それでも良いという方はどうぞ。
月夜見とお酒を飲み交わしてから一週間。
天気は曇天、重苦しい空気の中で移住計画が実行されようとしていた。
「へぇ、これが今回使用されるロケットなんですね」
ハク、月夜見、永琳の前にある物は、軍とハクが乗る為のロケットだ。
鋼に輝く装甲。速さと丈夫さを兼ね揃えたフォルム。そして何より目立つのは、異常なまでの丈夫さと透明感のあるガラス越しに見える広々としたコックピットだ。
かなり大きいロケットで、あれだけの大人数が乗っても大丈夫だろう。
「ええ、軍用だからしっかりと対妖怪用の装甲も着けてあるわよ」
ロケットの設計者は永琳。
このロケットを見せられた時点で、ハクの中では永琳万能説が出来ていた。
ハクが少しばかりロケットに見惚れていると、普段嵐華が出没する南門からハクに連絡が届いた。
内容は実に簡単で、一文しか書かれていない。
しかし、その一文がどれだけ重要かはその文面が物語っていた。
『南門より、妖怪の大群襲来』
月夜見、永琳は民の移住準備を急がせる。
永琳の的確な指示と、月夜見の圧倒的カリスマ性で次々と人間は準備を終わらせ
ーーようやく、第一便と第二便が出発した。
残るロケットは永琳と月夜見と少しばかりの民が乗るロケット、それと軍用のロケットのみとなった。
永琳達の乗るロケットは発射準備をしている途中である。
「永琳、行くわよ」
「ハク……絶対に月へ来なさいよ……」
永琳はハクから貰った宝石を握り締め、月夜見に続いてロケットに乗り込んだ。
「任せてくださいね。必ずそちらへ向かいますから」
そんなハクの返事はもう聞こえない。
既に永琳は分厚いロケットの壁の向こう側にいたからだ。
一人残ったハクは、軍からの連絡通りに南門へと高速で向かって行った……
〜少女移動中〜
ハクが南門に到着した。
既に南門は激戦になっており、夥しい量の血が地面を紅く染め上げている。
人間は近代兵器を駆使して妖怪を殲滅していくが、妖怪の数は一向に減る気配が無い。
それどころか妖怪側は次々と数を増して人間へと襲いかかっていく。
小妖怪や中妖怪は人間に殺されながらも次から次へと湧き、前衛にいた人間達の首を跳ね飛ばし、内臓を食い破る。
圧倒的に人間側が不利で、ハクが来なければすぐに負けていただろう。
ハクはすかさず前衛に出て、神力を具現化させた武器、所謂刀を作っていく。
そしてハクが呪文を小さく呟いた瞬間、刀が白い炎に包まれ、戦況が一変した。
――神刀「全てを浄化する白炎」
ハクがその刀を一振りすると、除く殆どの妖怪の腹が切断され、白い炎に包まれていく。
妖怪の血の一滴まで燃やし尽くし、その場に残るのは焦げた地面だけとなった。
現状、残るは少し強い中妖怪、もしくは大妖怪のみだ。
「お前らぁ!ハクに続けぇ!!」
これを好機にと指揮官が軍に命令を出す。
だが、人間がどれだけ必死に妖怪を狙おうと中々当たらない。
残った妖怪の数は約五千匹。
先程のハクの攻撃で死んでいった妖怪の数は大体八千匹程だ。
「残った妖怪は一匹ずつ駆逐していきましょう……」
そして再びハクは呪文を小さく呟く。今度は魔力で出来た闇を纏う双剣だ。
危険を察知した一部の妖怪がハクに襲いかかるが、遅かった。
――魔双「滅へと導く黒き闇」
妖怪達がハクを包囲したが、ハクはその妖怪達を双剣で斬っていく。
妖怪達は斬られた場所から闇が繁殖し始め、全身を飲み込んで塵一つ残らず消滅してしまった。
ちなみに、ハクの技には効果時間が存在する。
例えば先程の神刀は一振りで効果時間が切れてしまうが、威力と範囲は桁違いだ。
逆に今回の魔双は効果時間が一分あるが、敵に接近して斬りつけなければ効果が無い。
しかしハクはそんなデメリットを気にする事無く、目にも留まらぬ速さで妖怪達を斬りつけていく。
一度でも斬られた妖怪は次々と消滅していった。
そうしてハクが一分間無双をしていると、一瞬だけ敵の総大将の姿が見えた。
小さい角で長髪の鬼が指揮を取っている。
「あちらの総大将は嵐華でしたか……」
どうやら嵐華にも一瞬ハクの姿が見えたらしく、指揮を別の妖怪に任せてハクの近くにやってきた。
「よお、ハク。早速だが……」
ハクと嵐華が戦闘態勢に入る。
「ーー準備は、出来てるよな?」
嵐華が言葉を発した刹那、お互いが力を溜め始める。
嵐華は拳に力を溜め、ハクは魔神力で大きな拳を作り出す。
「今日こそお前を倒してやる!」
――鬼殴「地盤変動」
「返り討ちにして差し上げます」
――「魔神の鉄槌」
お互いが一気に駆け出し、拳がぶつかり合う。
地面は揺れ、木々が薙ぎ倒され、人間や妖怪が吹き飛んでいく。
「負けてたまるぁぁ!!」
嵐華が更に力を加える。
ハクも負けじと力を加える。
ーーしかし、その勝負は途中で終わる事になった。
永琳達を乗せたロケット……つまり、軍以外のロケットが発射されたのだ。
「総員撤退!ロケットに乗り込め!!」
司令官の声が戦場に響く。
生き残った軍の者とハクは、妖怪が追い掛けて来る中、急いでロケットへと後退して行く。
そして全員がロケットへ乗り込み、作戦は終了したと思った瞬間……悲劇が起こった。
「司令官!燃料がありません!!」
「なにぃ!?どういう事だ!!」
ロケットの燃料が無かったのだ。
妖怪が迫り来る中、急いでハクがロケットの燃料を創りだし、燃料補給室へと運ぶ。
そして、ロケットに燃料が入ったが……
『警報、妖怪が近くにいる為発射できません』
機械から無機質な音が聞こえ、軍は絶望に陥る。
そんな中、ハクがロケットから降りた。
「ハク!何をする気だ!?」
「私一人で周りの妖怪を掃除してきます」
力をフル活用し、次々と迫り来る妖怪を殲滅していったハク。
そんな中、ロケットの中で祈るように空を見ていた軍の一人が、空から何かが落ちてくるのを目撃する。
「司令官!何かが落ちて来ています!」
その物体を見た司令官は、顔を真っ青にして倒れてしまった。
ーー少し時は遡り、永琳達の乗ったロケット内部での出来事。
怪しげなスイッチを持った科学者がいた。
その科学者が、何かのタイミングを見計らってスイッチを押す。
そのスイッチには大きな文字で『
妖怪を殲滅している中、ハクも空に何かを発見する。
鈍く光る、金属の球の様な物だ。
「あれは……まさか!?」
ハクが目を凝らして見てみると、その物体に「核」の一文字が彫られていた。
「(私は妖怪の相手をしていて、妖怪が近くにいると内部からは発射出来ない……)そういえば、外部にも発射ボタンがあった様な……」
ハクが近くを探すと、案外近くにボタンがあった。
妖怪を掻き分け、急いでそのボタンを押すと、ロケット内部で発射のカウントダウンが始まる。
「司令官!ハクが外部の発射ボタンを押した様で、カウントダウンが始まっていま……司令官!?しっかりしてください!!」
既に司令官は気絶していた。
司令官が気絶してしまうと、ハクにカウントを伝える役がいなくなっしまうのと同義であり……
ロケットは、ハクを置いて出発してしまった。
しかし、ハクはどうやらこれを覚悟の上で押していたらしく、妖怪を殲滅しながら安堵の表情をする。
「さて、残る問題は核爆弾ですね」
ハクが飛んでいくロケットと落ちてくる核を眺めながら考えていると、後頭部に大きな衝撃が加わる。
「おいハク!あの塊はなんだ!?」
嵐華だった。
しかし、ハクがそれに答える前に核が強く発光し始めーー
ーー爆発した。
「っ!嵐華!」
急いでハクは嵐華を引き寄せ、超強力な防御魔法陣を無詠唱で六十に展開する。
その瞬間、鉄筋で出来た筈の建物は溶け、妖怪は跡形も無く蒸発してしまった。
魔法陣が次々に破られていく。
その度に魔法陣を強化していったハクだったが……
「(魔力と神力が切れた……!)」
遂に力が無くなった。
せめて仲の良い嵐華には傷が無い様に、能力で最高クラスの壁を創り出す事は成功したが……
「おいハク!?そこにいると死ぬぞ!!」
ーーしかし、その言葉が届く前にハクは光に飲まれ、意識を失った。
~その頃、永琳達の乗ったロケットでは~
「ふは、ふはは、これで俺もトップになれる……!」
ニヤニヤと笑う科学者。
しかしその人物の行動を見ている人達がいた。
「「貴方、覚悟は出来て
月夜見と永琳だ。
その後、月にてその科学者と関係者は民衆の前で処刑される事になるが、ハクは知る由もなかった……