シャーレの部長はブラックマーケットの代表   作:四脚好き

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96話

◎・ゴールデンフリース号 ロイヤルスイート・

 

「悪い、少し時間がかかった」

 

 そう言ってグランは尋問を終えたのか、メインルームに戻って来た。上着を脱いでネクタイも外していることからだいぶ疲れたのだろう、と思ったアカネがすぐに水をグランの元に持って行く。

 

「お疲れさまでした。……あの子は?」

「あぁ、アイツなら寝室で寝てるよ。勿論拘束はしているから安心しろ。まぁ……もう"離れられない"と思うが」

「?」

 

 グランの言葉に何か違和感を覚えたアカネだが、それが何なのかは分からず流すことにした。その一方で先ほど見た光景を思い出したネルは顔を赤くし、しかしズキズキと痛む胸をそっと抑える。

 

「『プレイラウンジ』に向かうぞ。黒崎コユキはそこに入り浸っているらしい」

 

 グランが言った『プレイラウンジ』という言葉に首は傾げるネル達。

 

「その『プレイラウンジ』というのは……?」

「カジノだ。……といか、このゴールデンフリース号でプレイラウンジに行かないなんてことは無いだろうからそこに最初から向かえばよかったんだろうが……」

 

 グランは眉間を抑えながらそう呟く。

 

「それ程重要な場所なのか? その……カジノが?」

「そういえば説明してなかったな。このゴールデンフリース号のサービス……この部屋や、食事、利用できるレジャー施設、それらは全てプレイラウンジのゲームを通じて手に入れらせる引換券によって、サービスの等級が決まる。ランクはDからSまであって、基本的にはAを持ってれば船内サービスは最高のモノになる。ほら」

 

 そう言ってグランは懐の中からAランクの証であるランクカードを取り出してネル達に見せる。

 

「なんだSではないのか」

「Sは俺も今まで聞いたことがない。実体としては校則をも無視できる特権らしい」

「そんなことが……」

 

 グランの言葉に驚愕するカリン。Aのランクカードをしまうグラン。その隣で顎に手を当てていたアカネがポツリとつぶやく。

 

「カジノ……ということは、あの子が発行した債券は」

「十中八九、溶かしたんだろうな」

 

 グランの言葉にネル達の間に納得したというの空気が流れる。それとは別にネルの心中にはイライラが積もる。

 

「ったく、何をしてるかと思ったら……。債権の金をゲームに突っ込んでいた? くっだらねぇ…・・・そんなことのせいで、態々アタシらはここまで……! うっし、今すぐそのプレイラウンジに行ってあのガキとっ捕まえるぞ!」

「では、そのプレイラウンジに向かいましょうか」

 

 アカネがそう言って各々出かける準備をする。そして部屋から出て廊下に出る。廊下を素早く移動していくグラン達。そんな中アカネが再び口を開く。

 

「では改めて、あくまでも今回の目標は『白兎』です。『プレイラウンジ』に入ったらそれぞれバラバラになって彼女を捜索。見つけ次第すぐに連絡してください。速やかに制圧して、正規の乗客である代表以外は即座にこの船を抜け出しましょう。煙幕弾と閃光弾、それ以外は使わないようにしましょうか。ことを大きくすると怒られてしまいますから。それから、無闇な戦闘は無しで。警備の方々を片っ端から倒す、なんてもっての外……こんな感じで行きましょうか?」

 

 アカネの提案にネルがウンザリする。

 

「はぁ、めんどくせぇな……」

「だが、お前ならできるだろう? コールサイン00?」

 

 そんなネルにグランはニカッ、と笑いかけエージェントとしてのネルの名前を呼ぶ。それと同時にプレイラウンジの扉の前に到着する。扉の前でネルはグランに目を向けて返事をする。

 

「……あーもううるせぇなぁ! んなこと言われなくてもやるっての! あたしを誰だと思ってる、そんくらい朝飯前だ! 見てろ。さっさと見つけて、ほぼ無音で後頭部ぶん殴って、すぐここまで連れてきてやる」

「じゃあ、始めよう」

 

 カリンの合図と共に扉は開かれてそれぞれが行動を開始する。グランは監視という役割もあり、激励はしたが一番騒ぎを起こす可能性のあるネルの後ろをついて行く。ネルはプレイラウンジに入って少し歩き回る。

 

「これが『プレイラウンジ』ねぇ……? なんつーか……ただの派手なゲームセンターだな?」

「見た目はな……」

「……あん?」

 

 ネルの隣にグランが立ってある場所を指さす、自然とネルの視線もそちらに向く。視線の先にはあるパチンコ台に縋り付き台を叩きながら泣いてる男がいた。

 

「インチキ! インチキ! インチキ! この台はインチキ……! 遠隔……イカサマっ……!! イカサマだっ!!」

「なんだ、ありゃあ……」

 

 男の鬼気迫る表情に顔が引き攣り、鳥肌が立つネル。台を叩いていた男は多くの警備員に連行されていった。グランはネルを連れて男がプレイしていた台の前までやってくる。

 

「こいつは1玉4000円もする超高レートな台で挑戦するためには300万円、500万円、1,000万円のいずれかを持って玉を貸してもらい挑戦するんだが……まぁ、当たらん」

「すげぇな、一気にそんだけの金が動くのか……。そりゃあさっきの男もああなるな。……因みに何だか、グランはどうやってAランクまで行ったんだ?」

 

 ネルがグランの説明に納得する。そして少し興味がわいてきたのかグランにどうやってAランクまで上り詰めたのかを聞くネル。効かれたグランは少し恥ずかしそうに頬を掻きながら答える。

 

「……高威力ショットガンでディーラーとロシアンルーレットするやつ」

「はぁ?」

「左わき腹に穴開けられた」

「ば、ばかやろッ!」

 

 ネルはグランの言葉に驚き、次いで怒りがこみ上げてきた。そうして感情の赴くままにグランにつかみかかろうとするが、丁度プレイラウンジ内に放送の音声が入った。

 

『おっと、どうやらCランクからBランクに上がられた方がいらっしゃるようですね! おめでとうございまーす!! 他の皆さまも、是非上のランクを目指して頑張っていきましょ~~!!』

「……何してんだ、あれ? あの大きなモニターに映ってるやつのランクが上がって? それでお祝いされてるってことか? 意味分かんねぇ」

 

 プレイラウンジ中央のモニターにランクが上がったであろう人物が大々的に映し出される。ネルの注目はそちらに向いたためグランはネルに掴まれずに済んだのだった。

 

「ああやって他の奴等の競争心やら、射幸心、嫉妬心を掻き立たせるんだよ。そうして客は更に金を突っ込み、その金でこのゴールデンフリース号は回っている」

「ふーん……それでせこいつら、周りには見向きもせずに台やらトランプやらルーレットに夢中ってわけか。こいつら学校も行かずに、ずっとここでこうしてんのか……?」

 

 ネルの顔に陰りが見える。ミレニアムという学園が好きな彼女にとって学園にもいかずギャンブルに明け狂う生徒の姿は不健全に見えて仕方がないのだろぅ。

 

「まさに健康優良不良少女……」

「あ゛ぁ゛?」

「なんでもない」

「……まぁ、この中にアイツがいるとしても、確かにおかしくねぇな。どいつもこいつも夢中になってるし、うるさくて声もよく聞こえねーし。働きたくない、面倒なことは何もしたくない、誰にも縛られたくない……あいつにはピッタリの場所だ。……」

「どうした?」

 

 突如動きを止めたネルにグランは不思議がり声をかける。

 

「……見っけた」

「なに……」

「あそこだ……見えるか? あっちの奥の方で座ってるやつ」

 

 ネルの視線の先に目を向けたグランはスロット台の前で足をバタバタさせながら笑っているピンク髪の小柄な女の子を見つける。

 

「やっはー! 今日はまあまぁ悪くない感じ! じゃあ、今日はこの辺で勝ち逃げ……いや、この勢いならもう少し行けるんじゃ……?」

 

 そこにいたのはバニー姿のターゲット黒崎コユキだった。コユキは自身の持ち金と手に入ったメダルの量を見てもう少し稼げるのではと思案する。そんな声を聞いていたグランは内心『あぁ、欲に負けて引き際を見失ってる……』と彼女の未来を思い描き苦笑いをする。

 

「よし、行くよ! 頑張れコユキ、行けるよコユキ! 自分の力を信じて! 伝説の『S』はきっともう目の前に……!」

 

 そして更に金をスロットに突っ込むコユキ。しかし……

 

「なんでぇーーー!? 信じらんない、今日幾ら入れたと思ってんの! そろそろ確定でSランク行っても良くない!? 一体いつになったらVIPになれるのさぁ!! もう待てないんだけどーーー!!」

 

バタバタとさせていた足でスロット台を蹴りはじめるコユキ。すぐにバニーガール・ガードが跳んできて注意をする。

 

「ちょっと止めてください! 機械を蹴らないで……! 出禁になりますよ!」

「うっ……。す、すみません……」

 

 叱られたことでシュン、と大人しくなるコユキ。

 

「……案外あっけなく見つかったな」

「……あぁ。夢中になって、こっちに全然気が付かねぇ、あのガキが『白兎』、『黒崎コユキ』だ」

 

 ネルは耳元の通信インカムに触れてC&Cに連絡を入れる。

 

「あー、あー……聞こえるか? 『白兎』を見つけた、位置を送るから集まれ」

『あら、承知しました』

『わかった、すぐ行く』

 

 通信が終わったネルは通信機から手を離してグランの方を見つめる。

 

「これで終わりそうだな。短い時間だったが、お前もお疲れさん。カリンとアカネが来たら、もうそれで終いだろ。そ、そうしたら……『白兎』とカリンアカネで客室に留守番してもらってさ、アスナを探しにア、アタシとこの船を一緒に回らな―――「なんとなんと! こちらのアスナ様が、僅か10回目でAランクを獲得! おめでとうございます! この勢いで一気にSランク、VIPとなるのでしょうか?』

 

「……は?」

「おぉ、すげぇなアスナ」

 

 プレイラウンジ中央の電光掲示板にアスナの姿がでかでかと映し出される。ネルは愕然とし、グランは放送の内容に驚き感嘆の声を漏らす。

 

「え、え? 嘘?」

「えっ!? 今のアスナ先輩じゃん!? ど、どうしてここに……!? っていうことは……。もしかして……?」

「……ちっ」

 

 ばっちりネルとコユキの目が合う。そしてコユキの視線はネルの隣にいたグランの方にも向く。

 

「初めまして」

「うわああぁぁぁぁっ!? 初めましてぇぇぇぇぇ!? ちょっと警備員さん!! ここに侵入者! 侵入者がいるよーーー!!」

 

 コユキが椅子から立ち上がり絶叫する。そうして大声で警備員を呼ぶ。そうするとグラン達を取り囲むように警備員たちが集まってくる。

 

「なに、侵入者だと!?」

「あそこあそこ! 早く捕まえちゃって!」

「総員集合! 侵入者と思しき者どもを確保せよ!」

 

 警報が鳴り響き警備員たちがネルとグランに銃を向ける。

 

「おい、グラン。こいつぁ、流石に見逃せ」

「まぁ、今回ネルに非は無かったからな。これは仕方がないことだ」

 

 グランとネルは背中合わせになり、互いに銃を構え戦闘を開始するのだった。

 





 ぐにゃあ……。

 ホント今更ですがこの作品にはたびたび本筋とはまったく関係ないんですがパチンコで泣く男みたいに他作品の小ネタが仕込まれてます。今回の小ネタもわかる人にはわかるはず……ッ!

  評価、感想は作者の承認欲求モンスターが満たされるので執筆速度向上につながります。どうぞよろしくお願いします。
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