燕百奇譚   作:ひろつかさ(旧・白寅Ⅰ号)

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其ノ三十七・伍『閑話休題〜どきどき妹会議!〜』

 

 

 墓参りから帰ってきた調査隊と舞衣、そして空たちの乗った車が校舎横の駐車場に到着した。そこに駆け寄ってくる金髪の刀使の姿があった。

「おかえりなさい副長!せっかくですからお茶しましょ、みんなで!」

 姉譲りの目元の切り立った顔と快活で明るい笑顔で、当然のように目の前の結芽を副長と呼んだ。

「副長ゆーうな!まぁでも、一息つきたい気分かな…ねぇ詩織ちゃん!ひさしぶりに本町通のカフェ行こか!」

「はい!ぜひみなさんも!おねぇちゃんも!」

 

 

 関の中心、安桜山を背にした本町通の模型店ねりやの隣に美濃関生徒ら行きつけのスイーツ喫茶『KAMEYA』がある。(其ノ三参照)

「いらっしゃいませ!あら詩織ちゃん久しぶりね!継花!詩織ちゃんが先輩さん方といっしょに来てるから対応してーっ!」

「はーい!お父さんごめんね!」

 厨房から出てきた亀井は詩織と互いを見るなりハイタッチした。

「ひさしぶりだねけーか!」

「うん!こっち来たら必ずよってくれるのに、この間いなくてごめんねー!しおりん!」

「やや!詩織さんまさかこちらでもしおりん呼び…」

 鞠はそう呟き、未久の顔を見た。

「ふふ、しおりん。この響きは全刀使に広まるべきですよ!ね、ミルヤさん」

「ええ、しおりん。そうですね結芽」

「かわいいよね、しーおりん!空ちゃんも」

「し、しおりん…」

「うぅ…親しい人限定!この場にいる人限定です!」

 顔を赤くする詩織に舞衣が笑顔であった。

「わたしもそう呼ぼっかなー、しーおー…」

「おねーちゃんはしおりちゃん呼びがいいの!いいのー!」

「ふふふ!ごめんごめん!」

 

 全員が注文するとここにいる半分が妹なことが話題になった。

 

「鞠ちゃんは真希さんの妹、未久ちゃんは由衣さんの妹、しおりんは舞衣さんの妹!」

「姉妹揃って特祭隊で肩を並べられるのは嬉しいですね」

「でもミルヤさん、結芽先輩も妹ではありませんか」

 鞠がいたずらっぽい顔で尋ねた。

「妹分ではあります。でも、獅童真希にとっては等しく妹かもしれません」

「結芽先輩が妹…正直想像つかないですよ」

 空は本当にわからないと首を傾げた。

「うん、私もおねぇちゃんに話聞くまで信じられなかった」

「鞠の知ってる結芽先輩ってどんなの?」

 未久の問いにやや結芽は半目がちに目線を送った。

「うーん、副長はー…めちゃくちゃ強い、言葉が鋭い、場を締めるためにキツめに言う、めっちゃ観察してる、実戦では言い訳を聞かない、咎められたら庇ってくれる、最近はゆるいフリしてフォローしてくれる。あと…」

「稽古がやたら厳しい!」

「それ!」

「なんかそれだけ聞くと私めっちゃ厳しい先輩に聞こえるんだけど、優しいでしょ」

「「「「え!?」」」
「鞠ちゃん、空ちゃん、しおりん、未久ちゃん…冗談でしょ!?わたしは真希さんや寿々花さんと違って優しいから!夜見さんみたいに!」

「皐月さんどれだけ厳しかったか知らないんですか!!???私何度連帯責任で隊ごと長い説教受けたか知りませんよっ!!」

 真っ先に怒ったのは詩織だった。

「此花さんは言ってくれないんですっ!でも言ってくれる時はめちゃくちゃ遠回しなんですよ!!キツイんですよ!怖いんですよーっ!」

 次に二度ほど寿々花の指揮を受けた頭を抱える未久。

「おねーちゃんは普段から肉体言語の人なんで、写シ張った刀使を素手ではっ倒すんです…!文句があるなら燕結芽みたいに実力で私をねじ伏せろって、関節キメながら言うんですよ!!」

 体を震わして怒った姉を思い出す鞠。

「冗談はこっちのセリフです!基準がその三人は私たちには百倍厳しいんです!!!理心流の稽古場で十分間ノンストップ実践稽古がどれだけキツイか…sその後は出した技ことごとくダメ出しされる妹弟子の身になってください!」

 そして空がここぞとばかりに怒りの声を上げた。

「ええーっ!いや、だって…真希おねーさんはダメなとこあったら親身に付き合ってくれるじゃん、寿々花おねーさんは諭してくれるしできたら褒めてくれるよ、夜見おねーさんは言ってくれてお茶とお菓子のご褒美くれるじゃん!私はいいとこどりして、みんなのおねーさんをやってるの!理心流はだって、手加減ができないからだけど…みんな強くなったでしょ!ね?」

 妹分四人から一斉にため息が漏れ、舞衣は思わず笑い出した。

「ふふふ!親衛隊の四人の優しさも厳しさも持っているから、その分ちょっと重いの。結芽ちゃんはとっても強いから平気だけれども、後輩のみんなにはつらいんじゃないかな」

「私のキャパをみんな持ってるわけじゃないんだ…ん?ミルヤさん、わかってて調査隊に呼んだの私?」

 詩織と未久の目線が舞衣の隣に移った。

 ミルヤは笑顔で聞いていた。

「さぁどうでしょうね。でも柳瀬詩織と山城未久のためには、前線を退いた私では足りないと思ったまでですよ」

 鞠と空は苦笑いで引き攣った笑顔の詩織と未久を見た。

「いっちばん怖いお姉さんは…」

「ミルヤさんかもしれないですね…」

「でも大きく育ってくれてる!将来が楽しみ、ふふふ!」

 

 舞衣が笑顔で言うと、同じタイミングにスイーツがやってきた。

 

 

了…

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