シャーレの部長はブラックマーケットの代表   作:四脚好き

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 今回だけ原作がブルーアーカイブ以外の作品です。苦手な人はブラウザバックしてください。

 


ブルキャン いつか訪れる未来。

◎・日本 山梨県・

 

「……平和だ」

「おー、おー、随分遠い目をしとるわ~。いったいどうしたん?」

 

 放課後、本栖高校一年生の水戸グランは冬に入り始め冷たい空気が満ちる廊下を歩きながら外の景色を見てそう呟いた。その呟きを聞いて隣を歩いていたグランの幼馴染、犬山あおいはグランの顔を覗き込みながら話しかける。

 

「いや、やっぱり"ここは"静かだなと思って」

「グランってら昔からそんなこと言ってばっかりやね」

「別にここが田舎だとか言いたい訳じゃないからな。それよかむしろ気に入っている」

 

 グランはあおいに目を向けながら弁明する。しかしあおいはそんなグランの考えも理解していたようで笑っている。

 

「それも知ってるわ。何年一緒にいると思ってん?」

「……そうか」

「そうそう! それよりも早く図書室にビバーク借りにいくで~、アキが部室で待ってるやろーしなー」

「あぁ」

 

 少し前を先導するように歩き出した『今生』の幼馴染の後を追いかけながらグランは思考を巡らす。

 

(何年たっても慣れるもんじゃないな。"こっち"は。待ち行く人々にヘイローはなく、また銃も持ち歩いていない。それどころか武器の所持は固く法で縛られ爆発と銃声が日常だったキヴォトスとは大違いだ。そしてなによりも大きな違いは『銃弾一発でも死ぬ可能性がある』ことだろう。これだけ常識が違いながら言葉、文字は通じる……先生がキヴォトスに来るまえにいた"外の世界"とはここだったのだろうか? そもそも俺はどうしてここに居るのだろう? Operation:Salvation in the desertの成功を確信してそのあと気が付いたらこの世界に俺はいた……まぁ、Operation:Salvation in the desertが成功した時点で俺のキヴォトスでやるべきことは終わった。向こうには何の未練もないが……。アビドスは……ホシノはどうなったのだろう。今の俺には彼女の未来にどうか幸福があらんことを、としか祈れないんだがな)

 

「グーラーンー! まーた難しい顔しとるでー!」

「むっ」

 

 気が付けばあおいとグランの距離はかなり開いてしまっていた。考え事をしていたグランは気が付かなかったが、距離が開いていることにきがついたあおいはグランのもとまで駆け寄ってきて、皺の寄っていたグランの眉間を指でグニグニと押す。

 

「ほら、さっさと行くで!」

「……」

 

 あおいはトロトロと考えゴトをしながらあるくグランにしびれを切らしたのか手を繋いでグランを引っ張って歩き出した。放課後になったすぐの廊下には二人の他にも多くの生徒がまだおり、そんな中男女が手を繋いでいるとあれば、少なからず関心を寄せてしまうのが高校生というもの。あおいとグランの二人は周りからかなり注目を集めてしまう。幼馴染とは言え、異性と手を繋いでいる所を不特定多数の人間に見られているという状態には流石のあおいも顔を赤くしてしまう。が、努めて何でもないようにしながらずんずんと廊下を歩いていく。しかとグランにとってはキヴォトスで数多の女子を落として相手してきたため今更手を繋いだ程度で顔を赤くすることもないし、周りの視線で恥ずかしさから施行を真っ白にすることもないため繋がれた手をじっと見ながらあることを思い出して口を開く。

 

「そういえば、お前もそうだが『アオイ』という名前のやつは面倒見のいい奴が多いな」

「は? まって、ウチ以外に『あおい』って名前の女がグランの周りにいるん?」

 

 瞬間、廊下の空気は肌寒さを覚えるものから極寒の物に変わる。先ほどまで遠巻きからグラン達を見て囃し立てていた外野の生徒も空気の急激な変化に何かを感じ取ったのかそそくさとこの場を去っていく。あおいは後ろを振り返りグランをハイライトの消えた目で見つめる。握られた手のひらはギチギチと音が聞こえるグランに強く握りしめられている。しかしグランは涼しい顔のまま、あおいの目を見つめる。

 

「昔な。なんだ、嫉妬でもしたのか?」

「んなッ」

 

 そう言いながら今まで無表情に近い表情だったのが嘘のように笑うグラン。その笑顔を見て一瞬でハイライトが復活して顔を赤くしながら視線をそらすあおい。既に周りには先ほどまでの空気が帰ってきており、極寒の空気はかき消えていた。

 そして今度は黙りこんでしまったあおいをグランが引っ張って図書室を目指す。

 

(正直、ミカよりかは扱いやすいからな……)

 

 キヴォトスで様々な修羅場を搔い潜ってきたグランにとってこんな感じの女子の一人や二人の扱いなんて楽々である。そうして、図書室についたグランたち。図書室に入ると中には数人の生徒しかいなかった。

 

「おー、犬山さん、水戸くんじゃん。いらっしゃーい」

「いらっしゃいってここは店か?」

「ふふーん、斎藤美容院です」

「おい、人の髪型で遊ぶな」

 

 グランたちが図書室に入ってきたのを見て図書室のカウンターから斎藤恵那が挨拶してくる。まるで店員かのような言葉にグランが突っ込むと、斎藤はカウンターに座っている志摩リンの髪を弄りながら答える。リンの声を聞いて一瞬身震いをするグラン。

 

(志摩の声ってめちゃくちゃミカに似ているんだよな……。別人だと頭では理解しているんだが、どうしても一瞬身構えるよな……」

「そんなにそのミカって人に私の声は似てるのか」

「……口に出てたか?」

「出てたねー」

「出てるでー」

 

 恵那とあおいに指摘され口に手を当てて黙り込むグラン。

 

「しっかし不思議やわ~。ウチとグランは幼馴染やけど、その『ミカ』って名前の人、ウチまったく知らんわ」

「……随分昔だし、あおいがいない時に知り合った人だからな。ほら、それよりもビバーク。借りに来たんだろう」

 

 グランはそう言って曖昧にして逃げることにした。グランが何が何でもこの話題を避けたいのを感じ取った女子たちはそれに合わせることにした。

 

「ビバーク……ほら、新刊。貸出期間は一週間だから、それまでには返却するんだぞ」

「ありがとうなー」

「はーい、ではこちらに名前と借りる本の題名を記入してくださーい」

 

 リンから本を受け取り、恵那が渡した貸出用紙に名前を書いていくあおい。一連の作業を終えて図書室から出ていくグランとあおい。図書室から出ていく一瞬グランは振り返らずに図書室にいるリンと恵那に声をかける。

 

「……ありがとう」

「何の話だ?」

「私もわからないなー」

 

 グランの言葉に白を切る二人。そんな言葉を聞いたグランはフッ、と軽く笑って図書室をあとにした。

 

 ◎・本栖高校 部室棟・

 

 野クルの部室に向かいながら二人は喋る。

 

「あの二人にも気を遣わせたな。もちろん、お前にも」

「ええんやで~。グランが話しくなったら話してくれれば」

「多分話しても理解できんし、信じられんと思うがな……」

「どんな荒唐無稽な話でもウチは信じるで」

 

 立ち止まってグランの目を見てそういうあおい。

 

「それはなぜ?」

「ウチにとってグランは大切な人……じゃなくて、大切な幼馴染やから!」

 

 あおいはグランに真正面切ってそう言い放つ。途中小声になり何かを言い直したが、それでもしっかりと正直に自分の思いを伝える。

 

「……ありがとう。お前が幼馴染で俺は本当に良かった」

 

 あおいの頭を撫でるグラン、その撫で方はキヴォトスときから何も変わっていない。グランにとってこの世界は戸惑いで満ちていた。いままでとはまるで違う常識、地位も金も力もなくなった。それでもグランが自棄にならなかったのは隣にいてくれた幼馴染のおかげだ。再び歩き出して思考の海に潜るグラン。

 

(俺の周りの女はいい女ばっかりだ。本当に……。この世界には今だ慣れないことが多い。それでもここに居るのは、アビドス高校の水戸グランでも、ブラックマーケットの代表でもない。本栖高校、野外活動サークルの水戸グランなんだ。キヴォトスのことはもう忘れても良いのかもしれない。キヴォトスでやるべきことはやったし、いつまでも引きずっていたらあおい達にも失礼な気がする。うん! その方が絶対に良い。……前の世界でユメ先輩が亡くなって俺の終わりが始まった高校一年に再スタートというのも丁度いい。今の世界ではこの高校一年を終わりじゃなくて始まりの年にするんだ!)

 

「なにやっとるんや、あき?」

「ん?」

 

 グランが新たに決心を固めている間に野クルの部室前についていた。あおいは部室の前で部室の扉を少しだけ開いて、中を覗き込んでいる野クルの部長、大垣千明を見て話しかける。

 

「ぶ、部室に見たことがない不審者が……」

「ッ! 下がれ大垣」

 

 千明がグラン達の方に振り向きながら、部室の中を指さしそう説明する。グランはあおいを下がらせて素早く千明と扉の間に滑り込む。そして勢いよく扉をあけ中の不審者を制圧しようとして―――

 

「うへー! 私は不審者じゃないよー!」

 

 桃色の長髪が目に入り、聞き覚えのある声がした。

 

 





 というわけでゆるキャン△回でした。

いつか考えているイベント回グランが若返ります。1年や幼児は体の年齢。記憶は頭の中身、なしだとその体の当時の記憶しかない。ケガは主に四肢欠損のありなし。

  • 一年、記憶あり、ケガあり
  • 一年、記憶なし、ケガあり
  • 一年、記憶あり、ケガなし
  • 一年、記憶なし、ケガなし
  • 幼児、記憶あり、ケガあり
  • 幼児、記憶なし、ケガあり
  • 幼児、記憶あり、ケガなし
  • 幼児、記憶なし、ケガなし
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