◎・連邦生徒会本部 エントランス・
その日連邦生徒会本部はヴァルキューレ警察学校、そして『ODI ET AMO』の手で厳重に警備されていた。多くの護衛を引き連れた『ODI ET AMO』の現金輸送車の車列が地下駐車場の中に入っていく。その車列のうち一台からグランが出てきてあるリストを手に本部の中に入っていく。エントランスに入ったグランは周りを見渡して独り言を口にする。
「……なんだか、懐かしく感じる」
「前回訪れたときから、それ程時間は経っていませんよ」
グランの独り言に応えながら七神リンが奥から姿を現す。その姿を見てグランは苦笑いを浮かべる。
「それだけ、濃い日々を送って来たってことだよ……。それにしても態々、代行自らお出迎えとは……出迎えを理由に仕事から逃げてきたか?」
「そんな訳ないでしょう。仕事は昨日のうちに余分にやっておいたので今は時間があるだけです」
「俺の為に時間を空けてくれたのか? 嬉しいよ"リン"」
「ッ、……今は業務時間内ですのでそのような呼び方は控えて頂けますか"代表"?」
リンはツカツカとグランの元に近づいてグランの頬を軽く引っ張る。
「痛てて、了解した、七神代行」
「……リン代行で結構です」
「……ふふっ、重ねて了解した、リン代行」
そう言ってグランは歩き出す。リンもグランの目的地を理解しているので隣を歩き出す。二人は目的地までの道のりを互いの近況を話したり、リンの愚痴をグランが聞いたりして過ごした。そうして目的地に着くころにはリンの顔に有った険しさは大分消え、話の合間合間に笑顔が見えるようになっていた。
「っと、財務室はここか。通り過ぎそうだったな」
「……ついてしまいましたか」
話に夢中になって目的地を通り過ぎようとしていたことに気が付くグラン。急いで立ち止まると、リンが少し間を開けてポツリとつぶやく。そのつぶやきが聞こえて意外な物を聞いたという表情をするグラン。
「なんだ、寂しいのか?」
グランはリンを揶揄ってやろうとニヤつきながらそういうとリンは真顔のままグランの方を向いて一言。
「はい」
「え?」
「本当はもう少しあなたと一緒にいたかったのですが、ここまでですね」
真顔のまま言葉を連ねるリンに唖然とした表情を向けるグラン。リンはそのグランの表情をずっと見つめていたが何かを思いついたのかふと目の色を変える。そしてグランのネクタイを掴み自身の方へ引っ張る。重なる唇、加速するグランの混乱。
「え、あ、――」
長く、深い口付けが続いた。少ししてリンはグランを離して一息入れる。
「……名残惜しいですがここまでです。また時間を作りますのでその時に――続き、してくださいね――」
リンはそう言って立ち去っていった。その場には今だ呆然としているグランだけが残された。
「……マジかぁ」
暫く経ってグランは意識を取り戻した。そして本来の目的を思い出して急いで身なりを確認する。そして財務室の扉を開くのだった。
◎・連邦生徒会本部 財務室 時は少し遡る・
「アオイ室長、『ODI ET AMO』の車列が地下駐車場に到着しました」
「分かったわ。そしたら直ぐに人を回して回収をお願い」
「了解しました。室長はいつも通り……?」
「ええ、あの人の相手をしているわ」
部下の報告を受けて自分の心臓が跳ねるのを感じる。我ながら分かりやすい女ね……。手鏡を取り出して髪や化粧を確認する。そうしてると何やらヒソヒソと声が聞こえる。そちらに目を向ければ回収に無かった室員とは別に残って作業している室員たちがこちらを見てキャイキャイとしていた。
「な、何、見てるのよ!?」
「いやー、アオイ室長も可愛い所あるんだなーって」
「ねー!」
「代表とはどうなんですか?」
彼女たちは自分の仕事そっちのけで私のデスクに集まり捲し立てる。……普段なら叱るところだけど今日はもう仕方がない。……なにより私も楽しみでしょうがないのだから。
「どう……って言っても"あの人"とは別にそういう関係じゃ……」
顔が赤くなるのわかる。口ではどうとでも言い訳できるが頬が緩むのを抑えらない。そんな自分の表情が恥ずかしくなり顔を室員の子たちからそらす。
「キャー、『あの人』だって!」
「お熱い事ですねぇ」
「いいなぁ……」
各々の反応をして盛り上がる室員の子たちをよそに思い出すのは初めて彼と会った時の事。当時連邦生徒会の財務室に入ったばかりの私は日々の業務に疲れ果てていた。覚悟していたとはいえ連邦生徒会の業務は大量で右も左もわからなかった私は疲れ果て、擦り切れていた。そんなある日、『彼』に出会った。その日も彼は今日のようにブラックマーケットでの収益の何割かを連邦生徒会に納めに来ていた。一年生だった私は『後輩だから』というだけの理由で彼の出迎え役を押し付けられた。そして当時荒れていた私は恐れ知らずにも案内している最中に彼に大して文句や悪口を吐いていた。
『まったく、何が上納金よ。ただの賄賂じゃない。ブラックマーケット代表とか言っても結局連邦生徒会には逆らえない訳ね』
『……っ、くくくっ』
『何? 何かおかしい事言ったかしら』
『いや、随分強気な娘が来たものだな、とな』
『あら、強気な女なお嫌い?』
『嫌いとは言ってないさ』
思い出したら頭が痛くなってきたわね。
『これは"賄賂"じゃなくて"場所代"さ』
『場所代?』
『俺達は連邦生徒会が所有しているはずの土地を使って"学園自治区ごっこ"をしているにすぎないからな。その場所代を納めてるんだよ』
『場所代ね……。いいわ、それで一旦納得してあげる』
『それはありがたい』
……本当になんなのよ、私のあの態度はッ!? ああっ、恥ずかしい、恥ずかしい、恥ずかしい! そんな出会い方をした私たちだが彼は私の精神状態に気が付いていたようで、それからかなり気を遣ってもらった。そうして何度もやり取りを続けているうちに業務以外の話もするようになり、友人と言えるようにはなった。時には彼の財務関係の相談に乗ったり、私の愚痴を聞いたり、時には共に街へ繰り出したりしてリフレッシュもさせてくれた。彼に出会ってから私の世界は色で溢れるようになった。私が次の財務室長になると決まった時は一緒に喜んでもくれた。
『ねぇ……聞いてほしいことがあるの……』
『どうした?』
『私……財務室長になることが決まったの』
『おおっ、遂に! アオイは優秀だからな、絶対室長に慣れると思ってたぞ』
『ふふふっ、褒めても何も出ないわよ』
まるで自分のことのように喜ぶあの人の様子が可笑しくって笑いがこみ上げる。
『……しかし寂しくなるな』
『何故?』
『アオイが室長になったら仕事が増えるだろう? そしたらウチの集金の目録を確認するのは別の人間になるだろ』
『え、私がやるわよ』
『え』
彼の肩に寄りかかっていた頭を上げてあの人の顔を見つめながらそう言うと、あの人は不思議そうな顔をして私を見つめ返してくる。
『い、いや、室長の仕事があるだろ。そもそもアオイが俺の相手をしていたのも今の室長が忙しいからアオイに対応を丸投げしたからだろ?』
『あら、私ならどちらの仕事も並行して行えるわ。……それに他の人には譲りたくないもの』
そうして私は多少無理やりではあるがあの人との時間をしっかり確保したのだ。過去の思い出に浸っているといつの間にかキャイキャイとした声は聞こえなくなっていた。どうかしたのかと思って目を向ければ、室員の子たちが扉の所に集まって外をジッと見ていた。……一体どうしたのだろう? 立ち上がり彼女たちの元へ向かう。
「ちょっと貴女たち、どうした「あ、あ、室長、今見ちゃダメです!」……なによ、逆に気になるわね」
「し、室長!」
室員の達を押しのけてドアの外を見る。そこにはあの人に深い口付けをするリン先輩の姿があった。
「え、あ、――」
頭が真っ白になって思考がまとまらない。どうして、あの人とリン先輩が……? なに、その、表情。リン先輩のそんな"女の表情"なんて初めて見た……。あなたもどうしてそんなすんなり受け入れてるのよ……。今までどれだけアピールしても私にはキス一つしなかった癖に……。
「……し、室長?」
「修羅場ktkr」
「わ、私たち少し倉庫の整理してきます~!」
そう言って室員の子たちは別の扉の方へ向かってそこから外に出ていった。……そうね、最近色々な会計書類が増えてきたから倉庫の整理は大切ね。それじゃあ私はあの人と二人っきりで過ごすとしましょうか。
◎・連邦生徒会本部 財務室 現在・
「よっ、アオイ」
「……ようこそ、水戸グラン代表」
「お、おう?」
財務室の扉を開いたグランはその部屋の最奥、室長のデスクに座っているアオイに声をかける。しかし帰って来た硬い返事に首を傾げる。
「ほ、他の室員はどうした? ウチの回収に人員わ回したとしてもいつも数人は残ってただろ?」
「彼女たちも今は別の仕事をしてもらっています」
「そ、そうか」
どうにか雰囲気を変えようとグランが話を振るが、アオイはまったく相手にしにない。仕方がない、とあきらめた様子でグランは一度本来の仕事を今成すことにした。
「ほれ、これが今回の納品目録」
「確認します。確認し終わるまでどうぞ、お掛けになっていてください」
「はいはいっと」
そう言ってグランはソファに座りアオイの作業が終わるのをジッと待つことにした。そうしてパチパチと室内にはアオイの使うパソコンのタイピング音だけが響く。そして少し時間がたったころピタリとタイピング音が止む。
「……どうして」
「ん? 何か不備があったか?」
顔を伏せて手を止めたアオイが若干肩を震わせながら呟く。そのつぶやきに気が付いたグランがアオイのデスクへと向かう。
「どうしてッ!?」
「うおっ!!??」
アオイは勢いよく立ち上がり、グランの襟元を掴む。その目には涙が浮かんでいた。
「どうして私には手を出さないのよ! リンら先輩とはあんなキスまでしておいて!」
「いや、あれは俺からしたんじゃなくて向こうから……って、見てたのか!?」
「見てたわよ! というか、財務室の前であんなことして気が付かないとでも思ってたのかしら!? 私が……、私の方が貴方のことずっと大好きなのにッ!」
「あ、アオイ……?」
アオイが涙ながらに大胆な告白をする。グランは『アヤネもこんな感じに大胆な告白してきたよな……』なんてことを考えていた。
「貴方の周りに女子が多いことは噂としてして聞いていたわ。そもそもブラックマーケットには風俗街なんて所があるぐらいだもの、女性経験があることも予想はしていたわ。でも実際に目にして、それもリン先輩とだなんて……。私も、私だって色々アピールしていたのに、なんで私に手を出さないのよ! ……そんなに私は……魅力がない?」
アオイはグランの胸に顔を埋めて啜り泣き出してしまう。チラリと見えたアオイの顔と泣き声にハッとしたグランは力強くアオイを抱きしめる。
「ごめんな、俺が悪かったよ。……いくつかのアプローチには気が付いていたんだ」
「気が付いていたのに、無視していたのね……。私だって傷つくのよ?」
「悪かった、何も気負わないで喋れるアオイとの友人関係が心地よくて、そんな関係を崩したくなくて甘えていたんだ。決してアオイに魅力が無いわけじゃい!」
アオイを抱きしめながら頭を撫でてそう言い切るグラン。その言葉にアオイも涙を拭いて顔を上げる。
「本当に?」
「あぁ」
「じゃあ、証明して」
アオイは何かを決意した表情でグランを見つめる。
「証明?」
「私を抱きなさい、今すぐ、ここで」
「……ん?」
アオイはまるで上書きをするかのようにグランに熱いキスをするのだった。
いつか考えているイベント回グランが若返ります。1年や幼児は体の年齢。記憶は頭の中身、なしだとその体の当時の記憶しかない。ケガは主に四肢欠損のありなし。
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一年、記憶あり、ケガあり
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一年、記憶なし、ケガあり
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一年、記憶あり、ケガなし
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一年、記憶なし、ケガなし
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幼児、記憶あり、ケガあり
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幼児、記憶なし、ケガあり
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幼児、記憶あり、ケガなし
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幼児、記憶なし、ケガなし