101話
◎・シャーレビル・
ゴールデンフリース号での休暇を終えたグランは一度ブラックマーケットに戻りキッド達にお土産を私、溜まった書類の整理をしたあとシャーレに向かっていた。とは言うもののブラックマーケットでの仕事に移動とかなり時間を食ったため、シャーレに着いたのは日の入り直前だった。
「すまない先生、遅れてしまった」
「あ、お帰りーグラン! 休暇楽しかった……? なんというか大変だったみたいだけど」
「……楽しめたよ『色々と』ね」
「?」
グランの意味深な視線に先生は首を傾げる。
「まぁともかく、コレお土産のゴールデンフリース号クッキー、あと先生が好きそうだなと思って……」
「え! 何々!?」
グランが手に持っていた袋の奥からある箱を取り出して机の上に置く。
「ゴールデンフリース号、1/400プラモデル」
「おおおぉぉぉっ!! 良い、凄く良いよグラン! ありがとう!」
そう言って先生はプラモデルの箱を持ち上げ、色々な角度から眺める。
「ほうほう……一部金属パーツ込み、いいなぁ。次の休みの楽しみが出来たよ! ありがとう、大切にするね」
そこまで言って先生はプラモデルの箱を一度片付けてクッキーの方にも手を伸ばす。その間にグランは数日ぶりに自身のデスクに着席する。窓の方を見ればシャーレビルが高層建築であることもあり夕焼けに染まるD.Uの街並みが綺麗に見える。そんな景色を眺めながらグランは先生に話しかける。
「俺がいない間どうだった?」
「そうだねー……。こっちもこっちで色々大変だったよ」
そう言って先生は山海経であったサヤの作った若返り薬とそれを巡るシュンそして梅花園の騒動の話を聞かされる。
「シュンとシュエリン……サヤの若返り薬に、ヴァルキューレの警官か……随分とまぁややこしい事態に遭遇したな」
「えへへへ」
「褒めてない」
グランの言葉に頭を掻いて照れる先生。そんな先生の姿に思わずグランは突っ込みを入れてしまう。そうして一息入れた後、グランは本題に入るため姿勢を正す。
「先生」
「……どうしたの?」
にこにこクッキーを食べていた先生もグランの雰囲気の変わりように真面目な話なのを察した。グランはそんな先生の前に資料を並べる。先生はグランが並べた資料の一つを手に取って眺める。
「これは……ブラックマーケットの地図?」
「その通りだ。まず、端的に要望だけ言おう。我々『ODI ET AMO』は市街区エリアへの侵攻を決定した。それを『ODI ET AMO』の代表としてではなく、シャーレの部長として実行することでシャーレに所属している生徒たちの力を借りたい」
「……一応理由も聞かせてくれる?」
グランの言葉に先生は厳しい目つきとなり手に持っていた資料を机に戻しグランの方にしっかりと身体を向ける。夕焼けを背に影となったグランの顔はその目だけが爛々と輝いていた。
◎・2日後 シャーレビル 会議室・
その日のシャーレビルには多くの生徒が訪れていた。ただ多くの生徒が来ているというだけでなくその顔触れも凄まじいものだった。
「これだけの生徒が一度にシャーレに集まるなんて初めてですよね……」
「はい、グランさんが『シャーレの部長』としてシャーレ部員皆さんに招集を書けたみたいです☆」
「それでこんなに……グランは一体何をするつもりなのよ……」
「ん、強そうな人が一杯」
「シロコちゃーん、一応ちゃんとした会議の場だから喧嘩売らないでね~」
「ひ、ヒナまで来てるじゃない! だ、大丈夫よね? 行き成り襲われたりしないわよね」
「アルちゃん、ビビり過ぎー!」
「わ、私が爆発させてきますかッ!? 爆発させますッ!?」
「落ち着いてハルカ。シャーレの部員として呼ばれたんだし、襲われることはないだろうけど」
「アレは便利屋ッ! 委員長!」
「放っておきなさいアコ。今、私たちはシャーレの一員としてここに来ている。それは彼女たちも同じよ」
「それにしてもすごい面子だ……。戦争でもする気なのか代表は?」
「それは無いと思いますが……」
「キヒヒヒヒッ」
「ここがシャーレっスかー……。思ったより物騒な場所っスねー」
「ハスミ先輩に聞いていた話と大分違いますね……」
「ええ、そうですねイチカ、マシロ。ただ普段はもっと穏やかな雰囲気なのです。が、今回は何やら事情があるみたいで」
「あはは、どうして私呼ばれたんでしょう」
「先生、グランさん……」
「シャーレに所属したばっかりなのにこんな大規模作戦に参加するなんて……」
「私たちの華々しいシャーレデビューってことで!」
「新型ドローンの実験には最適……」
「あんた達……どうしてまだ説明受けてないのに会議の内容知ってるのよ」
「わぁー、すっごい! 見て見て強そうな人が一杯だよリーダー!」
「ゲヘナの風紀委員長に正義実現委員会の委員長、七囚人までいやがる。……そしてあの盾持ちのチビ……ふーん、面白れェ」
「チビって、リーダーと大差ないだろう?」
「恐らく部長の方が1cmほど大きいですね」
「ふわーー、眠い……」
「もう、そしたら会議が始まるまで端っこのソファーに居ましょうか。カエデちゃんも行きましょう?」
「はーい。ふふーん、ムシクイーンが好きな人とかいないかなー」
「主殿のお呼びとあれば即参上! ニンニン!」
「ふふふ♡」
様々の学園の人間が集う会議室。そこにに向かう廊下をグランと先生は共に歩いていた。グランは真っすぐ前を向いて歩きながらとなりの先生に話しかける。
「それぞれ予定があるだろうにこの二日間でこれだけの人数を集められるとは、流石先生、っ言ったところかな」
「ふふっ、私だけじゃなくてグランの力もあると思うな」
「特にヴェリタスを所属させられたのは大きい、今回の作戦は市街地だ。彼女たちの能力で街の機能を握れば戦局は有利に進む」
「そうだね、これ以上の被害を出さないためにも頑張ろうね!」
先生の言葉にグランが頷いてね会議室の扉を開ける。一斉に先生とグランに視線が集まる。その視線を浴びながらもズンズンと壇上に向かうグランと何人か目のあった生徒に手を振りながら壇上へ向かう先生。集まった生徒たちもそろそろ会議が始まることを察して近くの椅子に座ったり、
、端の壁に寄りかかったりしながら話を聞く姿勢をとる。壇上に並び立つ先生とグラン。最初に先生がマイクを取って挨拶をし始める。
「おはよう皆! 突然の招集だったのに集まってくれてありがとう。詳しい説明はこの後グランからあるけど、みんなの力が必要になったの! お願い! どうかみんなの力を貸して!」
そう言うと、先生はグランの方にマイクを差し出す。先生からマイクを受け取ったグランは前に出つつリモコンで部屋の電気を落とす。同時に会議室のホワイトボードにプロジェクターからスライドが映し出される。
「作戦を説明する。目標はブラックマーケット市街区に潜伏している宗教団体『ビーハイブ』及び『レジスタンス』を名乗る連中の排除――」
「グラン」
グランが説明をしている途中で先生が言葉を遮る。後ろを振り返り先生を見ると、先生はニコリと笑って首を振る。それをみたグランは溜息をついた後、言葉を続ける。
「捕縛だ、捕縛。敵の主戦力は歩兵にUNAC、あとは軽戦車が数台確認できた。お前らの実力次第だが、まぁ、ここにいる面子で手こずるやつはいないだろう。市街区の廃墟などを利用したゲリラ戦法が予想されるが、怪しい廃墟は全てなぎ倒して構わん。とりあえず、概要の説明は以上だ、何か質問は?」
グランがそう言うと同時にハスミが手を上げる。その顔は怒り半分混乱半分と言ったところだ。グランがハスミを呼び指すと、ハスミは立ち上がってグランに質問する。
「代表、ハッキリと答えていただきます。貴方はブラックマーケット内での勢力拡大を私たちに手伝わせるつもりですか? もしそうだとすればシャーレの部長という立場の権力を乱用しているのでは?」
「……」
ハスミの発言に会議室の空気がヒリつく。ハスミの質問に一瞬目を丸くしたあと、目を拭染めて笑みを浮かべるグラン。
「1/3正解だ」
「……残りの2/3は?」
「一つ、この『ビーハイブ』のリーダー、通称"クイーンビー"に個人的な確執がある。それを晴らしたい。二つ、『ビーハイヴ』だか……ブラックマーケットを飛び出しキヴォトス各地で行動を始めている。確認出来ただけでトリニティ、ミレニアム、山海経、アビドス辺りで構成員が手を出している」
そこまで言ってグランは胸元のポケットから小瓶を出して会議室中に見えるように掲げる。
「奴らは各地に構成員を傭兵として派遣、その報酬や戦場で手に入れた銃器をマーケット内で売り捌いて手に入れた財貨を何等かの研究に当てている。この小瓶の中身もその過程でできたんだろうな。これが問題なんだ」
「その小瓶は一体……?」
会議室中の視線が小瓶に集まる。これがどういうものなのか実際にブラックマーケットでみたのか、それとも察したのか、ヒフミにワカモ、ネルやカヨコが顔を顰める。
「『ショッキング・ハニー』と呼ばれている栄養剤と言えば聞こえは良いが……要は麻薬だ」
「「「「ッ!?」」」」
「安価で甘く、蜂蜜みたいに飲めるみたいでな。既にブラックマーケット内でも中毒者が出ている。トリニティ、ミレニアムでもオーバードーズで倒れた奴等かがいただろ」
「……」
「アレ、この前セリカが騙されて買わされそうになっていた奴じゃない?」
「危なかったね~」
グランの言葉に思い当たる節があるのか黙るハスミ。シロコとホシノが話していてセリカがわなわなと身体を震わせている。
「薬も過ぎれば毒となる。そんな言葉が正にぴったりなクスリでな、ビックリするぐらいの栄養が詰め込まれてる。常人が飲めばたちまち栄養過多で精神異常、脳出血、脈拍異常まったなしだ。奴等、生物兵器か何なのかは分からないが"ナニカ"を研究室内で急速に成長させている。その正体も気になるが、第一にこの薬がこれ以上キヴォトスに広がるのを防ぎたい。どうか力を貸してほしい……と、まぁこれが俺の魂胆だが、納得したか羽川ハスミ? あと他の奴等も」
グランはそう言って会議室を見回すが得に何も言われなかったため、グランは壇上を後にして最初の定位置に戻る。そうして部屋が明るくなると、再び先生が話し出す。
「ハスミの懸念もわかるよ。けど、ビーハイブを通した後、残った市街区を統治できるのはグランだけだろうし、この『ショッキング・ハニー』を見逃すわけにもいかないの」
「市街区は支配したとしてもそれ程うま味もない。どうしても気になるんだったら全てを破壊して更地にでもすればいい。そんな所支配しても勢力拡大とは言い辛いだろう」
「もう、グランもそーいうこと言わない!」
先生の注意にグランが肩を竦める。それを見て何か言いたげなハスミだが、一旦飲み込むようで口を閉じて一礼した後着席する。本当はもっと色々と言いたいんだろうなーと、その様子を見ていた先生は思うのだった。そしてその後は各員の日程の確認をして作戦決行日や、各々の配置について語り合ったのだった。
「それではシャーレ設立後初めての『総力戦』必ず成功させよう」
会議の最後にグランはそう言って締めくくったのであった。
えっちな話の方のあとがきには書いたんですけどこちらには書いてなかったのでこちにもちょっとした小ネタを。
実はキサキってグランが正直に『大好き』って言葉にできる数少ない相手なんですよね。ホシノ相手に言おうとすると身体が拒絶反応を起こして吐きます。キザな感じに"愛してる"というのではなく、心の底からにじみ出る好意によって引き出される呟くような"大好き" この言葉をグランから引き出せるのは今の所キサキだけです。
まるで子供のように心の底からの"大好き"を連呼していちゃラブチュッチュッするキサキとグランをホシノに見せつけてェ~~♡