シャーレの部長はブラックマーケットの代表   作:四脚好き

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88話

◎・ゲーム開発部 部室・

 

「お姉ちゃん! まだ!?」

「ま、待って、急かさないで! あとこれだけ入力すれば終わりだから……!」

 

 モモイがパソコンに向かって入力作業をしている横でミドリが辛抱たまらず声をかける。

 

「締め切りまであと二分なんだ。急かさずにはいられないだろ」

「正確には96秒です、お兄様。そう言っている間に残り90秒……」

「二人とも随分慣れたね……」

 

 グランは部室の隅の方で胡坐をかいて座りながらそうぼやく。アリスはそのグランの足の間にすっぽり座りながら正確な時間を告げる。そんな光景に先生は苦笑いしながら感想を述べている。

 

「分かったわかった! もう出来たから!」

「こっちは簡単なテストだけやって……うんっ。エラーは出てない、モモイ!」

「オッケー! ファイルをアップロード、完了まで予想時間……15秒! アリス、あと何秒!?」

「残り19秒です……!」

 

 モモイとユズが急いで作業を終えてアップロードを始める。

 

「お願い……!」

「転送完了……」

―ミレニアムプライスへの参加受付が完了しました―

 

「間に合ったああぁぁあ!」

「ギリギリ……心臓止まるかと思った……」

「あとは……3日後の発表を待つだけ、だね」

 

 アリス以外のゲーム開発部は気が抜けたようでへたり込む。

 

「とりあえず間に合ったけど、まだ結果が出たわけじゃない。3日後には……このままこの部室にいられるのか、そうじゃないかが決まる。……でも3日後って結構長いじゃん? そこで提案なんだけどさ」

 

 モモイが身を乗り出して手を上げて提案しだす。

 

「先に、web版の『テイルズ・サガ・クロニクル2』をアップロードしてみるのはどう?」

「!?」

「ど、どうして?」

 

 モモイの提案に、ミドリが驚愕して姉の頭が遂にいかれたのかと肩を掴む。

 

「3日後も待てないよ! それに、審査員の評価より先に、ユーザーの反応を見たくない!?」

「うーん、でもちょっと怖いかも……低評価コメントも心配だし」

「何言ってるのさ! そもそも、ミレニアムプライスに出品するためだけに作ったゲームじゃないでしょ! 自信をもって、見てもらおうよ! 私たちはベストを尽くしたんだから!」

「そ、それはそうだけど……」

 

 ミドリもモモイの言葉に思うところがあったのか、言葉を濁す。すると今まで話を黙っていたユズが覚悟を決めた顔をする。

 

「……うん、アップしよう」

「え?」

「作品っていうのは……見てくれる人、遊んでくれる人がいてこそ、完成されるものだと思うから。わたしは……わたしたちのゲームを、きちんと完成させたい」

「ユズ……」

 

 顔を上げてそこまで言い切ったユズに先生は感動したようで若干涙目でユズの名前を呟く。

 

「大丈夫。もし前みたいに、低評価コメントのオンパレードになったとしても……。全力で頑張ったから。それに……みんなが一緒だから、きっと受け止められる。私はもう、大丈夫」

「それじゃあ今すぐアップロードー!」

「……折角ユズが覚悟を決めたシーンなんだからもっと余韻に浸らせてやれよ……」

 

 モモイが元気よくアップロード操作をしだしたことにグランがジト目になりながらそういう。

 

「転送完了! プレイして感想が貰えるまで少なくとも2、3時間はかかるだろうし、後はしばしの休憩ってことで!」

「……はぁ、そうだね」

 

 モモイは作業を終えて思いっきり伸びをした後、部室で寝っ転がる。ミドリもその様子を見て気が抜けたのか先生の傍に寄っていった。その時、アリスがグランの足の間から立ち上がってコンピューターの前に移動する。

 

「ん、アリス? なんでコンピューターの前に座っているの?」

「待機します。皆さんがダウンロードを始めたようです、気になります」

「これからゲームをプレイするのにまた時間がかかるだろうし、待っててもそんなにすぐは来ないと思うよ?」

「そ、そうだぞ、アリス。ほら、足の間に戻ってこい?」

 

 アリスの行動にミドリは先生の肩に寄りかかりながらアリスに声掛けし、グランも自分の膝をポンポンと叩いてアリスを呼び戻そうとする。

 

「いえ、戻りません」

「……っ!?」

「あ、グランが……」

 

 アリスの言葉にグランが崩れ落ちる。

 

「時間はかかるかもしれません。それでも待ちます」

「わ、わたしも……。どっちにしろ、緊張で眠れないし……。私も、待ってる」

 

 ユズもそう言いながらアリスの隣に腰を下ろす。

 

「……うん。駄目、私もドキドキしてきちゃった」

「私は心配でドキドキが止まらないよ……うぅっ、自分で言い出したのに緊張でおかしくなりそう!」

 

 ミドリもモモイも次々とアリスの近くに腰を下ろし始める。

――ピロン――

 その時丁度コメントを知らせる通知音が部室に響く。

 

「あっ、初コメ」

「何て!? なんて!?」

 

<hermet021:わお、これ前回クソゲーランキング1位を取った、あれの続編? もうゲーム作りはやめたのかと思ってたけど、懲りないねぇ>

 

「……」

「あ、アリス、こういうのはあんまり気にせず……」

「……マキに連絡。該当IPアドレスの方角に対して、最大出力のビーム砲を食らわせてきます」

 

 アリスは立ち上がり光の剣を構え始める。慌ててミドリとグランが止める。

 

「そ、それは駄目!」

「ストップだ、アリス」

「……大丈夫。ゲームをやってない人の発言だから……気にしないで、ね?」

 

 ユズがそう言うとアリスも落ち着いたのか、銃を下ろす。

 

―ピロン―

<Kotoha0570:前回の『TSC』は確かに、手放しで賞賛できる作品ではなかったかもしれません。ですが新鮮味があり、少なくともありふれた作品ではありませんでした。今回の2ではどんな目新しさを見せてくれるのか、楽しみです>

 

「おっ、徐々にちゃんとした反応が……」

 

―ピロン―

<QueenC:さて、鬼が出るか蛇が出るか……せっかくなら中庸なんかじゃなくて、たとえどっち側だったとしても、振り切った体験を期待したいね>

―ピロン―

<kirakiraNO1:前作はやったけど、良い思い出としては残ってない。それどころか苦い記憶がいくつも鮮明に思い出せるくらい。でも、どうしてかな……続編だって知ってるのに、ついダウンロードしちゃった>

―ピロン―

<AmuAmu kid3:プレイしてみたけどさー。なーんか敵キャラに聞き覚えのある声がするんだよね。ぶっちゃけ代表でしょこの声!?>

 

 次々と流れてくるコメントの数に徐々に明るくなっていくゲーム開発部の顔。

 

「す、すごい! なんか私たちのゲーム、滅茶苦茶期待されてない!?」

「全体的になんか、『次元爆弾を楽しそうに解除しようとしている』感じっていうか……」

「怖いもの見たさ、みたいな……」

「凄いよ、グランが声優やってることに気が付いた子もいる!」

 

 先生がコメントの一つを指さしてグランにキャイキャイと話しかけるがグランそのアカウント名に注目して若干渋い顔をする。

 

「このアカウント……あー、うん。多分そうだよな……」

 

―ピロン、ピロン―

 

 鳴りやまない通知音。

 

「だ、ダウンロード数がもう2000を超えてる!? 流石におかしくない!?」

「あ……有名なポータルサイトに、わたしたちのゲームが発表されたって記事が載ったみたい」

「悪名も名ではあるということか」

 

 モモイが異常なダウンロード数の伸びに驚いているとミドリが隣でスマホを操作して原因を突き止める。その言葉に部屋の隅でまだ項垂れていたグランが言葉を返す。

 

「うわあぁぁ……! 無関心じゃなければ良いな、くらいに思ってたのに! ここまで数が増えると急に怖くなってきた!」

「……ドキドキします」

 

 アリスが目を瞑り両手を胸の前で組んでまるで祈っているかのようにして言う。

 

「うぅっ! 期待と不安で、心臓が爆発しそう!」

 

 モモイがそう言いながらアリスの真似をする。その光景を微笑ましく眺めていた先生。しかし次の瞬間、グランに押し倒される形で床に倒れることになる。

 

「えっ!? ぐ、グラっ「黙ってユメ先輩! 全員伏せろ!!」

 

―ドガア゛アアァァァン!!―

 

 突如、部室に響きわたる轟音と衝撃波。

 

「!?」

「これはっ……!」

「ゲーム機が爆発!?」

「違う! この砲撃は13.97mm砲……カリン先輩の!」

 

 他のゲーム開発部が何事かと慌てている間にグランの声に素早く反応したアリスは伏せた後すぐに光の剣を取り出して構える。

 

「アリス、上に12度、右に5度! 距離約1キロ 三連射!」

「はい、お兄様!」

 

 アリスはグランの指示通りに構えた後光の剣で射撃する、すると攻撃が止まり一時静寂が訪れる。

 

「ぜ、前回の仕返し!?」

「今のは時間稼ぎにしかならない、どうする?」

「一旦部室から出よう! ここだと先生がさっきみたいに危ないし、それに……このままここで戦ったら、私たちの部室が壊れちゃう!」

「お姉ちゃん……」

 

 ユズが部室の外を覗き見る。そこには生徒会のメンバーが武器を構えつつこちらに向かっているところだった。

 

「次から次へと不法者。よくもまぁ、飽きないことだ。まとめて反省室にぶち込んでやればスネイル庶務も喜ばれるだろう」

「スネイル庶務長、増援をお願いします。任務安定遂行には兵力が足りません」

 

 直ぐにユズは部室の扉を閉じて、先生に外のことを伝える。

 

「そ、外に生徒会の人たちも……! 『鏡』の兼の報復……!?」

「ちょ、ちょっとは申し訳ないと思ってたけど……!」

「落ち着いて!」

 

 先生の声が部室に響いて一気に注目を集める。

 

「アリスのお陰で時間も稼げている。今の間に外に出よう」

「先生……はいっ!」

「俺が前に出る」

 

 グランが先生の上から退いて武器を構える。続いて先生が立ち上がる。

 

「ありがとね、グラン」(ユメ先輩って誰だろう?)

「気にしないでくれ」

「グランが先頭、次にモモイとユズ。アリスとミドリを後方で! 行くよ!」

「「「「「了解!」」」」」

 

 部室のドアをグランは思いっきり蹴り飛ばして先頭のセミナー職員に直撃させた。

 

「おわぁぁぁーーーーー!?」

「スネイル庶務長! 増援を! 増援をお願いします!」

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