シャーレの部長はブラックマーケットの代表   作:四脚好き

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118話

◎・『塔』内部 グランの執務室・

 

「VOB?」

「なにこれ、ふざけてるの?」

「ロケット……いや、ブースター……カッコイイ!」

 

 プロジェクターに映し出されたVOBに会議室内の反応は様々だった。

 

 ネルがVOBの名を呟きながら妙な物を見る目で画面を見つめ、カヨコは眉をひそめてふざけているのかと言い放ち、先生が唯一肯定的な意見を出す。会議室内の微妙な雰囲気を感じたのかキッド3がプロジェクターの横に立って説明を始める。

 

「いやいや、まったくもってふざけていないよ! もう一度言うけどコイツは『VOB』正式名称『Vanguard Overd Boost』 ウチが作った長距離侵攻用大型ブースターだよ。コンセプトは『長射程と高火力を誇る巨大兵器及び要塞に対して超高速で接近、その懐に入り込むことで損害を最小限に抑え、また、火力を封じる』。ランドセルみたいに背中に計13門のブースターを背負ってその強大な出力で無理やり空を飛ぶってわけ! 最高速度はマッハ2! これなら足元にいるビーハイヴの連中も迎撃出来ない! これを少数精鋭の6名が背負ってそれぞれ異なる方向から同時に出撃、PL.L.Lの足もとまで行ってVOBを切り離す。その後は通常戦闘でPL.L.Lの脚部一本ずつにある大型砲台を一人一個破壊すればPL.L.Lの内部に十分ダメージが行くはずだよ!」

「マッハ2……マッハ2って言いましたかいま!?」

「行ったけど?」

 

 キッド3の言葉を思わず立ち上がって確認するアコ。そんなアコの驚いた様子にキッド3は"何当たり前のこと言ってんだこいつ"と言いたげな目で見つめ返す。

 

「いやいや、そんなスピードで空を飛ぶなんていくら銃弾で傷つかないと言っても体が持ちませんよ!?」

「ああ、そゆこと。それなら心配ないよ、出撃時はこっちのプロテクトスーツを着てもらうから。あ、これも勿論目標到達後は自壊するから戦闘の妨げにはならないよ」

 

 そう言って次のスライドをプロジエクターに映し出す。そこには様々なデザインのまるでロボットの様なスーツが並んでいた。

 

「それぞれ『ホワイト・グリント』『ステイシス』『アンビエント』『レイテルパラッシュ』『フィードバック』『ノブリス・オブリージュ』ってコードネームがあるよ」

「これがありゃあ、高速戦闘にも耐えられるってわけか」

「そういうこと!」

 

 ネルの質問にキッド3が笑顔で返事して一旦プロジエクターの電源を落とす。部屋の電気をつけて再び明るくなる部屋内。先生は顎に手を当て考えながら口を開く。

 

「プロテクトスーツの数は6つ……6人の精鋭を敵本隊にぶつけて残りのメンバーで周囲のビーハイヴの掃討しないとだね。VOBの面子は……ホシノ」

 

 先生はそう言いながらホシノの方に視線を向ける。

 

「うん。今回は私も本腰入れないとだからね」

 

 気合を入れる為かホシノは髪を結んでポニーテールにしながら頷く。

 

「ヒナ、お願いできる?」

「ええ、任せて先生。ケガももう問題ないわ」

 

 先生に頼られることが嬉しかったのかヒナは無意識に翼をパタパタと動かしながら返事をした。

 

「ネル」

「おうよ! 派手にぶっ壊してやるぜ!」

 

 ネルは握りこぶしを作ってもう片方の手に叩きつけてパシンッと大きな音を立てる。

 

「ツルギ」

「キィヒヒヒヒヒヒヒヒ」

 

 ツルギが奇声を上げながら深い笑みを浮かべる。

 

「あとは……」

「俺とキッド1で行こう。いけるなキッド1?」

「はい、そのつもりです」

「ふっ……それは良かった」

 

 先生が残り二人の選出を悩んでいるとグランが横から立候補して、更にキッド1に声をかける。キッド1はグランに言われる前から分かり切っていたようでグランの言葉に短く答える。

 

「グラン……」

 

 先生は心配そうな表情を浮かべてグランの名前を呼ぶ。正直に言って先生はキッド1なら兎も角、グランを精鋭部隊に編成することには反対であったためだ。グランには残酷なことだが、グランの自身の戦闘技術はそれほど高くなくグランの代わりにアスナやシロコを編制した方が作戦の成功率は上がる。

 

「大丈夫だ先生。言いたいことは分かってる。けど、相手は俺のクローンらしいじゃないか。それは是非一度会ってみないとだろ?」

「勝てるの?」

「勝つさ」

 

 先生の言葉に拳を握りしめ、ニカッと笑い力強く勝利を宣言するグラン。そんなグランの表情を見て先生は少し沈黙した後、頷いて笑う。

 

「うん、任せるねグラン。絶対勝ってね」

 

 先生のその発言で方針は決まった。ヒナは隣にいるアコに目配せするとアコは無言でうなずいて立ち上がる。ツルギも立ち上がると、ハスミもそれに続く。アヤネは携帯を取り出してアビドスの面々に連絡を入れ、ネルも携帯を取り出してアカネに通信を入れる。カヨコも気絶しているアルを担いで執務室を後にしようとする。それぞれが、次の作戦に向かって行動を開始し始めた。

 

「あー、美甘ネルは少し待って。それとアヤネちゃんはノノミちゃんをここに呼んで欲しいなー。あと風紀委員長ちゃんもえっとチナツちゃんだっけ? あの眼鏡の子をここに呼んで欲しいかも」

「あ?」

「の、ノノミ先輩ですか?」

「チナツを? まぁ、構わないわ。アコ」

「かしこまりました」

 

 会議室に気の抜けた声が響き渡る。声を上げたのはホシノだった。ホシノが呼び止めた人物の繋がりが掴めない面子は首を傾げたが、グランにはその面子がどういう繋がりなのかすぐに思い当たって冷や汗が出る。

 

「ほ、ホシノ? なんで今その面子を集める……?」

「はーい、これは決定事項だからグランは座っててねー。あとキッドの二人も残って」

「私たちだと?」

「おんやぁ……?」

 

 ホシノは有無は言わせずに立ち上がろうとしていたグランの肩を押して無理やり椅子に座らせる。さらにキッドの二人も呼び止める。

 

「うんうん。それじゃあ、おじさんたちは少しだけ話しなきゃいけないことがあるから先生たちは先に行ってて欲しいな~」

「え、あ、うん」

 

 それからホシノは先生の方に視線を向けて笑顔でそう言った。しかし笑っているのはその言葉だけで目が一切笑っていないのを見た先生は背筋に氷柱を突っ込まれたような寒気に襲われてホシノが呼んだ生徒以外と自分を手早くグランの執務室から出した。その際ちらりとグランと目があった。

 

(ちょ、先生! 行かないでくれ!)

(ごめん! ちょーっと無理かも。頑張って!)

(あ、え、ま、先生!? せんせーーーい!?)

 

◎・・・

 

 それからしばらくして、ホシノが呼び出した生徒全員が執務室に集まった。執務室内には会議が始まった頃とは別の意味でヒリついた空気が流れていた。原因は椅子に座らされているグランとその方を掴んで抑えているホシノだ。その抑え方が味方によっては椅子に座っているグランに後ろから抱き着いているようにも見えるため、他の女子たちはそれを見せつけられている構図になる、そしてここにいるのは全員がグランの事を想っている女子ばかりだ。必然的に空気は剣呑としたものになる。

 

「ホシノ先ぱーい、少し近すぎませんか☆?」

「ありゃ、どうしたのノノミちゃん? 別にこれくらいふつーだよ、ふつー」

「……」

 

 ノノミがそんなホシノをたしなめるように声をかけるがホシノは普通だと言い切って姿勢を変えようとしなかった。ホシノの返事を受けたノノミは無表情になりジッとグランの方を見つめ始めた。

 

「つーか、サッサとアタシたちを呼んだ訳を教えろよ。さっさとあいつらぶっ飛ばさなきゃならねぇんだ、いつまでも乳繰り合ってんじゃねぇよ」

「それについては同意見だ。小鳥遊ホシノ、早急に目的を話せ。それからこの『塔』において代表の行動を阻害する等あってはいけないことだ。いくら代表が受け入れてるとはいえ、それ以上の無礼は許さん」

 

 ネルとハルミがついに武器に手を伸ばしかける。流石に不味いと思ったグランはホシノの拘束から抜け出してハルミとネルに向かって手を伸ばして止める。

 

「ストップ! 待て! 止まれ! wait!」

「……」

「……」

 

 グランの必死の制止によってどうにかこの執務室が鉄火場になることは防げた。二人を止めた後グランはホシノの方を向く。

 

「二人を止めたが目的を聞きたいのは俺も同じだ。教えてくれるか?」

「……キラーが出てくる前、クイーンが気になることを言ってた」

「気になること……?」

 

 グランの言葉にホシノは真剣な表情で深呼吸をしたあと口を開く。

 

「ねぇ……グランがたくさんの女を抱いてるって本当?」

 

 

 

 ホシノが意を決して口にした言葉に執務室内は一瞬時が止まり、そのあとホッとしたような表情で返事をした。

 

「あ、そのことか。あー、うん、本当の事だよ、ホシノ」

「あ……」

 

 グランの言葉に目を見開くホシノ。さらに追撃を加えるようにネルが口を開く。

 

「ぁあ? 小鳥遊ホシノ、お前知らなかったのか? それならアタシは知ってたし、その上で抱かれたぜ?」

「え」

「そ、その……私も知ってました……。あと私も、その……」

「あ、アヤネちゃん……? 嘘だよね?」

 

 アヤネの告白に驚くホシノ。

 

「また増えたんですか……本当に仕方がない人ですね。そういえばアヤネさんも抱かれたんですか。気持ちよかったでしょう?

「ふぇっ!? あ、ぁぁはい……その、とっても

 

 アヤネの隣にいたチナツはあきれ顔をして額に手を当てた後、アヤネの耳元に顔を寄せて何かを囁いた。囁かれたアヤネは顔を真っ赤にしたあとコクコクと頷いている。

 

「あれあれ~、もしかして小鳥遊ちゃんは知らなかった感じかな~? ディヒヒヒヒ。なんなら私が記録しているグランのやってる映像を集めたDVDいる~?」

「おい、まて。何やってんだキッド3」

「ナニだよ~。ディヒ」

 

 急に恐ろしい事を言い出したキッド3に思わず突っ込むグラン。しかしキッド3はどこ吹く風である。

 

「そして、キッドの中で一番抱かれていて、一番開発されているのがこの私だ! 私レベルになれば―――」

「それは聞いてない」

 

 そしてキッド1が最後に危険な発言をしようとしたのをホシノは冷たい声で遮った。

 

「本当なんですかグランさん?」

「の、ノノミ?」

「本当、なんですか?」

 

 その一方でノノミは笑顔を浮かべたままグランに詰め寄っていた。その様子を見たホシノはどうやらこの事実を知らなかったのは自分だけでは無かったことを悟る。一方でノノミに詰められているグランはノノミの余りの無表情振りに冷や汗がダラダラと止まらなくなり、視線を左にずらしながら返事をした。

 

「本当です……」

「私はショッキングです~☆」

「ウェッ、ア、ハイ。スミマセン」

「成程~。つまりこの事実を知らなかったのは私とノノミちゃんだけだったわけかぁー」

 

 ホシノは周りの反応を見てそう結論付ける。これで終わりかとホット一息入れて目の前のノノミをどうにかしないと、と気合を入れ直すグランだったが、続けて放たれたホシノの言葉に顔を大きくゆがめることになる。

 

「それじゃあ、グランに子供がいたことを知ってるのは?」

「「「「!?」」」」

 

 ホシノの言葉にキッドの二人以外は驚愕の表情を浮かべてグランの方にグリンッと顔を向けて、キッドの二人は『あぁ、そう言えばそうだったな……』と昔を懐かしむような表情を浮かべる。

 

「ホシノッ、それをどこでッ! ……いや、クイーンかッ!」

「うん、そうだよ。……その反応的にこれも本当なんだ。そしてこれを知っているのは『ODI ET AMO』の面子だけだった、と」

「当たり前だ。代表の子、そんな存在がいると公になれば命を狙われるのは必然。『ODI ET AMO』の中でも幹部のみが知り得た極秘情報だ」

 

 キッド1がそう解説する。すると隣にいたキッド3が顔を下に向けながら言葉を続ける。その方はわずかに上下していた。

 

「でもよりによってその幹部の一人、蜂起愛蜜こと『クイーンビー』が裏切りを起こし、当時グランの子を身ごもっていた女とそのお腹にいた子を殺害、逃走したんだ」

「そんな……酷い」

 

 アヤネが口に手を当てて絶句する。

 

「グランさんッ!?」

「ッ!?」

「代表!?」

 

 突然フラリとよろめくグラン。咄嗟にノノミが受け止めて安否を確認する。他の面子も急に倒れそうになったグランが心配になったのか駆け寄ってくる。

 

「大丈夫……。少しその時の事を思い出しただけだ……」

「取り合えず座らせましょう。こちらへ」

「は、はい」

 

 大丈夫と口では言っているがグランの顔色は明らかに悪くなっており、その事件がどれだけグランの心に負担を与えたのかが想像できる。チナツがいち早く駆け付けグランの容態を確認しながら、椅子に座らせるように指示を出す。ノノミはチナツに言われるままグランを抱えて移動する。背凭れにぐったりと寄りかかるグラン。その姿は憔悴しきっており見守る全員が不安になっていた。グランは机の中から一つの写真を取り出す。

 

「その子が?」

「あぁ」

 

 グランの取り出した写真を覗き込む女子たち。そこには茶髪を黒いリボンで二つ結びにしていて、セーラー服に身を包んだ少女がいた。

 

「この子のこと聞いても良い? 今回の騒動にはグランの過去が大きく関わってる。だから知りたいの。今までグランに何があったのかを。グランの事を想っているから、これからも一緒にいたいから、一緒に背負ってあげたいから……だから教えて、お願い」

 

 ホシノはグランに寄り添いながら、そう穏やかな声で告げる。グランが周りを見れば、周りの面子も同意見なのか無言でうなずく。それを見たグランは深呼吸をしてゆっくりと語り出した。

 

「彼女の名前は――小一孁こはね―――

 





 評価、感想は作者の承認欲求モンスターが満たされるので執筆速度向上につながります。どうぞよろしくお願いします。

 
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