シャーレの部長はブラックマーケットの代表   作:四脚好き

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102話

◎・3日後 ブラックマーケット 市街区 外縁・

 

 その日の市街区は朝から轟音に包まれていた。あちこちで大きな爆発が起き、火の手が上がり、逃げ惑うブラックマーケットの住人達。一本の大きな川を挟んだ高層区の広場からグラン達、シャーレ一行は正に対岸の火事となっている市街区を眺めていた。指揮所として建てられた前線基地の屋上で双眼鏡を使い市街区の観察をしていたグランの隣に先生がやってくる。

 

「……本当に避難勧告は出したんだよね」

「あぁ、昨日の領地戦の宣戦と同時に勧告は出した。……キヴォトスでは、ましてやブラックマーケットで戦闘なんてよくあることだ。違いがあるとすればそれは、規模と……賭けるものぐらいだ」

 

 そう語るグランの頭上を砲弾が跳んでいき再び市街区を火に染める。

 

「EZ-06 ARGUSによる制圧砲撃はまもなく終了する。先生、第二段階へ移行しよう。声掛けを頼む」

「……うん」

 

 先生は少し俯いたままグランの元を去り、生徒たちに声を集めに行く。それと入れ違う形でキッド1がグランの隣に現れる。一瞬横目で誰かを確認したあとグランは視線を市街区に戻し、自分が思っていたことを口に出す。

 

「ここまで大規模な領地戦は久々だ。相手が領地戦の感覚を忘れて居たとしても、反撃らしい、反撃もないままだ。いささか、不気味が過ぎるな」

「ええ、それについては同意見です。追加で情報を加えるなら反抗してきているのは殆どがレジスタンスです。ビーハイブについても気になる情報が」

「なんだ?」

「クイーンビ―が前線に出て指揮を執っているとの情報が」

「はぁ?」

 

 キッド1の報告に双眼鏡から目を離し、彼女の方を向いて顔を歪めるグラン。

 

「更に、戦場に出ているのは一般構成員のようで幹部クラスの人間の姿がまるで確認できていないようです」

「それはつまりアレか、トップと下っ端だけが戦線にいて、中流が丸っと消えたわけか」

「そのようです」

「どうも変だな……。何か仕掛けられる前にケリをつける。……お前も降りてくれるか?」

 

 グランが手をキッド1の方に伸ばす。するとキッド1はその手をまるで美術品を扱うように両手で取り、片膝をつく。そしてグランの手の甲にキスをする。

 

「御意のままに」

 

 キスをした後立ち上がったキッド1と共にコンテナハウスから降りて広場の中心に向かうグラン。広場では既に先生が声をかけて回っていたことで殆どの生徒が集まっていた。グランがやって来たことに気が付いて一人、また一人と視線をグランに向ける。畏怖、嫌悪、困惑といった視線も混じっているがグランは気にもせず歩み続ける。そうして広場の中央までやってくるとドローンを使い地面を大きなスクリーンとして地図を投影する。そして指揮棒を持ち、状況を伝える。

 

「現在うちの武装列車『ARGUS』で市街区に制圧砲撃を加えている。これで相手側側の防衛設備も大分削れたはずだ。我々はこの砲撃の間にF12C STORKに乗り込み市街区へ降下、敵戦力の掃討、薬品工場の発見破壊を目標とする」

 

 そこまで言うと、グランはスクリーン上に目標のポイントを表示しそこに『F12C STORK』とタグ付けする。そしてそれを指揮棒で叩く。

 

「降下後はアタッカーチームとディフェンダーチームで展開しつつ非戦闘員の確保を行う。輸送車両もあるので負傷者は順次回収する。……これで問題はないな、先生」

「うん、ありがとうね、グラン」

 

 関係のない住人の被害を出来るだけ避けたいという、どこまでも甘く、優しい先生の言葉を最大限汲み取ったグランなりの作戦だった。無関係な人間を巻き込まずに済むということに何人かの生徒の顔は明るくなった。しかしグランは厳しい表情のまま、言葉を続ける。

 

「輸送の際には徹底的に身体検査を実施しろ。武器を忍ばせていたり……なかには体の中に爆弾を仕込む奴もいる。そんなやつらをこちら側に連れてこられたりしたら溜まったもんじゃないからな」

 

 グランの言葉の意味が最初は理解できなかったが、だんだんと言葉の意味を頭が受け入れたのか、顔を青くする生徒。中には口元に手を当ててしゃがみ込んでしまうものもいた。

 

「ここはお前たちがいつもいるキヴォトスじゃない。ここは戦場。好きなように生き、理不尽に死ぬ、肉体の有無は問題じゃない。そんな奴らばっかりの飛びっきりイカレれた戦場だ。雰囲気に吞まれるなよ。総員、戦闘準備!」

 

 生徒たちはそれぞれ自分が乗り込むヘリの元に移動して装備の点検を始める。グランはその様子を横目で見ながら医療テントの方に足を運ぶ。中に入るとセナ、チナツ、そしてキッド2ことムイが集まって会話をしていた。チナツとムイは元々ゲヘナの救急医学部所属、部長であるセナとは積もる話もあるだろう。その横ではトリニティ救護騎士団のセリナ、ハナエ、そして団長である蒼森ミネがいた。

 

「よぉ、ミネ」

「グラン! お久しぶりです」

「お前なら来ると思ってたよ」

「当たり前です。救護を必要とする声があれば、私はどこへでも参るつもりです」

「それは心強い。多分……というより確実に多くの人間がここに運ばれてくる。頼んだぞ」

「はい。救護騎士団の『誇りと信念』にかけて」

 

 そこまで話すとグランは軽く手を上げながらその場を後にしようとした。そんなグランの肩を掴んでグッと引き寄せる者がいた。

 

「待ちなさい」

「……セナ、か……」

「はい、貴方に後輩二人を取られた氷室セナです」

「語弊があるだろその言い方」

 

 グランは振り返らずに自身の肩に手を置いた人物を言い当てて、セナもそれに正直に答える。

 

「いろいろ言いたいことがありますが、時間も余りないので一言だけ、生きて帰って来なさい。どんな怪我でも我々が必ず直します。だから生きて戻りなさい。後輩を泣かせたら容赦はしません」

「……了解」

 

 肩から手が離れたことを確認してグランは再び歩き出し、今度こそテントを出る。そして自身が乗り込むヘリの近くに行き、部下に戦闘用の義肢に付け替えてもらう。右手にスナイパーキャノンのUSC-26/H SALEM、左手にガトリングガンのKO-5K4/ZAPYATOIを装備してヘリに乗り込む。指揮所では先生がアヤネ、アコ、ヒフミ、VERITASを参謀とし共に机に座り指揮や作戦について最終確認をしている。

 全員が準備を完了しヘリに乗り込んだのを確認したのか、先生が全体に向けて話し始める。

 

『最終確認完了。これから作戦を開始するよ。最後に大事なことを伝えるね……』

 

 先生の言葉に全員が耳を傾ける。

 

『無事に帰ってきて!』

「「「「「了解(はい)(えぇ)」」」」」

 

 離陸スタッフが指示を出し、一台、また一台と付き付きにヘリが離陸して、今だ砲撃が行われ、火の手が上がる戦場に向かって跳んでいく。

 

◎・市街区 上空・

 

「やはり、ビーハイブの抵抗は散発的でほとんどの抵抗はレジスタンスによるものだな」

 

 グランが眼下の街にガトリングを掃射しながらそう話す。

 

「であれば、本命ではありませんし手早く片付けたいものですね」

「ああ、であれば一気に押しつぶす」

 

 隣で話を聞いていたキッド1がグランの言葉に返事をする。グランは無線機を取り出して、全体に報告する。

 

『ビーハイブの動きが鈍い。現状反抗してきているのはレジスタンスだけだ。所詮烏合の衆、大した実力は持っていない一気に攻勢に出る。それで良いか先生!』

『わかった。戦闘が早く終わればそれだけ無関係の人の被害も減る。まだ動きが見えないビーハイヴには気を付けながら戦闘を開始して!』

『了解、これより戦闘を開始する。各員、降下準備』

 

 グランの号令にヘリのハッチが開き始める。そして全員の降下準備が整ったことを確認し、再び無線機を手に取る。

 

『全員へ! これより作戦開始だ! 第2段階へ移行する! 降下開始!』

「「「了解!」」」

 

 グランがそう告げると、一斉にヘリから飛び降りる生徒たち。落下しながらパラシュートを展開して市街区へと降下していく。グランの隣にいたキッド1もパラシュートを背負いながら降下の準備を完了させる。

 

「それだは行って参ります」

「頼んだ」

 

 キッド1はグランの頬に軽くキスをしてからヘリから飛び降りていった。いくつものパラシュートが空中に展開する。グランはそれを見ながら自分と同様にヘリに残っている人間に話しかける。

 

『さて、角楯、静山。俺達は上空から援護だ。この『F12C STORK』はそうそう堕ちない。上からあいつ等を狙って出てきた奴等をカモ打ちしてやろうぜ』

『了解。これも正義の為です』

『わかった。にしても代表も容赦がないな。私たちの銃はカモを撃つには強力過ぎるだろうに……。そういう所はリーダーそっくり』

『誉め言葉として受け取っておく』

 

 そうして三人は降下中の生徒を狙って出てきたレジスタンスをドンドン狙撃していくのだった。

 

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