義理の兄、なんだそれは!?   作:鞍馬エル

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後始末パート2兼裏話





 人として

ブライトはアパートの一室(アパート3階にある料理研究室)で念願のレストラン開業に向けたメニューの試作を行なっていた

 

ラウムはブライトの希望を聞いてからか、近くの物件を一つ用意していたらしい

そこで夢を叶えてほしい、と

 

そこまでされた上にレシピまで託されておきながら、何もしない。などと寝言を言うつもりは彼に無かった

 

 

ラウムの遺したレシピは驚く事に旧世紀に成立したとされるメニューが多く、それ故に作り方こそシンプルなものが多いが発展性は非常に高いものであった

 

驚いたのはカレーライスではなく、ナンと呼ばれるものを使った本場のカレーとやらもあるらしい

勿論匂いがそれなりにキツいので空気税を余計に払う事になりそうだが、曲がりなりにもブライトは独立戦隊司令まで務め上げた身

蓄えはそれなり以上にある事から、さして気にする事にはならなかった

 

そんなブライトだが、仮にも地球圏規模の動乱を戦い抜いてきた歴戦の戦士

 

 

その戦士としての彼の勘がナニカを告げていた

 

「っ!ミライ!」

ブライトは部屋を飛び出し、愛する妻の元へと向かったのである

 

 

----

 

「ブライト・ノアは

姉の仇は何処にいる!」

 

「…」

ミライは決して口を開かない

この手の人間は此方の何気ない一言ですら、起爆剤となってしまう事を彼女は良く知っているのだから

 

「此処にあの男がいる事は分かっている!

隠そうとしても無駄だぞ」

男は懐からナイフを出した

 

 

拳銃ではないのか?と思われるだろうが、拳銃とて慣れていない者が使えばそこまでの命中は望めない

何より相手の目的はミライではないのだ。無論ミライがブライトの妻である事を知らないからこその事ではあるが

 

そして、拳銃では下手をするとてがかり(ミライ)失う(殺す)可能性もある

それでは困るのだ

 

 

だが、ミライとて元軍属でありヤシマ家の令嬢だ

護身程度の嗜みはあるし、子供が産まれてからは母親としてまたブライト・ノアの妻として自らの身の安全くらいは護らねばならない立場にあった

しかも、ミライ自身もまたジオン関係者によっては許せぬWB(ホワイトベース)のクルーだ。何処かで恨みを買っている可能性は決して低くない

 

だが、幾ら彼女とてやはり衰えはある

 

(ハサウェイやチェーミンが出てこなければ良いのだけど)

夫ブライトはついこの間まで軍人だった。自分が心配する必要などありはしないだろう

 

となれば、この緊張状態を何とか打破するのが最優先

そうミライは判断したが、軽率に動ける状況でもないのは事実だった

 

(どうしたものかしらね?カミーユ達が戻ってこない事を願うしかない)

 

相手の出方を待つ事としたミライだった

 

 

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ブライトが部屋を飛び出す数分前

 

 

ピピピピ

 

「あ、電話か

すいません、ちょっと」

 

「ああ、構わないさ」

 

アムロ達と歓談に興じていたバナージは自身の携帯端末に掛かってきた通信に気が付いてアムロ達に声をかけると部屋の隅へと移動し、通信に出る

 

 

「もしもし?」

 

『バナージか?今何処にいる?』

 

「アルベルト兄さん?今は自宅ですけど」

通信の相手はアルベルトだが、どうも慌てているらしい印象を受けた

 

『そうか

なら直ぐにブライトさんに伝えて欲しい』

 

「…ブライトさんに、ですか?」

 

『ああ、どうにもブライトさんを狙うかも知れない相手が今そっちに向かっているらしい!

勿論思い過ごしならばそれで良いんだが』

 

「っ!分かりました。直ぐに伝えます」

 

『頼むぞ!

私ももう少し調べてみて何かあったら直ぐ連絡するからな!』

そう言ってアルベルトは慌ただしく通信を切った

 

 

----

 

「みんな聞いて欲しい。アルベルト兄さんから知らせがあって、ブライトさんを狙うかも知れない人間が此処に来るかもしれないそうなんだ」

 

「ブライトが?

旧ジオンの残党か?」

アムロの言葉に

 

「分かりません。かなり慌てていたみたいで」

と返す

 

「ルー、此処でオードリーとアムロさんを頼む

俺はブライトさんに知らせてくるから」

ジュドーはバナージの言葉を聞くと真剣な表情で直ぐ部屋を出て行こうとしていた

 

「待ってください、俺も行きますジュドーさん!」

ジュドーとバナージは急ぎアムロの部屋を出ると同じ階にあるブライトの部屋へと向かう

 

「俺はミライさん達にも伝えてくるから、バナージはブライトさんに」

 

「分かりました!」

廊下を走りながらジュドーはバナージに指示を出すと、一階に急いで降りて行く

 

 

そして

 

 

「姉さんの仇!」

と階下で大声をしたのを聞いたバナージは

 

「下か!

…くそっ」

慌てて1階へと降りて行った

 

 

----

 

「ったく、何なんだよあの患者は」

 

「そうは言うけどカミーユ。貴方だって昔はあれ以上だったでしょう?」

 

「うっ」

カミーユとファは急患との事で急遽病院に呼ばれていたが、行ってみれば何のことはない

少し騒がしい(・・・・・・)患者がウダウダ言っていただけであった

 

まぁ、文字通り命懸けの戦いをした(死線をくぐり抜けた)2人からすればそんじょそこらの連中など大したものではないのだが

 

何せ纏っている雰囲気からして全く違うのだ

 

 

 

例えるならば、ボール(元作業用ポッド)(0079)と量産機(スターク・ジェガン)(0096)が力比べする様なもの

 

カミーユとファが到着してその姿を見るなり、子供も騒いでいた親もあっさりと黙ったのである

 

「ビダンさん達が来たらどんな患者も素直に従ってくれる」

とは病院関係者のコメントだったりするが、2人からすれば甚だ心外だ

 

 

 

「ったく、俺もよりおっかない人がウチにはいるのに」

とぼやくカミーユ

 

とは言え、『宇宙世紀最高レベルのパイロット』と比べられても大抵の人は

 

「何でその人と比較したんですか?(憤怒)」

 

「勝てる訳ないじゃないですか、ヤダー(涙目)」

 

「もう勘弁して下さい、いやマジで(落涙)」

となる事請け合いだろうが

 

 

なおその人物であっても呑み込まれかねない程の(プレッシャー)を出す人間がいたらしい

 

 

 

----

 

という訳であっさりと用事が終わったカミーユ達は帰路に着いていた。

そこで見た光景が

 

『ミライにナイフを突きつける男の姿』

であった為にカミーユは妻であり、良き理解者でもあるファの顔を見て頷くと無言で背後から強襲した

 

 

健康になってからも身体を鍛える事だけは怠らなかったカミーユの一撃である

 

残念ながら、ミライにばかり注意を向けていた人物にそれをかわす事も抗う事も出来なかった

 

 

----

 

「くそっ、離せ!」

 

「離すわけないだろう!

お前ミライさんに何をしようとした!」

男の怒声にカミーユも負けじと怒鳴り返す

 

カミーユにとって、ブライト・ノアという人物は憧れの人物であり、戦友であり、尊敬する大人でもある

カミーユがグリプスで精神崩壊した後、ファはシャングリラ・コロニーでアーガマから降りている

 

だが、エゥーゴからの補償はそこまで手厚くなく、カミーユの病状を診た病院関係者は一様に匙を投げた

 

ファとしても、実家を頼りたかったが色々事情があった為にそれは叶わずカミーユに至っては父フランクリンも母ヒルダもグリプス戦役の中で命を落としていた

 

困っていたファに手を差し伸べたのがブライトから連絡を受けて駆けつけたミライだったのである

 

 

仮にもブライトは一年戦争時、中尉でありながらも最新鋭艦ホワイトベースの艦長を務め上げ、最終的には戦隊指揮官にまで抜擢された経歴を持つ軍人だ

使う暇など全く無かったが、それなりの手当は貰っていた

 

更にエゥーゴに参加してからもそれなりの額は貰っており、それらを使えばカミーユの治療にかかる費用くらい捻出出来るとブライトは考えたのである

 

 

これが一般的な女性ならばブライトのやり方に反発するかも知れないが、ミライはそんな不器用な優しさを持つ夫を愛している

だからこそ、夫から連絡を受けたミライは

 

「分かったわ。それで私は何処に行けば良いかしら?」

とあっさり夫の意見を受け入れた

 

「…ミライ、いいのか?」

 

「ブライト。そんな不器用過ぎる貴方だからこそ、私は貴方を選んだのよ?自信を持って

貴方のしようとしている事が間違いなんて私は思わないわ」

 

勿論、そんな事をミライは一言も口にしなかったと妻であるファから聞いている

 

 

カミーユがそれを知ったのは、意識が戻ってからの話だった

 

 

何せ年単位で入院していたのだ

その額なんて考えたくもないものになる事くらいはカミーユにも分かる

 

故に主治医に聞いたのだ

「俺の入院費用なんかはどうすればいいですか?」

 

それに対して

 

「君が心配する事でもないと思うが

私から言えるのは一つだけだね。君は本当に良い出会いをしたんだろう」

とだけ返ってきた

 

 

それだけでは何も分からなかった

 

「ようやく意識が戻ったか」

 

「ウォンさん!?」

カミーユが意識を取り戻してから一週間くらい経ったある日、懐かしくそしてカミーユにとっては予想外とも言える人物の訪問があった

 

ウォン・リー

エゥーゴのスポンサーであるアナハイム会長メラニー・ヒュー・カーバインの代理としてアーガマに乗り込んでいた人物だ

カミーユとは度々衝突していた為、カミーユからすれば『嫌な大人』と思っていた人物であっただけにまさか見舞いに来るとは思っていなかった

 

「…ふん。その様子では大丈夫そうだな

結構なことだ。ブライトキャプテンには感謝しておくんだぞ?」

 

「ブライトさん、ですか?」

カミーユが訝しむ顔をすると

 

「なんだ知らんのか?

お前の入院費用などもそうだが、一応法的後見人になってもらっているのだぞ。今度会った時しっかり礼を言っておく事だな

…これは一応見舞いの品だ。あまり無理をせず、身体を休めておく様にしておくと良い」

 

「あ、ありがとうございます」

 

「さて、貴様の元気そうな顔も見れた事だし、私も色々と忙しい身だ。失礼するぞ」

そう言うとウォンはカミーユの返答を待たずして病室を後にしている

 

 

 

なお、ウォンの言った事は概ね正しい

が、彼は一つだけカミーユに伝えていない事があったのである

 

 

 

----

 

 

これはネオ・ジオン紛争の時の話

 

「さて、私はアーガマを離れる訳だがブライトキャプテン」

 

「何でしょうか?ウォンさん」

ウォンは自身がこれ以上居てもアーガマ内で不和の元にしかならない事や彼は彼でやらなければならない事があった為にアーガマを離れる事とした

見送りにはブライトしか居なかったが、ウォンとしてはそれで良いとすら思っていたりする

 

「カミーユの事だ。自分だけで全て背負い込もうとするのは感心せんな。…確かに此方側からの支援は無いに等しい

私としても色々上に文句を言ってみたのだが、な」

 

「…ご存知でしたか

いえ、そのお気遣いだけでもありがたいです」

ウォンの苦い表情とその口調からブライトは彼なりにカミーユの事を心配している事を察して、それに対して礼を言った

 

「君としてはそれで良いのかも知れんがな。私にも大人として、あの少年を戦乱の直中に放り込んだ人間としての責任はあるつもりだ

…取っておいてくれるな?」

ウォンはそう言って、二枚のカードを差し出した

 

「し、しかし」

 

「勘違いしてもらっては困るよ

私は私の責任を感じたからこそ、それに対して私なりに出来る事をしているに過ぎん。安っぽい同情などカミーユにも君にも失礼というものだろう?」

 

一枚はカミーユの治療費などに充てる為のお金

もう一つはカミーユが社会復帰する際、必要だろう生活資金となるもの

 

「カミーユには」

 

「伝えんで良い。私は彼にとって『口喧しい大人』

それで良いのだ

…ブライトくん。カミーユとファの事を頼んだよ」

 

「…分かりました、必ず」

 

 

----

 

ウォンとてアナハイムの重役の1人

その彼がカミーユが意識を取り戻したからと言って直ぐに駆け付けられる程に暇である訳もない

 

それをカミーユが知る事は終ぞ無かったが

 

 

 

なお、残酷な話ではあるがカミーユが病院を退院した僅か一週間後ウォンは暴漢に襲われて死亡している

 

 

 

----

 

 

ブライトと会う機会はそれこそ此処に来てからとなったが、カミーユとファはブライトとその伴侶であるミライに本当に感謝している

 

法的後見人となっていたものの、ブライトからの干渉は一切なく偶にミライへの電子メールを送る事くらい

 

カミーユもファも親類縁者がいない様なものであり、しかもエゥーゴ(連邦政府から睨まれている組織)の一員だったのだ

仮にブライト(連邦軍佐官)の後ろ盾がなかったならば、2人が医師になれたどころか真っ当な仕事に就けたかすら怪しい

 

 

余談ではあるが、ビーチャ達の起業の際にもブライトの名前があったからこそ出来たという背景があったりする

 

何せ度重なる戦乱の中だ

残酷な話ではあるが、天涯孤独や身寄りのない子供どころか大人だってさして珍しい話ではない

 

 

ブライトが後見人を務めているのは、カミーユにファ。ジュドー、ルー。ビーチャ、モンド、エル、イーノ、リィナである

かと言ってブライトやミライが何かを彼等に強制する事は決してなかったのは言うまでも無いが

 

ただブライトは責任を果たしただけなのだ

『子供達を戦争に巻き込んだ責任』を

 

 

----

 

だからこそ、そんなブライトやミライを傷付けようとする者に対して容赦や温情をかけるつもりなどカミーユにはなかった

 

「離せ!此処にいる筈なんだ!!」

カミーユに組み伏せられてなお、男は叫ぶ

 

「姉さんの仇が!」

 

その怒りと悲しみと虚しさを含んだ言葉にこの場にいる者達は目を伏せた

 

 

----

 

警察は直ぐ駆けつけた

通報したのはファ。彼女はこのコロニーにおいて医師として働いている。世間的にも風聞的にも1番波風の立たない人選と言えるだろう

カミーユはあくまでもファの助手的な立ち位置である為に、この点で言えばファに及ばなかったりする

 

駆けつけた警察は未だに喚いている男を一瞥すると

「こんな世の中ですからね。あまり言いたくはないんですけど、良くある事(・・・・・)なんですよ」

と表情を歪めて言う

 

「特に此処は戦乱の中心地的な場所でした(・・・)から

とは言え、何事も無くて良かったですよ

ビダンさん、ご協力に感謝します。しかし、あまりご夫人を心配させないで下さいよ?」

警察官はファやカミーユに話しかけるばかりで、本来事情を聞かなければならないはずのミライや直ぐ後に駆けつけたブライトとは話どころか視線すら向けようとしなかった

 

バナージはそれを苦い顔で

ジュドーは半ば諦めた様な顔でそれぞれ見ていた

 

「先輩。そろそろ」

 

「ああ、ご苦労さん」

若い警官が駆け寄って声をかけるとカミーユ達と話をしていた年配の警官は姿勢を正して

 

「では逮捕へのご協力に感謝します

この者は責任を持って事情などを聞き出しますので

失礼します」

と車輌に乗ってこの場を離れた

 

 

----

 

「先輩」

 

「どうした?」

警官達が帰り道車内で話をしていた

 

「あの古臭い建物。何なんですかね?」

 

「知らんよ。…ただ俺の先輩達からはこう言われていたがな」

年配の警官は不快そうに

 

「「あそこで何があったとしても、マトモに取り合うな」ってな」

 

「じゃあ、今回も」

 

「んな訳にはいかんだろうよ?

何せこの男面倒なものを持ってやがったからな」

若い警官の苦い言葉を否定する

 

「連邦軍高官の紹介状とはまた面倒なもんを」

連邦議員の署名入りシャトルのチケットは既に男が処分していた

だが、帰りの便を確保する為に男は連邦軍高官から父が貰った紹介状を持っていたのだ

 

言うまでも無いが、これはグレー(法律スレスレ)どころかブラック(法律違反)である

高官としては、これを使って帰りのチケットを事前に(・・・)買え。と渡したのだが、激情に支配されている人間のやる事はどうしても直情的になりやすいものだ

 

悪く言えば、猪突猛進(考えなし)とも言える

 

 

----

 

サイド3が自治権放棄してまだ然程に時間が経っていない

故にこそ、連邦政府上層部としては『此処での面倒ごと』など許せるものではない

 

何せここ数十年の間の戦乱の中心地と言っても過言ではないのがサイド3なのだ

此処でまた『反連邦』の機運が高まるなど悪夢以外の何者でも無い

 

 

その為、サイド3管轄の行政府からの連絡を受けた連邦捜査局は1番に政府高官へと連絡

連邦政府上層部はこの事に対して激怒

 

この件に関わっていた連邦軍高官や連邦議員は勿論の事

これに関係していた者についても過去に類を見ない程重いペナルティを課す事になる

 

 

結果として、アムロ達の事が公になる事態は避けられたとも言えるのだが

 

 

 

 

 

----

 

とは言え、これで全てが終わる訳ではない

 

少年の激情が引き起こした一つの悲劇

その清算もまた行なわれる事になるのだから

 

 

 

 




流石に何の保証も実績もない人が医師になるのは無理があるよね?

そう言えばカミーユの治療費どうなったんやろう?
と言ったところから出来たお話


因みにウォンさんが死んだ理由は普通に『反連邦政府運動を主導した』からですね
作中描写はしていませんが、メラニー会長もこの時期に死亡しています


「ネオ・ジオンを認める?
おかしな事を言うものだ。君達にそんな権限など与えたつもりもないし、与えるはずもないだろう」
政府の領分を侵した以上、それ相応のペナルティは発生します

寧ろアナハイムが潰されなかっただけ有情だったり(マーサの尽力ですが)

 IFルート

  • 狂った者(公国ルート)
  • 潜む刃(ソフィルート)
  • 悪意の先に(アクシズグレミー討伐ルート)
  • その他
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