坑口が次郎太刀の一撃で完全に土砂に埋まると、土埃が晴れてから累とミルヤが完全に塞がっていることを確認した。
「完全に塞がったわ!これで観測施設の閉鎖は完了したわ!みんなお疲れ様!」
累の言葉に未久と結芽の安堵のため息が溢れた。
「ふー!やっと終わったね!」
「はいーっ…ほんと酷い目に遭いましたよ…」
「未久ちゃんには辛い目にあわせちゃったね。ごめんね」
「いいですよいつものことですから、それに今回はちょっと役得もありましたし…」
ニヤついた未久に詩織は不思議そうに役得って何?と尋ねた。
「あーそれはねー」
「あー!あー!いやー!やばかったですねヨモツシコメ!!累さんはよく生きて帰ってこれましたね!」
結芽が答えかけたのを未久が覆い隠すように次の話題を振った。
「それ未久ちゃんが言う〜?まぁ理由はないわけでもないかな」
「それも都市伝説で有名ですね。正確には流出したのですが」
ミルヤの言葉に詩織が軽く考え込んで、すぐに答えを言った。
「槍ですね!」
「正解!私は当時導入が始まったばかりの槍・薙刀刀使の第一号だったのよー」
「たしか、十文字槍だった話ですが本当なんですか?」
「実は違うのよー、私が習っていた槍術が特殊でねー、尾張貫流槍術だったのよ」
ミルヤはやはりと言わんばかりにドヤ顔をしている。
「では、ここに持ち込んだのは管槍だったのですね」
「管槍?」
知らない詩織に身振り手振りで未久が説明した。
「槍の柄に管を通して、その前後運動で穂先を回転させながら突いたり、払う槍術ですよ!」
「へぇー!」
結芽は何か心当たりがあるのか、ある刀使と討伐任務に行った際のことを思い出した。
「管槍って…この間、可奈美さんが使ってたよ」
「あ、うん、私が使ってたの現場に持ち出してるの…可奈美ちゃん、新陰流の武器マスターするつもりみたいだけど…まぁその話は置いといて、あの時は…」
十五年前のあの日…
「あいつに触れられたら写シが張れれなくなった!」
あの暗いが滲むように視界が広がる中、殿になっていた綾小路の刀使が震える切先を後方に向け続けている。
だが彼女の混乱に忍び寄るように手が伸びる。
「あぶなーいっ!!!」
累は迅移で飛び込み、槍の間合いに捉えた途端八幡力をかけながらステップを踏みながら鍔と一体になった管へ槍を押し込んだ。
フォォオオオオオオォオオォオ!!!ズシャアアアア!!
回転する穂先がその大きな横顔ごと触手を抉り飛ばした。
「観測員の二人は出口に出た!安藤も出口へ行って!!」
「でもっ!」
「その震える切先で何が切れるの…!瑞希ちゃんも写シが張れなくなってる!私がここを持たせるから行って!」
悔しさを押し殺して、わかったと答えた。
「適当なところで逃げろよ累!いいな!」
「うん!任せて!」
累はマーカーのついた道を辿りながら、安藤の駆け去った後についていく。
「出口まで五十もないのにこの視界、この振動…でも!」
迫る手が見えた瞬間、問答無用で突き通した。
穂先を前後運動で回転させながら、這い寄る手や顔を問答無用で斬り捌く。
写シの力で相乗された穂先は、本来の管槍ではあり得ない回転速度と威力を発揮し、累は果敢に飛び込みながらも必ず大きく出口へ向かって後退する。
「4体…」
フォン…フォオオン…フォオオンッ!
下がりながら払い、斬る。
「5体…」
やや奥にいる個体を突く、そして手前の個体を回転で切り捌く。
ズンッ!!!スバシャアアア!!!
「7体…」
スラッ…パンンッ!!!
右肩に触れようとした手を腰の御刀で抜きざまに切り払った。
そのまま大きく飛び退いて、御刀を持った手で管を握り突いた。散々に切られたヨモツシコメが音もなく砕け散る様が見えた。
ズバシャアアアアアア!!!
「8体…!」
外への光が背中から感じた。
逃さまいと三体の触手が一斉に伸びた。
「は…あっ!!!」
だが、器用に横薙ぎに走った穂先が回転に乗って、触手と顔を散々に切り裁かれた。
「11!」
累は石畳のトンネル内に入って穂先をヨモツヒラサカイに向けたまま後退した。
攻撃はピタリと止み、振動も悪寒もなくなった。
累は警戒しながら、トンネルを出たがとうとう何も起こらなかった。
「…と言う具合だったの」
結芽と未久は顔を見合わせた。
「もしかしてヨモツシコメって、遠間が苦手?」
「かもね…といっても槍の間合いより彼らの手が短かっただけだから、背後や横に突然来られるのは対処が難しかった。8体目のヤツにはほんとに肝が冷えたわ〜」
結芽と未久はあちゃーと頭を抱えた。
「「累さん!もっと早く教えて欲しかったよ〜!」」
「あーっごめんね!」
了…