◎・ビーハイヴ秘密拠点・
「合流地点はこの辺りなはず……」
「あ! こちらです便利屋殿!」
カヨコを先頭とし、ある廃ビルの中に進んでいく便利屋。警戒しながら4階の屋上の扉を開けて辺りを確認すると、既に待機していたイズナが便利屋68をに向かって手を振る。
「やっほー、狐っ子ちゃん」
「はい、ムツキ殿もご無事で!」
「あれが目標かしら?」
「はい。あ、良かったらこちらをお使いください!」
「ありがとう」
ムツキが手を差し出してそれとハイタッチした後、アルの質問に答えるイズナ。そして便利屋たちに双眼鏡を渡して、約300メートル離れた位置にある工場を指さす。その先にはいかにも町工場といった趣の工場が一見立っていた。工場の周りには物資を積み下ろしするためか広い空き地があり、一部にはコンテナが積みあがっている。工場は塀に囲まれており、辺りが開けているためこれ以上築かれずに接近することは困難に思える。
工場を眺めていたカヨコは少し考えてから口を開く。
「……うん。ここで当たりみたい」
「そ、そうなんですか?」
ハルカがどうしてわかったのか不思議そうな顔をする。それにカヨコは他の面子の視線を誘導しながら説明する。
「一見寂れた町工場だけど右の方に積まれたコンテナ。ただの輸送コンテナだけど壁みたいに置かれて内側に冷蔵コンテナ付きのトラックが止まってる。恐らく、薬品かその材料を運ぶために使っているんだと思う。次に塀に付けられた監視カメラ。工場本体や塀は古いのにあのカメラだけミレニアム製の最新モデルだよ。よっぽど侵入されたくないみたい」
「おー、凄いですねカヨコ殿! まるでスパイみたいです!」
「スパイ……まぁ、前に色々とね」
カヨコがつらつらと怪しい点を挙げていきその隣でイズナは眼を輝かせて尻尾をブンブンと振っていた。そんなイズナを見ながら少し微笑み、イズナを撫でるカヨコ。
「ど、どうしますか? 私が全部吹き飛ばしてきましょうか? 吹き飛ばします!?」
「待ちなさい! いま、万が一ってことで先生が援軍を向かわせてくれてるわ。その援軍到着まではここで待機よ」
ハルカが爆弾やらを出し始めたのを見てアルが止める。しかし双眼鏡で変わらず工場の方を見ていたムツキが真面目な顔になり、アルに話しかける。
「アルちゃん、そうも言ってられないかも。工場の中から人……ビーハイヴの連中が出てきて何か運び出してトラックに移してる。このままだと逃げられる」
「何ですって!?」
アルも双眼鏡を手に取り工場を確認すると黄色の戦闘服に身を包んだ何人ものビーハイヴの構成員が荷物をトラックに運び込んでいるのが見える。その光景を見てはアルは即座に判断を下す。
「ハルカ、行きなさい! アイツらが運び出そうとしていた荷物を確かめる必要があるわ、爆薬はなるべく使用禁止! ムツキとイズナも攻撃に参加して! 私はここから狙撃するわ! カヨコは先生への連絡と援軍が今どこまで来ているかの確認! それが終わったら指示をお願い!」
「い、行きます!」
「よーし、行っくよ~!」
「イズナ、参ります!」
「了解……」
ハルカとムツキ、イズナが屋上から飛び降りる。ハルカが持ち前のタフネスで着地して次に落ちてくるムツキを受け止める。イズナはビルの途中にあるベランダの手すりなどを活用して建物の上を走っていく。アルはビーハイヴのトラックに向けて発砲してタイヤをパンクさせ、少しでも時間を稼ぐ、その後ろでムツキは通信機を起動して先生に状況を伝える。
◎・アタッカーチーム・
「オラオラオラオラッ!」
「……ッ!」
「一気に片付ける」
ネル、ホシノ、ヒナが前線でレジスタンスやビーハイヴ兵のことごとくを撃破していく。その姿はまるで嵐のようにも思えた。次々に倒れていく、レジスタンスとビーハイヴの構成員たち。そんな快進撃を続ける三人の元に通信が入る。
『こちらキッド。小鳥遊ホシノ、美甘ネル、空崎ヒナへ通達。敵の主力は市街西部へと後退している。これを追撃、殲滅してくれ。敵は逃走を図っている、大型ヘリを破壊してそれを阻止しろ』
「あぁ!? なんでテメェの指図を受けなきゃならねぇんだ!」
『美甘ネル。私はこの作戦の成功のみを願っている。……代表の役に立ちたいのだろう? なら私の指示通りにしろ。道中にはそれなりの敵もいる。貴様らを退屈もさせないぞ』
「……」
キッド1の言葉に黙り込んで考えるホシノとネル。二人ともキッド1の指示を聞くのは嫌だが、グランの役には立ちたい。そんな二つの気持ちの間で揺れ動いている間、とくにグランに対して恋愛感情を抱いていないヒナが行動を起こす。
「……私は行くわ。代表に好意は無いけれど、作戦は成功させたいもの」
「だーっ、わーった! わーったよ! 行けば良いんだろ! 行けば! ザコ相手も飽きてたんだ、愉しませてもらうぜ!」
「決まったみたいだし、行こうか」
『了解。ルート情報を表示する』
そう言って三人の端末にキッド1からのルート情報が共有される。その情報にそって行動を開始する三人。事前にキッド1が話していたようにそのルートには多くのR2BとUNACが配置されており、流石の三人も僅かばかり侵攻スピードが落ちる。中でも赤い狙撃銃を持つ機体、黒いハンドガンをもつ機体、暗い赤のマシンガンを持つ機体、紫のショットガンを持った機体の四機からなる部隊と黄緑と桃色の似たパーツからなる二機、オレンジのグレネードライフルを持つ機体、青色の大口径対物ライフルを装備した四機からなる部隊の二つはどちらの部隊も連携の制度が高く、たかがUNACと思い挑んだ三人に衝撃を与えた。
「んだぁ、こいつら……? ただの機械の癖に妙にいい動きしやがる」
「そうね、でも対処できない訳じゃない」
「ただ、厄介なだけ。押し通る!」
しかし、どれだけ優秀な兵器も荒れ狂う嵐の前では無力であり、その悉くが破壊され、蹂躙された。ネルの吶喊に分断され、ホシノの猛撃に隙をさらし、ヒナによって砕かれる。その様子を遠くから隠れて確認していたキッド1。
「成程、結果は予想していたがこれ程とは……。まぁいい、必要なデータも最低限はとれた。チャンスは今回だけじゃない、じっくり進めよう」
キッド1の手にあるのは双眼鏡と先ほどまで、ホシノたちと戦っていたUNACから送信された三人の戦闘データ。実はこのルート、ネル、ヒナ、ホシノという各校のトップ実力者たちのデータを取るためにキッド1が自演して配置したUNACたちがわらわらといるのだ。三人に伝えた大型ヘリの情報も嘘ではない。しかし『ODI ET AMO』の将来を考えればより脅威なのは逃げ出したレジスタンスよりもあの三人なのである。
「代表……あなたに忠誠を誓いながらこのようなことを口走ることをどうかお許しください」
キッド1は誰にも聞かれていないことを確認し、この場にいない自身の主に言葉を送る。
「私は正直『Operation:Salvation in the desert』には賛成できないのです……。」
煙立ち上る空を見上げながらキッド1としてではなく水戸グランを慕う一人の女、大鷲ハルミとしての誰に聞かせるわけでもない、聞かせられない独り言。ハルミは双眼鏡越しに侵攻をドンドンと進めるホシノをジッと見つめる。視線に含む感情は怒り、憧れ、そして期待。
「……もし代表が幸せになれるのなら、私は代表がお前の元に行っても良いと思っている。……だから小鳥遊ホシノ、お前が代表を止めてくれ。私ではあの人は止められないんだ」
ホシノに懇願するように呟くハルミ。一方ホシノたちはハルミの用意していたUNACとは別の敵と相対していた。
「貴様らの相手は私だ雇われ共」
「そろそろザコにも飽きただろう。我が自ら、引導を呉れてやる。彼岸にて、心安らかに暮らすがよい。そして世に平穏のあらんことを」
顔に傷を持った金髪の角刈りの男が武器を手にホシノたちに立ちふさがる。その隣にはシスター服にしては露出があり、金糸の装飾がされた修道服を着た女性がスナイパーライフルを構えていた。レジスタンスのボス『ジャック・バッティ』とビーハイヴの教祖『クイーンビ―』だった。
「やっと大将首のお出ましか。どうするよ、アタシ的には両方相手してやっても良いぜ」
「私は女の方をやる。美甘ネル、お前は男の方を。空崎ヒナはヘリをお願い」
「分かったわ」
全員が武器を手に取って走り出して衝突する。市街区の戦いは終結を向かえようとしていた。
まぁ、勘づいてる読者様もいるとは思いますが実はキッド達、一枚岩ではありません。全員がグラン至上主義という意味では一枚岩なんですけどね。それぞれグランに対する思いというか考え方が異なります。
キッド1 大鷲ハルミ
『グラン様が幸せになれるのならそれが一番。私たちの事を捨てても良い。私たちはグラン様の道具にすぎないのだから。でも、本当は一緒にいたい』
キッド2 白羽ムイ
『どこにも行かせない、渡さない、捨てさせない。貴方は私たちの主で絶対的な支配者なのだから。それに相応しい生活を送り、相応しい最後を迎えるべき。どこまでもついて行きます♡』
キッド3 伊知智アム
『どこに行こうとも、何をしようと構わない。ただ"水戸グラン"という人間がどんな人間なのか、どんな物語を紡ぐのか、どんな結末を迎えるのか、しっかり記録させてほしい。だから私の前ら黙って消えるのは許さない。私と一緒にいて』
キッド4 衛府フセ
『ずっとブラックマーケットにいて欲しい。自分の主でいて欲しい。私を一人にしないで、ずっとみんなで、"ODI ET AMO"で笑っていよう? 好きなだけ奪って傷つけて、贅沢してそんな騒がしい日々が一番幸せなんだから』
みんなはどのキッドが一番好き?