◎・アタッカーチーム・
「私は右を! 砂狼シロコ、こっちへ!」
「ん」
「うっし、それじゃアタシは左だな。アスナ」
「おっけー、リーダー」
シロコのドローンによる援護を受けながらヒナはビルの残骸を駆けのぼり、スナイパーライフルとガトリングを持ったゲミニ(兄)の方に突っ込む。
「ふっ!」
「なるほど、私の相手は貴様か」
ヒナはビルの残骸を登りきると双子の前で大きく跳躍、翼を広げ滞空、空中から愛銃『終幕:デストロイヤー』の弾幕をゲミニ(兄)に浴びせる。ゲミニ(兄)はそれを横にずれることで回避する。ヒナは射撃を避けられた後もそのままトリガーを引き続け、ゲミニ(兄)をゲミニ(弟)から引き離す様に射撃を続ける。ゲミニ(弟)はヒナの考えが理解できていたようで、滞空を続けるヒナに手だしすることはなく、ジッとビルの下で待機しているネルとアスナに視線を向けていた。
そしてヒナ、シロコ、ゲミニ(兄)がその場を後にするとようやくネルが動く。
「アイツらもおっぱじめたし、そろそろアタシらも始めんぞ」
「C&Cのコールサイン00と01か。相手にとって不足なし、我らの闘争を始めよう」
ネルの言葉に反応してビルの残骸から飛び降りてくるライフルとグレネードランチャーをもったゲミニ(弟)。着地したゲミニ(弟)を前に視線はそのままネルに話しかけるアスナ。
「リーダー、作戦は?」
「必要か?」
「おっけー、分かった!」
二人はそこまで言うと合図も無しに走り出す。ネルは姿勢を低くして一気に加速して接近する。そしてその反対側からはアスナが愛銃『サプライズパーティー』を射撃しながら走って接近してくる。ゲミニ(弟)は低姿勢で一気に距離を詰めてこようとしているネルに対してはグレネードで進路をふさぐように攻撃をして、アスナに対しては反対の手のライフルで牽制の射撃をする。
「ふふっ! 全っ然当たらないよ!」
しかしアスナはそんな射撃なんてへでもないようで、軽々とかわしながら障害物から障害物へと移動してゲミニ(弟)をかく乱しようとする。一方ネルはと言うと目の前で起きる爆発を物ともせずそのまま突っ込み、ゲミニ(弟)の元へと走り続ける。
「最速で、最短で、まっすぐに、一直線にッ!」
「くははは、いいぞ! 来いッ!」
ネルはゲミニ(弟)の近くまで来ると身を捩り、手に持つ二つの銃を繋ぐチェーンをしならせてゲミニ(弟)ら向かって叩きつける。そしてそれと同時に手元の二丁は発砲して一人で2方向からの攻撃をして見せる。
鎖が叩きつけられて姿勢を崩し、そこに追い打ちとばかりに殺到する銃弾。ダメージでゲミニ(弟)の体が硬直するとそこにすかさずアスナが手榴弾を投げて爆発が巻き起こる。当たりが爆風と煙に包まれる。
「ほら、さっさと出て来いよ。これで終わりじゃねぇだろ?」
ネルがそう煙に向かって言う。
「くはははは、その通りだ!」
「あっぶねっ! 行き成りかよ」
煙の中からゲミニ(弟)の笑い声がして次の瞬間ネルにむかって数発の銃弾と一発のグレネードが撃ち込まれる。ネルは咄嗟に回避して攻撃をかわすが、一瞬煙から視線を外してしまう。
「リーダー!」
「ん? グハッ!?」
アスナが煙の中から飛び出たゲミニ(弟)が視線の外れたネルに向かって飛び掛かるのを見たアスナはネルに声をかけながら自身の銃を向けて発砲する。しかしその程度のダメージは容認するつもりなのかゲミニ(弟)は止まることなくネルに近づき、ネルの脇腹を蹴り上げる。 鳩尾当たりに強い衝撃を受けたネルは肺の中の空気を吐き出して吹っ飛んでしまう。
「リーダー!? よくもッ!」
吹き飛んでいったネルに驚くアスナだったが、今のゲミニ(弟)から視線を外すことは危険だと思いすぐに視線をゲミニ(弟)に戻すアスナ。そしてバースト射撃で確実に弾を当てようと射撃する。
「えっ!? 消えっ―――違うッ!」
アスナが吹き飛んだネルに視線を向けていたのは数瞬も無かった、しかし視線をゲミニ(弟)に戻したときには既にゲミニ(弟)はその場にいなかった。ネルの方に追撃を仕掛けに行ったのかとも考えたが、アスナは持ち前の直感でその考えを否定してノールックで引き金を引きながら右手を薙ぎ払った。考えなしに撃ったが、それはアスナの髪型を見て右側の視界の方が狭いのではと思っていたゲミニ(弟)に回避不能の一撃を与えた。
「くっ、読まれたというのか……」
自分に絶対な自身があったからこそ、予想外の一撃を受けたゲミニ(弟)は一度アスナから距離を取る。しかし距離を取ったゲミニ(弟)に一つの影が飛び掛かった。
「さっきのお返しだ!」
「ぬぅっ!?」
影の正体はネルだった。ネルはアスナから距離を取ったゲミニ(弟)に対して跳び蹴りを繰り出す。寸でのところで蹴りは防御されたが、ゲミニ(弟)との距離を大きく開けることに成功した。
「リーダー大丈夫!」
「あぁ、心配ねぇよ。……にしても、あいつおっもいなぁ。思ったより全然飛ばねぇし、足は痛てぇし……」
ネルが蹴りに使った足の足首をグリグリと回しながら調子を確かめるようにそう話す。一方で蹴りを入れられたゲミニ(弟)は防御姿勢を解きながら、自身の腕に残る蹴りの痕を見つめる。
「ふぅん……。思ったよりもやる」
「あ? なんだテメェ、アタシたちを舐めてんのか?」
「いや、貴様の実力は高く評価している。それに合わせて行動もした。ただ、貴様らが私の想定よりもはるかに強かっただけの事」
「はっ、それを『舐めてる』って言うんだよ!」
「では……行くぞ」
銃をしっかりと構えたゲミニ(弟)。そしてかなりの速度で思いっきり腕を突き出す。するとゲミニ(弟)の腕がブレて大きな音がする。
「は?」
「リーダー、危なッ―――ゴホッ」
「あ、アスナァッ!?」
次の瞬間ネルを庇うように身を乗り出したアスナが爆炎に包まれる。余りに突然のことで何が起きたのか全く理解できなかったネル。
「テメェ、一体何しやがった!」
「教えると思うか?」
「クソッ!」
どちらかと言えば受け身だった先ほどまでとは違い、動き回り攻勢を仕掛けてくるゲミニ(弟)。ネルと同等の速度で駆け回り、時たま攻撃を仕掛けてくる。その攻撃の威力と苛烈さに最初の方とは打って変わり防戦を強いられるネル。ネルも負けじと好きを伺い反撃するが、かなりのスピードで移動するゲミニ(弟)に上手くダメージを与えられずに居た。
「さっきからちょこまかちょこまかと! うっぜぇんだよ!」
ネルは両手を上げて銃についているチェーンを浮かせて唸らせる。そして一気に腕ごと振り下ろすことで、チェーンを地面に叩きつけ、自身の周りから一度ゲミニ(弟)を遠ざける。
「オラオラオラァ!」
距離の空いたゲミニ(弟)に対して素早く体勢を変えて銃口を向けるネル。掛け声と共に二丁の銃が火を噴く。しかし銃口から放たれた弾丸はゲミニ(弟)がステップで回避をしたことによって目標に当たることは無く、空を切る。二人の間に距離が出来て、少しの沈黙が訪れる。
「……はーん、理解したぜ」
「何をだ?」
「テメェの銃の威力が唐突に上がった理由だよ。……こうだろ!」
「――ッ!?」
ネルが右腕を限界まで引いてから一機に前に突き出してトリガーを引く。そうして撃たれた球は真っすぐにゲミニ(弟)の元まで跳んでいき彼の左肩に当たる。その威力とスピードにゲミニ(弟)は吹き飛び地面を転がる。その様子を見ながらネルは喋りはじめる。
「自分のスピードを乗せて銃弾を加速させる。……加速撃ち、とでも呼んでおくか。種が割れれば大したことねぇもんだな。……オイ、アスナ。無事か?」
ネルがアスナの吹き飛んだ方向に声をかければ、ガラガラと瓦礫が音を立てて崩れ中からメイド服が所々破け、扇情的な格好のアスナが出てくる。
「うーん……体中がビリビリ痺れてる気がするけどなんとか平気~」
「うっし、それじゃあさっさと片付けんぞ!」
「おっけー!」
「クッ」
最初の時のように再び駆けだすネルとアスナ。しかし今度はゲミニ(弟)も同じように走り出して射撃を開始する。互いに射撃タイミングで腕がブレる。ゲミニ(弟)は焦っていた。自身が編み出した『加速撃ち』の技術を持ち前の戦闘センスですぐにものにしたネルに。そしてなぜだかネルが『加速撃ち』をしているのを見たあと自身も使い始めたアスナにはもはや恐怖も感じ始めていた。
「はっ、おかしな手品がなけりゃぁ、元の身体能力はそうでもねぇな! がっかりさせんなよ!」
「このっ……!」
苦し紛れに放ったゲミニ(弟)の弾丸がネルに直撃し、爆炎が上がる。その煙の中から飛び出したネルはチェーンを腕に巻き付けて防御をしておりその状態で高速でゲミニ(弟)へ接近する。
「これでも食らっとけ!」
「グハッ!?」
そしてそのまま勢いをつけてゲミニ(弟)に殴りかかる。とっさに防御姿勢を取ろうとしたゲミニ(弟)だが、そこに素早いアスナの援護があり、姿勢を崩される。その結果ゲミニ(弟)はもろに攻撃を受けてしまう。さらに追撃でネルは回し蹴りをゲミニ(弟)に放つ。
「グハッ……。こ、こんな馬鹿な……」
地面に倒れ伏し腹部を抑えながらそう呟くゲミニ(弟)。そこへネルが近づくと頭に銃を突きつける。そして冷たい目でゲミニ(弟)を見下ろす。
「テメェの敗因は……たったひとつだぜ……。たったひとつのシンプルな答えだ………『テメェはアタシを怒らせた』」
そう言ってネルは引き金を引いてゲミニ(弟)の意識を奪ったのだった。
・加速撃ち
ACFAの頃からある技術の一つ。前進中に実弾系武器を発射すると機体速度が弾速に加算される。まぁ、V系ではそれほど重要な要素ではない。ネルなら使えると思う。
・『代表の電波も支配しちゃうぞRadio』第二回開催決定!
グランがパーソナリティのラジオが再び帰ってくる! 今回の収録はなんとシャーレで! ゲストに先生を迎えてお送りします! 詳しくは活動報告で!
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=317388&uid=101362