シャーレの部長はブラックマーケットの代表   作:四脚好き

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120話

◎・キラーの提示した侵攻開始日 午前5:10 ブラックマーケット 外縁 VOB特設滑走路『1』・

 

「作戦開始20分前、各ブースター圧力チェック開始」

 

 まだ暗がりがブラックマーケットの街を包む中、滑走路脇に架設された管制室では作戦へ向けての最終チェックが始まり慌ただしくなる。それと同じように滑走路上でもVOBの整備員たちはギリギリまで整備箇所を点検して不備がないか確認する。

 

「装備チェック……自動開傘装置のアーミングピンを外せ(アームメインパラシュート) 。高気圧依然として目標地域に停滞中 運低高度・視程無限!(CAVOK)

 

整備員が滑走路に上がってくるある人影に気が付くと一度手を止めてその人影に敬礼をする。滑走路に上がってきたのはプロテクトスーツ『ステイシス』を身にまとったグランとキッド3だった。グランは他の滑走路で準備をしているメンバーに無線をしながら整備員たちに軽く手を上げてあいさつした後、自身の仕事に戻るように合図をする。

 

「一応、確認しておくがし・キラーの提示した侵攻開始日 午前5:10 ブラックマーケット 外縁 VOB特設滑走路『1』・

 

「作戦開始20分前、各ブースター圧力チェック開始」

 

 滑走路脇に架設された管制室では作戦へ向けての最終チェックが始まり慌ただしくなる。それと同じように滑走路上でもVOBの整備員たちはギリギリまで整備箇所を点検して不備がないか確認する。

 

「装備チェック……自動開傘装置のアーミングピンを外せ(アームメインパラシュート) 。高気圧依然として目標地域に停滞中 運低高度・視程無限!(CAVOK)

 

整備員が滑走路に上がってくるある人影に気が付くと一度手を止めてその人影に敬礼をする。滑走路に上がってきたのはプロテクトスーツ『ステイシス』を身にまとったグランとキッド3だった。グランは他の滑走路で準備をしているメンバーに無線をしながら整備員たちに軽く手を上げてあいさつした後、自身の仕事に戻るように合図をする。

 

「一応、確認しておくがシミュレーション訓練でビビった奴はいないよな? 実戦はシミュレーションの数倍はキツイぞ。降りるなら今の内だぞ?」

『それで? もしビビった子がいてその子が抜けたらどうするのさー? この作戦、おじさんたちが一人でも欠けたら成功しないでしょ?』

 

 ホシノがグランの言葉にそう笑いながら答える。

 

「……この任務はそれほど危険だ。降りても俺は文句は言わないし、降りた奴がいたらその……、まぁ、残った奴で何とかするさ」

『はぁ……。前から思っていたけれど、代表って思ったより頭が悪いのね。基本的に行き当たりばったりが多すぎるわ』

「……俺は物事の方向性を決めるのが仕事で頭脳労働担当じゃないし……。 方向性とか、象徴とか、組織のトップって大体そういうもんだろ!? 部下のやることに一から十まで口出してたら部下が育たないだろ、空崎ヒナ!」

『そういうものなのかしら……?』

『けひゃひゃひゃ、時には見守るのも部下の為だ。とはいえ、丸投げはしないがな』

「くっ……剣先ツルギッ!」

 

 まさか自分の知能をツルギにまで指摘されるとは思っていなかったのかグランが苦虫を噛み粒と多様な表情を浮かべる。

 

『あぁー、あれだ、あんま落ち込むなよグラン。アタシも考えんのは得意じゃねぇけど大体いつもどうにかなってるしな!』

『代表……気ほどあなた自身が仰ったように貴方様は道を、目標を示してくださればそれでいいのです。そこまでの道筋は私たちがナニをしてでも切り開いて見せます。全て我らにお任せください!』

「今少し発音おかしくなかったか?」

 

 そんなグランを励ますつもりなのか、ネルとキッド1が肯定的な意見を述べる。少しばかり違和感を覚えつつ、それでいいのかと思い、隣を見ると発言こそしないが同じ無線を聞いているキッド3もうんうんとうなずいていた。

 

「お前たちがそういうならそれでもいいか」

 

 そう言いながら滑走路の所定の位置に到着すると少し前傾姿勢をとって待機するステイシス。

 

「酸素ホースを機体のコネクターに接続……。作戦開始10分前」

 

 本格的に慌ただしくなる滑走路。キッド3も手に持っていた端末をステイシスに差し込みデータチェックに入る。

 

「酸素供給状態確認。作戦開始7分前……日の出です」

 

 管制室の一人がそう告げる。遥か彼方の水平線から太陽が昇り、陰鬱としているブラックマーケットにも日が差し込む。

 

「マッハ2で飛翔する。スーツがあるから大丈夫だと思うが、風速冷却での凍傷に注意しろ」

「各部チェック完了、ヨシ!」

 

 グランのVOBの状態を確認していたキッド3がそう言ってケーブルを取り外す。その様子を見ていたグランは無線を一度切ってキッド3の方を向く。

 

「キッド3」

「ん?」

「お前は俺の行動を逐一記録して、本にしようとしているんだよな?」

「そうだねー、グランの人生は今までも壮絶だったし、これからも壮絶だよ。そんなグランは一体どんな最後を迎えるんだろーね? きっとそれも壮絶で、派手で、唯一で、かけがえのないものになるはずだよ! そのグランの人生をまとめた本! これはきっと大ヒット間違いなしだよ! ディヒヒヒヒ! 貴方の功績、所業その全てを多くの人間に僕は知らしめたいんだよ!」

 

 キッド3はグランの言葉に己の身を抱きしめ体をくねらせながら未来の光景を妄想する。そんなキッド3の頭を軽く撫でた後グランは少し言いよどみながら言葉を紡ぐ。

 

「今回の作戦もし……もし、俺が死んだら『代表は転んで死んだ』伝記にはそう書いておけ」

「え?」

 

 グランの言葉が理解できずに固まるキッド3。少しずつグランの言った言葉が脳に染みてきたのか焦るキッド3。

 

「な、何を言ってるさグラン、流石の僕もびっくりしちゃうよ。さっきも言ったけど君の人生は今まででも十二分に壮絶なんだよ? それを『代表は転んで死んだ』? そんなあっけもない一文で締めくくらせるつもりなんて僕には毛頭ないよ! 仮に君が今回の戦いで負けたとしても、僕はその戦いを細かく観察して、記録して、なんなら多少脚色しても君の最後を壮大で壮絶な物にして見せる!

君は……"水戸グランの物語"は"そうあるべき"なんだよ!」

 

 半ば絶叫に近い声を上げながらキッド3は自分の頭を両手で掴み髪を振り乱す。その時に落とした端末が滑走路に堕ちて破損し、大きな音を立てる。端末の壊れる音とキッド3の声が響き渡り、滑走路上の整備員は動きを止めてグラン達に視線を集める。そうすると、グランは困ったような表情を浮かべながらキッド3の頭を撫でる。

 

「ここで負けたら俺は『代表』じゃない。『代表』としての物語を完結し背切れなかったただの哀れな男なんだよ。だからそんなあっけない最後で良いんだよ。それに言っただろ、『もし』って。俺はこんなところで負けるつもりも、物語を完結させるつもりはない。だから頼むよ、『アム』」

「ッ!」

 

 グランがそう言うと暫くキッド3は動きを止めて、ゆっくりと頭から手を離し、もし文字と両手を胸の前で組み始める。

 

「ディヒ、こういうときだけ名前を呼ぶのズルじゃん……ディヒヒ」

「あぁそうだな、ずるいな。けど、お前が惚れた男はこういう男だ」

「作戦開始2分前、滑走路上の作業員は退避せよ!」

 

 グランとキッド3の距離が近くなり、唇を重ねようとしたとき管制室から通信が響いて中断される。むっとした表情を浮かべるキッド3にグランは笑いかける。

 

「ほら、退避しろ。続きは戻ったらだ」

「……ディヒ、期待してるよぉ~」

 

 キッド3はそう言って滑走路上を後にする。

 

「作戦開始1分前、出撃位置に移動……。酸素装置(ベイルアウトボトル)作動」

 

 プロテクトスーツの足裏にカタパルト装置が接続される。

 

「作戦開始10秒前、スタンバイ。 全て正常オールグリーン!」

 

「水戸グラン、ステイシス」

 

――5――

 

『小鳥遊ホシノ、ホワイトグリント』

 

――4――

 

『美甘ネル、フィードバック!』

 

――3――

 

『空崎ヒナ、レイテルパラッシュ』

 

――2――

『剣先ツルギ、ノブリス・オブリージュ!』

 

――1――

 

『大鷲ハルミ、アンビエント』

 

 最後にグランが全員に向けて通信を繋げる。

 

「鳥になってこい! 幸運を祈る!」

 

 その言葉を最後にVOBのブースターに火がくべられ轟音を立てて加速していく。少しづつ地から離れる身体を上手く制御しながら6人は正面に鎮座するPL.L.Lに向かって飛翔していくのであった。

 

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