東方旅天使   作:黒檻さん/詩歌

3 / 7
月への移住計画と不穏な動きの妖怪達

 ハクが永琳の家に住み始めて、既に二年たった。

 

 その二年の間、嵐華が単独で襲来してきたり、人間の軍隊を鍛えたり、嵐華が手下の妖怪を引き連れて襲来してきたり、永琳が宝石を貰って喜んでくれたり、嵐華とその他の鬼がが襲来してきたり……

 

「って嵐華、鬼だからって襲来しすぎじゃないですか?」

 

 鬼は二年の間に何回、何十回とハクに挑み、そしてことごとく敗北していた。

 最近ではハクと嵐華が戦闘後に、都市内の店でお菓子を食べている程だ。

 人間の中にも、いつの間にか嵐華と仲が良くなっている人がちらほらいた。

 

 そして、現在もハクの目の前に鬼が仁王立ちしている。

 小さな角を生やした長髪の鬼、嵐華だ。

 

「何だよハク、最近は人間には多少被害が出ない様にしてるじゃないか」

 

「それもそうですけど……もう少し頻度を下げて欲しいです」

 

 むっ、とした表情の嵐華。

 嵐華は毎回同じ時刻に同じ場所から現れる為、最近では被害防止策として嵐華専用ハク直通のインターホンが設置された程だ。

 

「じゃあ何だ?鬼の私に戦闘をするなと言っているのか?」

 

「ええ、少し抑えて下さい」

 

 すると嵐華は少し考えたそぶりを見せた後、目を見開き

 

「だが断るっ!!」

 

 と言い放った。

 ハクはどうして嵐華がそのネタを知っているのかが気になったが、恐らく偶然だろうと考えた。

 

「なら実力行使で抑えますよ?」

 

 多少の怒りを込めて嵐華を脅す。

 嵐華もハクの実力は知っているので、すぐに大人しくなってしまった。

 

「ちぇっ、ならまた今度戦おうなー」

 

 結局戦うのは今度になった。

 どうやら嵐華は根っからの戦闘狂のようだ。

 

「はぁ……分かりました、また今度戦いましょうね」

 

 渋々ハクが了承すると、嵐華は都市の外に出た後

 

「絶対だからなー!」

 

 と言って森の中に入って行った。

 一人になったハクは深く溜息をし、ふよふよ飛びながら永琳の家へと戻って行くのであった。

 

 

〜少女移動中〜

 

 

 永琳の家の前に辿り着いたハク。

 いつも通り自分の部屋の窓から家に入る。

 

「ただいま帰りましたー」

 

 しかし、どうやら家に永琳は居ないようで、返事は返って来なかった。

 

 晩ご飯はどうしようかとハクが考えながら居間に向かうと、机の上にラップで包まれた晩ご飯と書き置きが置いてあるのを発見した。

 

『今日は上層部の爺と重要な会議があるので、ご飯を食べておいてね』

 

「成る程……だから永琳は居なかったんですね」

 

 書き置きを机に置き、一人で晩ご飯を食べ始める。

 作ってから少し時間が経過しているのか、ご飯が温くなっていた。

 

 ハクがご飯を食べていると、不意に視界に厚みのある書類が入った。

 

「この書類は何でしょうか……『人類移住計画 in 月』?」

 

 興味本位で書類の中身を見てみると、驚きの内容が書かれていた。

 

 簡単に言うと

 ①ロケット作る

 ②皆で月に行く

 ③穢れが月には無い

 ④あたい達ったら不死ね!

 

「成る程、この為の会議でしたか。それにしても決行日が一週間後とは……既にロケットは完全しているようですね」

 

 ハクがその書類を読み終えると同時に、永琳が帰って来る音が聞こえた。

 

 書類を元の場所に戻し、再びご飯を食べ始める。

 

「ただいま。あらハク、まだ食べていたのね」

 

 少し疲れた表情の永琳は恐らく大量の書類が入っているであろう鞄を部屋の片隅に置き、神妙な顔でハクの向かい側の席へと座る。

 

「……ハク、貴女に伝える事があるわ」

 

「はい、なんでしょうか?」

 

 永琳は軽く腕を組み、少しの間を開けて本題を話し始める。

 

「月への移住計画についてよ」

 

 本来ならこの時点でハクが驚いている筈だが、永琳はハクが一切動じていないのを見て不思議に思う。

 

「……まあいいわ、それじゃあ内容について話すわね。まずはーー」

 

 

〜少女説明中〜

 

 

「ーーという訳よ。大体理解出来たかしら?」

 

「はい、全て分かりました」

 

 ハクが永琳から聞いた内容は、先程見た書類の内容とほぼ同じだった。

 唯一新しく知った事といえば、穢れが人間に及ぼす影響の事くらいだろう。

 

「それじゃあ、私は引き続き会議があるから行くわね。お休み、ハク」

 

「お休みなさい。頑張って下さいね」

 

 永琳によると、今の予定では次に会えるのは決行日の一日前だそうで、その日までの食材とちょっとしたお金を置いて再び会議に向かって行ってしまった。

 

 

 

 そして次の日の朝、街中に号外が配られる。

 妖怪の脅威から逃げられると言って喜ぶ者もいれば、この土地が名残惜しくて泣いている者もいた。

 

 そんな中、ハクに会う為に都市へ訪れた鬼がいた。嵐華だ。

 

 嵐華は人々に何があったのかを聞き、人類の月移住計画を知る。

 

「もうハクとは会えなくなるのか?ならば……」

 

 嵐華は駆け足で森の中へと帰って行き、移住計画決行日まで姿を現す事は無かった……

 

 

 

 

 一方その頃、永琳は上層部の偉い人達(爺達)と会議をしていた。

 

「だから!まずは民の移動が先決でしょう!?」

 

「いや、儂等が先じゃ。指導者無しでどうやって民は生活出来るのだ?」

 

 民の事を思う永琳と、自分達中心の上層部との口論が始まっていた。

 

「民が居てこそではないの!?何が指導者よ!!」

 

「身分を弁えろ!儂等はそこらの民よりも偉いのだ!!偉い者が生きて当然だろう!!」

 

「ちっ……埒が明かないわね。もう良いわ、私は勝手にさせて貰うわよ」

 

「おい!まだ会議の途中だぞ!」

 

永琳は後ろから聞こえる声を無視して会議室から出て、ハクの元へと向かって行った。

 

 

 

~翌朝~

 

 

 ハクは永琳に起こされ、都市内の中心で一際目立つビルの最上階にいた。

 

「このフロアだけは和風なんですね」

 

 しかし永琳は答える事無く前へと進んで行く。

 それに合わせてハクもふよふよ飛んでいた。

 

 不意に永琳の足がが障子の前で止まる。

 

「今から貴女に合わせたい人がいるの。くれぐれも無礼の無いようにね」

 

「分かりましっーー!!?」

 

 突然ハクだけに強烈な殺気が浴びせられ、すかさず神力と魔力で一つずつ短剣を作り、戦闘態勢に入る。

 

「永琳、この奥にその人が?」

 

 ハクのいつに無く真剣な表情で永琳に聞く。

 

「ええ、そうだけど……どうかしたの?」

 

 永琳がハクを心配した瞬間、一気に殺気が消滅していった。

 

 殺気が消えたのを確認したハクも戦闘態勢を止め、短剣を消滅させた。

 

「いえ、何でも無いです。心配おかけしました」

 

 永琳は安心した表情をし、障子の奥に居る人へ話しかける。

 

「月夜見様、ハクを連れて来ました」

 

 すると、中から一人の女性の声が返って来る。

 

「入って良いですよ」

 

 永琳がゆっくりと障子を開けると、一人の美しい女性が座っていた。

 陶器の様に真っ白な肌に、それと相対するような黒色の髪。

 そして月が描かれた紫色の着物を着ている。

 

 神々しいオーラを出しているおかげか、ハクは月夜見が神である事が分かった。

 

「どうも初めまして。月夜見と申します」

 

「あ、私は天使のハクです。よろしくお願いします」

 

 お互いに簡単な自己紹介を終え、ちょっとした世間話をする。

 

「(ふむ……尋常ではない神力と魔力ですね……)永琳、部屋の外で待ってなさい」

 

「分かりました」

 

 月夜見に言われ、そそくさと部屋の外に向かう永琳。

 普段は少し強気な永琳があの態度とは、一体どれほどの実力者なのだろうか。

 

「(いけない……嵐華に洗脳され始めちゃったかな?)」

 

 何と無く戦闘狂の嵐華の所為にしてみたハクだったが、あまりにも無理があったので素直に自分を認めた。

 

「ハクさん、いつも鬼退治ありがとうございます。それで今日は、その実力を見込んで頼みがあるのです」

 

「はい、何でしょうか?」

 

 月夜見は一息ついた後、内容を話し始めた。

 

「最近、何やら妖怪達が怪しげな行動を起こしているのです。噂によるとロケット発射のタイミングで襲いかかって来るとか……」

 

「成る程、それで私に妖怪を食い止めて欲しいという事ですか?」

 

「ええ、我が軍と共に食い止めて欲しいのです」

 

 内容を聞いたハクに断られないかと心配した月夜見だったが、ハクは笑顔でそれを了承した。

 

「良いですよ。では、詳しく教えて下さい」

 

 ハクの返事を聞いた月夜見は、安心した表情で作戦を話し始める。

 

「分かりました。では始めにーー」

 

 

〜少女説明中〜

 

 

「ーーというのが、今回の作戦です」

 

 今回の作戦の内容を簡潔に言うと

 ①妖怪達を食い止める。

 ②軍以外の人が全員月へと出発成功したら別のロケットに乗り、自分達も地球から脱出。

 ③妖怪ざまあみろ。

 

「成る程、分かりました」

 

 非常に内容は単純だが、実力が無い者にとっては難しい作戦だ。

 だからこそ、月夜見はハクに頼んだのだろう。

 

「では、要件は以上です」

 

 話が終わり、月夜見が永琳を部屋内へと呼ぶ。

 

 ハクと永琳が座っている中、月夜見は従者に何かを持って来て貰っていた。

 

「月夜見様、それはお酒ですよね……?」

 

 永琳が尋ねると、月夜見は先程の重苦しい雰囲気を消し、明るい雰囲気でお酒を用意し始める。

 

「では、飲みましょうか♪」

 

「ありがたく頂きますねー」

 

「えっ?ちょっと月夜見様!?ハク!?」

 

 そのまま月夜見とハクは慌てる永琳を無視して、お酒を飲み始めるのであった。

 

 

 月夜見とハク曰く、神力を使ってテレパシーで会話をしたそうな。

 永琳にも会話を繋げる事は一応可能だったらしいが、空気を読んで繋げなかったと後に神と天使は語る。




ー妖怪迎撃作戦が軍に伝えられた一時間後ー

上層部の爺「おい、()の物は完成したか?」

科学者「おう、ばっちり作ったぜ。この都市は丸ごと消滅する威力の物をな」

上「くくっ、妖怪に知恵を渡さないという名目上で、天使と軍を殺してやる……」

科「ははは、この核爆弾(すーぱーうるとらぼんばー)の餌食にしてやる!」

上「……相変わらず酷いネーミングセンスだな」

科「う、うるせぇ!名前で威力は変わんねぇだろうが!!」

上「それもそうだな……まあ、これで月夜見の軍を消し、月では俺達の時代が始まるんだ!!」

二人「ふはははははは!!!」
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告