◎・市街区 外郭・
「オラオラオラァ! どした、どしたァ!」
「小さくてすばしっこい……」
「あぁん!?」
ネルの攻撃をどうにかいなしつつ、右手にサブマシンガン、左手にはライフルを持つ変則二丁持ちで反撃をするジャック・バッティ。実力は確かなようでサブマシンガンで行動範囲を限定しつつ、左手のライフルで確実にダメージを与えるという戦法をとり、ネルに何回か直撃は与えている。
しかし相手が悪い、ネルはそんな攻撃ではダメージを受けずジャックの攻撃を無視して攻撃をしまくる。そんなネルの苛烈な攻めに徐々に削られて、追い込まれていくジャック。
「くっ、強いな。貴様の様な奴がいてくれれば……。全ては過ぎたことか」
「あ、おい! 逃げんじゃねぇ!」
このままではジリ貧で負けることを察したジャックは煙幕弾を撒いてネルの視界を奪った後撤退をする。相手が逃げることに気が付いたネルは怒りながら辺りに乱射して煙を晴らす。しかしけりが晴れたころにはジャックの姿は消えていた。
「あーっ、クソ! ボーナス取り逃しちまったぜ」
悪態を付きつつ足元に転がっていた石ころを蹴っ飛ばして近くの瓦礫に座り込む。座り込んだネルは頬杖を突きながらあることを考える。
「(さっき戦ってたUNAC、何か引っかかんだよな……。なんか、最近あんな感じの奴等と戦った気がするんだけどよぉ……。何処だっけなぁ……)」
ネルが考え事をしている間にも戦場の刻一刻とその姿を変えている。少し離れた場所から爆音が聞こえ、ネルは考えるのを中断して通信機のスイッチを入れる。
「こっちは終わったが、そっちはどうだ、小鳥遊ホシノ? 苦戦してるなら手を貸してやろうか?」
『必要ない。お前の手なんか借りなくてもすぐに終わらせるから』
「はっ、そうかよ」
ネルの言葉に通信機越しでも分かるぐらい不機嫌な声で返すホシノ。そんなあまりにも分かりやすすぎる態度に思わず笑みが零れてしまうネル。そのやり取りを聞いていたのかヒナが通信に割り込む。
『美甘ネル、手が空いたらこちらを手伝って欲しいのだけれど。ヘリの離陸阻止は楽だけど、流石に数が多くて手が足りないわ』
「うっし、了解。んじゃ近めの所から潰して回るぜ」
『そうしてくれると助かるわ』
そこまで話してネルは通信機のスイッチから手を離して近くの大型ヘリを確認して移動を開始した。
そしてホシノの方も状況は終盤を迎えていた。
「くっ、何故、何故我の攻撃をこうも防げる!?」
「悪いけどスナイパー相手の攻略法は昔にとっくに確立している。そもそも、あの時のグランの方が精度も威力も距離も上だけど」
そう呟きながらホシノはクイーンビーの狙撃を盾で弾いたり、回避したりしてドンドンと距離を詰めていく。
「チッ! 我が同志たちよ! あの愚か者を近づけるな!」
「「「「世に平穏のあらんことを!」」」」
クイーンビーがそう声を上げると、どこからともなく信者たちが姿を現す。ミサイルランチャーを取り出した信者たちはホシノに向けてミサイルを発射する。
「……」
回避を止めてある程度のミサイルをショットガンで迎撃してから盾を構えるホシノ。そこに無数のミサイルが殺到し爆発した。
―ドガァァァン!!―
辺りに響きわたる爆音。
「や、やったか?」
信者の一人がそう呟く。しかし、煙が消えた後、そこにいたのは多少傷が増えたであろう盾とそれを構える無傷のホシノだった。
「マジか……」
それを見た信者が驚愕の表情を浮かべ、手に持っていたランチャーを落とす。多くの信者が無傷のホシノを見て慄いているのに対し、クイーンビーだけが笑っていた。
「流石だな、小鳥遊ホシノ。あの男の傷なだけはある」
「……」
クイーンビーの言葉に眉をピクリと動かすホシノ。そのホシノの表情を見て更に笑みを深めるクイーンビー。
「そういえば、聞いてなかったね。グランは貴女と『個人的な確執がある』って言ってたけど一体グランと貴女の関係は何?」
「我とあの男の関係……。我は元々あの男の部下であった」
「へぇー、それじゃあ今はグランを裏切ったわけか。それで恨まれてるんだ」
ホシノはそう言いながら駆けだして距離を詰め始める。それに対してクイーンビーが号令を出し手再びランチャーを撃ち始める信者たち。ホシノは今度は止まることなく走り続けてシールド裏から拳銃を取り出してシールドを背負う。そのままショットガンと拳銃の二丁でミサイルを迎撃し、スライディングで避ける。
「それだけでは無い。にしても、そんな事を聞くとは……貴様はあの男について何も知らないのだな」
「はぁ?」
クイーンビーの台詞に思わず動きが止まるホシノ。その隙にクイーンビーのスナイパーライフルがホシノを捕らえて射撃する。放たれた弾丸は正確にホシノの胸に吸い込まれる。しかし寸でのところでホシノが拳銃を盾替わりに使って攻撃を防ぐ。その衝撃で少しばかり足が止まるホシノ。そこに殺到するミサイル。すかさず再度ステップで障害物まで跳んで爆風をしのぐ。瓦礫の後ろからホシノはクイーンビーに向けて話しかける。
「美甘ネルといい、お前といい一体グランの何を知っているっていうの!? グランの事は同級生で、恋人の私が一番知ってる! スク水フェチだってことも、私という恋人がいながら時折ユメ先輩の胸に目が行ってたことも、実はキスするよりも静かな場所で抱きしめ合うことの方が好きだってことも! 何か嘘をついたり不都合なことがあると目線が左にズレることも私は知ってるんだぞ!」
大声でそう宣言するホシノ。それを聞いて一瞬目を丸くするクイーンビー。しかしすぐに勝ち誇ったような表情に切り替わる。
「はっ、所詮その程度か! 我は元はあの男の部下で閨を共にしたことがある!」
「……え? ね、閨って……もしかして」
「あの男とまぐわった。貴様には無い経験だろう?」
「あ……あぁ……」
クイーンビーの言葉にわなわなと震えて、頭を抑えるホシノ。その隙を逃さず信者たちは攻撃をしようとしたが、クイーンビーによって止められる。脳が破壊されたのか荒い呼吸を繰り返すホシノの近くに寄っていき話し続けるクイーンビー。
「私だけではない。あの男に惹かれ、身体を重ねた女は数多くいる。あのキッドと呼ばれる奴等もそうだ。……いや確かキッド4だけは手を出されていなかったな。そうだ、以前から気になっていたんだ、どうしてあれ程の男を捨てたんだ?」
「ち、違う……あれは事故で……。私は別れたかったわけじゃ」
「腕を奪うほどの大けがをさせたのにか?」
「う、ぅぅぅうう……」
耐え切れなくなったのかついに、膝をついたホシノ。そんなホシノを見下ろして言葉を続ける。
「そういえばあの男の何を知っているか、という話だったな。あぁ知っているとも。アイツが愛煙しているタバコは『ジェー・ビー・エス』 理由は『箱がカッコいいから』というあんまりな理由という事。アイツの髪型や服装はかつてのお前の影響があること。アイツが今だ幻肢痛を発症する夜があること。アイツがストレスから薬物に走ったことがあることも。アイツの初めてが山海経の会長だってことも。アイツが閨によく呼ぶのはお前みたいなちんちくりんが多い事も。どこで知り合ったのか知らないが、ブラックマーケットの有名AV監督と仲良くなって作品に出演したことがあることも!」
「なにそれもっと詳しく」
「そもそも生産数が少なく、今は絶版でブラックマーケットでも入手はほぼ不可能な代物だ!」
クイーンビーの絶叫が響く。自分も手に入れておらず、それが相当悔しいようだ。
「アイツの周りには女が多すぎる! アイツの傍には我一人いればいいのに! 我一人だけを見ていれば良かったのに! だから我が気に入らない女はドンドン蹴落としてやった……なのに、なのに! よりにもよってあの女は孕みやがった! 蹴落とすだけじゃ足りない……だから――
それが我とアイツの確執だ」
「は? グランの子供……ころ、した? な、何を言って……」
クイーンビーの言っていることが理解できずにホシノの頭の中が疑問で埋め尽くされる。顔を上げたホシノと目を合わせておぞましい笑顔を浮かべながらクイーンビーは言葉を続ける。
「お前は知らないだろう? 愛した女の亡骸とその荷物にあった安産祈願のお守りを握りしめて慟哭するアイツの顔を」
「お、お前! お前お前お前お前お前お前お前お前お前ぇぇぇぇぇ!!!」
目の前の女が言ったことが真実かどうか証拠は無かった。ただホシノは自身の勘と目の前の女の声色でそれが真実であると確信し、同時に目の前の女に対しての猛烈な怒りが込み上げてきた。手放していたショットガンを素早く手に取り目の前の女に付きつけようとした。しかしその手は別方向からの射撃で弾かれる。
「ッッ! 増援、一体どこ……か、ら。え、な、なんで?」
ホシノが攻撃された方向を見て驚愕する。そこにはここにいないはずの男、水戸グランがいた。
「先ほど言っただろう? アイツの周りには女が多すぎると。だから作ったのさ、我だけの水戸グランを、我だけを愛する水戸グランを!」
そしてゆったりとした動作でクイーンビーは新たに現れた水戸グランの隣まで歩いて誇示するかのように紹介をする。
「行け、我と共にこの愚か者を滅するのだ! 我だけのグラン……『キラー』よ!」
最近、色々男子生徒主人公物が増えていますが、『未来から来た子供』とかではなく、ちゃんと現代で子供がいた四肢欠損系ヤニカスヤクチュウクチュウAV出演経験あり寡夫属性を持つのはウチのグラン君だけです!(当社調べ)
なお、グラン君の出演作品は回り回って、あるトリニティの生徒が押収品としてゲットしています。