シャーレの部長はブラックマーケットの代表   作:四脚好き

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89話

◎・ミレニアム部室棟 廊下・

 

「はぁ、はぁ……。な、何とか逃げ切れた?」

「取り合えずセミナー連中はどうにかなったみたいだが……」

 

 モモイの言葉にグランは背後を確認しながら誰も追ってきていないことを確認する。

 

「こ、これからどうする……?」

「もうミレニアムプレイスへの出品は終わってるんだし……。とりあえず、結果が出るまで、このまま逃げ続けよう!」

 

 ユズが不安そうに辺りを見回してミドリが逃亡を提案する。

 

「逃げ切れるとでも思ったか?」

「!?」

 

――ダダダダッ!――

 

「きゃぁっ!」

「ミドリ!」

「くそっ!」

 

 廊下の奥から声がかかっと思ったら次の瞬間、ミドリに銃弾が飛んでくる。グランは直ぐに反応して廊下の奥に射撃するが手ごたえはない。

 

「……いきなり撃ってくるとはヒデェじゃねぇか」

「お前が言うか……ネル」

 

 暗がりの奥から美甘ネルを先頭にC&Cが姿を現す。ネルはグラン達の方を眺めて一言。

 

「なるほどな。道理で、いちいち良い判断だと思ったぜ。さっきこのチビたちを指揮したのも、ミレニアムの差押品保管所を襲撃したのも。あんただったのか。先生……って呼べばいいのか?」

「そう呼んでもらえると嬉しいな」

 

 ネルの言葉にうっすら汗を掻きながら答える先生。

 

「アカネが調査した、例の『先生』……噂は大げさじゃなかったみてぇだな……」

「どういう用件かな? リベンジ?」

「はっ! そんなくだらない理由で来る訳ねぇだろうが。あたしが用があんのはそっちの馬鹿みたいにデケェ武器を持ってるあんた」

「……」

 

 ネルはアリスの方を顎で指して話しかけるがアリスはそれがわからなかったようで辺りを見回している。

 

「あんただよ、あんた!」

「アリスの事ですか?」

「そうだ、テメェには用がある」

 

 アリスの行動にネルが若干切れながら今度は指をさして声をかける。すると流石にアリスも自分を呼んでいることが分かったようでネルに返事をする。

 

「C&Cに、一発食らわせてくれたらしいじゃねぇか……?」

「マジか」

 

 ネルの言葉を聞いてアリスがC&C相手に一矢報いていたことを知ったグランは思わず驚きの声を上げる。その気の抜けた言葉に場の空気が緩みかけネルはジトッとグランを睨みつける。それに気が付いたグランは無言ではあったが片手をあげて謝罪する。ネルは気を取り直してアリスの方を見る。

 

「ちっと面貸せや」

「あ、アリス、このパターンは知っています。『私にあんなことをしたのは、アナタが初めてよ……っ』告白イベントですね。チビメイド様はアリスに惚れていると。スチル獲得です」

「ブッッホッ」

 

 グランはアリスの言葉に思わず噴き出した。

 

「ふ、ふざけんなこの野郎! 誰がチビメイド様だ!? ってか、グランテメェ噴いてんじゃねーよ! ぶっ殺されてぇのか!!??」

「ひっ……」

「こ、怖っ!!」

 

 凄んだネルの迫力はかなりのものでアリスとモモイが完全にビビってしまう。

 

「はぁ……なかなかイラつかせてくれるじゃねぇか、まぁ良い。誤解してるかもしれねぇから一応言っとくが、別にC&Cに一発食らわせた分の復讐って訳じゃねぇ。あちこちに怪しい部分はあったが、こっちとしては正当な依頼の中での出来事だ。そっちはそっちで、アタシらを相手に目標を達成しただけだ。別にそこに恨みはねぇが……俄然、興味が湧いて来てな」

 

 静かにネルはそう言葉を続ける。その言葉に今まで笑いをこらえていたグランの表情から笑みが消える。

 

「興味……?」

「とどのつまり戦闘狂か。俺とのダンスじゃ、満足させられなかったか……」

「そう、いじけんなよ。アンタとのダンスも悪かぁなかった。ただコイツに関しては……そうだな、確認って言った方が良いかもしれねぇが……。さぁ、ちょっくら相手してもらおうか」

 

 ネルはグランにそう笑いかけてから肩を回して前に向かって歩き出す。

 

「あたしと戦って勝てたら、このまま大人しく引き下がってやる。お互いを理解するには、これが一番手っ取り早いからな。どうだ、難しい話じゃねぇだろ?」

「……本気だな。どうするアリス?」

「……わかりました。アリス、戦います」

 

 グランが心配そうにアリスの顔を覗き込む。するとアリスは決意を固めた表情で光の剣を手に取り前に進んでいく。

 

「お、やる気満々と来たか」

「一騎打ちのイベント戦闘……みたいなものですね、理解しました」

「イベ……なんつった?」

「あー、あんまり気にすんな」

 

 アリスの言葉の意味が解らず混乱するネルにグランは余り気にしないようにアドバイスを入れる。

 

「あの時は狭かったですし、『鏡』を持って帰るという使命がありましたが……。今なら……! 行きます、魔力充電100%……!」

「ちっ、これは……!」

「光よ!」

「いきなり始めんのか! 全員下がれ!」

 

 光の剣から光が溢れ出してネルに向かって跳んでいく。その威力にC&Cの面子は驚く。

 

「くっ!」

「わぉ!」

「何という威力……! 校舎の壁を、こうも簡単に消し飛ばすほどの……!」

 

 C&Cの面々だけでなくゲーム開発部の面々も改めてアリスの火力を見て驚愕する。

 

「す、すごい……」

「こんな火力、見たことない……」

「……やったか?」

「アリスちゃん! そのセリフは無闇に言っちゃダメ!」

 

 アリスの言葉をミドリが焦って止めようとする。

 

「なんだっけ……『死亡フラグ』だっけ?」

「まぁ、フラグではある。死亡ではないが」

 

 先生はアリスの言葉がゲーム開発中に覚えた『お約束』であることに気がついて隣にいたグランに確認をとる。グランもグランで頭のなかから記憶を引っ張り出して答える。

 

「あ、ネル先輩は3年生でした。言い直します。や、やっつけられましたか……?」

「いや、敬語の問題じゃなくて……!」

「まだだぞ」

 

 グランがそういうのと同時にアリスに向かって銃弾が飛んでいく。

 

「うぁっ!?」

「アリスっ!?」

 

 グランが思わずアリスに駆け寄ろうとすると、グランの足元にも弾丸が飛んできて行く手を阻む。

 

「グラン、テメェは動くな。……にしても、確かに並大抵の火力じゃねぇが……。ただ、それだけだ」

 

 爆炎の中からネルが無傷で歩みでてくる。その姿を見たアリスは急いで再び攻撃準備に入る。

 

「も、もう一度、魔力を充電……!」

「遅ぇよ」

「あっ……!」

 

 ネルはアリスの攻撃準備を終えるよりも早く懐に入り、アリスを蹴り飛ばす。そしてアリスの体勢を崩した後銃撃を加える。

 

「きゃぁっ!」

「てめぇの武器は確かに強い。だが引き金を引いた後、発射まで最低でもコンマ数秒はかかる。その上、その強すぎる火力のせいで、相手にある程度の距離まで入られたら撃てねぇ。爆圧に自分まで巻き込まれるからな。そしてこの間合いでアタシに勝てる奴なんざ、キヴォトス全体でもそう多くは……いや、一人もいねぇ」

 

 ネルは言葉を紡ぎながら素早く移動をして攻撃を続ける。アリスもネルを一生懸命追うが、ネルの速度に銃口がついて行かない。

 

「うぅ……」

「思った以上にがっかりだったな。この程度で、あいつらがやられたとはな……」

「言われてるぞー」

 

 グランが戦場を挟んで反対側にいるネル以外のC&Cに声をかける。

 

「あー、リーダーひっどーい! アスナだって頑張ったのに!」

「くっ……申し訳ありません……」

「そもそも私はその子と交戦してないんだが……」

 

 ネルの言葉にC&Cは各々の反応を見せる。そんなやり取りの中でもアリスは虎視眈々とネルを睨みつける。そして急に光の剣の構え方を変える。

 

「えぇい!」

―ブォンッ!―

「ぐっ!」

「銃身を、振り回した……!?」

 

 アリスは光の剣を名前通り剣のように振るう。ネルは初撃こそ喰らったがそれ以降は見事に回避していく。

 

「はっ、近接戦としては悪くねぇ判断だ……けどな。相変わらずこの距離じゃ、あたしの方が圧倒的に有利。てめぇは発射しようにも、あたしに照準を合わせらんねぇ」

「……照準は、必要ありません」

 

 アリスは光の剣を盾替わりにしてネルの攻撃を防ぎながらチャージを始める。

 

「行きます!」

「だから無理だって……ん? この状況で発射準備……? おい、まさかてめぇ……!?」

「マジか……。先生は後方に下がれ」

「え、うん」

 

 アリスの行動にグランとネルは気が付き、身構える。

 

「あたしじゃなく……床に!? 正気か!? そのまま撃ったらてめぇも……!」

「光よ!!」

 

 アリスは床に向かって光の剣を発射した。衝撃と光、爆風が辺りを襲う。床が崩壊してネルとアリスが落下していく、先生たちはグランが事前に後ろに下げていたので崩壊に巻き込まれずに済んだ。

 

「アリスちゃん! うっ、煙で視界が……!」

「床がほぼ崩れて……見つけた、アリス!」

「に、肉体損傷48%……後退を望みます!」

 

 モモイとミドリが崩壊した廊下を見下ろして、瓦礫の上でぐったりしているアリスを見つけて指をさす。

 

「俺が拾ってくる!」

 

 グランが直ぐに飛び出してアリスのもとに降りていく。そしてアリスを担いで瓦礫を跳び回り先生たちの元に帰ってくる。

 

「よし、撤退!」

 

 そして先生の指揮のもと一目散にグラン達は撤退したのだった。

 

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