◎・ゴールデンフリース号 機関室・
「ここでC&Cと合流の予定だったが……」
次の日グランはスタッフたちの目を掻い潜りゴールデンフリース号の機関室に到達していた。ここでC&Cと合流する手はずになっているのだが、グランはC&Cの面子がどうやって潜入してくるのかは聞かされておらずただ待ちぼうけをくらっていたのだ。
「にしても……流石に巨大クルーズ船、機関室もバカでかいな……」
グランが眼下に広がる巨大なエンジンや真水生成器を眺めながらそう呟く。すると丁度眺めていた真水生成器の蓋がガタガタと揺れて内側からこじ開けられ、中から潜水服の四人組が現れる。四人が潜水服を脱ぐと中からここ最近よく見たメイド服が現れる。グランは階段を下りて四人組の近くに向かう。
「……こちら問題なし」
「……私の方も、問題ありません」
「……OK」
「……なんか、あっけねえな?」
四人組……C&Cの会話が聞こえてくる。
「他の学校のクルーズ船に、こっそり乗り込む。初めての体験だったけど、上手く行って良かった」
「どうやら、特にまだ気づかれた様子もありませんし。ふふっ、どうやら問題なく進んでいるみたいですね?」
カリンとアカネが顔を見合わせて任務が順調に進んでいることを喜びほほ笑む。そんな二人の顔を横目で見つつネルはウンザリとした表情で溜息をつく。
「……はぁ。そもそも『問題』って言うんなら、この依頼自体最初っから問題だろうがよ……。あー、気に入らねぇー……。あの会計に従うのも、こうしてひそひそと隠れて動かなきゃなんねぇのも……、何より! あのグランと一緒ってのが一番意味分かんねぇ!? なんだよ、監視係兼協力者って! 邪魔なだけだっての!」
「おいおい、随分な言われようだな?」
「誰だッ!?」
グランが背後から声をかけると素早くC&Cは反応して銃をグランに向ける。銃を向けられたグランはやれやれと首を振りながら両手を上げて降参のポーズをとる。
「しっかし、潜水服の下にメイド服とは……暑くないのか?」
「お前……グランか!?」
「うわー! 代表さんいつもとは全然印象違うねー!」
「確かに」
「ですが、そちらの方が『ブラックマーケットの長』と言われたら納得できる恰好ですね」
「好き勝手言いやがってからに」
銃を下ろしてグランの周りに集まり恰好についてあーだこーだ言うC&Cにグランは苦笑いするしかなかった。
そんな中、ネルはいつもと違いバシッと決めているグランの格好をジッと見つめていた。そんな視線に気が付いたグラン。ネルと視線を合わせるように屈みこみ、自身の顔をネルに近づける。
「どうした?」
「んなッ! な、何でもねェよ!」
「うおっ!?」
急に顔を近づけたグランに対してネルは顔を真っ赤にして殴り掛かる。それを寸での所で避ける。そしてネルから距離を取るグラン。その様子を見て今度はC&Cの方が苦笑いをすることになる。
「すいません、代表。リーダーもあなたと一緒なのが本気で嫌な訳じゃないんです」
「そうかぁ……」
「余り気にしないでくれ。代表が悪いわけではないのだから」
「そうするかぁ……」
アカネとカリンが両隣でグランにフォローを入れる。そんな最中でもネルの愚痴は止まらない。
「あーもうめんどくせぇ! こっちのやり方にいちいち口出してくんじゃねえよあいつ、勝手にさせろっての……!」
「まぁ、仕方ありませんね……」
「ふぅ…。まぁ、何と言うか……。『発端は私たちのせいではない』と言ったら、嘘になるし……」
それからグランはアカネから今回のC&Cの依頼の詳細や、なぜグランが協力者に選ばれたのかを説明される。
「なるほど。つまりその黒崎コユキという生徒を捕まえなくちゃいけなくて、その過程でのブレーキ役兼被害の妥当性の確認か……」
「えぇ、よろしくお願いします」
アカネの説明を受けたグランは顎に手を当てて少し考え込む。
「ったく、ちっと物が壊れたり建物が崩れたくらいで何だよ……? 依頼は達成できてるんだし、その後始末はあっちの役割だろうが。あー……なんか思い出したら腹立ってきた。わざと色々ぶっ壊しながら進むか?」
「おいおい、それは流石に勘弁してくれ。俺もこの船は気に入ってるし、ユウカも大変なんだよ、色々と……。ともかく、ここはミレニアムの領域外だ。学園間のトラブルになりそうなことは避けてくれ」
「んなこと知ったことかよ……いざとなったら全部吹っ飛ばせば良いだろ? とにかく大体のことはぶっ壊せば解決、それで終わり。文句あるか?」
グランはよくシャーレに来るセミナー会計の姿を思い出しその心労を思いやる。そう言って遠い目をしているグランの表情をネルは睨む。
「んだよ……、あの会計の肩を持つのかよ」
「まぁ、流石にユウカの方が付き合い長いし、シャーレでの休憩時間の時に愚痴とか聞いてるし」
ネルに睨まれるとグランは若干冷や汗を流しながら答える。
「ちっ、そーかよ」
ネルはネルでグランの返答に何か思うところがあったのか微妙な表情を浮かべる。ネルのその表情を目にしたグランはあえてネルから目を外し、口角を上げながら静かに語りかける。
「とはいえ、ネルはやろうと思えばできるだろ。信じてるぞ、コールサイン・00」
「……えぇ……あ~、ったくなんでこんな……ぐっ……あぁー。もう、分かったわかった! 大人しくやりゃあ良いんだろう……! ……ったく、何なんだよ、この気持ち……」
ネルはグランの言葉にガシガシと頭を掻きながら顔を赤くして下を向いてしまう。そんなネルの様子を見てアカネとカリンが驚いた表情を見せる。
「……おぉ、アカネ。凄いことが起きてる」
「そうですね、私も同じことを思っていました。ユウカから聞いた時はこのやり方でどう変わるのかと半信半疑でしたが……。ふふっ、こんなに話を素直に聞くリーダーは中々見られませんね。もしかして実際の狙いは監視というより、こうして抑制する方だったのでしょうか?」
「るせぇなゴチャゴチャと! さっさと行くぞ! ああもう、むしゃくしゃする……!」
二人の会話が聞こえたのかネルは大声でキレたあと、ズンズンと歩いていく。その後ろ姿を見て溜息を一つ着いた後その後ろ姿を追うグラン。
「おいおい、ネル。お前はこの船の構造知らないだろ、先に行くなよ。お前たちも行くぞ」
「ふふっ。はい、確かにそろそろ動いた方がよさそうです。それでは代表、今日は特に戦闘にはならないと思いますが、よろしくお願いしますね」
そうして歩き出すグラン達、途中で何かを思い出したようにグランが懐からチケットを取り出してC&Cに渡す。
「そういえば、これを渡し忘れる所だった。これ、乗船証だ。今回俺が招待したグループ、という扱いになっている。部屋には後で連れていくからそこを拠点として使ってくれ」
「わー! ロイヤルスイートだって! えへへへ、すっごい楽しみー!」
キャイキャイと騒ぐアスナの頭を撫でて落ち着かせながら機関室を歩いていくグラン達。そのときふとグランが今まで疑問に思っていたことを口に出す。
「そもそもお前たちは『ゴールデンフリース号』までどうやって接近したんだ? 最後は泳ぎで海水の組み上げ機を利用してきたのはわかるんだが……」
グランがそういうとアスナが撫でられつつも答える。
「えっーとね、泳いできたの!」
「……まさかミレニアムからずっと?」
グランがアスナの返答に若干引きながらアカネの方を向く。そうするとアカネは苦笑いを返しながら細かく補足をする。
「まさか……いくら私たちでもそんな体力はありませんよ。まずオデュッセイア海洋高等学校の領海ギリギリまでミレニアムの最新潜水艦で接近しました」
「そこからは?」
「
アカネの言葉に少し言葉を失うグラン。しばらくしてグランはやっと口を開く。
「まだ……海、冷たくなかったか?」
グランの言葉にアカネはにっこりと笑いながら答える。
「大丈夫でしたよ。なにせ、ミレニアム最新のウェットスーツですから。気になりましたら帰りにでも触ってみますか?」
「……遠慮しておく」
正直物凄く気になっていたグランだったが、女子が来ていた衣服を触りたいというのは余りに変態が過ぎるので遠慮したのであった。
リロちゃんみたいな名ありのサブキャラ
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いる!
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いらない!