燕百奇譚   作:ひろつかさ(旧・白寅Ⅰ号)

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其ノ二十八『廃城に白狐は眠る』(後編)

 ◇

 

 ミルヤはドローンの運用をきひろらの八幡電子共同開発チームに任せ、先ほどの会議室に戻ってきて各方面の状況と避難地域の指定など、さまざまな業務に当たり始めた。彼女の手際と戦略眼は確かなものだと孝子の目には映った。

「ううむ、ミルヤやはりお前の能力は調査隊だけではもったいない」

「お褒めに預かり光栄です」

「茶化すなよ。こっちは本気でそう思っているんだ。柳瀬詩織と山城未久の対応能力も、間違いなく遊撃隊隊長格以上の人材だ。燕結芽は語るに及ばず。以前よりも少数とはいえ、過剰戦力だ」

 ミルヤは小さく首を振りながら、インカムで各隊へ連絡を飛ばしていく。すでに詩織たちは交戦状態に入っている。

「おかげで北から西へひっぱりだこです。でも、それは私たちの能力に見合っていると思います。それに、私はいささか深いことを知りすぎた人間です。しばらくは中央から遠ざけたいのが朱音様の判断のようです」

「それでも飼い殺しは絶対にしないか、朱音様らしくていい」

 ミルヤは孝子に機動隊が詩織たちの場所に着いたか聞いた。

「ああ、すでに避難活動の支援を始めている。詩織隊は動けないか」

「全力で七体の狐型と交戦中。昨夜の個体よりも弱体ですが連携がうまく、全員でかからないと厳しいそうです」

「わかった。配置された機動隊にはそのように伝える。詩織隊との無線コードは」

「1004です」

「よし」

 孝子はすぐに無線で状況を連絡、交戦中の詩織にはミルヤからすぐに無線飛んだ。

「どうかな」

「私の部下はとても優秀です」

 ミルヤはいたって落ち着いていて、ほのかに笑顔を浮かべている。

「よほど信頼されてるらしい」

「ですが」

 窓から陽が傾きだした空を飛ぶ大きなドローンを見上げた。

「燕結芽に兼定、私は今となって少し気に入らないのです。わがままに思ってしまうんですよ。もっと良い御刀があったろうにと」

 めずらしい。あのミルヤが刀のことで文句を口に出すとは、と孝子はモニターを見ながら思った。

「どうしてだ。由緒も確かで、その写シも強靭と聞く」

 その兼定はとある人物の手で戦場を駆け、そして函館の戦場から故郷へと戻り、今は結芽の御刀として義務を果たしている。そして、ミルヤの仲介で二振り目の御刀として結芽の手に迎えられた経緯がある。

「私もその認識でした。ですが、ひさしぶりに刀身を見せてもらった時、こんなに傷んだ刀を実力のある刀使に持たせるのかと、その刀を選ぶのに立ち会った人間として少し後悔したのです。今からでもふさわしい御刀を選び、持たせてやるのが、私の役目じゃないのかと」

「らしくない。心配しなくても、兼定があの子に不釣合いとは誰も思わない。ミルヤもわかっているのだろう?たとえ傷だらけの刀でも、それを己の刀とする使い手さえいれば、たとえ元の姿から大きく変わってしまった刀でも、切れぬもののない名刀となる。心配いらない、信じようあの子を」

 ミルヤは小さく息を吸い、目を閉じて小さく笑みを浮かべた

「そうですね」

 目を見開くと同時にインカムのスイッチを入れた。

 

 八幡力で跳躍しながら山の谷間へ抜けるように入ると、そこは木々に囲まれた田畑広がる大きな沢だった。

 

 湯川沿いの牧沢はまだ田植えには入らず、まだ水の張った田が広がる。

 

 反応は確かにここへと到達している。

「反応はここのはずです!目の前にいるはず!」

「こんな狭い道じゃ一網打尽だよ…そこの十字路にニメーター感覚で裕姫ちゃんを中心に離れて、私は一番端」

 狭い道に広がりながら、分隊の全員で目視で周囲を見渡す。すると一番背の低い長船の刀使が畦道に立つ金と茶の混じった細い姿に気づいた。

「いた!」

 隊員の注目がそのけむくじゃらに向かう中、結芽はそれを一瞥してすぐ反対の方向を見た。

 結芽の目の前に狐型が飛び込んできていた。だが、それは通常の荒魂の狐型だった。

「やっぱりっ!」

 結芽は大きく遠く踏み込み、諸手突きで頭部をひと突きし、飛び込みの勢いでニッカリ青江を大きく振った。

 立った水柱に沈む荒魂の姿に、分隊は冷静にそれぞれの方向を見た。

 十字路のそれぞれに通常の狐型が殺到してきている。やがて、最初に見つけた毛玉は金色の狐の姿となり、その毛のうちから禍々しい赤い輝きがいくつも走っている。間違いなく玄狐であった。

「副長!」

「落ち着いて裕姫ちゃん。あと、いまは副長じゃないよ。どうやら足止めしたくて待ってたみたいだね。でも水は嫌そう、ほらいまさっきの水にやられてる。各方向に刺突防御!くるよーっ!」

 結芽の指示にすぐ隊員たちは二人で道を塞ぐように突きの体勢になった。そして、次々と飛び込んでくる狐型が簡単に倒され、水田に投げ出されていく。よく訓練された集団戦術を是とする遊撃隊の前に決定打を与えられないが、狐型も勢いを止めずに襲いかかってくる。

「多すぎるっ!!!こいつらの目的ってなんですか隊長!?」

 隊員の質問に、白狐だろうと言った。

「落ち着いて反撃しながら聞いてね秋月ちゃん。荒魂って、ひたすら同族を吸収して力を増やしていく。まるで習性のようにそれを繰り返すの!」

 結芽は一人で一本の道を悠々と守り、隙があれば前へ出る。

「きっと欲しいんだよ!とんでもなく莫大な力の源を持つだろう白狐が!」

「じゃあ!白狐はっ!何者なんですかっ!」

 だが勢いが止まらない、気がつけば玄狐の姿は消えている。

「珠鋼の荒魂だよ」

 秋月隊員は二体を倒してから、目を瞬かせた。

「驚くのも無理ないよ!だって昔話でしか聞いたことないものー!でもタギツヒメでさえ直接の対峙をさけた存在は確かにいる!その一体が会津若松城の縄張りを張った白狐!いつから存在しているか、そもそもいるのかさえわからなかった!従来、というか普通のスペクトラム計なら見つけられない荒魂なんだよ!そうですよね!副長!」

「さすが裕姫ちゃん!」

「そんな存在なら玄狐を倒せるんじゃ…ないんですか?」

「それがおそらくダメなのよ。あの玄狐、御刀が大量のノロと結びついて白狐に匹敵する力を得てる。よくて相討ちってくらいデッカい反応だもん、さっきも地図がかき乱されるレベル」

「そんなのタギツヒメじゃないですかっ!」

「その一歩手前かな、それにしてもキリがないね…」

 秋月は分隊の隊員六人と一瞬目を合わせた。

「裕姫先輩!結芽先輩とここ、抜けれますか!?ここ!私たちが斬り祓いますから!玄狐を頼みます!」

 結芽は写シを解いて一体を倒した。

「ふぅーん、裕姫ちゃんはこの子達に任せていいと思う?」

「私たち、後輩ちゃんたちのスコアを奪う悪ーいロートルですから、ここは譲ってあげるべきかと!」

「じゃあデッカいのはいいんだ!」

 秋月たちは目の前の狐型をあらかた倒すと、結芽に笑顔を見せた。

「今日は勘弁してあげますよ!でも今度は譲ってもらいますから!」

「中二のくせにナマいっちゃって!でも、甘えちゃおうかな!」

 結芽は写シを張ると、目の前に並ぶ五匹の狐型をあっという間に斬り祓った。そしてすぐに写シを解いた。

「やっぱすごい…」

 秋月たちの感嘆を横目に、裕姫がうれしそうに結芽の前で背を見せた。

「デリバリーよろしくね裕姫ちゃん!」

「はいはーい!!」

 結芽を背負うと、八幡力で玄狐の逃走した方面に飛んで行った。

 

 ミルヤは結芽からの報告を聞くと、事前に鶴ヶ城の二の丸までの一帯に出していた避難が完了しているか聞いた。

「ああ!すでにニ時間前に避難は完了している!城内には警備がいるのみだ!」

 県警担当の報告を聞き、すぐに結芽に通信をつないだ。

「燕結芽!鶴ヶ城は予定通り空けました!思う存分暴れてください!」

〔ありがとうございます!!でも白狐が動き出してます!市街地戦になるかも!〕

「モニタリングしてます。すでにマザードローンを天守閣直上に配置、城域内なら探知精度はあなたの半径一メートルまで精度は上がります。それと古波蔵博士から届いた例の物も配置済みです。逃げるも追うも、あなたの自由です」

〔ついでに白狐を不用意に一目に晒さないため、ですか?〕

「白狐は味方と判断しています。あなたの直感を信じます燕結芽」

〔ふふふ!はいっ!現着後また連絡します!〕

 通話を切ると、事前に通達していた避難域拡大を要請。五時間の戦闘地域侵入禁止を特祭隊条例に基づいて通達した。

「それと、きひろ。サンプルケースは空中でも取り外しできますか」

「あまりおすすめはしませんが、可能ですよ!ケースから空中に御刀を投下することになります」

「かまいません。おそらくその場で必要になるでしょう」

 きひろはなるほどと言いながらうなづいた。

「あ、ミルヤさん!画面に各方面の映像を出力できます!」

「お願いします!みなさん、頼みますよ…!」

 

 屋根伝いに玄狐は城の中へと突入した。

 ヒュボボボボボボボ!

 尻尾が風に鳴りながら、渾身の体当たりを打ち込むと、広大な二の丸公園の方へと玄狐は吹き飛ばされた。

 噴煙が上がると、警官たちはすぐにその場から退避を開始した。普通の人間にできることは、まきこまれないよう逃げるだけである。

 

 玄孤がむくりと体を起こすと、目の前には白く輝く毛並みに、琥珀色の輝きを瞳に宿す荒魂の姿があった。

 だが玄狐も、九つの尻尾を後輪のごとく張って、金色の毛並みを逆立てながら、赤く濁った瞳で白狐を睨んだ。

 その目は、目の前の全てを否定し尽くさんほどの、憎悪に満ち満ちていた。

「クヲヲヲヲヲヲヲヲヲヲヲ!!!!!」

 玄狐は九つの尾に黒紫の瘴気をまとわせながら、後ろ足で鋭く地面を蹴った。

 白狐は逃げた、運動場は散々に切り刻まれて粉塵が至る所に散って舞う。九尾はそれぞれが重い斬撃となって、散々に白狐を追い立てる。

「クォーン!」

 白狐が尾の攻撃を避けて、爪を立てて飛び込んだ。その爪は玄狐の右首筋を掻きむしって、続け様に噛みつこうとした。

 だが、琥珀に混じる赤と黒の濁りが歪んだ輝きを見せた。

 笑っている。その意図に気づいた白狐を九尾が一斉に切り立てて、本丸の高石垣へと叩きつけた。

「フーッ…フーッ…」

 その衝撃とダメージ、そして切り傷に白狐の動きが止まった。

「ヲヲヲヲヲヲヲヲヲッッッ!」

 間髪入れず玄狐が飛び込んだが、白狐はスクッと滑らかに体を起こして石垣を滑るように駆けた。そして廊下橋横の石垣を駆け上って飛び上がり、玄狐を頭上から水の満ちた堀へと足蹴に叩き落とした。

 ザッッッパーン!!!

 激しく水面が揺れ、白狐は様子を探らんと橋の欄干から堀を見下ろした。

 その時、堀水の中から飛び出てきた影が、その口を大きく開けて白狐の頭へと噛みついた。そして九尾を捉えた白い体に向けた。

 だが、体を激しく捩らせて、その一本の尾で玄狐を殴り狙いが外れて橋がバラバラに砕けた。

 白狐は城を見上げる本丸の方へとするりと抜け出したが、九尾の攻撃のために動きが鈍っている。足の回復が追いつかないのか、左足が崩れて膝をついた。だが、その白狐の前に後ろ足を引きずらせながら、玄狐が九尾を揺らして近づいてくる。

 

 白狐は最後を覚悟した。

 

 だが、天守の方から一気に降りてきた閃光が白い残像を一文字に引きながら降り立った。

 燕結芽である。

「ごめんね、遅くなって」

 玄狐の前へ一気に飛び込むと、迅移と八幡力を同時に発動しながら、何度も何度も玄狐を斬り叩く。ひたすらに物打ちで叩く。

「エッッッ!オォォォォォォォッ!!!!!!!」

 怒りに満ちた声が彼女らしからぬ大きな、しかしカン高い掛け声と気迫の籠った重たい剣が玄狐の勢いをあっという間に削ぎ落とし、九尾の瘴気を打ち払った。

「エイッオォォォォッ!」

 ついには尾をニ本も斬ったのである。玄狐は大きく後退りした。

「クヲヲヲヲン…」

 

 風に靡く桜色の髪と黒いジャケット、背を向ける少女のその手には和泉守兼定の姿がある。

 物打ちのすり減った、歴戦の御刀であり、白狐には懐かしさを感じた。

 

 彼女の凄まじい剣気に、あの怪物が怯んだ。そして、尾を返して逃げ出した。

 白狐は安心して回復に努めた。

「結芽ちゃん先輩、まるで獅童さんのよう…!かっこかわいい!」

 二の丸方面から分かれ、ようやく結芽に追いついてきた裕姫が、目を輝かせながらその戦いを見ていた。

〔裕姫ちゃん準備いい?〕

「はいっ!どおんといきまっしょい!!」

 御刀片手に迅移で玄狐の前に裕姫が飛び込んできた。身長180の長身は背に負ったあるものを隠すのに最適だった。

「ほうらぁ!デッカいのをくらいなさいっ!」

 肩に担いだ無反動砲から九尾に向かって放たれると、弾頭が変化してニ連のワイヤーに繋がれた鉄球が高速で回転しながら玄狐の肉体を貫いて鉄球が食い込んだ。勢いが止まり、鉄球の食い込んだ傷口からノロが流れ出した。体内から白銀の輝きがちらついた。

「すっごいねエレンおねぇさんの新作…探知マーカーを撃ちこむだけのモノなのに」

 だが、恐怖に顔を歪める玄狐は裕姫へとまっすぐ飛び込みながら、八尾となった尾で攻撃してきた。

「行かせない!」

 ニ尾を捌いたがすぐに鍵爪が裕姫の胸を掻きむしった。だが、足をふんじばって背を見せた玄狐から一本の尾を斬り奪った。

「クッヲヲヲヲヲヲヲヲ!!!!」

 だがニ度殴りつけられ、よろけた彼女を踏みつけて城の外へむかって駆け出して行った。

「裕姫ちゃん!」

 写シを剥がされて、動けずにいるが目の前に膝をついた結芽に行ってくれと叫んだ。

「願います!電磁柵を突破される前にアイツをぶっ飛ばしてください!」

「…わかった!でもここを離れずに隠れててね!」

 結芽は玄狐を追った。

 玄狐は凄まじい逃げ足で石垣を越えようと飛び上がった。

 バチチチィバチチィ!!!!!

 巨体は放電の火花散る壁に阻まれて、何度も何度も弾かれた。

「よしっ!鉄球のマーカーはスペクトラム計のマーカーであると同時に、攻勢防壁からの電磁攻撃を増幅する効果があるんだよ!」

 放電を追うが、しかし足が早くニ周も城を回ってしまった。

「クォーン!」

 結芽の隣に追いついてきた白狐は尻尾で背を刺し示した。

「え?うん!背に乗ってあいつに追いつくんだね!わかったよ!」

 その背に飛び乗ると、彼女の迅移を超える速度であっという間に玄狐の背が見えた。

「ここまで近づけばっ!止めお願いね!私が先行するからっ!」

 白狐の背を離れると駆け足で玄狐に速度を合わせ、その一歩一歩に小さな迅移を重ねた。やがて、小回りして玄狐の前に出るとステップを踏むように諸手突きから、切先を立てて八幡力を乗せた縦の平突きを頭部に三度叩き込んだ。

 朦朧としながら玄狐の足が止まり、苦し紛れに堀へ飛び込もうとした。

「クォーーーーン!!!」

 だがそのガラ空きの首に向かって白狐は噛みつき、顎をしめて強く噛み砕いた。

 

 バキバキバキ…バキッャ…!!!

 

 そしてニ匹は堀水の中に勢いよく飛び込んだ。

「白狐さんっ!」

 やがて揺れる水面の中から、玄狐が浮かび上がってきた。すでに事切れ、その骸からノロが溢れ続けている。 

 結芽はその骸から顔を出す刀の茎に気がつき、迅移で飛んで玄狐に乗り立った。

「これって、この子の本体か」

 それを抜くと、赤錆びた刀身と茎に刻まれた銘を認めた。

「陸奥…会津住藤原…道辰?」

 

 これ以降、白狐はとうとう姿をあらわすことはなかった。

 

 

 ニ日後の夕方。

 事後処理を終えた刀使たちは鶴ヶ城の桜の下、ブルーシートの上に飲み物や屋台で買ってきた食べ物を広げた。

 調査隊、孝子、離脱から戻ってきた遊撃隊第三小隊メンバー、警察担当者ら全員が集まったのを詩織と未久が確認した。

「全員集まりました!ミルヤさん挨拶お願いします!」

 すでに飲み物を片手にソワソワする結芽がミルヤを急かした。

「みなさん、玄孤の一件おつかれさまでした。皆さんの尽力によって、災厄の危機から会津を救えたことを深く感謝します。ですが、まだまだ会津の皆さんには位置の判明した赤羽刀の回収が残っています。今日は疲れを癒しながら、また明日に向けて頑張れるよう英気を養いましょう!乾杯!」

「「「「「「乾杯っ!」」」」」」

 ミルヤが紙コップを掲げると、一斉に乾杯の声が上がった。

 

 ライトアップの始まった鶴ヶ城の桜は幻想的であった。

「すてきですねぇ、こんな素敵な場所で花見なんて」

「詩織ちゃん感動するのもいいけど、肉巻きおにぎり冷めちゃうよ」

「いただきます!」

 未久はミルヤにジュースのおかわりをすすめながら、核になった赤羽刀について何かわかったか尋ねた。

「銘にあった藤原道辰の名は、会津兼定と双璧をなす会津を代表する新々刀の刀工です。刀にはおそらく火災による焼けと血錆と思わしきものがありました」

「水戸の赤羽刀と同じ、死を吸った御刀ですね」

「ええ、でもここは戦場となった町。会津道辰を核に同時に埋められた御刀たちが共鳴し、赤羽刀化。結果、ノロと結びついてしまったために荒魂化してしまった」

 結芽と詩織、そして孝子も二人の話を聞いていた。

「関東大震災の赤羽刀、戦後の戦場帰りの珠鋼軍刀、そして過去の内乱でうまれた赤羽刀…まだまだ出てくるとみるべきだな」

 孝子の言葉に全員がうなづいた。

「それに結びついた荒魂の事件も続いていくことになります。私たち調査隊はその追跡と記録が主な任務です。これは時間のかかる長い事業ですが、希望のある仕事です」

「ああ!ほら詩織!未久!何が飲みたい?」

「わたしコーラで!」

「あ、しおりん!わたしもコーラをお願いします!」

 

 結芽はふと右脇をみると、体を小さくした白狐が立っていた。

 白狐は礼をするように軽く頭を下げ、結芽もそれに返した。そして、目の前に置かれた和泉守兼定に軽く口付けすると、拵えが淡く白い光を一瞬だけ輝かせた。

 そして、軽く飛び上がると草木の中にその白い姿は消えていた。

「燕結芽、いま」

 狐の口付けした和泉守兼定を手元に引き出した。

「はい、お礼に来たのでしょうか。今、そこにいました。ずいぶん小さくなっていましたが」

「ずっとここを守っていたのはあの白狐です。自分が標的と踏んで玄狐が私たちに追い立てられるまで待っていた。私たちは信頼されていたようですね」

「でも、もう少し協力的でもよかったかも」

「まったくです」

 

 

 桜ひとひらが拵えに舞い落ちる。

 会津は春を迎え、多くの人の笑顔に満ちていた。

 

 




予定時刻から遅刻しましたが、其ノ二十八はおしまいです。
(書き足りないこといっぱいありますが...)

次回から土曜24時更新にしていきます。

其ノ二十九は11/3の0時に投稿します!
よろしくおねがいします!
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