義理の兄、なんだそれは!?   作:鞍馬エル

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追憶編、最終話となります

1人の人生の終わり
その果てに彼は何を見るのか?


 恩讐の果て

 シャア・アズナブルいや、キャスバル・レム・ダイクンは過去を想う

 

ザビ家により奪われたと思っていた未来

そのザビ家から奪い取った彼らの未来

ダイクンの意思の名の下に奪われた明日

 

アクシズで失った命の輝き

エゥーゴで見つけた未来への希望と絶望

 

先のネオ・ジオン紛争で喪ったアクシズで輝いていた過去

 

 

全てを清算する時がきたのだ

 

 

 

アムロ・レイ

彼は間違いなく素晴らしいパイロットだろう

人としては少し危うい部分もあると思わなくもないが、それもまた彼の人としての魅力なのだろう

 

 

カミーユ・ビダン

シーマと同じく、私の間違いを迷う事なく指摘した少年。もしも私がもっとしっかりしていたならば、或いは彼は今でも平穏な生活の中にいられたのではないか?と思えてならない

ニュータイプとしての感受性が高すぎたが故に大人達の犠牲となってしまった

 

…いや違うな。どの様に取り繕おうとも彼を戦場に連れ出したのは私なのだ

シーマが言っていた事を戦場にあって忘れてしまった私の罪だ

 

 

パプティマス・シロッコ

確かにあの男は自身を『天才』と評せられる程に才能豊かだったのだろう。だが、あまりにも天才ゆえの傲慢さと稚気を捨てきれない人物だったと言えるのではないか?

私の事を『ニュータイプのなりぞこない』と奴は評したが、私からすれば『箱庭の中でしかモノを見れない男』だった

『1人の天才』程度に何が出来る?『女性のつくる世界』を維持する為に奴がした事は世界を悪戯に混乱させただけだろう

まだ、ジャミトフ・ハイマンの方がやり方こそ同意できないが目的に向かう為の道筋は出来ていた様にも思えてくる

そんな男の『くだらない妄念』の為に若者1人の人生を破壊したのだ

 

其処のどこに『天才としての誇り』があるというのだ?

 

 

セラーナもマレーネも、ハマーンもシーマも。そしてゼナ様も

私にとって(希望)となり得た女性達は尽くその命を散らせた

 

『ニュータイプによる世直しなど、ダイクンの意思の継承などどうでも良い』

 

これから始めるのは『勝手に世界に絶望』し希望を持ち、また勝手に絶望した愚かな男の復讐劇なのだから

 

 

 

----

 

宇宙世紀0093

奇しくも『星の屑作戦』から10年経過したこの年、ついてシャアは再び歴史の表舞台に上がる事となった

 

ダイクンの遺児(スペースノイドの代弁者)の決起』に多くの宇宙市民達はその壮挙を歓迎し、彼の元に多くの者達が集まる事となった

 

しかし、その殆どは独立運動の陰で何があったのか知らないばかり。ともすれば一年戦争を『ザビ家独裁による暴挙』であり『ザビ家とそれに連なる者達の敗北』程度の考えしか持たない者ばかりであった

そしてその大多数が一年戦争未経験

言ってしまえば

 

アイツら(ジオン公国)は負けたけど、俺達は負けていない」

というシャアからすれば忌々しい認識しか持たない正しく『烏合の衆』と言った有様である

 

しかも、その組織の中核を占めるのが

 

「大佐。ギュネイ・ガスの事ですが」

 

「いやそれはナナイに任せる

私よりも君の方が上手くやってくれると私は思っているからね」

 

「わかりました。お任せ下さい」

 

ニュータイプ研究所長という肩書きを持つ女なのだから

 

 

シャアはグリプス戦役を通じて一つの確信を持った

今の人類にニュータイプという力は早すぎる

 

 

今の人類にニュータイプとは『強力な兵器』でしかなく、本人の意思など関係なく戦場へと招かれ、破滅するのみ

 

(ニュータイプが戦争の道具ではない事が何故わからん!?)

シャアはニュータイプ研究と言いながら、その成果を兵器開発に活かそうとするニュータイプ研究者というものを心底軽蔑している

 

 

というよりも素人のニュータイプよりも、経験豊富なベテラン(オールドタイプ)の方が強い事は先のネオ・ジオン紛争にて明らかとなっているはずだと考えていた

 

シーマの片腕と言われていたデトローフ・コッセル少佐をマレーネ達の事件で欠きながらも、彼等はグレミー軍との圧倒的戦力差に怯む事なく挑みかかった

そして、ハマーンの信頼する親衛隊のキャラ・スーンと連携したとはいえグレミー側の切り札である『強化人間部隊』を打ち破ったのだから

彼等の機体は一年戦争末期のそれであるゲルググマリーネのカスタム機。それでありながらハマーンの乗機のダウングレード版とはいえ量産型のキュベレイ相手に結果として彼等は全滅したものの半数以上を撃破している

 

強化人間部隊はグレミー軍の最強パイロットの1人である強化人間プルツーと同じ程度の実力を持っているとされているのだ

 

これを速成でありながら充分であると見るか?

それとも不満に思うかは人それぞれだろうが、シャアからすれば『ナンセンス(論外)』だろう

この様な事をしでかしておいて言うのも何だが『生まれてきた命を何だと思っているのだ⁉︎』とシャアは感じた

 

 

そもそも戦争は『軍人がしなければならない行為』であり、本来そこに民間人の関わる事を許容する余地があってはならない

特に連邦軍においての『ガンダム』はそう言った意味では罪の象徴とすら言えるだろう

 

シャアが終生のライバルと認めているアムロとて、一年戦争時は民間人の子供だった

唾棄すべき話ではあるが『学徒動員兵(志願兵)』であれば其処に本人の意思があるのならばその泥も甘んじて飲み込もう

が、彼はそうでない

 

1番近くの軍事拠点であるルナツーに辿り着きながら、そこでの離艦を許されなかったのだ

勿論、シャアとてカミーユをエゥーゴに引き込んだ罪がある

民間人であれば、私怨で動く事も罰を受けるのであればまだ(・・)弁護の余地もあろう

しかし、それが軍人(公然と暴力を行使できる立場)がするのは問題しかない

 

そう言う意味において、一年戦争時のシャアは立場こそ軍人であっただろうが精神性においては『軍人失格』の烙印を押されるに足る人間だったとも言えるのではないか?

 

 

『命を弄ぶ様な人間』をかつてのシャアならともかく、今の彼が好意的に見るはずもなかった

 

 

 

旧世紀の中世において、世界各地では『敵に対する敬意』というものを尊ぶ時期があった

しかし、兵器の長足の進化により『敵を殺す』という意識が欠如する『冷たい、血の通わない戦争』が世界の主流となっていった

 

戦車戦において戦車()を撃破する事はあっても、『中の乗員』の生死についてまで思いを巡らす者がどれだけいただろうか?

安全な後方の基地からミサイルを発射するボタンを押す人間が、着弾地点にいるこれから殺す人間に思いを馳せようか?考えるとしても精々犠牲者の数(無機質な数字)だろう

そこに本当の意味で『人命を尊ぶ事が出来るのだろうか?』

 

恐らく出来はしまい

それは停戦や和平交渉に赴く官僚や政治家と同じ

 

他人事としか捉えられなくなるのではないか?

 

 

 

しかし、奇しくもミノフスキー粒子の発見と運用法の確立により状況は一変。中世に立ち戻るかの様にMSによる『有視界戦闘』が主流となったのだ

戦場の主役は遠隔操作(血の通わない)兵器からMS(人の形をした兵器)となった訳である

 

そうなると、人間というものは不思議で戦争(人を殺す)と言うものを今更ながらに意識する様になった

…何とも悍ましい話で、救いようのない話ではないか?

 

 

そうであるからこそ、MSパイロットの中にも『騎士』や『誇り』などを重視する者が現れたと言えなくはないだろうか?

同じ戦争(人殺し)なのに

 

…もしかしたら、これこそが人ならぬものからの人類への罰なのかも知れない

 

元は作業用機械でしかなかったMS。そこに人型である理由は『操作性を重視する為』とされている

だが、世間に溢れる機械というものの中で人の形を意識して作られたものというのは余りにも少ない。それとも作業用機械であったこれがいずれ兵器に転用される可能性を感じた開発者なりの最後の技術者としての抵抗だったのかも知れない

 

 

 

そう言った(人を殺す)意識を嫌でも想起させられるMS同士の戦闘を何度となく行なってきたシャア

彼は戦闘中に何度となく、『自身を鼓舞』したり『相手に何かを求める』発言をしていた事からも『戦士としての誇り』を持っていたのではなかろうか?

彼は幼い頃にあった父ダイクンの暗殺により、潔癖なきらいがあった。恐らく他人を信じる事が出来なくなっていたと思われる

 

それらが合わさった結果、『人類』という大き過ぎるそして個人が背負う事の到底できない重荷に押し潰されそうになったのではなかろうか?

故に理解者(ライバルや母親)を無意識下で求める

が、当然そのシャアの抱える闇を理解できない者達は彼を疎い、彼のそばにいるのは『彼に利用価値を見出した者』ばかりだった

 

そんな中で彼が見た光がララァ・スンという『真にニュータイプたり得る少女(相手の心を理解し、受け入れる存在)だった(・・・)とすれば彼がその存在に心を囚われるのは寧ろ必然ではなかっただろうか?

 

 

人の命を弄び(戦士としての誇りもなく)』、『ニュータイプを軍事利用しようとする(シャアの希望の象徴を汚す)

そんなニュータイプ研究者はシャアにとって近くにおきたいものでは決してなかった

が、えてしてこういう輩は目を離せば何をするか予測のつかない事をする事もまたシャアとて理解している

故に側に置いているだけなのだ

 

側に置きたいわけではない

目を離すというリスクを冒せないだけだったのだ

 

 

ただ、それが周囲からどう見えるか?についても彼は理解している。それ故に『ナナイに気があるように見せる』必要があった

それだけだ

 

其処に愛情など欠片も介在する余地はない

 

 

 

シャアは自身の心をあの時置いてきた(・・・・・・・)のだから

 

 

 

 

シャアにとっての最期の目的はアムロ・レイとの決着だ

仮にアクシズが地球に落ちたとしても、そこに探し人(ラウム)はいない事を確認している

妹は既に大人として歩いている。ならばその結果もまた享受して然るべきだろう

 

 

「地球の重力に魂を引かれる、か

どうやら違うみたいだな、ハマーン」

 

シャアは思う。その青さに人は魅せられていたのだ

深淵の宇宙。しかし、ニュータイプにはそれが蒼く見えるらしい

 

シャアは考える

もしかしたら、宇宙は漆黒ではなく深い藍色なのではないか?と

そして、ニュータイプの目にはそれが薄まって見えるからそれが蒼くみえるのではないだろうか?とも

 

 

 

「決着をつけるとしよう。アムロ」

 

シャアは呟いた

 

 

 

 

----

 

 

シャアがアクシズの譲渡を求めたのは、あの優しい思い出の詰まった場所をこれ以上荒らしてほしくなかった事

それと

 

「行けアクシズ。忌まわしき記憶を超えて(あの者達の魂を地球に還す)

 

それがシャアの残された願いだった

 

 

 

 

「火星の向こうに彼女はいなかった」

かつてエゥーゴ時代にアムロに語った言葉だ

 

だが、今は敢えてこう言いたかった

 

「たった今計算したが、アクシズの半分は地球に落ちる。貴様らの頑張りすぎだ!」

 

(ようやく、私も楽になる時が来たか)

シャアはコクピットの中で目を閉じる

 

温かな、そして不思議な光を感じる

 

 

『ふん、大きな口を叩いた割にはその態度か』

 

(ああ。どうやら私は其処まで強くなかったらしい、ハマーン)

 

『だから言ったろう?アンタはそんな小器用に生きる事のできない性分(タチ)だってさ?』

 

(そうだな、シーマ。やはり私はあの時のままだった様だ)

 

『大佐。お待ちしておりました』

 

(すまない、セラーナ。随分と待たせてしまった様だ)

 

『大丈夫ですよ?待つ事には慣れていますから』

 

(…敵わないな、君には)

 

『何をするかと思えば、ただの駄々っ子でしたか。セラーナの相手にするには不安でしたがやはりダメンズでしたね、あなたは』

 

(返す言葉もないよ。せめてダメンズという不名誉だけでもどうにかしたかったがな、マレーネ)

 

『気はすみましたか?』

 

(私には過ぎた重荷を背負ってしまった様です)

 

『兄上やドズル様が言っていた様に不器用なのに器用なフリをするからでしょう?ミネバの事ありがとうございます』

 

(そうですね。やはり貴女には敵わないようですな、ゼナ様)

 

『何をやっているかと思えば。せめて筋くらいは通しなさい、キャスバル坊や』

 

(返す言葉もありませんな、キシリア閣下)

 

『ダイクンの遺児が何をするかと思えば、貴様まで私達の真似事をする事もなかっただろう?』

 

(どうやら私は私が思うほどに賢くなかった様です、総帥)

 

『ふん、そんな事は貴様が子供の頃から知っていたよ。だが敢えて言おう。苦労だったな』

 

(…はっ)

 

『大佐。やっとこちらに来られましたか』

 

(ああ)

 

『やれやれだな。貴様は生き残る道もあっただろうに』

 

(無理を言わんでください、ドズル閣下。誰しもあなたの兄上の様に強くはあれませんよ?)

 

『よう、シャア。らしくもないな』

 

(…ガルマ。こんな私にまだ話しかけるのか?)

 

『おかしな事を聞くな。お前がどう思っていたとしても、私は君の友人だと思っている。それ以上のことがあるか?』

 

(…私よりガルマの方がよっぽど大きくなれたのかもしれんな)

 

『冗談を言うなよ。波瀾万丈の人生など私にはつとまらないさ』

 

(ガルマ)

 

『うん』

 

(すまなかった)

 

『気にする事はないさ。さぁ行こう、君の父上達も待っておられるからな』

 

 

私はそんな幻聴(ゆめ)の中、静かに目を閉じた




書きたかった事は全て書いたと思うので満足です

まさか投稿した時には『お気に入り10人くらいになれば良いかなぁ?』と思っていたのに蓋を開けてみればまさかの200人超え

本当にありがとうございます
皆様のお気に入りや評価、見て下さっただけでも私にとって力になりました
勿論感想をいただいた時には「やったぜ!」と会社内にも関わらずガッツポーズしたりしました
元々あくまでもザビ家の話が主であり、それ以外については最低限ふれるつもりだったのですが

仕方ないのです、私の構成力の無さをどうか笑ってください

現在行なっているアンケートについては急な話で恐縮ですが、2023/05/14正午ごろを目処に締め切らせてもらいたいと思います
何卒ご容赦ください

恐らくアンケート的にエピローグと後書きにそれぞれ1話使う事で本作は完結となるでしょう
読みづらい文章だったかと思いますが、この様な小説を読んで頂き本当にありがとうございます

もし宜しければ、次回『可能性の向こうへ』でお目にかかりたく思います

 ミネバの幼少期のエピソード

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