シャーレの部長はブラックマーケットの代表   作:四脚好き

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100話

◎・ゴールデンフリース号 ヘリポート・

 

「よ、よぉ、ノア」

「はい、お久しぶりですね『代表』」

 

 ヘリポートの上でグランとセミナーの書記、生塩ノアは対面していた。ノアはグランの方を見てニコニコと笑みを浮かべているがよく見ると、本当にうっすらと目が開いておりその隙間から光のない真っ黒な瞳がグランを射抜いていた。一方のグランもその視線に気が付いており少しばかり緊張しながらノアに話しかける。

 

「直接会って話すのは……2週間ぶりぐらいか?」

「一か月と18日、18時間25分3秒ぶりです」

「……悪かったよ」

 

 ノアの頬に手を添えながら困り眉で謝るグラン。

 

「私には合わなかったのにユウカちゃんとは頻繁に会っていたらしいですね?」

「それはユウカが頻繁にシャーレに来るから……」

「ミレニアムプライスの時もゲーム開発部に付ききっきりでしたよね?」

「あれはそういうシャーレの仕事だったし……」

「今度はC&Cの方たちとクルージングですか?」

「……これも一応仕事だから……」

「……」

「……」

 

 ジッと見つめ合う二人。しかし次第にノアの視線に耐え切れなくなり目線をずらしてノアの頬に伸ばしているのとは逆の手で自身の頬を掻く。そんなグランの様子を見てノアは溜息をついた後自分の頬に添えられていた手をそっと握り、ほほ笑む。

 

「まったく、仕方がない人ですね。わかりました、今回は許してあげます。でも次からはもっと私にも構ってくださいね? じゃないと拗ねちゃいますから」

「あぁ、了解した」

 

 ノアの言葉にうなずいたグランはノアの頬に手を添えたまま反対の手をノアの腰に回してそっと抱き寄せる。

 

「っぁ」

「拙速だが、感嘆な埋め合わせをさせてもらう」

「……んっ」

 

 そうしてそのまま有無を言わさずノアに口付けをする。対するノアも予想していたのか何も言わずグランを受け入れる。そして長いようで短い間口付けを愉しんだ二人はグランのエスコートでまず客室に向かうことに。道中ノアは豪華客船が珍しいのかあちこちに視線を動かす。

 

「どうだ凄いだろ?」

「ええ、細かなところの装飾も高級なものが使われていますし、汚れもありません。ずっと海の上だというのに日々のメンテナンスや清掃を怠っていない証拠です」

 

 そこまで言ってノアは一度言葉を切り、グランの方を向く。

 

「それに女性はバニースーツ。代表が休暇でよくここに来る理由もわかりました」

「っスーー。っとそれは……だな……」

 

 再び目を細めたノアに笑みを向けられるグラン。今度は冷や汗を流しながら目を逸らす。グランが言葉を濁しているとノアは笑みを消し少し拗ねたような顔をして下を向き、グランの腕にそっと抱き着く。

 

「ああいう恰好がお好きなんですか……?」

「……否定し辛いなぁ」

「え?」

「あ」

 

 ノアの言葉に無意識の内に返事をしてしまい、あとから自分の発言に気が付いて自身の失敗を悟るグラン。なにせ無意識の呟きを聞かれたのは"よりにもよって"絶対記憶のノアだ。グランの発言は永遠にノアの脳内に保管され続けるだろぅ。

 

「グランさんはバニーガールがお好き……っと」

「訂正させてくれ」

 

 ノアが手帳に記録した情報を書き込むのを寸で止めたグラン。

 

「訂正ですか?」

「バニーガールが好きというよりあのタイプの格好……あの、えっと……スーッ。俺は……そのスク水が好き、なん……です。だからほら、バニーガール衣装も似てるじゃん。だから否定し辛いのであって、バニーガールが好きという訳ではないんだ? ああっ、クソ! 何でこんな事を言わなきゃならんのだ! いや、バニーガールが好きと記憶されるよりかはマシなのか、マシなのか!? バニーとスク水ってどっちがマシなんだ? ええい! 止めろノア! その生暖かい目線を向けるのを止めろ! あと目線をこっちに向けたまま高速でメモ取るのもやめろ! 怖いから!」

 

 グランが必死に弁明? をしている間ノアは今まで見たことない生暖かい笑顔を浮かべスラスラと高速でグランの話す言葉を一字一句記録していく。そうしてグランは墓穴を掘りながらもどうにかこうにか部屋に辿り着く。

 

◎・ゴールデンフリース号 ロイヤルスイート・

 

「お帰りなさいませ、グラン様!」

 

 なぜか部屋の中にいたリロがパタパタとリビングルームの方から歩いてきて出迎える。

 

「ご飯にしますか? お風呂にしますか? それとも~私? キャッ♡」

「勿論リr……、客人がいるから取り合えず飯……というか飲み物二人分を頼む」

「はい、かしこまりました」

 

 一瞬でリロを選択しそうになったが隣にいるノアの目線がまた冷えてきたのを感じたグランは急いで本来の目的を果たしてしまおうと奥のリビングに向かう。そしてリビングルームについたグランの目に入ってきたのは……。

 

「さっすがロイヤルスイート! ごはんも美味しいですね! あ、これいただきます!」

「あ、おいガキ! それはあたしが狙ってた奴だぞ!」

「へへーん、こういうのは早い者勝ちですよ!」

「ふふー、美味しいね! もっと頼んじゃおうかな!」

「いや、アスナ先輩これ以上はもう食べきれるか分からないし、代表が来てから考えた方が良い」

「皆さん、紅茶も入りましたよ」

 

 ルームサービスの料理を頼みまくり和気あいあいと食べているC&Cとコユキの姿だった。いつの間にかコユキの拘束も解かれて椅子に座りながらもきゅもきゅとまるでハムスターのように頬を膨らませていた。

 

「グランさん?」

「……一応拘束はしていたんだ。なんかいつのまにか自由になってるけど」

 

 ノアが横からグランに声をかける。そんなノアの声に弁明するグラン。グランの声に気が付いたのかコユキがグランの方に手を振る。

 

「あ、グランさん! グランさんもこっちに来てごはん食べ……ウワーッ!? ノア先輩!? 何で!? 何でここに!?」

 

 呑気に手を振っていたコユキはグランの隣にいるノアを発見し勢いよく立ち上がる。そして逃げるためにと走り出そうとするが、隣にいたネルに足を引っかけられ思いっきり転ぶ。

 

「あぎゃ!?」

「わざわざミレニアムから迎えに来てくれたんだ、そうじゃけんにするもんじゃねーよ」

「ありがとうございますネル部長。迎えに来ましたよ、コユキちゃん。ミレニアムで、ユウカちゃんも首を長くして待ってますから早く帰りましょうねー?」

「うわーーー! なんでーーー! まって、せめてあのお肉だけでも食べさせて!」

「あむ」

「ああーーーーっ! ネル先輩が食べたーーー!」

「あぁ? 早い者勝ち、だろ?」

 

 バタバタとロイヤルスイートの高級感にはまるで似合わない音が部屋中に響き、その参上にグランは思わず笑ってしまった。少し呆れながらも心の底からこの瞬間が可笑しく、楽しくて休暇が始まって以来グランは本当に心からの笑顔を浮かべるのだった。

 

◎・・・

 

 あの騒ぎのあと、ノアは改めて後日時間を作ることをグランと約束し、コユキを引きずってヘリに乗り込み、ミレニアムに帰っていった。帰り際にノアが何かネルに囁いていたのがグランの印象に残っていたがノアがなんと言ったのかネルは最後までグランには教えなかった。

 そんなことがあった後、ネル達もグランが取っておいた部屋に移動し、リロも業務に戻った為、部屋にはグラン一人だった。

 

「……静かだな」

 

 グランはリビングルームのソファに座りながら、辺りを見回してそう呟く。日も落ちて窓の外には真っ黒な夜の海が広がっている。静かな部屋と暗い光景はグランに祭りが終わった後の寂しさのようなモノを感じさせる。

 

「請求書の確認でもするか」

 

 手持無沙汰になってしまったグランは机の上に置いていた端末を手に取り今回負担することになったゴールデンフリース号の被害額を確認していた。

 

「……思ったより高額ではないな、良かった。……なんというか、モモイのプライステーションといい今回の件といいミレニアムにかかわると大体何かを弁償するハメになってないか俺? というか、エンジニア部関連だはあるがウチの組織ミレニアムに金を落とし過ぎでは? にしては……?」

 

 ふと今回の任務にあたる際にアカネから聞かされた説明を思い出す。ここ最近でミレニアム名義の債権が発行されまくっており、ミレニアムの財政が危機的状況にあるということ。

 

「コユキがいくら溶かしたかは分からんがウチがミレニアムに落とした金も相当なものなはず、それが一気に危機的状況? コユキ一人でそんなに使ったのか? 日々の実験での被害額などを考えても少しおかしい気が……」

 

 グランは特別頭が良い訳ではではない。それどころかアビドス高校を一年の途中で中退しているため、はっきり言って頭の回転などはともかく、知識などでは圧倒的に劣っている。しかしそんなグランでも今回の件には何か不自然な物を感じていた。無い頭を無いなりに使ってどうにかこうにか解を導き出そうとしていると、不意にドアをノックされた。

 

「……」

 

 ノックによって思考が妨げられたグランはそのことに若干イラつきつつもドアの前まで向かいドアスコープを覗き込む。

 

「あ?」

 

 ドアの前に立っていたのはメイド服のネルだった。何かあったのかと思いドアを開ける。

 

「どうした?」

「あ、えぇっとだな……」

 

 ドアを開けてネルに話しかけるグラン。一方ネルの方はドアが開いてからずっと挙動不審で言葉に詰まり、グランの方をチラチラと見ている。

 

「取り合えず部屋、入るか?」

「え? あ、お、おう!」

 

 グランが扉を大きく開けてネルを部屋の中に招き入れる。おずおずと部屋の中に入ってくるネル。

 

「取り合えず座れ。飲み物のリクエストは?」

「ねぇな、何でも良い」

「分かった」

 

 そう言って気グランは冷蔵庫の中から適当なペットボトル飲料を取り出してネルに向かって放り投げる。それをネルは上手くキャッチした後キャップを軽く捻り飲み物に口を付ける。

 

「それで一体どうしたんだ? というか、他の奴等はどうした?」

「アカネは部屋とか船を見て回ってるし、アスナはまたゲームをしに行ってカリンはそれについてった」

「成程、互いに手持無沙汰だったわけだ」

 

 薄く笑いながらグラスをもってソファに座り直すグラン、その対面にネルも座る。

 

「……それでさ、今回は世話になったな」

「あぁ、気にする必要はない。俺の償い的な意味もあったしな」

「それでもだよ。……感謝位、直に受け取っとけよなテメェ」

「……そうさせてもらう」

 

 そこまで言って二人はどちらが言い出す訳でもなく飲み物を前に出す。

 

「任務の成功に」

「乾杯。……っぷはぁ! アタシもグラスにすりゃあ良かったよ!」

「今からでも注ぎ直すか?」

「いーや、やめとく。今日はこれで良い、これが良い」

 

 そう言って、グランとネルが出会ってから今回の任務での思い出話などに花を咲かせる二人。そんな中飲み物をドンドン飲むネル。飲み物を飲む量に比例してネルの呂律はドンドン怪しくなっていく。その様子に違和感を感じたグランは一度ネルの飲んでいるペットボトル飲料を確認する。

 

(アルコール……はは言ってないな。つまりただの場酔いか? 部屋に入るときもなんだか挙動不審だったし、極度の緊張状態と豪華客船での非日常が化学反応でもおこしたか?)

「おい……こっちを、アタシを見ろ」

「ちょっ!?」

 

 少しの間グランはネルが持っていた飲料の方に注目していたのだが、その間にいつの間にかネルはグランのすぐ隣まで移動していた。顔は赤いが何やら不満気な表情でグランのネクタイを引っ張るネル。

 

「お前はやっぱり……リロにしてたコト、他の女にもシテんのか?」

「何の話だ……?」

 

 一瞬本気で解らずは空ずしもシラを切るような形になるグラン。

 

「『尋問』」

「ッ!? 見てたのか!?」

 

 ネルの発した一言に驚愕しグラスを落としかけるグラン。どうにか床に落ちて割れるのだけは防いだが、ホッとするのもつかの間、ネルの攻勢が続く。

 

「他の女にもシ・テ・ん・の・か・?」

「……」

 

 嘘や言い逃れは許さないとばかりに圧をかけるネル。その視線の強さにグランも諦めたのか、両手を上げながら口を開く。

 

「シテる。16人かな」

「じゅっ、じゅうろッッ!?」

 

 グランの答えた人数に驚いてネクタイを掴んでいた手を離してしまうネル。そしてフラフラとグランの隣から離れて窓を背にする。

 

「……しろ」

「え?」

 

 顔を下にむけたまま何かを喋るネル。

 

「アタシともシろって言ってんだよ! その……え、えっちなこと!」

「は、はぁ!?」

 

 ネルの言葉にソファから立ち上がり驚くグラン。

 

「なんだよ、会ったばっかりのリロとは出来てアタシとは出来ねぇってか!?」

「いやいや、アレは『尋問』だったし、そもそもそういうことは好きな男とヤレって」

「アタシが! 好きでもない男に身体を許すような女に見えるってのか!?」

「そうとは言ってないが……」

「初めてなんだよ……」

 

 先ほどまでの勢いがなくなり手をギュっと握りこんで下を向きながらなにかを噛み締めるように喋り出すネル。

 

「アタシに正面切って喧嘩売ってきて、いい線いって、互いに笑いあう男なんて初めてなんだよ……。そんなお前が好きなんだよ……アタシは。それにミレニアムにいる男なんて全員ロクでもない」

「いや、それは言いすぎだろ」

「高慢ちきなスネイルやら、溜息ばっかりのオキーフ、胡散臭せェラスティに、事なかれ主義のホーキンス! おまけにビビりのスウィンバーンにサイコのペイター!」

「……」

 

 ネルの怒涛の罵詈雑言に思わず口を噤んでしまうグラン。

 

「お前が……グランが初めてなんだよ、アタシがこんなに好きになった男は。だから……ほらよ」

「ぇ!?」

 

 ネルはボタンやらベルトやらを外してメイド服を脱ぎ捨てる。ストンと落ちたメイド服の下には今回の任務で着用していたバニースーツがあった。

 

「こ、こういうのが好きなんだろ? 書記が言ってたぜ」

「……ノアめ」

 

 薄暗い部屋の中月明かりに照らされるバニーガール姿のネルの姿はグランの目にとても美しく映った。グランもここまでされればもはや断る理由もなく、ゆったりとした歩みでネルに近づく。グランがネルの身体に手を伸ばそうとすると直前で待ったがかかる。

 

「そ、その!」

「なんだネル? いまさらやっぱやめたは無しだぞ?」

「や、やめねぇよ! でも、さ、先に! ち、チューしろ……」

「……」

 

 ネルの『チュー』発言に思わず固まって、手で目を覆い顔を上にあげるグラン。

 

(そっか……キスでも口付けでもなくチューか)

「な、なんか変なこと言ったか!?」

「いや、そんなことは無い。仰せの通りに、お嬢様」

「誰がお嬢さ――んぐっ――」

 

 グランはネルの肩を強くつかんで深い口付けを交わした。

 

◎・・・

 

 ネルとの運動のあとグランは隣で寝ているネルにタオルケットをかけ寝室を後にする。そして火照った体を冷まそうとバルコニーに出ようとするが、途中で自身の端末に連絡が入っているのを見つける。端末を手に取り電話をかけるグラン。

 

「すまない、少し手が離せなかった何かあったかキッド3」

『ディヒヒヒ、どうせまた女の子と寝てたんでしょう? 知ってるよー♪ まぁいいや、それよりも伝えたいことが会ってね』

「あぁ」

『"蜂蜜"そろそろ収穫できるよ』

 

 キッド3がそういうとグランは眼を見開いた後いつもより数段低い声で返事をする。

 

「了解した。こちらもシャーレの伝手を使って戦力を集める。お前たちは第二種戦闘配置で待機」

『了かーい』

 

 そこまで言ってグランは通話を切り、夜の真っ暗な海を見つめる。

 

「バニーハントの次はハニーハントか……」

 




100話記念にグラン君の性癖開示。因みに、グラン君の性癖がスク水になった理由は彼が元アビドス生だからです。グランくんも"宝探し"に参加してんです。あんなんを高校1年の男子が間近で見てたら性癖歪むに決まってんだろ……ッ!?

 評価、感想は作者の承認欲求モンスターが満たされるので執筆速度向上につながります。どうぞよろしくお願いします。


 
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