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シャーレの居住区には野外のテラスに設置された、小規模な家庭菜園場がある。菜園場とは言うもののここで育てられているのは野菜や果物だけでなく、一部の花好き生徒が持ってきて世話をしている花畑もある。そしてここで育てられた野菜は先生の軽食やグランのカフェのメニューになったりする。
「今日は何を収穫しっようかな~♪」
代表としての仕事、部長としての仕事、さらにカフェの店主としての仕事、最初の方こそ『二足どころか、三足の草鞋か……』と言ってはいたグランだが、なんだかんだこの忙しさを楽しんでおり、ガーデニングエプロン、頭にタオルを巻きつけたいかにも休日の家庭菜園が趣味です、と言う姿で若干鼻歌交じりに菜園場に出る。
「カッテージチーズのソースにきゅうりのサンドイッチ♪ アップルトーストにイチゴの―――」
今日、カフェに出そうと考えていたメニューを口に出しながら菜園場に歩み出たグランだったがふと、人の気配を感じて隠し持っていた拳銃に手を伸ばしながら気配の方向に顔を向ける。
「え、えへへへ」
そこに居たのは植木鉢を持って気まずそうに顔をグランから逸らしている伊草ハルカだった。ひとまず敵や侵入者でないことに安心したグランは拳銃に伸ばしていた手を解いてからゆっくりとハルカに尋ねる。
「聞いたか?」
「あ、えっ?えっ……!?な、なななんにも聞いてません!」
「……はぁ」
ハルカの反応から先ほどの自分の能天気すぎる適当にリズムに合わせてメニューを言うだけの歌を聞かれたことを察するグラン。溜息をついて顔を片手で隠す。一見すると呆れたり、失望しているようにも見える動作だが、よくよくみるとグランの耳は真っ赤になっており、ただの照れ隠しだということがわかる。もしこの場に居るのがグランと"とくに親しい"人物であればそのことに気が付けたが、ここにいたのは、ネガティブで自罰的な行動や言動が目立つハルカだった。
「あ、ああああ! ごめんなさい! 私なんかが代表の歌を聞いてしまってごめんなさい、ごめんなさいごめんなさい!」
「いや……別にそこまで謝らんでもいい。別に聞かれて困るもん……でも…な…い。……よな?」
「え? ど、どうでしょう?」
グランは問題ないと言いたがったが途中から盗み聞きされてうとでそれをニヤついた笑顔で弄って来そうな面子が脳裏に浮かんで途中から疑問形になってしまう。問われたハルカも困惑である。しばらく二人ともどうすることもできずに硬直する。ふとグランはハルカが持っている植木鉢に目が行く。
「それは……?」
「あ、こ、これはその……。そのシャーレに生徒の皆さんが、花などを持ち寄ってる場所があると聞いたのでその……この子もと思ったんですけど。実際に花畑を見たら私のなんか……」
「……」
グランはハルカの植木鉢を見る。そこにあったのは雑草、グランは口には出さなかったが、確かに他の生徒の持ってきた花々に比べれば見劣りするなと納得していた。
「(けど……。虫食いもなく、日焼けもない。色も瑞々しい緑でしっかり手入れしてるんだなあ)なぁ……それ、どうするつもりだ?」
「え? 持って帰ろうかなと」
「良かったらその植木鉢、別の場所に飾らないか?」
「ふぇ?」
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「ここだ」
グランがハルカを連れてきたのは自身が運営をしているシャーレ内カフェ二号店だった。今までこういった場所に入ったことがないハルカはおっかなびっくり店内に足を踏み入れる。
「ここが……代表
「ん……?」
ハルカの自身に対する呼び方に僅かに違和感を感じるグラン。しかし、稀にそういう呼ばれ方をすることもあるのでスルーを決めることにしたグラン。
「ここは見ての通り暗めの木材で構成されたるからな、畑にある花だと少々煌びやかすぎる。観葉植物を置いても良いんだが……折角シャーレのカフェなんだ。生徒が手掛けた物を置きたくてな。どうだ、ハルカ。お前の大切な子たちをここに飾らせてくれないか?」
一人先を歩いて自身のカフェについて説明をするグラン。自分の後ろにゆっくりとだがハルカがついて来てるのを感じながら語り続け、最後の言葉を発した当たりでクルリと身を反転させハルカと顔を合わせる。
「え、ぇぇぇえ!? わ、私の育てた子たちを代表様のカフェに!?!? そ、そそそそんな恐れ多いことできませんッ! あ!? いや、これは命令ですよね!? わ、私なんかが代表様の言葉を拒否するなんて、ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!」
「……(これは少しばかり言葉選びをミスしたか?) 」
ハルカの猛烈な拒否からの、自己否定、謝罪の猛スピードコンボを喰らってしまったグランは思わずビシリと動きが止まってしまう。そして内心いつもこの社員をコントロールしているアルに対して改めて関心するのだった。尚、実際アルがハルカを制御しきれているかについては意見の分かれる所である。
「ハルカ」
「は、はぃい! へ? えっ!?」
グランはいつまでも謝り続けるハルカのナを呼んで謝罪を止めた後そっとハルカの顔に手を伸ばして、両手をハルカの頬に添える。そして俯いていたハルカの顔を上げさせて自身の目をしっかりと見させる。グランの突然の行動にハルカはフリーズしたがすぐに再起動してぐるぐると目を回して落ち着かなくなる。これでも落ち着かないか、とグランは内心困り果て苦笑するも、これ以上ハルカが何かを言う出す前に先に口を開く。
「ハルカ、最初に謝っておく、俺の言葉選びが悪かった、ごめんな。そして改めて言わせてくれ。ハルカ、お前の子が欲しい。 これは命令じゃない、ただの提案だ。嫌なら、嫌といって良いんだ。お前の考えを言って欲しい」
「あ、あ、あ、ああぁ」
途中でハルカに発言を許したらまた大変なことになると思ったグランはしっかりと自分の考えが伝わるように真剣な表情でそしてハルカに途中で口を挟ませないように早口で喋った。焦り過ぎたせいで自分の発言が大分怪しい事になっていることにグランは気が付かず、またハルカも気が付かなかったのが不幸中の幸いだろうか。
ハルカはグランの行動に混乱しながらもしっかりと言葉は聞いていたようで数秒考えたのち、自分の意思で口を開く。
「で、でしたら、よ、よろしく、お願いします……」
「そうか! ありがとう!」
ハルカが自身の提案を受け入れてくれたことに感激して彼女を抱きしめてクルクルと回るグラン。
「あ、あわわわわわ」
グランの行動に若干どぎまぎしながらもハルカの顔は笑顔だった。グランの嬉しそうな表情がふとハルカの眼に留まる。
「……っ?」
そのときハルカの中にある感情が芽生えるがその感情がなんなのか彼女はまだ知らない。そして二人が落ち着いた後、カフェに飾るのがこの子だけでは寂しいからとハルカは自身が雑草を育てている庭園に案内することを決め、そこで二人でカフェに飾る雑草を決めようと提案したのだった。
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「あ、アル様。すいません、この日なんですけどお休みを頂きたくて……」
「え?」
「ほぇ?」
「へぇ?」
事務所で過ごしている便利屋メンバーたち。そんな中ハルカがアルの座っているデスクに近づき休みが欲しいと言った。その瞬間、アル、ムツキ、カヨコが驚愕の表情で固まりハルカを見つめる。
「え、え? わ、私また何かやっちゃいました? ご、ごめんなさい、ごめんなさい!」
「い、いえ! 違うわよハルカ! 休みが欲しいんでしょ!? 全然構わないわよ! ただあなたがそんな提案してくることが珍しくてびっくりしただけよ。でも、しっかりと休みを取りたいと言えるようになったのはいいことね」
アルはデスク越しにハルカの頭を撫でる。
「そーそー、今までは私たちが休みを取りなさいって言わないとずっと事務所で仕事しちゃうし、休みを取らせたと思ったらバイトして事務所の家賃を稼ごうとしていたしねー」
「因みにバイトしにいきたいとかじゃないよね」
ムツキがアルの言葉に同意して、カヨコが質問する。
「は、はい! 今度代表様とお出かけしてきます!」
「代表?」
ハルカの口からでた意外な人物の名前にアル、ムツキ、カヨコは顔を見合わせる。
「意外な組み合わせだね。ハルカ、代表と仲良かったっけ?」
カヨコの指摘にハルカは少しだけ照れながら語る。
「い、いえ、この前代表に『お前の子がほしい』と言われまして……」
「「「は?」」」
何も知らないグランくん「今日は珍しくシャーレが平和だな。……仕事が捗って何よりだ」
アル、ムツキ、カヨコの襲来まであと15分……。
いつか考えているイベント回グランが若返ります。1年や幼児は体の年齢。記憶は頭の中身、なしだとその体の当時の記憶しかない。ケガは主に四肢欠損のありなし。
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一年、記憶あり、ケガあり
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一年、記憶なし、ケガあり
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一年、記憶あり、ケガなし
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一年、記憶なし、ケガなし
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幼児、記憶あり、ケガあり
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幼児、記憶なし、ケガあり
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幼児、記憶あり、ケガなし
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幼児、記憶なし、ケガなし