シャーレの部長はブラックマーケットの代表   作:四脚好き

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112話 黄道十二宮 『双子』

◎・アタッカーチーム・

 

 アタッカーチームはヒナの指揮のもと、探索チームと同様にディフェンダーチームの設営した拠点への撤退をしていた。道中多くの襲撃を受けたが、ヒナやネルを抱えるこのチームにとって相手ではない。次から次へと訪れる敵を簡単に片づけていく。そうして順調に撤退していると先行しているイオリから報告の通信を受ける。

 

『委員長、聞こえる?』

「イオリ、何かあった?」

『実はこの先で戦闘が起きてるんだけど、戦っているのがレジスタンスとビーハイヴなんだ』

「仲間割れをしている……?」

『そうみたい』

 

 イオリからの報告を受けて一度足を止めて後ろを振り返るヒナ。視線の先にはキラーの投下したL.L.Lがあった。

 

「アレが原因かしら」

「まぁー、そうだろうな。レジスタンスの奴等は『代表の支配反対! 解放を!』って感じだろ? それなのに自分たちの住処にあんな物落とされちまったら溜まったもんじゃないだろうしな」

 

 ヒナの呟きに隣を歩いて無線を聞いていたネルが答える。ネルもヒナの隣でL.L.Lを見上げる。

 

「アレ、一体何なんだろうな?」

「多脚式の移動要塞かしらね……?」

 

 ネルの疑問に自身なりの推測を答えたあと無線の先にいるイオリに指示を出すヒナ。

 

「ひとまずイオリはそこで待機、私たちが到達するまで戦況を監視していて。何か戦場に変化があったら報告お願い」

『了解』

 

 イオリとの無線を切り、視線をそのままL.L.Lから空へと移すヒナ。

 

「そろそろ日が落ちるわね」

「んぁ? あー、めんどくせぇな、夜間戦闘かよ」

 

 ヒナとネルがそう話せば後ろを歩いていた、シロコが話に入ってくる。

 

「それに多分雨も降り出す。そんな匂いがしてる」

「これから暗くなるってのに、雨も降りだすのかよ。最悪だな」

「ホシノ先輩も意識が戻りませんし早く撤退しないと……」

 

 シロコの言葉にネルが毒づいて、ノノミが背中に背負っているホシノの心配をする。ノノミの言葉を聞いてヒナはノノミの背にいる今だ眼を覚まさないホシノを見つめる。その意味ありげな視線が自分に向けられたものではないとは分かりつつもジッと自分の方に顔を向けられてノノミは少しばかり委縮してしまう。そんな空気をどうにかしようとセリカが声を上げる。

 

「ま、前から聞きたかったんだけどゲヘナの風紀委員長はホシノ先輩の事をずっと前から知っているみたいだけどどこかで会ったことが会ったの?」

「……」

「ちょっ、無視ぃ!?」

 

 セリカのいきなりすぎる話題転換にヒナは自身の視線と空気に気が付いたのかすこしだけ頬を赤くして顔を前に戻して歩きだす。自身の質問に答えず歩き出したヒナにセリカは思わず大声を出す。するとそんなセリカの援護のつもりかは分からないがヒナの隣にいたネルがいかなりヒナに肩を組む。

 

「おいおい、無視はしてやんなよ」

「別に喋るほどの事じゃないもの」

「おいおい、そんなこと言うなよ、今は同じチームだろ? それにアタシも気になってるからよ」

 

 自分に肩を組んで離さないネルのその態度に遂にヒナの方が折れる。

 

「小鳥遊ホシノと水戸グランには話したけど私は一年生までゲヘナの情報部にいた。その頃各自治区の要注意生徒、特に戦闘能力に秀でた生徒の事を調査していたの。……あなたの事も知っていたわ、美甘ネル」

「ほーん。『戦闘力に秀でた』ねぇ……悪い気はしねーな」

 

 ヒナの言葉に鼻の下を擦るネル。

 

「……代表に褒められたときもだったけどウチのリーダーってホントチョロいよね」

「まぁ、単純なのが部長の良いところでもありますから」

 

 アスナとアカネがその光景を見て笑う。

 

「誰が単純だぁ!?」

「きゃー、リーダーが起こったー!」

「はぁ……。こんなやり取り前にもありませんでしたか?」

 

 アスナを追いかけ始めたネルを見てデジャブを感じて溜息をつくアカネ。そんなアカネの苦労を察したのかそっとアカネの背中に手を添えるセリカ。

 

「ありがとうございます」

「いや、個性的な先輩に振り回されるのはウチも良くありますから」

「ん、セリカも十分個性的」

「アヤネちゃんも、セリカちゃんも個性的で素敵な後輩ですよ☆」

 

 セリカの方を向きながらノノミとシロコがそう言い返す。二人の先輩からの言葉に今度はセリカが赤くなり、アカネがセリカの背に手を添える。

 

「後輩想いの素敵な先輩ですね」

「そ、そうだけど……あーもう恥ずかしいっ」

「……」

 

 先ほどまでの剣呑とした空気は一気に消え去り、賑やかで騒がしくなった周りの面々を見て自分も何か話した方が良いだろうかと考えるヒナ。しかしイオリは先行しており今、風紀委員のメンバーは自分しかここにいないことを思い出す。それ以前に日々仕事に追われ、周りのように笑顔で話す出来事が得に無い事に気が付く。

 

「(今度、治安維持をマコトに任せて時間を作ってみんなで出かけるのも良いのかもしれないわね。それかいっそマコトと出かけてみようかしら)」

 

 最近、グランやチナツの影響か自分に対する態度が軟化してきているマコトの事を考えながらヒナは場を一度引き締める為に口を開こうとした。

 

『緊急事態!』

 

 突然全員のインカムにイオリからの連絡が入る。ヒナはすぐさま頭を切り替えて応答する。

 

「どうしたのイオリッ!?」

『現在、所属不明勢力2名と交戦! 手強いッ、救援を頼みます委員長!』

「分かったこちらに向かって撤退してきて。私たちもイオリの方に急ぐわ」

『了解しまッッ、キャッ!?』

「イオリ!? イオリ!? 返事をしなさいッ!」

 

 何度か通信機に声をかけ続けるが帰ってくるのはノイズのみ。ヒナは苦虫を噛んだような表情で通信機から手を離して指示を出す。

 

「聞いていた通りよ。先行していたイオリが所属不明の2人と交戦中。イオリはゲヘナでも数えるほどの実力者、そんな彼女が2対1とは言え苦戦するほどの奴等よ気を引き締めてかかるわ。十六夜ノノミは小鳥遊ホシノを背負っているから待機ね。室笠アカネと黒見セリカもその護衛として待機」

「分かったわ」

「かしこまりました」

「私、美甘ネル、砂狼シロコ、一ノ瀬アスナはイオリの援護に向かうわ」

「おうよ!」

「ん、任せて」

「おっけーい」

 

 そこまで指示を出してヒナは自分の武器を今一度点検し始める。同じように他のメンバーも自分の武器を確認する。一気に場の空気は変化して全員が険しい表情を浮かべる。そして全員が武器のチェックを済ませたのを確認してヒナが口を開く。

 

「イオリは私の大切な後輩、ここで失う訳にはいかないの。だから最速で行くわ、上手くついて来て」

 

 それだけ言って走り出すヒナ。そんなヒナを見てネルたちが笑う。

 

「はっ! 誰に物言ってんだ! アタシが先について二人とも倒してやってもいいくらいだ!」

「機動力なら負けないよ!」

「ん、私も負けない」

 

 荒れ果てた道路を瓦礫や段差など物ともせずに走り出す四人を見てその場に残った三人は呆れ半分、驚き半分でその背中を見送る。

 

「本当に運動神経だけは凄いわね……」

「ええ、全くです。それにしても空崎ヒナさん。聞いた話では冷徹な印象がありましたが、実際に見て見るととても可愛くて、後輩想いのよい先輩なんですね……。ミレニアムであれば新たなエージェントメイドとして誘っていたかもしれません」

「エージェントメイド! そう言えばC&Cの方々はみんな可愛らしいメイド服を着ていますよね! 何か由来があるんですか? それと新しい子のメイド服とかどうやって決めているんですか?」

 

 ノノミが目をキラキラとさせてアカネに話しかける。アカネも質問されて嬉しかったのか嬉々として語りはじめる。セリカはそんな二人を苦笑いしながら眺めていたのだった。後日、メイド姿のノノミとアヤネに挟まれるグランの姿があったがそれは別のお話……。

 

◎・・・

 

「あと、もう少し……」

 

 一方のヒナたちは全速力で市街区をかけていた。少しづつ近づき、激しくなっていく戦闘音にヒナは焦る。少しでも前へ、少しでも早く、と焦るヒナの前にひと際大きな瓦礫が現れる。倒れたビルがそのまま横倒れしてきたであろう巨大な瓦礫。

 

「もう、面倒ねッ!」

 

 上るのも、迂回するのも面倒でヒナはいっそのこと破壊しつくしてしまおうと自身の愛銃『終幕:デストロイヤー』に手をかける。ビルを壊そうとしているヒナに追いついた他の三人。ヒナの意図を察したのか同じように武器を構える。するとその時アスナがハッとした表情になる。

 

「上から何か来るッ!」

「ッ!?」

 

 アスナの言葉に全員が上を見る。するとビルの瓦礫の上から制服が所々破けて傷だらけのイオリが落ちてきたのだ。

 

「イオリ!!」

 

 ヒナは急いで銃から手を離して、イオリの落下地点を予測して駆けだす。そして最後はスライディングをしてイオリをギリギリで受け止める。

 

「イオリ! イオリ! 返事をしなさい!」

「い、委員長……」

「イオリ! 良かった……」

 

 受け止めたイオリの方を揺さぶり必死に呼びかけるヒナ。ヒナの呼びかけにうっすらとめを開いて小さく口を開けるイオリ。

 

「すいません、委員長……負けちゃいました」

「大丈夫よ、後は私たちがやるわ。今ゆっくり休んで」

 

 そう言ってイオリを安全であろう障害物の後ろに寝かせビルの残骸の上に立つ二人組を睨みつける。二人組は双子のようにそっくりで腕にNo.6という入れ墨が入った大男だった。

 

「「この感じだ! 戦争だ!  我らには、それが必要だ!」」

 

 男たちはそう言い放ちビルの上から飛び降りて、ヒナたちに襲い掛かるのであった。

 





・NO.6 通称『ゲミニ』腕にNO.6という文字と双子の躯のタトゥーが入ったスキンヘッドの男たち。タトゥーの色と武器が違うため、それで判断すると良い。戦争に生きがいを求めているような発言をする。
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