「うぅ、……ここは何処でしょう?」
目覚めるとそこは、知らない天井だった。
ハクはついさっきまで、地面に布を敷いただけの簡素な布団の上に寝ていたのだ。
周りを見ると、どうやらここは洞窟の中。
とても広く、更に洞窟の中に川が流れていた。
「起きたか。どうだ気分は?」
ハクの隣から声が聞こえ、視線を動かすと、そこには水を浸した布を持っている嵐華がいた。
どうやらハクを看病していたらしい。
「あまり良くないです。それよりも、とても広く洞窟ですね」
「当たり前だろ?なんせ私が作ったんだからさ」
嵐華の「作った」という表現に疑問を持ったハクは、嵐華に質問をする。
「作った、とはどういう事ですか?」
すると嵐華は誇らしげな顔で
「私が山をくり抜き、川を流したのさ!!」
と胸を張って言い放った。
一体どれだけの労力が必要かは分からないが、これだけの洞窟を作るのはとにかく凄い事だ。とハクは感じていた。
「嵐華の能力は一体何なのですか?『洞窟を作る程度の能力』とかですかね」
ハクが冗談を言いながら聞くと、嵐華は目を見開き答え始めた。
「ご名答、……とでも言うと思うかい?私の能力は『妖怪を統べる程度の能力』さ。ほら、私が妖怪の指揮をしていただろう?」
『妖怪を統べる程度の能力』。
この能力を持っているから嵐華は、一癖も二癖もある大妖怪達もまとめ上げていたのだろう。
「ほらほら、私が能力を言ったんだからハクも言いなよ。あ、勿論証明もな?」
何故証明まで必要かは気になったハクだったが、とりあえず能力の紹介をし始める。
「私の能力は『繁栄と滅亡を司る能力』と『創造と破滅を操る程度の能力』です。今から見せますね」
嵐華はハクをじっと見つめ、真剣に聞いている。
そんな嵐華の様子を見たハクは一息つき、能力の証明を始めた。
「まず『創造と破滅を操る程度の能力』ですが……」
ハクが言い終わると同時に嵐華の目の前に光が放たれ、その光の中から岩で作られた直径1mの球が現れる。
「ほー、これが創造かい?」
「ええ、そして次が……あれ?」
ハクが首を傾げ、不思議そうな表情をする。
「え?あ、あれ?何故でしょう……」
「ハク、どうしたのさ?」
ハクが焦った表情になったので、思わず嵐華が質問する。
「あ、あの……破滅が出来なかったんです。つまり、能力が劣化しています……」
能力の劣化。恐らく核から嵐華を守った時に劣化してしまったのだろう。
「……ちょっとハク、気がつけば全体的に劣化してないかい?」
嵐華の指摘で少し焦ったのか、ハクひ洞窟の中で力を少し出す。しかし……
「嵐華の指摘が無ければ気づかなかったかもしれません。確かに神力、魔力共に少なくなってます……」
しかし神力や魔力が少なくなったり、破滅が出来なくてもまだ能力は残っているのだ。
「じゃ、じゃあもう一つの能力を証明しますね」
ハクが先程出現させた岩に少しだけ苔を着ける。
そしてハクが念じると……
「おお、苔が沢山になった。これが繁栄かい?」
「当たりです。そして滅亡がこっちですね」
ハクが再び念じると、今度は苔の色が失われていき、最終的には全ての苔が剥がれ落ちた。
「ほう、こっちの能力は正常に使えるのか」
繁栄と滅亡は大丈夫だったが、この能力には欠点があった。
「ええ。しかし、この能力は水や土には効果がありませんし、視界に入っている物でないと能力の対象にはならないんですよ」
つまり、自分と対象の間に何かが存在すると使えないのだ。
これは良い事を聞いた、と言わんばかりの笑みを浮かべる嵐華。
そして嵐華が調子にのってハクを挑発する。
「へぇ〜。でも、どっちにしろ強いんでしょぉ〜?なら私と戦っても勝てるよねぇ〜」
嵐華の挑発にではなく、口調に腹を立てたハク。口調に腹を立てている時点で挑発にのっているのは気にしない。
「……いいですよ。ボッコボコにしてあげます」
ハクの言葉を聞いた嵐華は、ハクを連れて洞窟の外まで出る。
そして森を抜け、少し歩くと……
「さあ、ここが決闘場だ!」
森の中の開けた場所、そこには窪んだ大地があった。
ハクは周りの森や地形を見て、その場所が何なのかを一瞬で悟る。
ーーーーここは、元々都市があった場所だと。
しかし、その場所にはうっすらと草が生えている。
「嵐華、ちなみに私はどれだけ寝ていましたか?」
「ざっと三年間かな」
まさかの三年間睡眠である。
二万六千二百八十時間睡眠でもある。どうでもいい。
そんなに寝ていたのか、と落ち込むハク。そんなハクを無視して嵐華は準備運動を始める。
「さあ、かかってこい!」
嵐華が完全に戦闘態勢に入ると同時に、ハクも一応戦闘態勢に入る。しかし……
「……ハク、全力出せよ?」
「出してますよっ!」
その神力、魔力の合計は嵐華には遠く及ばなくなっていた。
普段なら一割の力で勝利、三割の力で嵐華を圧倒できるハクがだ。
「ちょっ、ハク?本気で大丈夫?」
「全く大丈夫じゃありませんよっ!」
泣き言を言いながらもハクは嵐華に思いっきり神力弾を放つ。何時もならば山が消し飛ぶ威力なのだが……
パスッ
嵐華に当たった瞬間、呆気なく消えてしまった。
その威力は、お世辞にも中妖怪程度の威力。下手をすれば少し強い小妖怪くらいだろう。
唯一の救いがあるとするなら、移動速度や防御力などの身を守る系のステータスは変化していない事くらいだろう。
あと、能力が多少使える事もか。
「…………。」
「そ、そんな顔で見ないで下さい!」
ハクの顔が赤くなっていくのを見て、ひたすら微笑ましい物を見る視線になっていく嵐華。
まるで母親がご飯を食べている子供を見る視線の様だ。
途中からハクの瞳が潤んできたので、慌てて嵐華は話題を変えようとする。
「じ、じゃあ、とりあえず二人で特訓だな!よし決定、異論は認める!」
嵐華が異論は認めると言ったので、ハクは悪戯を思いついたようだ。
「一人でやります」
「…………そうかい。頑張れよ」
今度は目に見えて嵐華が落ち込んでいく。
それを見て満足げな表情のハク。
しかし、嵐華が拳を地面に叩き始めてしまい、どんどん地面が陥没していく。
それを見たハクは苦笑しながらも嵐華を慰める。
「冗談ですよ。ほら、手伝ってくれませんか?」
ーーハクが言葉を発したその刹那、嵐華がハクに向かって恐ろしい速度で抱きついた。
「ハク!お前ならそう言ってくれると信じてた!!」
しかし、嵐華が抱きついた場所がまずかった。
「キャッ!?待って下さい嵐華!首は苦しいで……キュウ」バタッ
嵐華は無意識のうちに首を絞めていたのだ。
人間の力ならまだしも、相手は鬼。流石のハクでも耐えるのは無理だったようだ。
「ん?は、ハク?おーい、しっかりしろー」
後に残ったのは、倒れたハクを抱えながら、一人困っている嵐華の姿だった……
その数分後にハクは目覚め、嵐華に仕返しを試みたらしいが、呆気なく避けられたらしい。
はい、何となく劣化させてみました。
以上です。