シャーレの部長はブラックマーケットの代表   作:四脚好き

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109話

◎・ブラックマーケット 高層区 前線基地・

 

「何が起きてるの!?」

「敵が巨大兵器を市街区に投下! その衝撃で市街区全体に混乱が起きています!」

 

 L.L.Lが投下され、その衝撃で一時的に通信はノイズだらけになり前線基地では混乱が走る。どうにか情報を集めようと通信の回復を図ったり、屋上に出て双眼鏡を使い目視で情報を手に入れたり、奔走する。

 

「これは……不味いね。多分あの兵器、着地の時に地下に走ってる電話線やら、水道やら、インフラ系のほとんどを破壊したみたい。通信回復は?」

 

 チヒロがモニター映像と各設備の状態を調べ、他の部員に通信回線の状態を聞く。するとハレとコタマが渋い顔をしながら現状を報告する。

 

「……あの兵器が着地した衝撃で沢山の建物が崩壊、空高く打ち上げられてる」

「その金属などが混じった破片の数々がチャフの代わりになってしまっています。当分は通信の回復は出来ないでしょう。ディフェンダーチームには連絡が出来ますが、アタッカーチームとは連絡つきません」

「今、どこか生きてるカメラが無いか探してるけど、どれも遠くからの画像しかないから得られる情報はここと大差ないかも!」

 

 最後にマキがどうにか生きているカメラを探そうとしているが、どれも遠方の物であった。届く情報はどれもこれも不鮮明な物ばかり。前線のホシノやヒナたちの安否なども不明で、イズナと便利屋たちとも連絡が取れなくなった。先生は不安と焦りで汗が止まらずにいた。それでも、生徒たちを助けるために、一人でも多く無事に帰らせるために出来ることをしようと立ち上がる。

 

「VERITASのみんなはそのまま情報収集をして! どんな些細な情報でも私の端末に送って! ヒフミは画像から分かる範囲で良いからどれだけ被害が出てるかの算出と地図と照らし合わせての撤退ルートの候補を安全優先、速度優先と何パターンかかリストアップお願い! アコはアタッカーチームへの連絡続けて! アヤネはディフェンダーチーム、医療チームへ連絡! これから忙しくなるよ! 全体指令の照明弾、赤を打ち上げて!」

 

 先生はそう全体に話しかけた後、シッテムの箱へと語り掛ける。

 

「アロナ、VERITASから届く情報の精査と要点のピックアップお願い」

 

 ピカリと画面が明るく点灯するシッテムの箱。それと同時に前線基地の屋上から上空に照明弾が打ち上げられる。ミレニアムの特別性の照明弾はいかんなくその性能を発揮し、市街区にいる生徒たちに『赤』撤退の指揮を告げることに成功する。

 

◎・・・

 

「照明弾……」

「赤、撤退だね。どう考えてもアレのせいだろうけど」

 

 制圧したビーハイヴの秘密拠点からアルとカヨコが市街区の中心部に降りたったL.L.Lを見ながら呟く。すると二人の傍にある街灯の上にイズナが姿を現す。

 

「サササッ! イズナなら、偵察してくることも可能ですが如何しましょう」

 

 イズナの提案に考え込むカヨコ。

 

「……通信もつながらないこの状況、本来なら少しでも情報が欲しいから偵察には向かうべきなんだろうけど」

「……止めておけ」

 

 考え込んでいるカヨコの隣に簀巻きにしたキングを抱えたツルギがやってくる。

 

「我々は目標を達成しているし、情報もコイツから聞き出せばいい。それに……先生は私たちが無理することを望まない」

「確かに、先生はそういう人だったね」

 

 ツルギの言葉に同意するカヨコ。そんな風に話していると、工場の中からハルカとムツキがダンボールを抱えて出てくる。

 

「アルちゃーん! カヨコっち! 爆弾の設置となんか色々な資料ゲット完了だよ!」

「い、いつでも爆破できます……!」

「分かったわ。それじゃあ、撤退よ!」

「私が通って来た道がある。ディフェンダーチーム拠点まで一直線だ」

 

◎・・・

 

「撤退信号っすね」

「ええ。これから忙しくなりますよイチカ」

「了解っす、ハスミ先輩」

 

 ディフェンダーチーム拠点のでは撤退信号を確認したハスミ達が警戒度を上げる。

 

「避難を急がせないといけませんね」

「あの巨大な兵器が動き出したらもっと避難民が増えるからっすね」

「ええ、今は修行部の皆さんの尽力と……キッド4さんのお陰でここに近づいてきたレジスタンスやビーハイヴを追い返せていますが、今以上に忙しくなりますね」

 

 そう言いながら前線の方に視線を向けるハスミ。基地の入り口を守るように展開する修行部の面々とその後ろに陣取ってオートキャノンを近づいてくるビーハイヴたちに向けて連射し続けてるキッド4がいた。イチカの視線は自然とツバキのほうに向く。

 

「にしても……あのツバキさんでしたっけ? 強いっすねぇ……」

「まったくです。トリニティに所属していれば正義実現委員会に勧誘したいほどです。さて、私たちも援護を始めますよ」

「了解っす!」

 

 そういってイチカは避難民の誘導に向かい、ハスミは自身のスナイパーライフルを構えて防衛の援護を開始した。

 

「守らなきゃいけないものがあるの!」

「クソっ、あの壁役滅茶苦茶硬てぇぞ!」

「あんな柔らかそうな身体してるくせに!」

「ッ!」

「ゴッヘェッ!?」

 

 防衛の前線ではツバキが盾を使い敵の攻撃を防いでいた。その強固な守りに相手は苦戦を強いられていた。そんな中、敵の一人がツバキの身体を見て下卑た笑いを浮かべながらツバキに近づいてツバキの盾を握っている方の手を掴む。その嫌らしい視線と手の動きに身震いしたツバキは思わず盾で敵を殴り飛ばす。殴り飛ばされた男はその隙を逃すはずもないハスミとキッド4によってたちまちハチの巣にされる。

 

「はぁ、はぁ、はぁ……」

 

 なんとも言えない嫌悪感がツバキの全身を包み込み、息が荒くなる。

 

「大丈夫ですかツバキちゃん!?」

「ミモリ……うん、大丈夫」

 

 ツバキの元にミモリがやってきてツバキの状態を確認する。ツバキはそんなミモリに心配かけまいと、息を整え返事をする。

 

「なら、良かったです。ここは……少しばかり嫌なことを考える人、行おうとする人が多いですから」

 

 ミモリはそう言いながら、顔を少しばかり顰める。

 

「でも、さっきの撤退信号が上がった。グラン達がここに来るかも」

「だから、頑張るしかありませんよね!」

「うん。頑張ろ、ミモリ」

 

 

◎・・・ 

 

「あ? あの信号弾は、お前らの物か?」

 

 キラーは遠くに上がった赤色の信号弾を見ながらL.L.Lの着地の衝撃でボロボロになった街並みのほうにそう呟く。するとガラガラと音を立てながら持ち上がる瓦礫。そして中からヒナたちが姿を現す。

 

「ゲホ、ゴッホ! あ゛ークソ、瓦礫が口ん中入った! ペッ、ペッ!」

「アレは……撤退信号」

「ノノミ、大丈夫?」

「はい、シロコちゃんもホシノ先輩に怪我は?」

「ん、大丈夫。でもホシノ先輩は気を失っちゃたみたい」

 

 ネルがせき込みながら瓦礫を吐き出し、ヒナが信号を見上げて、ノノミとシロコでホシノを支える。セリカや、アスナと言った他の面々は武器を直ぐに手に取ってキラーの背後、クイーンビーやその配下の信者たちに向けて銃を構えていた。クイーンビー達もまた同じようにセリカたちに銃を向ける。そんな中キラーだけが笑い、後ろを向いて歩き出す。

 

「成程、撤退信号か。ならお前たちは撤退すると言い、私たちも一度引こう」

「キラー!」

 

 そんなキラーの発言が気に入らなかったのか、クイーンビーが声を荒げる。しかし、そんなクイーンビーをキラーは一睨みして黙らせる。

 

「オリジナル、そして先生に伝えると言い。俺たちは3日後キヴォトス全域に大して宣戦布告をすると、そしてこのL.L.Lを使い、俺が新たなキヴォトスの支配者になるとな! 旧態にしがみつく者どもよ! 新たな象徴を前に己の脆弱さを思い知ると良い!」

 

 そう言ってキラーはクイーンビー達を従えその場を後にする。

 

「どうする? 今から追っかけてあの後ろ頭ひっぱたくか?」

「それは止めておきましょう。下手に刺激してあの巨大な兵器が動き出したらもっと大きな被害が出るわ。それに今は気絶した小鳥遊ホシノを連れたまま勝てる相手でもないわ」

「そーなんだよな……グランのクローンっていう割には本人とは違って随分強そうだったな」

 

 ヒナとネルが互いにキラーに感じたことを離して認識のすり合わせをする。

 

「一時的に指揮を執るわ、良いかしら?」

「構わねーよ」

「ありがとう。それじゃあ、全員聞いて」

 

 ヒナがネルに断りを入れてから指揮を執りはじめる。

 

「私たちは信号に従ってディフェンダーチームが設営した拠点まで撤退するわ。道中あの兵器によってつくられた瓦礫で道がふさがっていたり、レジスタンス、ビーハイヴの残党がいるかもしれないから十分に気を付けて。私と美甘ネルが前に、砂狼シロコはそのまま小鳥遊ホシノを運んで。黒見セリカは二人の護衛を、十六夜ノノミと残りのC&Cの二人は後方を」

「委員長、私は?」

「イオリ、偵察お願い。何か発見したらどんな些細なことでも報告して。貴女の目の良さが頼りよ」

「! 了解、委員長!」

 

 ヒナの言葉に目を光らせたイオリは瓦礫を飛び越えて障害の有無を先行して確認に向かう。

 

「それじゃあ、移動を開始するわ」

 

◎・・・

 

「クソっ……痛てぇ」

「あぁ、なんで代表!? ご無事ですか!?」

「なんとかな、お前も怪我はないか?」

「は、はい……で、でも、代表、血が……」

「気にするな」

 

 別の場所ではグランが乗ったF12C STORKがL.L.Lが打ち上げた瓦礫によって墜落してしまっていた。墜落時グランはパイロットの女を抱きしめて墜落の衝撃から守っていた。そのせいで体のあちこちをぶつけ口や肩、頭からか出血していた。それでもグランは気丈に振舞ってパイロットを励ます。

 

「男の傷なんて何ともないし、名誉みたいなもんだ。それよりお前に怪我がなくて良かったよ」

「あ……だ、代表……」

 

 そう言いながら優しくパイロットの頭を撫でるグラン。どことなくポッーとしていくパイロットの顔。そんな雰囲気も瓦礫の崩れる音で正気に戻る。

 

「……先ずは急いで脱出だな」

「はい」

「お前、名前は?」

「ぼ、僕の名前ですか!? あ、えっと……空戸リコと言います!」

「そうか、リコ。これから俺たちは歩いて同じように墜落しているであろうカリン、マシロを探し出して合流。撤退地点まで後退するついてこれるか?」

 

 グランの言葉を聞いてリコは真剣な顔になって敬礼をして返事をする。

 

「地獄までお供します、代表」

「ありがとう。お前の忠義に感謝する。さて移動を始め―――

 

――ズガァッッッン!!

 

 

――今のはマシロの……。思ったより早く合流できそうだ! 行くぞ!」

「了解!」

 

 銃声の聞こえた方に走り出すグランとリコ。そして次第に近づく銃声、それと怒号。グラン達が見たのは敵に囲まれながらも射撃、時には銃身で相手を殴りつけているカリンとマシロ、そして二人が乗っていたヘリのパイロットであろう二人の『ODI ET AMO』の構成員だった。

 

「加勢する!」

「はい!」

「おう! 無事かお前ら!」

 

 グランとリコは銃を構えてカリンたちの周りに群がる敵を次々に打倒していく。

 

「グランさん!」

「代表、無事だったのか」

 

 マシロとカリンもグランに気が付いて顔を喜ばせる。そうしてカリンたちの周りにいた敵を片付け、合流する二組。

 

「良かった。ケガはないか?」

「それをグランさんがいうんですか……」

 

 一番怪我をしているグランを見て思わずマシロはそう突っ込んでしまう。

 

「あー、それはまぁ、名誉の負傷ってことで」

 

 グランが苦笑いをしているとそんなグランの隣で少し顔をウ隠している空戸リコに気が付いたカリンが一言。

 

「これは部長に報告しとかないとな」

「おいおい、何で今ネルの名前が出るんだよ」

「……分かってる癖によく言う」

 

 カリンがジト目でそう言うとグランは眼を逸らしながら笑って首を竦めた。そんな風に和んでいるグラン達の元に代表に対して恨みをもつ多くの敵が現れ再び囲まれてしまう。

 

「色んな人間に恨まれすぎだな代表」

「敵を抱え込んでいるんだいろいろとな!」

 

 カリンが冗談めかして背中を任せたグランに言うと、グランは流石の数に余裕がないのかちょっと切れ気味に返す。そんなグランが少しおかしかったのか少しはにかむカリン。

 

「(味方と合流する為にも)やってみせろよ、代表」

「(この三人なら)なんとでもなるはずです!」

「無茶ぶりだと!?」

 

 





 イベスト見ましたか……。ただ一言、ウチのキサキは無事です!
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