義理の兄、なんだそれは!?   作:鞍馬エル

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実は予想よりもラウムはかなり歪んだ上に拗らせていたというお話


事実上の最終話となります
ご了承下さい


  家族対面の時

「ところでラウムよ

…お主何時になったらドズルとケイム、セリアを会わせるのだ?」

 

デギンは珍しく独りでいるラウムに問い掛ける

自身の息子であるドズルと或る意味では同志だったケイムとセリア。デギンやギレンにサスロとは多少ではあるが面識がある。しかし、肝心のドズルが最愛の妻であるゼナの両親と未だもって逢えていないのは気掛かりであった

 

こちらに来てラウムは様々な事をしていたのだが、殆ど両親(ケイムとセリア)の事については口にしようとしなかった

 

 

…なお不思議な事に連邦軍の某大将とは割と親しげに話をしていたりする。未だもってラウムの交友関係についてはデギンも驚くばかりであった

 

 

ケイムとセリアともこちらで再会したにはしたデギン(ついでにジオン)だったが、2人の反応は芳しくなかったりする

曰く

 

「あの子に重荷を背負わせる事となってしまったのは私達の責任だ

どうして、私達が今更顔を合わせられようか?」

との事

 

デギンからすればそれこそキチンと顔を合わせて話をすべきだと何度も説得したにはしたのだが、やはりと言うべきか全く心変わりしなかった様である

「この親にしてあの子あり、か」

珍しくデギンから相談を受けたジオンはそう感慨深そうに呟いたとされる

 

ゼナに話をすべきか考えもしたが、デギンにとって身近に感じるのはやはりラウムであるし、ゼナ自身も兄に気を遣ってかその話を切り出す事が出来ていないと(キシリア)からも聞いていた

 

(如何にもこうにもこの辺りは親子であるな)

とデギンも複雑な心境になったものの、これを何時までも放置したところで碌な事にならない事は目に見えている

 

が下手をすればラウムと疎遠になりかねない程にデリケートな話でもある。息子達に任せるのはデギンの親として、そして年長者として

 

 

何よりも、あの修羅場にまだ年若いラウムを放り込んでしまった大人として

その自覚がデギンにあったからこそ、デギンはラウムと話をする事にしたのである

 

 

----

 

「会う会わないはゼナやドズル君の意思次第だと思いますが?」

 

言外にラウムは両親と話す事はない

そう言っているとデギンには思えた

 

「それはそうであろう

だが、家族全員に仲睦まじくして欲しいと願うのは道理であろう?

…のう、ラウムよ。お主にとって良くも悪くも変化をもたらしたケイムやセリアに複雑な思いを抱く理由、それは恐らく当事者であるお主にしか分からぬものなのだろう

だが、家族がその思いと裏腹に道を(たが)得ねばならぬ事。その虚しさを其方は良く知っておるのではないか?」

 

「…それは」

デギンの言葉に詰まるラウム

その虚しさを誰よりも知るのは目の前にあるデギンである事をラウムは良く知っている

 

ギレンは総帥という立場である以上、家族への情など見せられぬ

ドズルは将帥として部下に対して心配りは出来たし、妻であるゼナに対する愛を偽る事はなかった

だが、組織としての在り方として、ジオンの将来を考えていた兄や父の意見を彼は終ぞ否定できなかった

 

ギレン(総帥)デギン(公王)を贄として連邦との和平を目指す

という一年戦争初期の方針を

 

そしてそれは地球降下作戦が始動してなお、方針の一つとして堅持される事となり、公的場においてはギレンや父と対立する姿勢を見せねばならなかった

 

キシリアはそんな方針に異を唱えたかったが、それでも他の方法が提示出来ずに冷酷非道な独裁者としての仮面を被り続けねばならなかった兄を見ている事しか出来なかった

 

ガルマはそもそもギレンやデギン亡き後のジオンの主柱となるべく、地上において確たる統治を行わねばならなかった

彼としても兄や父を犠牲とする方策には賛同出来るはずもなかったが、それでもそうせねばならない事もまた理解出来ていた

 

 

 

誰しもが家族の事を思いながら、しかしジオンの将来の為に私情を殺すしかなかった

 

そんな選択をしたデギンにラウムが何を言えると言うのか

 

「…お話しかと賜りました

近いうちに両親と会う事と致しましょう」

 

「すまぬな

お主が優しい心根を持ってある事を利用した儂を恨んでくれて良い」

 

「…恨めるはずもないでしょうに

どれだけの思いを押し殺してまで明日を掴もうとしたのかを知らない訳では無いのですから」

デギンの言葉にラウムは苦い顔をしてそう応えた

 

 

----

 

「…久しぶりだな、ラウム」

 

「本当に大きくなって」

 

「あれから30年程が経つのです

いつまでも子供のままではおらぬでしょう」

 

ケイム・クラヴァスとセリア・クラヴァス。そしてラウムは本当に久しぶりの再会を果たす

とは言え、息子であるラウムに対して後ろめたさのあるケイムとセリア。義理とは言え娘を持つに至ったラウムも『親としての在り方』について当時よりも理解が進んでいた事もあり、声高に両親を咎めようとも思わなかった

 

ラウムからすれば終わった事(今更)なのだから

 

 

非介入の立場を取ったデギンらザビ家とジオン達ダイクン家

 

 

しかし、それではならぬと思っている者もいた

 

「ケイムにセリア。それにラウム君

色々と言いたい事はあるだろうが、先ずは席を共にするべきだと私は思うが?」

 

グリーン・ワイアット元地球連邦軍大将その人である

 

 

 

彼にとって友人であるケイムとセリア。その息子であるラウムに対しての思い入れはそれこそデギンやジオンにも劣る事は決してない

 

 

彼はこちら側に来て先ず2人と会い、そしてラウムがこちら側に来てから顔を合わせた

昔に比べて歪んだ部分もありはしたが、それは戦争という狂気にラウムもまた侵されていた。そうワイアットは思い、悲しみに暮れた時もある

 

しかし、彼を慕う者や家族(ザビ家ら)と共に笑い合う姿を見てワイアットは人知れず安堵したのもまた事実

 

ワイアットとしては死に別れた友人とその子供達が折角再会出来る機会があるのに傍観者を選ぶつもりなどなかった

 

 

----

 

「…守る者が増える程に選択肢が狭まる。俺はそう思った

……多分父さんや母さんもそうだったんだろうとも思う」

ラウム達はワイアットが用意した席に座り、ゆっくりと会話を始める。口火を切ったのはラウム

 

「…でも、納得が出来ない事が一つだけあるんだ

なんで、なんでゼナがいるのにあそこまで無茶をしたんだよ!?」

 

「…親父達に対する反発があったんだと思う

すまん」

ラウムの悲痛とも言える言葉にケイムは深く頭を下げる

 

「ソフィが

生まれてくるはずの妹が居なくなって、父さんや母さんも死んだ

…俺は思ったさ

家族を喪っても守らにゃならん理想(もの)なのか?ってな」

それはラウムが両親を

そして産まれてくるであろう(ソフィ)を失って以来心の中に閉じ込めていた彼の根源たる疑問

 

「俺達は地球市民(アースノイド)だ。それは父さん達が死んでもデギンさんやジオンさん。ギレンさんを始めとしたザビ家兄妹にゼナと死に別れても変わる事のない真実だ」

ジオン独立運動の時より言われていた事

 

「何故お前達は俺達(宇宙市民)の為に闘える?」

 

 

----

 

ラウムにとってジオン独立運動に加わったのは正直なところとして『状況がそれ以外を許さなかった』という部分が大きい

何せサイド3に移住し、両親が独立運動に参加したのだ

 

当時のラウムはまだ子供。地球とコロニーの価値観の違いから友人どころか知人すら満足にサイド3にはいなかった

ラウムの両親とて然程ラウムと変わる事はなく、唯一違った事と言えば少しばかりの蓄え(クラヴァス(オセアニア閥の重鎮)基準)があった事くらいだろう

 

ケイムは連邦議会にもかなりの影響力を有していたクラヴァスの元跡取り。ともなればその交友関係は自然連邦政府や連邦議会。或いは連邦軍を中心とした交友関係となるのは将来を考えれば決して不自然な事ではなかった

 

ある程度人との交渉術や駆け引きの出来るケイムやセリアですらコロニーに移住した当時は苦労したのだから、少年だったラウムやゼナにかかる負担は決して軽いものでない

 

 

そして漸くコロニーの生活に順応しつつあったラウムは両親が当時コロニー内で『色んな意味で』注目されていたコロニー独立運動に参加した事を知る

 

まだ年若いラウムであっても、こうなってしまえば最早選択肢などあって無い様なものであると理解した

…いや、しなければならなかったと言えるだろう

 

 

そしてラウムは自身の身を削る様な献身を行なう事によって、サイド3における『自身の立ち位置』を何とか手に入れた

 

 

 

…だが、それすらもジオンの死亡後の混乱によって失われ、挙句両親が信用していたはずの弁護士がその両親の遺産を奪い去り、それが殆ど関わりのなかったダイクン派(とは名ばかりの変節漢ども)の手中に入った

 

ラウムとしても、両親や産まれてくるではずだった妹の敵討ちをしたいと思っていたし、ゼナという唯一残された身内が居なければ例え死ぬと分かり切っていたとしても凶刃を振るう事に躊躇する事はなかっただろう

 

 

 

そしてラウムは虚しさに襲われる

『何の為に自分は、両親は闘ったのか?』と

 

無論ゼナにそれが見咎められる事のない程度にはラウムも仮面を付ける(本心を押し隠す)事に慣れた

慣れきってしまったのだ

 

 

 

その後、ゼナとドズル(ザビの人間)が恋仲になったと聞いた時、ラウムの胸中は千々に乱れた

だが、唯一残された家族のゼナの幸せを誰よりも、何よりも願うが故に妹を送り出す

 

 

 

…そして得た筈の義理の家族すらも一年のうちにその尽くが冥府へと旅立つ事となった

 

 

ラウムはそれでもアクシズに逃れた妹とドズルと妹の間に産まれた姪の為に生き続ける

 

 

だが、常にその胸中には

 

『いったい何の為に俺達は此処に来たのだろうか?』

という絶望と諦観と怒りなどがない混ぜになったモノが燻り続けていた

 

 

 

そしてそれはいつしか両親への仄暗い憎悪へと変わり、幸か不幸かその感情がラウムに『自死』という選択を選ばせなかったのであるが

 

 

『俺は俺やゼナを残して死んだ両親の様にはならない

姪が生きている可能性が少しでもある限り、どれだけ無様であっても生き続ける』

 

 

 

----

 

故にこそラウムはこちら側に来て話の出来る機会があったにも関わらず、両親を拒み続けている

デギンやワイアットの説得が無ければ間違いなくラウムは話をしようとすらしなかったであろう

 

 

「…それは」

ケイムは息子がそれこそ墓場まで独り抱えてきたものを理解し、言葉を上手く紡げなかった

 

「確かにコロニーの完全自治に向けた運動はあの時期かなりの高まりを見せていた

…でもそれはあくまでも『コロニー側だけ』の話。態々父さんや母さんがガキだった俺やゼナまで連れて参加する理由になるとは思わない

ゼナは愛する人を見つけられたのかも知れないが、結果として夫の家族のみならずその愛する夫にすら先立たれた

そして自分が死んだ後、愛する娘が様々な組織に利用され、翻弄されてきたんだ

宇宙市民の自治権獲得は良いとしても、そこに俺達(クラヴァス一家)の幸せは見出せたのか?…俺にはそれが分からない」

 

ラウムは続ける

 

「なぁ、父さん母さん

今となっては『宇宙世紀最悪の一族』とすら一部で呼ばれている者が大切な家族になっていた俺の気持ちが分かるか?

常に誰かが利用しようとしている

そう警戒しながら日常を送らざるを得なかった娘をどんな気持ちで見つめなきゃならんかったのか?

あの子が何をした?ゼナは名前すら知られない

そして、そこまでして手に入ったものは血と憎悪と悲しみに満ちた世界。これが親父達のしたかった、見たかった世界なのかよ!?」

 

ラウムは感情を表に出す事を良しとしない

感情のままに動いて良い事などラウムの半生において一度としてなかったから

 

 

かつてサスロはラウムに言った

 

「…その歳で感情を殺す事に長けている、か

ふん、おかしな奴もいたものだな」

 

 

 

 

ラウムは本来人を傷つける事に恐怖すら覚える人間

だが、そうしなければ生きていけない

 

だからそうした。そうせざるを得なかったのだ

 

 

----

 

ラウムが周囲と関わらなかったのは勿論、生きる為でもあった

 

だが、それだけではない

 

 

ラウムが両親を、ソフィを喪ってゼナを喪って

そしてミネバの生死すら分からなくなって

 

 

それでも世界は

時は流れ続ける

 

 

 

そうして、独立運動の事も

一年戦争の事も

人々の記憶から忘れられようとしていた

 

 

 

 

 

…なのに

 

…なのに、ザビ家は

忘れられる事はない

 

 

何故か?

新たに出来た『反連邦組織』の多くは『ジオン・ダイクン』や『ザビ家の後継者』を名乗るからだ

 

にも関わらず、やる事は『勝つ為ならばどんな非道な事すら行なう』というもの

しかし、それ等の多くはジオン公国、つまりザビ家が主導して行なった事の焼き直しでしかなく、その度にジオン公国を主導していたザビ家の悪名は更に高まる事となった

 

 

 

火星圏において『レジオン』なる組織があったという

 

『ジオン』の名を冠してこそいるが、その実『宇宙市民(スペースノイド)の独立や自治』に対するスタンスは旧公国と全く異なっていたというではないか

更にレジオンの首班はザビ家を名乗っていたが、独立運動時代からの知古であるラウムはデギンの隠し子やギレンの子供、キシリアの子供にドズルの子供などは全く知らない

確かに彼等は権力者であった。だが、それ故に『自分達の血』というものがどれだけの混乱や戦乱を招きかねないのかを痛い程理解していた

 

グレミーとかいう『妄想癖の狂人』はさておき、クローン技術でザビ家の後継を生み出した科学者がいると言うのならば、その人物の魂が擦り切れるまで殺して続けてやりたいとすら思っている

 

宇宙市民の為と言いながら己の野望を叶えようとする小物もいた

最終戦とも言える局面で、しかも安全な要塞内にいた程度でまるで己を歴戦の勇士の如く語るそのサマは見ていて不快にしかならない

 

 

 

虚しさと共にラウムは自身でも御しきれない激情に駆られる事がしばしばあった

 

 

 

だからこそ、二度と両親と会う事を良しとしない

潜んでいたから、逃げていたからこそ世情に溢れる無念の

憤怒の思いが理解できたのだから

 

 

 

----

 

「…そうか」

ケイムからすれば感情を圧し殺していた不器用で優しい息子であるラウム。ワイアット(悪縁の友)と色々話などをしていたし、独立運動という狂騒の中にあって自分や妻の知る息子が何処か遠い所へと行った様な憂愁を感じたものだ

 

しかし、今の息子はそれを吐き出せる

 

「…良い出会いを貴方はしたのね、ラウム」

妻であるセリアもそれに思い至ったのだろう。少し寂しそうな、それでも誇らしげな顔をラウムに向けた

 

「話をしようラウム

飽きるほど、色々な事を聞かせて欲しい」

元々息子が守ろうとしたのはゼナただ1人。そんな息子がいつの間にか様々な事を経て義理とは言え、娘や息子を認める様になった

 

あの家族以外には全く心を許そうとしなかった息子が、だ

 

 

 

デギン公は言った

『最後まで自分の道を貫いた』

 

だが、自分と妻はそうは思わない

 

この子(ラウム)もまた変わったのだ

そしてそれが息子にとって好ましい方向に

 

 

だからこそ、話がしたいのだ

 

 

「話してくれ、ラウム

お前が何を見て、何を想ったのかを」

 

息子(ラウム)が言葉に対して執着とも言えるほどの拘りを持つのは妻のケイムがそうであったから

 

「人は言葉を武器として傷付ける事も命を奪う事だって出来るのです

なら、言葉で人を癒したり命を救う事が出来ないと何故言えるのでしょう?」

と自分達の両親に言って口論になった事がある

 

それもまた息子の大切な道標となったのだろう

時間はそれこそ有り余る程あるのだ

 

 

 

焦る事も急ぐ事もない

ゆっくり、私達のペースでやれば良い

 

 

 

 

 

 

 

そうして分たれた家族は再び戻ろうとしていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




思い起こせば約1年ほど前に完全な思いつきと学生時代の『詰め込み教育』(verガンダム)を受けた時に不思議に思った事

それらをつなぎ合わせて、更にユニコーンなどの要素を散りばめた結果出来たのがこの話でした


…我がごとながら、何を言っているのか少しわかりかねるところではありますね

一応の区切りを付けたのが5月の中旬
それ以降雨後の筍の如くネタを小出しにしていた感があります


今なお拡がりを見せるガンダムワールド
なにぶんその広範と言える世界を全て知識として持っていないが故に至らぬところも多々あったと思います

ですが、こうして完結出来たのは望外の喜び
感想を書いてくださった方、評価を付けてくださった方

そして何よりもこの様な話を読んでくださった皆々様のお陰で完結を無事迎える事が出来ました
本当にありがとうございます


諸般の事情により一時期非公開とさせてもらったりしましたが、それでも殆ど更新の止まったこの小説(?)を読んでくださいました事重ねてお礼申し上げます   2024/04/09 鞍馬エル

 IFルート

  • 狂った者(公国ルート)
  • 潜む刃(ソフィルート)
  • 悪意の先に(アクシズグレミー討伐ルート)
  • その他
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総合評価:46353/評価:8.53/連載:73話/更新日時:2026年04月07日(火) 22:00 小説情報


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