シャーレの部長はブラックマーケットの代表   作:四脚好き

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115話 黄道十二宮 『蠍』

◎・グラン達スナイパー組・

 

「ほっ! く、このォ!」

「大丈夫ですか、代表!? や、やっぱり僕が前線に立った方が!」

「いいから、リコも下がってろ! この面子だと俺が一番前衛しなれてる!」

 

 襲い来る敵の集団の前に躍り出て、タンクの役割をこなすグラン。ジャンプや障害物を駆使して敵弾を躱しつつ、ショットガンで相手を牽制する。そのグランが作り出した隙にカリンとマシロ、リコが攻撃を加えて敵の数を減らしていく。銃撃をステップで躱し、時には銃剣で突撃してくる相手を蹴りで鎮圧したりと大立ち回りをしているグラン。しかし流石に数が数の為グランに疲労が見え始める。少しずだが被弾が増え始めるグランにリコが焦って前線を変わろうとする。それを声だけでどうにか抑えるグラン。

 しかし本音を言えば、今のグランはかなりきつい状態だった。体の各所からの出血、墜落の際にどこか壊れたのか動きの悪い義肢、他のチームと連絡がとれない焦りとコンディションは劣悪であり、そこに疲労も加わって来た。それでも前線を担当し続けるのは男として、上に立つ者としての意地からだった。

 

「(だとしても……そろそろ限界が近い、一度どこかに身を隠すべきか)」

 

 グランはそう考えながら目の前の敵に散弾をぶち込んでから声を張り上げる。

 

「一旦、下がる! リコ、煙幕!」

「了解!」

 

 グランの声に合わせてリコがスモークグレネードを投げ込む。すぐ辺りに煙幕が立ち込めて、視界不良に陥る。その隙にグランは素早く離脱して3人のいる場所まで後退する。

 

「流石に敵が集まり過ぎた、場所を変えるぞ。荷物を纏めろ」

「了解です!」

「わかりました」

「了解した……。代表」

「ん?」

 

 グランの言葉にマシロやリコが弾薬などの入ったバッグを纏めて移動の準備をしている中、カリンが心配そうな表情でグランに話しかける。

 

「リーダーと戦っているときと比べて動きが悪すぎる。やはりどこか悪いんじゃないか? 私もC&C、リーダーやアスナ先輩ほどではないが、近接戦の心得はある。私が前衛をかわ―――「大丈夫だ。前線は変わらず俺がやる」――でも……いや、なら任せる。けど何か不味かったらすぐに行ってくれ、代表に何かあったらリーダーも悲しむ」

 

 その言葉にグランは思わず笑ってしまい、カリンの頭を撫でる。

 

「ありがとな……。けど、もう少しだけ頑張らせてくれ」

「……分かった」

 

 グランの言葉に頷くカリン。そうして自分も荷物を纏めて移動の準備を始める。そうしてすぐに荷物を纏めて移動を始めるグラン達。事前に準備していた地図とグランとリコ自身の長い期間、ブラックマーケットで過ごしてきた知識で狙撃や襲撃に適した箇所へ他の二人を誘導する。

 

「この角を曲がって先の建物で次の襲撃に備えましょう」

 

 角を曲がるとそこには大きなビルがあり、入り口入ってすぐに広々としたロビーエントランスがあり、上は三階まで吹き抜けとなっており侵入者に対して撃ちおろすのに最適な形になっていた。グランが一階に陣取って落ちていた武器等を使って即席のトラップを作っている間、リコ、マシロ、カリンは障害物を作ったり、自身の狙撃に最適なポイント作りをしていた。

 

「建物に向かってくる敵を私たちが吹き抜けから狙撃、仮にエントランス内に侵入できたとしてもトラップと代表が待ち構えている。完璧な布陣ですね!」

「それに私たちが頑張れば、代表も休める」

「先ほどから一人に負担をかけすぎていましたからね。頑張りましょう」

 

 カリンたち三人は銃器をグッと握りしめて気合を入れ直す。

 

「……」

 

 上の階でそうしている三人を見上げるグラン。

 

「俺がもっと頼りがいがある男だったらあんな心配かけなくて済んだんだけどなぁ……」

 

 自分たちだけの力ではどうしようも無かったからシャーレの権限を使って多くの生徒を今回の闘争に巻き込んだ。立派な戦力として見ている癖にこういった場面では頼り切れず、信頼しきれず自分だけでどうにかしようと考えている。そんな自分の中途半端さに嫌気がさしながら、グランはカリンたちを見上げ続ける。

 

「(……にしてもスカート短けぇな、全員丸見えだぞ)」

 

 良いものを見たと思い、グランは頷いてから自身の作業に戻るのだった。

 

◎・・・

 

 作業を終えてすぐに敵が現れてビルに向かってくる。そこにカリン、マシロ、リコが攻撃を始める。建物の前が開けた大通りと言うこともあり、相手は道路に留まっている車を盾として前進するしかないのだが、マシロ、カリンが持つ銃の前ではそんなもの紙切れも同然で次々と障害物越しに攻撃を成功させている。

 

「エッグいなぁ……」

 

 そんな光景を見ながらグランは呟く。ふと視界の端で何かが光る。それがグランは正しくは認識していなかった。ただ長い間、狙撃手として活動していて培われた勘と幾たびの死線を超えてきた経験から無意識の内に反応して叫んでいた。

 

「スナイパー!」

 

 グランの叫びに反応して素早く姿を隠すカリンたち。数コンマまくれて轟音を立てて建物正面のガラスが砕け対物ライフルの弾丸が撃ち込まれる。

 

「無事か!?」

「はい! こちらは全員問題ありません!」

 

 グランが大声で確認すると無事であると返事が返ってくる。ひとまずは安心したという意味で胸を撫で下ろすグラン。しかしすぐに鋭い目つきをして狙撃が跳んできた、方向を見る。そこには額にNo.11と入れ墨が入れて、ガスマスクを着けた男が立っていた。

 

「貴様らの争いに興味は無い 私は、ただ使命を果たすのみ・・・」

 

 男は別のビルからグラン達の方を見てそう呟く。そうして手に持っていた狙撃銃を再び構えたのだった。

 

 

◎・市街区 地下・

 

「ちょこまか、ちょこまかと……」

 

 市街区の地下道でキッド1は美甘ネルの前から逃走したレジスタンスのリーダー、ジャック・バッティを追跡していた。市街区の地下はブラックマーケットの中心を流れる大きな川が溢れそうになった時一時的に川の水をためて海へと放水する為の放水路になっている。そんな地下施設を駆け抜けるキッド1とジャック・バッティ。ジャックは放水路に住み着いている放浪者の家やテント、施設を支える柱などを盾にしながらキッド1の追跡を撒こうとしている。対するキッド1は『ODI ET AMO』一の戦闘能力を持つ存在、多少の妨害などうっとおしいと思うだけで、的確にジャックに近づいて攻撃を加えていく。

 

「くっ……流石は番号持ち(キッド)か、手強いな……」

「もう諦めたらどうだ? 貴様は逃げられない。代表に逆らった愚かしさ、その命で贖え」

 

 放浪者の家々が並ぶエリアを抜けて巨大な空間に出る二人、ジャックは大きく息を荒げながらそれでも真っすぐにキッド1を睨みつける。一方のキッド1は平然とした様子でジャック、というよりもジャックの背負ったある武器に視線を向けていた。

 

「OVERED WEAPON『GRIND BLADE』……愛蜜(あいみ)、いや今は『クイーンビー』だったか。アイツが幾つかの兵器の設計図を持ち出したのは知っていたがそんな"失敗作"も持ち出していたのか」

「失敗作……だと?」

「当たり前だ。使用者の命を吸い取って稼働し、敵どころか自身まで殺してしまう兵器など狂気の沙汰だ。……そんなものを身に付けるなど自殺志願者でしかない」

 

 キッド1が苦虫をかみつぶしたような顔をしながらそう吐き捨てる。その言葉を聞いたジャックは口元をにやけさせる。

 

「はっ、その言葉代表に聞かせてやったらどうだ? これは元々アイツの為に作られたと聞いたぞ?」

「……っ」

 

 ジャックを強く睨みつけるキッド1、しかしその視線を気にせずジャックはGRIND BLADEを起動させる。

 

「それでもこれは俺達みたいなのが、お前みたいな格上を倒すためには必要で、最適な、最高の武器だ。代表! 見てるか、貴様の望み通りだ! それでも、勝ったのは我々だ!」

 

 ジャックのヘイローに刺さった装置がスパークを飛ばし、辺りに熱気が立ち込める。ジャックの苦痛に耐える声と6つに束ねられたチェーンソーが勢いよく回転する音が地下空間に響きわたる。

 

「今回の蜂起は失敗だ。だが、代表の腹心を一人貰って行こう!」

「くっ、早い!」

 

 ヘイローのハッキングにより過剰に放出された神秘はジャックの身体能力を限界以上に高めた。その力を使い、ジャックは一気に加速してキッド1へと襲い掛かるのであった。

 





No.11 通称『スコルピウス』ガスマスクを着けて髪をぴっちりと七三で分けている男。髪の分け目からNo.11の入れ墨が入っている。使命を果たす為、代表とレジスタンスの間に乱入。介入はするが、戦いそのものに興味はないようだ。
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