◎・市街区・
『各員へ伝達、ARGUSからの支援砲撃は終了した。以降、敵車両や敵砲台の発見時は上空からの対物ライフルによる狙撃に切り替わる』
地上にいる生徒たちに上空で支援要請を待機しているグランからそう伝えられる。
「とのことだけど……支援必要だと思いますか、アカネ先輩」
「あらあら、そんなに緊張しなくてもいいですよセリカちゃん。今は同じシャーレ所属なんですから」
セリカが障害物に隠れ射撃をしながら隣にいるアカネに問う。アカネも射撃をしつつ、時折手製の爆弾を投げ込み、前線の援護をする。
「それで支援が必要かでしたね……。多分、必要ない気がしますね」
「そうだろうな。あの二人だけでも十分だったのに、ウチの委員長も加わったんだ。もう敵なしだろ」
拠点の設営が終わったため、攻撃に合流した風紀委員。ヒナはネル、ホシノと共に、最前線で大暴れしている。そんな中、後方で狙撃していたイオリがアカネ、セリカの隣に来て返事をする。
「というか、あの三人を抜きにしても、まだあと三人はいたはずだろ。どこ行ったんだ?」
「あー……」
イオリの言葉に顔を背けるセリカと、苦笑いをするアカネ。イオリはその二人の反応に『おいおい、まさか』と言いながら冷や汗を掻く。
「シロコ先輩とアスナさんは二人は二人でどちらがより多く敵を倒せるか競いに行っちゃって……。ノノミ先輩もそれの審判として二人について行っちゃいまして……」
「最前線の三人といい、その三人と言い、なんでそんな自由なんだ、お前たち!」
「だってシロコ先輩だし……」
「アスナ先輩ですから……」
「それで良いのか!?」
イオリの大声が響く。苦笑いをするセリカとアカネ。なんだか、苦労人というか、不憫な感じのする三人だが、前線は他の六人がほとんどの敵を倒していたため、危険は少なく安全に、確実に制圧を進めるのだった。
◎・市街区 ビル内・
「ぐあっ!?」
「おい、どうしっ、ごはァッ!?」
ビーハイブが拠点として使っていた雑居ビル。その建物内を巡回していたビーハイブのロボット兵達だが急に頭がねじり曲がって意識を奪われ倒れる。
「お、おい! 集まれ! 敵だ、敵がいるぞ! 資料室に集まれ!」
「集合しろ、全員で背中合わせになるんだ!」
その様子を見ていた他の兵士たちは声を上げて集合を促し、ビーハイブの情報などが集まった資料室の前に集結して守りを固めようとする。その声を聞いて兵士たちが集まり、資料室目指して走る。しかし――
「グえッ!?」
一人、
「あがッ!!」
また一人とどこからともなく襲われて姿を消していく。いつしか10を超えていたはずの足音は1つのみになった。最後の一人となった兵士は徐々に消えていく自分以外の足音と、仲間が倒れる時に聞こえる悲鳴と『ニンニン』という謎の声に恐怖した。資料室の前につく頃には視界は恐怖からの涙でぼやけ、息が上手く出来ずにいた。兵士は勢いよく資料室のドアを開けて中に転がり込み、急いでドアを閉めて鍵を閉める。
「はぁ……はぁ……はぁ……。クソっ!」
資料室の中は窓がなく、ドアのある面以外を棚で覆いつくされ、部屋の隅などは見にくいほど暗い部屋だった。そんな部屋の中で男はドアに頭を打ち付けて悪態をつく。
「何なんだ、なんなんだよ、一体!? 次はどこからッ……、いつ、襲ってくるんだ……!」
カタンッ―――
「う、うわぁぁぁぁ!!」
資料室内で何かが倒れる音が聞こえ思わずそちらに手に持っていたアサルトライフルを連射する兵士。兵士は恐怖から一心不乱に音がとて来た砲に向かって乱射を続ける。そしてワンマガジン撃ち切りいつの間にか銃からはカチッ、カチッという音だけが響く。弾切れをしていたことに気が付くとすぐにマガジンを交換し、恐る恐る音のしたほうに寄っていく。兵士が部屋の隅へと行くとそこにあったのは掃除用具入れだった。恐らく男が勢いよくドアを閉めたときに箒か何かが倒れたのだろう。そのことに気がついた兵士は苛立ち箒を蹴り飛ばす。
「くそがッ……。何処だ、どこからくる! そもそもまだこのビルの中にいるのか!?」
「あなたの後ろですよ、ニンニン♪」
「ヘアッ!?」
突如として背後から声が聞こえ首筋に冷たいクナイが当たる。兵士は驚きながらも素早くナイフを抜き放ち、身体を回転させて背後にいる存在へ切りかかる。しかし侵入者にとってその動きは何もかもが遅すぎた。首元にあったクナイが押し込まれ、首パーツのフレームが捻り曲がる。胴体と頭パーツを繋ぐ配線を切られ兵士は意識こそあるものの体の自由が利かなくなり糸の切れた操り人形のように崩れ落ちる。
「……」
倒れた兵士を冷たい目で見下しながら侵入者ことイズナは頬に着いたオイルを手の甲で拭う。そして兵士の身体を資料室の端に寄せて、部屋の中の書類を手に取る。
「んー……こちらは兵員の名簿。……こっちは出納帳、これは何かのヒントになるやも! むむっ!」
先ほどの冷たい視線とは打って変わり明るく資料室内を行ったり来たりして慌ただしく散策するイズナ。ファイルや段ボールをひっくり返して目当ての書類を探すイズナ。そして一つの書類が目に入る。それはビーハイブ内の物資輸送ルートの地図だった。それにはどこに何を、どこを通って持って行くのかが記されていた。その地図に違和感を覚えたイズナは作戦前に渡された『ODI ET AMO』が調査したビーハイブの拠点がしるされた地図と見比べる。すると一か所、渡された地図には書かれていない、つまり『ODI ET AMO』が見つけられなかった拠点があることを発見したイズナ。その発見に目を輝かせ、便利屋の方に通信を繋げるイズナ。
「カヨコ殿! こちらイズナです!」
『こちらカヨコ。どうしたのイズナ?』
「拠点の一つで見つけた地図に事前に渡された地図には載っていない拠点を発見しました!」
『ッ! 秘密の拠点……可能性は高いか。やるじゃんイズナ。流石はキヴォトス最高の忍者』
カヨコの子度はに目をキラキラと輝かせてブンブンと尻尾をふるイズナ。
「えへへへ、どんな任務もイズナに掛かればこのとーりです!」
『そうだね。それじゃあ、まずは先生に報告。そのあと私たちにも地図の写真を回して、近くで合流しよう』
「はい!」
◎・高層区 指揮所・
「うん、うん、分かった。ひとまず敵に見つからないように現場近くで待機して。うんありがとう、イズナ」
先生が通信機をおいて、地図の方に向き直る。
「イズナがビーハイブの事務所の一つで私たちの知らない拠点が示された地図を発見したみたい」
先生が指揮棒を使って報告のあった地点に旗を置く。そしてその地点を確認しVERITASがその付近のカメラなど生きている電子機器が無いか確認を始める。アヤネとアコはその場所を見て顔を顰める。
「アタッカー部隊から遠い場所ですね」
「もう、あのC&Cの部長とあなたの所の先輩がスコア争いなんか始めるから! それにつられて別の三人も勝手に行動を始めますしッ! 敵戦力の削れるスピードは凄まじいですが、ああも滅茶苦茶に動かれては指揮もできませんよ!」
「それは……すいません」
アコはこちらの指示を聞かずにスコア争いを始めた二人に辟易して、アヤネも三人の先輩の姿を思い浮かべて苦笑するしかなかった。そんな中、先生はヒフミに話を聞いていた。
「どうヒフミこの辺りの道わかる?」
「えぇっと……拠点の近くは流石にわかりませんが、そこに行くまでの道のりならたぶん。ディフェンダーチームの方が近いですね」
「成程……」
自称普通の学生であるヒフミが今回の任務で招集された理由、それはペロログッズ収集のためブラックマーケット内を歩き回り、多くの危機から逃れるために走り回る過程で身に着いたブラックマーケット内の地形把握を活かした各部隊へのナビゲーションの為だった。大通りから、抜け道まで、完全に把握したヒフミのナビによりイズナや便利屋は効率よく、ビーハイブの事務所や拠点を攻め落としていった。そんなヒフミの意見は新たに見つかった拠点にはアタッカー部隊が向かうより、ディフェンダーチームの誰かを動かした方が到着まで速いというものだった。先生は顎に手を当てて少し考えた後、口を開く。
「ツルギちゃんを動かそう」
イズナは順調に忍びの道を歩んでいます。(白目)