シャーレの部長はブラックマーケットの代表   作:四脚好き

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116話

◎・スナイパー組・

 

「全員無事で良かったが……。お前たちから相手スナイパーの場所、分かるか? 多分、二時の方角だとは思うんだが」

 

 グランは一階ロビーのカウンターの後ろに隠れながら二階にいるカリンたちに無線を飛ばす。

 

「こちらからは確認できない……マシロは?」

「こっちもダメですカリンさん。既に移動済みでしょうか……。リコさんは?」

「え、ぼ、僕ですか!? 僕はスナイパーではないので皆さんほど目は良くないのですが……。わ、分かりません」

 

 グランの質問にそれぞれ答えるカリンたち。リコは少しの間、障害物から顔を出してグランが言っていた敵がいるであろう方向を観察したが、何も見つけられずシュンとする。

 

「長く頭を上げ過ぎだ」

「わっ!」

 

 無防備にずっと頭を上げて辺りを見ているリコの隣までカリンがやってきて頭を下げさせる。すると丁度その瞬間、リコの頭があった場所を弾丸が轟音を立てて通り過ぎていく。弾丸はリコの髪の毛を数本吹き飛ばして後ろの壁に当たり弾丸が直撃した壁は大きなを音を立てて罅だらけになる。

 

「あ、ありがとうございます」

「あぁ、怪我はないみたいで良かった」

 

 カリンがリコに怪我がない事を確認して安心して、リコは自分が助けられたことに気が付きお礼をする。そんな中グランの大声が響く。

 

「マシロ! 11時、約600メートル先! 高架上!」

「ッ!」

 

 グランの声に素早く反応して武器を構えてスコープを除く、すぐに敵の姿は見つかった引き金を引くマシロ。しかし弾丸は当たることなく大きく跳躍されることで避けられる。スコープ内から一気に姿を消したNo.11に驚くマシロ。

 

「ダメです避けられました! それにまた見失ってしまいました……」

「そうか、全員移動だ。その場所は相手に覚えられただろうからな」

「移動って言っても……どうする? 相手はこっちに狙いを定めているだろうし、物陰から出た瞬間に狙撃されるぞ。……ほら」

 

 カリンはグランに質問をしながら自身のホワイトブリムを外して物陰からそっと出す。するとどこからか銃声が響いて、プリムが吹き飛んだ。壊れたプリムを見せびらかす様にしながら視線をグランの方に向けるカリン。そんな視線を受けたグランは少し笑った後、覚悟を決めた表情を浮かべる。

 

「俺が囮になる」

「そんなっ! ダメです、代表! そんな役回り私がやります!」

「ちょ、バカ! 立とうとするな!」

 

 グランの発言に驚いたリコが衝撃の余り立ち上がろうとするのを必死に止めるカリン。内心少しだけ、手のかかる妹が出来たようだ、と思っているカリンだが、状況が状況なだけに真面目にリコを制止する。そんな二人の様子が面白かったのか、再び笑うグラン。

 

「大丈夫、とびっきりの秘策があるんだ。任せて置け」

「代表……本当に大丈夫なんですよね?」

「あぁ、お前たちのボスを信じろ!」

 

 そう言って立ち上がり物陰から飛び出すグラン。すかさず狙撃がされるがそれをグランは左手に持っていたガトリングで防ぐ。内部の弾が暴発しだすのを見越してすぐにガトリングを放棄する。

 

「今の内だ! 移動するぞ! 代表が相手を引き付けてくれてる、移動してカウンタースナイプの準備!」

 

 カリンの声に合わせてマシロやリコが動き出して、No.11を狙うのに適した場所に移動する。その間もグランはNo.11の狙いがリコたちに移らないように狙撃が会った方向にショットガンを撃つ。勿論射程が足らず相手にダメージを与えることは無いが、グランのもつ『KO-3K2』は4連装ショットガンであり、凄まじい銃声とマズルフラッシュが起こる。その音と光でグランはNo.11を自身にくぎ付けにしたのだ。

 

「先ほどから、届きもしない攻撃を何度も、何度も……代表も追い込まれて焼きが回ったか? まあどうでも良い。今はまだ避けられているがそれも長くは続くまい」

 

 No.11はそう言いながらグランに攻撃を続ける。懸命に狙撃を躱すグランだが、次第にその動きは鈍っていき、かすり傷が増えていく。

 

「くっそ……場所はわかっても手が出せないのはもどかしいな……」

 

 グランは地面を転がり、ジャンプして時には這いつくばって狙撃を避ける。避けながらもチラチラと視線を時たまリコたちの方に向ける。するとカリンたちは階段を上がっていき、二階から移動してより高い位置からの狙撃を目指していた。

 

「敵の位置は?」

「代表が引きつけてくれているので移動してません! 12時方向、550メートル! 正面ガラス張りのビル9階です!」

「分かった!」

 

 マシロ、リコ、カリンの三人は階段を駆け上がりながら、狙撃位置に向かう。

 

「私が観測手をやります!」

「なら私が一射目を」

「私が二撃目ですね。かりこまりました」

 

 リコが双眼鏡を取り出し、カリンが頷く。そしてマシロに視線を向ける。視線をうけたマシロは自身の銃を抱えなおして頷き返す。三人とも今、こうしている間も攻撃を引きつけ続けているグランの為に急ぎ足で階段を上り続ける。

 

「ここだ!」

 

 目標の階について扉を蹴り開けるカリン。そのまま、素早く銃を構えるマシロとカリン。リコも双眼鏡を構えて敵の位置を確認しようとした瞬間、銃声が響き渡る。

 

「ガァッ!」

「ッ! だ、代表!!」

「リコ!」

 

 銃声の少し後にグランが苦痛の声を上げながら後ろに倒れる。そんなグランの姿を見てしまったリコは大きく動揺して固まってしまう。そんなリコの名前を強く呼ぶカリン。そのカリンの叫びに自分の仕事を思い出したのかグッと拳を握りしめて双眼鏡を覗き込むリコ。

 

「標的、敵スナイパー」

「射距離」

「550メートル。左からの風プラス2度。正面ガラス張りのビル9階。障害物無し」

「照準よし」

「標的を目視。いつでもどうぞ」

「発射」

 

 カリンがリコの指示に従い目標に向かって引き金を引く。弾丸はNo.11に向かって真っすぐ跳んで胴体の真ん中を捕らえた。

 

「ハートショット、ヒット。崩れ落ちる、膝で一瞬止まります。ヘッドショット、エイム」

「見えました」

「いつでもどうぞ」

「撃ちます」

 

 カリンの一撃のあとすぐにマシロが追撃を入れる。万感の想いを込められた一撃がNo.11の頭部に命中した。No.11は完全に崩れ落ちて動かなくなった。

 

「敵スナイパー沈黙。……代表!」

 

 No.11の無力化を確認したリコは大急ぎで階段を駆け下りて一階に向かう。

 

「ナイスショット」

「そちらも良い一撃でした」

 

 そんなリコの後ろではカリンとマシロが互いの拳を軽き突き出して互いの健闘を讃えていた。リコは一階まで下りてすぐにグランの元に駆け寄る。そうしてグランの身体を抱え上げる。

 

「代表! 無事ですか!?」

「あぁ……何とか……な。ほら銃弾、止まってるだろ」

 

 そう言ってグランは自身の左腕を上げる。左腕の義肢は拉げており、弾丸が人工神経や、人工筋肉にからめとられて止まっていた。

 

「これが秘策ですか?」

「え?」

「い、いや、代表が『秘策がある』って言ってたじゃないですか」

「……あー、言ったなそんな嘘」

「嘘ォ!? え、じゃあ、なんの策も無しに自分を囮にしたって言うんですか!?」

 

 グランの言葉にリコが絶叫して抱えていたグランを落とす。

 

「あだっ!」

「あ、ご、ごめんなさい代表!」

「い、いや……大丈夫だ」

 

 グランは落下で痛めた身体を摩りながら立ち上がる。

 

「よし、帰還地点までもう少し! 気を引き締めていくぞ!」

 

◎・市街区 地下・

 

「今回の蜂起は失敗だ。だが、代表の腹心を一人貰って行こう!」

「くっ、早い!」

 

 ヘイローのハッキングにより過剰に放出された神秘で得た力を使ったジャックの一撃がキッド1に襲い掛かる。しかし、その一撃はキッド1に届くことは無かった。

 

――バシューーーッ!――

 

 いくつものロケット弾頭がキッド1の背後から跳んできてジャックに直撃する。

 

「ガァッッ!?」

「ッ!?」

 

 突如として飛来したロケットにジャックは対応できずに被弾し、吹き飛ぶ。急に背後からロケットが跳んできたことにキッド1も驚いて、すぐに体勢を整え後ろを向く。

 

「おやおや、グランさんの懐刀も随分腑抜けたようですね……」

「狐坂ワカモ……」

 

 すると背後の地下道の奥からロケットランチャーを担いだ配下らしき人物を何人か従えたワカモが現れた。ワカモは鈴のような音色の声でキッド1を笑う。ワカモを睨みつけるも自分も思うことが会ったのか何も言い返さないキッド1。ワカモはそんなキッド1を見てひとしきり笑った後、急に声色を変えた。

 

「それで今回のこの戦い。一体どこまであなた達が仕組んだものです?」

「仕組んだ? 我々が?」

「とぼけるのはおやめなさい」

 

 ワカモの表情は仮面で隠れて見えないが、その声色から真剣な表情をしているのが感じ取れる。

 

「小鳥遊ホシノ、空崎ヒナ、美甘ネルが対峙した特別なUNAC、避難誘導で事故にあったのは何故か『ODI ET AMO』に反対的だった人間ばかり、タイミングを見計らったように現れた謎の強襲勢力……これら全て偶然とでも?」

「それらが私たちの自演だという証拠はあるまい?」

「……まぁ、確かにUNACは広く普及していますし、ブラックマーケットの市場に詳しくなければ事故にあった人間がどういった人物かはわからない、強襲勢力も謎の勢力として片付けられます。けれど、私は違います!」

 

 ワカモは銃を構えてキッド1に突きつける。それと同じように、キッド1もワカモに銃を突きつけ、二人は膠着する。

 

「グランさんに伝えなさい。……私はグランさんがどうなろうと、どうしようと別に構いませんわ。その時はその時で私は私なりに楽しみますもの。けれど、あの方(先生)を傷つけるというのなら、この厄災の狐の本気を味合わせて差し上げましょう。とね」

「……承知した」

 

 ワカモはそこまで言うと銃を下ろしてその場を後にする。キッド1はワカモを見送った後振り返りジャックの方に近づく。ジャックは血まみれで地下道の柱に激突しており息も絶え絶えだった。流れ出た血の量とハッキングによって壊れたヘイローがジャックの命はもう長くは持たないことを物語ったいた。

 

「哀れな姿だな」

「……ッぐ。ゴホッ! それ……で、も。支配されるだけの、……愚かな……犬よりは、マシだ……」

 

 ジャックはそう言って唾をキッド1の足元に吐き捨てる。そんなジャックを冷たい目で見下ろしながら、キッド1は銃をジャックの額に当てる。

 

「お前は勘違いしている」

「?」

「私は支配されるだけの愚かな犬ではない。私は―――

 

 

「私は

代表に躾けられる

雌犬だからな」 

 

                                                            

 

 

 そういってキッド1は引き金を引いてジャックに止めをとしてその場を後にした。背中のOVERED WEAPONが発火し、炎に包まれるジャックの遺体。遺体が身に付けていた無線機から出た声が誰もいなくなった地下道に響きわたる。

 

『リーダー、これから合流地点に向かい……。リーダーの指示…どおりね、別々に……逃げた。返事を……て……父さん……。早く……待っ……る』

 

 ブラックマーケットを支配する『代表』とレジスタンスの抗争はいつしか、代表対ビーハイヴに成り代わりレジスタンスは敗走によって幕を下ろそうとしていた。虐げられ、地下へと追いやられた人々は屈辱の中、更に地下深くへと逃げるほかなかったのであった。

 





 どうにか身に付けた最終編PVパロの技法を初めて使ったのがこんなセリフになるとは予想できませんでした。先生泣いちゃうよこんなの……。
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