員はチケットを確認すると、その人物が地球から来た事を知り
(こんな既に寂れる事が分かりきっているコロニーにご苦労さんな事で)
と内心不快に思いながらも、淡々と業務をこなしていく
「良い旅を」
「ありがとう」
そう言ってゲート担当の男はその人物を通した
何せ
連邦議員の署名入りのシャトルのチケットを持っていたのだ。既に
何せ
男はこの仕事をして既に10数年になるが、共和国の場合議員の署名入りのチケットなどが出された場合、その真偽の程を運輸局を通じて共和国政府に問い合わせねばならない
それは『権力の私物化』であり、確たる理由や事象がない限り罷免の対象となるからだ
しかし、どうやら地球連邦では違うらしい
組織としての規模が違うと言えばそれまでだが、どうにも
(そりゃ腐るわな。共和国が滅んだのは仕方ないとしてもこれからまた宇宙は荒れるだろうさ
何せ連邦は一年戦争から良くなっているどころか明らかに悪くなっているんだからな)
理に反する事を理解していながら、それを咎めもしない社会
権力が
金が
武力があれば好き勝手に出来るのであれば、いったい彼等は何に縛られるのだろうか?
それで人が良くなる訳もない
人は生きながらに経験を積みながら、純粋な心は失われていくのだから
(シャアやフロンタルが良いとは思わん
が、こんなんならいっそ滅んでしまえよ連邦)
男は本来ならしなければならないはずの身体検査をスキップせざるを得ない特権階級の連中の事を思い、内心悪態をついた
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「…それは本当なのか?」
「は、はい。間違い無いかと」
とある人物がコロニーに降り立つ数日前、アナハイムの会長職を継いだアルベルト・ビストは妙な報告を秘書から受け取った
まだラプラス事変の後の混乱が尾を引いている上に、アルベルト自身も決して無関係ではなかった
その為、アナハイム内部においても『反アルベルト派』が形成されてしまい、その切り崩しにアルベルトは労力を傾けるほかなかったのである
アルベルト自身、別に会長職を失っても構わないと思ってはいる
が、叔母マーサのした事により新たな戦乱が起きたとなれば看過できない。しかも異母弟であるバナージやその妻オードリーにまで危害が及ぶ可能性だってある
流石にそれはあまりにも情けない
そう考えたからこそ、過去のアナハイムの様々な資料を総当たりして危険なものがないのかを探していた
その中にはオデュッセウスガンダムが反連邦組織マフティーに送り込まれる予定だった事や、本来完成が間に合っていたならばラプラス事変の際に袖付き側に密かに供給される予定だった新型量産機メッサーの存在などを突き止める
そして、アルベルトは自身のコネを使い、
更に既に形骸化しつつあったビスト財団の最後の仕事として、裏で糸を引いていた首謀者クワック・サルヴァーを連邦政府により始末してもらってもいる
その後も調査を続けた結果、0083における『新型ガンダム開発計画』などの極秘資料もアルベルトは獲得する事になった
だが、今回の情報は少し毛色が違うものだった
「グラナダのオクトバー・サラン、だったか?
それで何と?」
「聞いた話によりますと、チェーン・アギの遺族がその死について聞いてきた、と」
「…確かνガンダムの開発に携わっていた連邦士官だったか?
アナハイムに出向していたが、シャアの反乱の際ロンド・ベルに戻ったと」
「はい。サラン技師もそう話したそうで」
「…となると連邦軍に確認したかも知れないな」
「…ただ、かなり怒り狂っていたらしく原因が分かるとなると何をするか分からないのでは?ともサラン技師は言っていました」
「分かった。引き続き調査を続けてくれ」
アルベルトはそう会話を締め括った
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時系列を更に少しだけ昔に戻す
「これは、本当なのですか?」
「御息女を喪った貴殿に言うのもなんだが、私が確認したところでは事実だと思っている
現に当時のデータによると、かの大型機の反応が消失してから彼女の乗っていた機体の反応は消失している。そこに唯一残った反応が」
「
老人は震える声でそう確認した
「少なくとも、当時予備機で戦闘していたのはその空域ではそれのみだったらしい
無関係とは言い難いだろうな」
「その人物に問い質したく思いますが」
「…残念だが、既にノア大佐は退役している
我々の手の及ぶところではないのだ」
「…」
「ああ、そうそう
だが彼等が移住したコロニーは分かる」
「っ!」
老人はその言葉に反応するが
「これは独り言だがね
たとえ退役したとしても、逃れられないものというのは私はあると思うのだよ。それが良きにせよ悪きにせよ、だがね」
そう言ってその人物は老人の手元に紙を一枚だけ飛ばす
「忘れないで欲しいのは、これから先
「…」
老人は深々と頭を下げて、その場を後にした
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「残念だが、ブライト大佐
君は少しばかり影響力が強すぎるのだよ
連邦軍から退官するのは自由だがね?
五体満足で逃す訳もないだろう?」
ブライトは謂わば一年戦争からラプラス事変までの生き字引であり、連邦軍にとって
本来の予定ならば、クワック・サルヴァーと
現在建設しているフロンティアコロニーに駐留予定のタチバナ・カムナの様な連邦軍にある程度奉仕している家系の人間ならば多少目を瞑るだろうが
一年戦争の時のブライトの階級は准尉であり、それから僅か20年程で独立戦隊の司令となった
異常としか言いようが無い
更に何故か彼のいるところは大きな戦乱の渦中になる事が多いのだ
一時は敵と内通しているのでは無いか?
との疑いすらあった程
事実エゥーゴ所属時代の話だが、シャングリラ・コロニーから離れて暫く後にアクシズ軍に居場所を知らせる様な行為をしたとも聞いている
まぁ、当時厳密には連邦軍から
「数多の戦争で誰もが何かを失ったのだよ、ブライト大佐
常に戦乱の最中にいた君だけが何も失わぬでは納得出来るものもそうおらんのだよ?」
その人物は昏く嗤った
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時は戻り
「…ごめんください」
オードリー達の住むアパートに珍しく訪問者が訪れた
その日は偶々カミーユとファは近くの病院へとヘルプに向かい、ジュドーとルーにバナージとオードリーはアムロの部屋で話をしていた
そして、この訪問者に対応したのがアパートに入居して日の浅いミライだったのが不幸だったといえる
「此方にブライト・ノアさんが居られると聞いたのですが」
「…どちら様でしょうか?」
ミライは突然の訪問者に対して相手に分からない程度ではあるが警戒を強める
何せこのコロニーに移住した事をミライやブライト達は誰にも知らせていないのだ
にも関わらずこの訪問者は夫であるブライトの名前を出してきた
これがまだセイラやアムロ達ならば分かる
彼女達はここに住んでそれなりに経っているのだから
そして、一年戦争で彼女達の命を助けてきた勘が言っている
『この人物を夫に会わせてはならない』と
ハサウェイにはまだやる事があるよね?
逃がさねぇよ?
な話でした
IFルート
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狂った者(公国ルート)
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潜む刃(ソフィルート)
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悪意の先に(アクシズグレミー討伐ルート)
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