シャーレの部長はブラックマーケットの代表   作:四脚好き

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99話

◎・ゴールデンフリース号 スタッフ用通路・

 

「ぎゃぁぁぁぁぁ!! 何でなんでなんでーー!! 来たばっかりなんでしょ! この短時間で『S』ランク!? 嘘だぁ!!」

 

 ゴールデンフリース号のスタッフ用通路を爆音と悲鳴が駆け抜けていく。慌ただしくバタバタと走り逃げ去るのは黒崎コユキ。

 

「私がどんだけお金使ったと思ってるの!? いや覚えてないけど、でも大分突っ込んだよ!? こんな理不尽ある!?」

 

 自分が大量の時間と資金を投入したにも関わらず手に入れられなかったSランクをアスナが簡単に手に入れたことが気に食わないのか、怒りながらも泣くという器用なことをしていた。

 そんなコユキを追いかけながらショットガンを乱射するグラン。

 

「ギャンブルとはそういうものだ。それを理解していないからお前は勝てない」

「もーーーーっ!!」

「待てやごるぁ!!」

「ひぃっ!? 嫌です、絶対待ちません!!」

 

 グランの隣でコユキに向かって乱射をするネル。その笑顔は華の女子高生がして良いとは決して言えないものであった。

 

(……やっぱ、怖ぇな。美甘ネル)

 

 隣にいるグランがそんなネルを見てどんなことを思っているかも知らずにネルは今までの憂さ晴らしをするようにあえて直撃を与えずにコユキにかすり傷を増やしていく。

 

「良いね、良いねぇ、楽しくなってきたじゃねぇか! さぁ泣け!叫べ! 喚け!! 怯えろ! 竦め! 銃の性能を活かせねぇまま、ぶっ飛ばされていけ!」

 

 高らかな笑い声をあげながら攻撃を繰り返すネル。ドンドンとヒートアップしていくテンション。

 

「お前が泣こうと!」

 

「あの会計が泣こうと!」

 

「最後に笑うのはアタシだけだ!! くはははははっ!! さぁもっと足を動かせ! もがけ! 少しでもあたしの体力を削った方が、後で辛くねぇぞっ!」

「嫌ぁぁぁぁぁぁぁ゛゛!」

「くははははっ! 楽しい鬼ごっこじゃねぇかぁ!!」

「いつまで逃げ続けられるか見ものだな!」

 

 ネルの言葉に反応して逃げる速度を上げるコユキ。それを見て更に笑みを深めたネル。そんなネルのテンションに引っ張られたのかグランも徐々に口角を上げてコユキを驚かす為や恐怖させるために至近弾を撃つようになっていく。そんな二人の暴れっぷりに少し遅れてコユキを追跡していたカリン、アカネ、アスナの三人はどうしたものかと考える。

 

 

「どうしましょうか……?」

「まぁ……リーダーはいつもに比べて色々ストレスがあったし……その発散ってことで良いんじゃないか?」

「代表さんも何か怒ってるみたいだったし止まらないと思う!」

「うーん……ではこの後、お二人がやり過ぎないように私たちが頑張って止めないとですね……?」

「……そうなるな」

 

 アスナがケラケラと笑ってカリンとアカネが苦笑した。

 

◎・・・

 

「はっ、はっ、はっ、はぁっ、はぁっ……。うぅ、もう無理ぃ……。何あれ、やっぱ反則でしょ? なんでこんなすぐ見つかる訳? 途中にいた警備にお金掴ませて壁にしても、全然意味ないし……! 紙切れ状態じゃん! 一秒も稼げてなくない!? それに、行く先々の廊下が爆破されてるし、なんかこれ誘いこまれてる気がする……! ここに来たばっかりなんでしょ!? なんでそんな器用に……!?」

 

 コユキは泣きながら爆音響き渡るゴールデンフリース号の中を走り抜ける。いつの間にか、コユキ達を覗くゴールデンフリース号の乗客たちは上層フロアに集まりその光景を飲み物片手に楽しそうに眺めていた。中にはコユキが何時まで逃げ続けられるのか賭けを始める者もいた。

 

「おら、どこ行きやがった! 隠れても無駄だぜ、全部焼き払うからな! ははははははっ!」

「出てこい、白兎ォォォ! ぶっ飛ばす!」

 

 背後から聞こえるネルとグランの声。

 

「ひいぃぃっ!? うぅ……! わ、私がこのまま終わると思ったら大間違いなんだから! 屋上までたどり着けさえすれば……! そしたら、私の……!」

「そこかぁッ! 白兎ォぉぉ! いたぞおおお、いたぞおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」」

「ハッちゃァァァァッ!?」

 

 遂にグランがコユキを発見して大声を上げながら走り寄ってくる。その余りの迫力にコユキは盛大にすっ転んだ後どうにか立ち上がり走り出す。そうしてどうにか屋上ラウンジまでたどり着いたコユキ。

 

「はぁ、はぁっ……! つ、着いた! これで……!」

 

 バゴォォォォォンッッ!!

 

「いっっ!?」

 

 屋上について一安心していたコユキだが、ラウンジの出入り口のドアが爆発し吹き飛ぶ。その衝撃でゴロゴロと転がるコユキ。衝撃と音が止まった後コユキが顔を上げると煙の中からイイ表情をした二人組が現れる。

 

「ははっ! 見ぃつけたぁ。ようやく見つけたぜ、この子ウサギめ」

「足の速さは見事だったが上に逃げたのは失策だな。ここからどうやって逃げる? 海にでも飛び込むか?」

 

 ジリジリとコユキににじり寄っていく二人。ネルは片方の銃で肩を叩きながら口を開く。

 

「まぁ頑張った方じゃねぇか、ちったぁ身体を動かせたからな。で、もう終わりか? まだ抵抗しても良いんだぜ?」

「殺しはせん。体に聞くこともある」

 

 一方でグランはショットガンに弾を込めつつ、どこで手に入れたのかロープを肩にかけていた。

 

「あっ、コユキ発見! やっほー、おっ待たせー!」

「もう逃げ場はない、諦めて」

「ふふっ、そうですよ。さぁ、投降してください?」

「うぅっ、続々と……」

 

 更に煙の奥からアカネ、アスナ、カリンが姿を現す。そのすがたを見て顔を曇らせるコユキ。しかし一度下向いた後、上げた顔は晴れやかな物だった。

 

「……ですが、何か勘違いしているみたいですね。追いつけられたわけじゃありません、先輩たちの負けです!」

「なに?」

「有無を言わさずさっさと捕まえれば良かったものを、もう後悔しても遅いですよ! ざーんねーんでしたー! にははははは!」

「……なんだぁ? 疲れておかしくなったのか?」

 

 急に笑い出したコユキの姿にネルは首を傾げる。

 

「確かに、何を言っているか分かりませんね……」

「リーダーと代表がけらけら笑いながら執拗に追い回したせいで……」

 

 アカネとカリンが哀れな物を見る目でコユキを見る。するとまるで心外とばかりにコユキが地団駄を踏む。

 

「べ、別におかしくなったわけじゃないです! 私が無策のままここに来たとでも? こんなこともあろうかと……」

 

 コユキは屋上の端によってゴソゴソに隠してあったコンテナを弄りまわす。そしてまるで小学生のランドセルの様なものを取り出す。

 

「じゃーん! 個人用の脱出ドローンです!!」

 

 グラン達にドローンを見せつけた後、いそいそと装着作業を進めるコユキ。

 

「個人用の……」

「脱出……」

「ドローン」

「……あん?」

「ほう……」

「ふふっ、茫然としている間に装着も完了! にははは! バーカバーカ、先輩たちのバーカ!! この大海原に出ちゃえば、いくら先輩達でも追いかけられるはずがありません! そこで指を咥えて見ているといいです! それでは、あらためて今回はこれにて! にははは!! バイバーイ!」

 

 背部のプロペラが作動して飛び立つコユキ。そんなコユキを見上げるグラン達。ふと、ネルがカリンの方を向く。

 

「……カリン」

「……了解」

 

 カリンがネルの声を受けて自分の対物ライフルを構えてコユキの背中のプロペラに狙いをつける。そして一呼吸置いた後引き金を引く。轟音が響きわたりカリンの放った弾丸は真っすぐに狙った場所へ飛んでいきプロペラを撃ち抜いた。

 

「うきゃああぁぁぁぁぁっ!?」

「お見事」

「この距離で褒められてもな……」

 

 プロペラを撃ち抜かれたドローンは姿勢が崩れ、激しく揺れながら海へと落ちていった。

 

「ぷぁっ! ちょっ! ぶほっ! あっ、ねっ、ちょっっ!? 助けて! 先輩たち! ちょっ、無理これごぼっ! ぶはっ!? わたっ、泳げなっ……先輩! 先輩っ! 助けてっ! せんぱっごぶっ、げほっ、うぇっ!!」

 

 海で必死にもがいているコユキの姿を見下ろすグラン。余りにも必死で恐怖に染まっている表情を見て少し胸の溜飲が下がる気がしたグランは溜息をつきながら肩にかけてあったロープを手に取る。

 

「ホントは拘束に使うつもりだったんだが思わぬ役立ち方をしたな……。ほら、これに掴まれ!」

 

 グランは備え付けの浮き輪にロープを括り付けてからコユキに向かって投げる。

 

「どうしてこの展開が、予測できなかったのでしょうか……。お手伝いします、グランさん」

「この距離で外すわけがない。私も手伝う」

「……はぁ。あんな奴の為に、ここまで散々走らされたと思うと……なんか、すげぇ気が抜けた」

 

 そう言ってネルは屋上ラウンジの上に座り込むのだった。

 

◎・ゴールデンフリース号 ロイヤルスイート・

 

「……以上が、今回の顛末です。えっと何か質問があれば伺いますが……?」

『……質問というか……相当、大騒ぎしたみたいね……?』

 

 グランの宿泊する部屋で通信機を展開し、ミレニアムにいるユウカに報告をするアカネ。そんなアカネの報告に通信機越しのユウカは眉をひそめながら低い声でそう言う。

 

「え、ええ。ですがご心配なく。先ほどもお伝えしたように、『学校間の問題』にはならないようですし。少々費用は発生してしまいましたが……」

「それも俺が負担するからミレニアムに損はないはずだ。あの白兎が使った分は帰らないが……」

「まぁ、最大限努力義務は果たしたと言いますか……」

 

 ユウカの様子に若干ビビりながらアカネが言葉を続ける。

 

『すー、はー……。ふうぅぅ……すーーーーー、はーーーーー……』

「ユウカ、C&Cは確かに隠密活動を貫こうとはしていた。ただ、言っちゃあ悪いが、こいつら根本的に隠密には向いてない。物事を静かに終わらせたいならそれ専用の組織を一から作った方が早いレベルでな」

 

 グランがそう言うとユウカも大分落ち着いたのか溜息をついた後いつも通りに戻る。

 

『はぁ……まぁ、代表が帯同してそう感じ、結果もこうならそういう事なんでしょう、これ以上何かを言うつもりはないわ』

「そりゃよかった」

 

 ユウカの出した結論にグランも安心したのか深くソファに腰掛ける。そして思い出したようにユウカに質問をする。

 

「そういえば白兎はどうする? 今はあぁして縛っているが……」

 

 グランが親指で部屋の隅の方を指すとそこにはロープで縛られて部屋の隅に寝転がされているコユキがいた。

 

『それなら、今はそのままでお願い。ミレニアムに到着後は収監。よっぽどの事情が無い限り、しばらく出ることは叶わないわ。一応付け加えておくと、また脱出するというのはかなり考えにくい状態になるわ。直径10メートルの正六面体のガラスの部屋の中だし、中にはどんな電子機器も存在しない。あえてデジタルではなくて、セキュリティを紙の書類と人員とで管理して、スマートフォンなどの持ち込みも禁じられた区域になっているもの。最初はスネイル庶務長が管理する再教育センターへ送るというのも考えたんだけどあそこは最新機器で一杯だし……逆にアナログなこの牢屋なら、ってこと』

「なるほど。正しい判断だな。それで何時まで面倒を見ればいい? 俺達がこの船を下りるのは2日後だぞ、それまでこの部屋に閉じ込めるのか?」

 

 グランはそう言ってソファ近くに置かれたローテーブルの上のグラスを手に取りの飲み物を口に含む。

 

『あぁ、それならこちらから受取人が向かったわ』

「ふぅん?」

『明日にはノアがそっちに着くからよろしくね代表?』

 

 「!?」

 

 最後、グランにとって衝撃的な言葉を残してユウカとの通信は切れたのだった。

 

「……マジかよ」

 




次回、書記襲来。

 評価、感想は作者の承認欲求モンスターが満たされるので執筆速度向上につながります。どうぞよろしくお願いします。

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