◎・ゴールデンフリース号 牢屋・
「い、いきなり怒り出してなんなんですかもー!」
グランが急に怒り出したことに驚いて大きな声を上げる。その表情は知らない男に急に凄まれたことによる恐怖と、いきなり説教されたことによる不快感が半分だった。不穏な空気が流れ始めた牢屋の中に新しい人影が現れる。
「ああ、やっぱりここにいたのか」
「あらあら、大集合ですね」
「せ、先輩たち……っ!?」
人影の正体はカリンとアカネだった。二人の姿を見たコユキは身体を強張らせる。逆にネルとグランは眼を輝かせる。
「はっ、ほら見たことか! 来ると思ってたぜ、こいつらならな!」
「アカネ、カリン! 今すぐここを開けろ! こいつをぶっ飛ばす!」
グランとネルがアカネたちに話しかけるが二人は苦笑するだけで動こうとはしない。そんな二人を不信に思っていると二人の後ろから更に人影が現れる。
「何を突っ立っている! 早く入れ!」
「……は?」
二人の後ろから現れたのはバニーガール・ガードだった。バニーガール・ガードは二人の背中に銃を突き付けて牢屋の中に入るように急かす。
「ふふっ……」
「……ごめん、私たちも捕まった」
「おいおいおい……」
牢屋の中で合流することになったグランたち。空気は先ほどとは打って変わって気まずいものに変わっていた。そんな空気ガン無視でコユキが笑いだす。
「にはははは! いやー、生きてるとこんな日も来るんですねー!! 天下のC&Cとブラックマーケットの代表が捕まっている様を、こうして見下ろす日がくるなんて! いやー、やっぱ自由って良いなー! 三十六計逃げるに如かずってね!」
「あと捕まっていないのはアスナだけか……」
グランが辺りを見ながらそう呟くとコユキも周りを確認する。
「そういえば……。アスナ先輩は、相変わらずどこへ行ったんでしょうね? まあ、この船の中にいるのは確かですし、警備の数を考えると捕まるのも時間の問題ですね、きっと! にははは! もうちょっと待っててくださいね、仲良くみなさん一緒にしてあげますので! その後はどうしましょうかね~、このままどこか無人島にでも言って降ろしてもらうとしましょうか。ではでは~、もう二度と会えないかもしれませんがそれはそれで!!」
コユキは笑いながらこれからの自由な暮らしに思いを馳せてクルクルと回って見せる。そうしているとまたガラガラと音を立てて牢屋の扉が開く。
「おっ、このタイミングはまさか!? これはもう流れ的に間違いありませんね、お疲れさまでしたー! アスナ先輩ー、ひっさしぶりーー!!」
コユキは笑顔のまま牢屋の出入り口の方まで向かう。そこに現れたのは多くのバニーガール・ガードを連れたアスナだった。
「あ、コユキじゃん! ここにいたんだ?」
「にはははは! こんにちは、先輩! そして警備の皆さんはお疲れ様でした!」
コユキは笑顔でバニーガール・ガーとに頭を下げる。
「さぁさぁどうぞ中へ! こうしてみなさん一緒ですので! 暴れても無駄ですよー、そもそもここはミレニアムじゃないんですから、そんなことしたら大問だ―――」
「皆様……」
突然バニーガール・ガードの一人がコユキの言葉を遮り喋り出す。
「……? 皆様? 私のことじゃなく?」
「……お前じゃない。そちらの方々。……大変失礼いたしました、釈放です」
「……へ?」
バニーガール・ガード達はコユキを無理やり牢の前からどかして牢の鍵を開ける。
「……あん?」
「これは……?」
「……釈放? どうして?」
「くそッ、俺の義肢はッ!? 早くよこせ! こいつとっちめてやる」
ネル達も何故牢が開けられたのか理解できずに立ち尽くす。そんな中グランだけがコユキの方に這って近づく。
「アスナ様のご命令ですから」
「……様?」
バニーガール・ガードが釈放した理由を話す。するとコユキは首を傾げながらアスナへの敬称を疑問に思う。
「"Sランク"をお持ちのVIPであるアスナ様の指示に従い、皆さまを釈放とさせていただきます。上でのお話合いがありまして……大変申し訳ないことに、先ほどの戦闘での被害額だけは請求させていただきますが……それさえ清算できれば他のことについては、これまでのことを全て含めて不問となります。先ほどまでとは違う状況だったとはいえ、大変失礼いたしました。それでは、ごゆっくり……」
それだけ言ってバニーガール・ガードはそそくさと牢屋を後にした。
「そういう事みたい!」
アスナはバニーガール・ガード達に手を振って見送りその姿が見えなくなったところで振り向いて顔でそういう。
「急に捕まえられちゃいそうになったんだけど、ゲームの画面を見たらみんな手を止めちゃってさ? 色々連絡してたみたいなんだけど、その後『何なりとご命令を』って言われたから、じゃあ好き放題させてもらおうかなって! っていうわけでちょっとお金を払わないといけないけど、もう私たちは自由だよ! あとはいつも通り!」
「まさかこの短期間でSランクとはな……」
これにはコユキに近づいていたグランも動きを止めて愕然とするしかなかった。そんな中ネルが笑いだす。
「……ははっ。そうかそうか……。つまり、とりあえず適当にお金さえ払っとけば後は何しても良い、と。別に学校間の問題にもならない……そういうことで良いんだな?」
「ネル……金はこっちで出す。ユウカに怒られる心配もないぞ」
ネルの言葉にグランが続く。
「はっ。……最高だぜ、グラン。 良い、良いじゃねぇか。おい、白兎……早く逃げたらどうだ? グランの義肢を探す間くらいなら待ってやんぞ?」
「……あはー」
「ちったぁ頑張ってくれよ? ……さっさと終わったら、つまんねぇからなぁっ!!」
「ハッちゃぁぁぁああああ!!??」
ネルの怒号が牢屋中に響く。その怒声にコユキは恐れおののき牢屋の中から飛び出していく。その後ろ姿を眺めながらC&Cは牢屋の保管庫から没収された武器を取り出して状態を確かめる。そんな中、一人のバニーガール・ガードがグランの義肢を持って近づいてくる。
「ぐ、グラン様!」
「お前は……リロ!」
義肢を持ってきたのはグランが自室で尋問していたバニーガール・ガード『甘葉リロ』だった。リロはグランの身体を抱え上げて慣れない手つきで義肢を取り付けていく。グランも義肢の装着をリロに任せながらリロの顔を見る。
「驚いたな、まさかお前が来るとは……」
「えへへ、私どうしても"あの体験"が忘れられなくて。あの人を捕まえるのがグラン様のお仕事なんですよね? その……えっと……お仕事が終わったらまたシ、シてください……」
「……少し、よれ」
「え? は、はい」
リロの言葉を聞いた後グランはリロらもう少し自身の近くに寄るように言い、リロが近くに寄って来たのを確認するとリロの唇にキスをする。
「っ!?」
「可愛い奴だよな、お前は。あとで連絡先教えろ、一杯可愛がってやる」
「は、はい♡」
「ン゛ン゛ッ!」
リロとグランが良い雰囲気になっていると横からネルが大きく咳払いをして雰囲気をかき消す。二人だけの世界から現実に引き戻されたことでリロは羞恥で顔を赤くしてグランから離れてしまう。装着された義肢の感覚を確かめつつ、残念そうな表情をしてグランは立ち上がる。
「おいおい、折角いい雰囲気だったんだ。邪魔しなくても良いだろう?」
「邪魔するに決まってんだろうがッ! これからあのガキ追いかけるんだよッ!」
グランの言葉にネルがキレながら答える。そんなネルの様子を見ていたC&Cはそれぞれの感想を口にする。
「リーダー、二人を止めたの本当に
「はぁッ!?」
「あれはどう見ても嫉妬にしか思えない……」
「んなっ!?」
「ふふふ、グランさんと出会ってから珍しい部長の表情を見てばかりですね」
「このッ……」
ネルを囲みながら口々にしゃべるアカネたち。ネルは段々と顔を赤くし下を向いていく。手をギュっと握りしめてプルプルと体が小刻みに震えているネルを見てグランは若干距離を取る。そうすると次の瞬間。
「うっせぇぞ、お前らァ!! とっととあのガキ捕まえるんだよ!!」
「うわー! リーダーが怒った!」
「これは不味いな……」
「急ぎ『白兎』を捕まえましょうか」
C&Cの面々が準備を終えて銃器を構える。それを見てグランも武器の状態を確認してしっかりと構える。
「さて……ウサギ狩りと行こうか」
ハッチャッ! って何だよ……。教えてくれよ(旧世代の狂犬感)