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「まさか続くとは思わなかった……」
グランは目の前でどんどん準備されていく見覚えのある機材を眺めながらそう呟いた。
「しかも……」
そこまで言ってグランは視線を機材から少し逸らす。そこにいたのは―――
「うわー、すっごい! 本格的だー……。あー、緊張してきた! あー、あー。声変じゃないよね? あっ、ラジオ番組とかでしかみたことないでっかいマイク! わー、一度まじかで見て見たかったんだよねー!」
次々と現れる機材を興奮した様子で眺め、はしゃぐ先生の姿があった。
「先生と一緒となは……」
「先生ですが前回のラジオ配信を聞いていたみたいで『自分も出てみたい』と仰っていたそうですよ」
「キッド1」
「それで今且、二回目の収録と初のゲストと言うことで朝から気合が入っていたと当番の生徒が仰っていました」
「成程」
グランの隣にスッ、とキッド1が現れて当番の生徒から聞いた情報をグランに伝える。その後にキッド1は胸元に抱えていた書類をグランに渡す。
「代表、そろそろ準備が整いますのでこちらを」
「これは?」
「今回届いたふつおたです」
「あー、そう言えば、そう言う名前だったな……」
グランはキッド1から書類を受け取りパラパラと中身に軽く目を通す。
「一回目の時よりかはペンネームは落ち着いてるな。……先生! そろそろ収録だ、最終確認を!」
「おっけー!」
そう言ってグランと先生はシャーレオフィスに特設された機材の前に座り収録を始める。
「こんばんは皆さん、水戸グランです。ブラックマーケット初のラジオ番組『代表の電波も支配しちゃうぞRadio』第二回です。……はい、まさかの第二回です。自分で言うのもアレですが、こんな番組が続くとは思いませんでした。
あと物凄く今更ですが、ブラックマーケット初のラジオ番組、なんて言ってますからブラックマーケット内限定の放送かと思ったんですけど普通にキヴォトス中どこでも聞けるみたいです。……こんな放送を全国放送にするとか頭イカれてんのか? まぁともかく、なんと今回はゲストが来ています」
そこまで言い切ってグランは一息おいてからマイクに語り掛ける。
「連邦生徒会、連邦捜査部『S.C.H.A.L.E』顧問、屋浦ニイ先生です」
「はぁーい! みんなー見てるー? あ、ラジオだから聞いてるー? シャーレの先生でーす!」
先生はグランのふりに大きな声で答えた。ラジオ出演にかなり興奮しているようでマイクの前で大きく手を振ったりしている。ラジオの為、視聴者に伝わるのは音声のみで身振り手振りは伝わらないのだがそれでも気にせずになのか気が付いていないのか先生は大きなリアクションを続けている。
「はい。ということで改めてゲストはシャーレのニイ先生です。先生どうですか、ラジオに出演した感想は?」
「なんか、とっても緊張するね! この放送が公開されたときのSNSの反応とか、その日当番に来た子が聞いてたりしたら色々聞かれるのかなーって今からドキドキだよ!」
そう言いながら先生は頭を軽く掻きながらニヤニヤと笑っている。そんな先生の様子を見てグランもフッ、とほほ笑む。
「確かに放送当日からに三日程度は当番生徒ととの話題に上がりっぱなしでしょうね。では早速始めていきたいと思います! 第一のコーナー『ふつおた』」
「おおーっ! 来たー!」
グランがコーナー名を読み上げると先生は大きく拍手をして盛り上げる。グランは手に持っていた書類を机の上に広げて隣に座っている先生にも見えるようにする。先生は広げられた書類を興味深そうに何個か手に取って眺めてみる。
「はい、このコーナーは普通のお便り略して『ふつおた』と言うことで、視聴者さんから贈られてきたお便りに私、そして今回は先生がドンドン答えていくというものです。それでは一通目、ペンネーム『ロリが好きなだけでロリコンではない』さん……大丈夫かコレ?」
グランはペンネームを読み上げた後固まり先生の方に目線を向ける。すると先生も反応に困っているようで苦笑いが返された。
「え、えぇー、質問内容は『子供って可愛いデスよね。所で、生徒がよく眠れる睡眠薬って何かおすすめあります?』」
「アウトーーーーーッッ! 絶対にアウトな奴だよこれ! 」
質問内容までどうにか読み上げたがその内容に先生は両腕で大きく×マークを作り大声でアウト宣言する。
「いや、まぁ……確かにそんな感じのする文面だが、冗談気味に言ってるだけでもしかしたら本当に不眠気味なのかも……。けどなぁー」
グランは一応フォローというか考えられる可能性を上げてはみる物のどうしても不信感がぬぐい切れず口をごにょごにょとさせる。
「もし! 本当に不眠症とかで悩んでいるなら直ぐに病院へ行ってちゃんとした薬を処方してもらってください! はい! このお便り終わり!」
「(一応、ブラックマーケットの娼館に行けば『
先生の力強い宣言にグランも流石に自身の領域の話はしなかった。ただ、何も言わないのも少し違う気がしたため、一応の代案を提案しておいた。
「さてと、次のお便りは私が読むね。えっと……ペンネーム『お前の苦労をずっと見ているぞ《岩窟王》』さんからです!『以前販売している武器類を紹介していましたが、近接系の武器の開発予定はあるのでしょうか? 高振動粒子の刃で物体を分子レベルで切断するナイフや薙刀、戦斧や刀などあったら嬉しいですクハハ!』だって! これ私も気になるかも! どうなのグラン?」
興味津々でグランの方に身を乗り出して聞いてくる先生。それに対してグランは顎に手を当てて何かを考えこんでいる。
「いやぁ、一応開発予定が無いわけでは無いんだが……。正直お便りにあるみたいに種類もないし、高振動粒子の刃? とかは技術上の問題で実現できないからな。それ以前に銃で事足りるだろ」
「そ、そうかもしれないけどさぁ……」
「あと、刀は少し苦手だ」
「え!? な、なんで、刀カッコいいじゃん!?」
グランの呟きに先生が驚愕の表情を浮かべる。
「いや、なんか……刀のことを考えると頭痛がして謎の単語が頭を……カピ、カピラ? こはねッ!?」
「は、はい! ストップ、すとっーぷ!! なんだか凄く良くない気配がしたのでこの話題はここまで! それで一応の開発計画はどんなものを作ってるの?」
「あ、あぁ、計画にあるのはレーザーブレードだな。高熱で相手戦車などの装甲を切り裂く」
「レーザーブレード! いいじゃんカッコいい! 出来たら私にも振らせて! 一回持ってみたかったんだよねー。ラ○トセーバー」
「あれほど小型化は無理だろうが、まぁ出来たら持ってくるよ」
先生のキラキラと輝く目を見て苦笑いを浮かべるグラン。
「あと、開発済みのもので言えば実体ブレード兼小盾のBD-0 MURAKUMOやヒートパイルシリーズがあるな。どちらもレンジは短めで扱いづらいがな」
最後に開発済みのものを紹介してグランは話を終えて次の便りに手を伸ばす。
「次はペンネーム『情報屋』さん……からです。『差し支えなければ、貴殿の生活スキルが如何程なのか教えてほしい。主に家事能力や情報処理能力』」
「おぉー、グランの家事能力! 私もちょっと気になるかも! というかどうして言いよどんだの?」
「名前が……な」
「情報屋?」
グランの何とも言えない微妙な表情に思わず突っ込みを入れる。その質問にグランは視線を左の方にずらしつつ答える。
「いやー、ブラックマーケットにも情報屋はいるわけでこいつが本職かどうか、と考えてな」
「でも、本職さんならこんな風にお便り出さないんじゃない? ていうか聞きたいのも家事能力と情報処理能力だし、大した情報じゃないでしょ」
先生のその言葉にグランは顔を顰める。
「甘いな先生、ブラックマーケットではどんな情報も価値ある商品になる。先生も覚えがあるだろう?」
「え? 私が……?」
「最近先生があるものを買っていったとウチの部署から報告が上がって来たぞ」
「え゛?」
グランの言葉に濁った声を上げる先生。
「ゲヘナのある小学校の卒業アルバ「わーっ! わーっ! わかった、どんな情報も商品になるという意味が分かりましたー!」―――理解してくれた様で何より」
商業部門から上がって来た報告を思い出し、その事を口に出すグランとまさかの情報に慌てふためく先生。
「で、実際にグランの家事能力とかはどうなの!?」
話を切り替える為か少し強引にグランに質問する先生。そんな先生に少し笑い、そのあと考え込むグラン。
「……一人暮らししていた(両親が返ってこないだけ)時期が長いからな。家事は一通りのことは出来ていた。特に料理は稀にモモチューブとかを見て少しばかり凝った料理にも手を出していた」
「へぇー、グラン料理上手いんだ……。ねぇねぇ、また今度しシャーレの調理室で何か作ってみない? 私グランの料理食べてみたい!」
「ふふふ、その期待は嬉しいが残念ながらそれは出来ない」
「えー、どうして!?」
先生の疑問にグランは義手の方の手を広げて見せる。
「もう、そんな腕はないからな」
「あ、そ、そっかぁ……」
ラジオを聞いている生徒には腕が鈍ったとか、下手になったとしか判断抱着ないが、目の前で義手を見せつけられた先生や一部事情を知っている生徒にだけ伝わる暗号のようなやり取り。グランの回答に先生も引き攣った笑顔を見せる。
「(で、出たぁ、グランの笑っていいのか、ダメなのか微妙なラインの冗談!)」
「あと、情報処理能力に関しては並か並より下だと思う。基本的なことは部下に任せてあるし。…・・・さて次は先生だな、どれを読む?」
先生の内心の苦労など露知らずグランは何枚かの書類を見せる。まるでトランプのババ抜きのように隠された書類とにらめっこを数秒した後先生は勢いよく一枚を抜き取る。
「こっち! えっーとペンネームは『オオジマ粒子』さん! 質問は『キッドの中で1番一緒に寝てる回数が多いのは誰ですか。ついでにキッド1に施して来た開発についても聞きたいです』……なにこれェ!?」
「寝てる回数が多いのはキッド2、開発に関しては筋肉、背中、手、指、二の腕、腋、鎖骨、うなじ、髪、乳房、乳首、谷間、くびれ、関節、耳、まぶた、歯、腹、へそ、尻、アナル、脚、太もも、足裏どこでもイケるぞアイツは。おまけに視姦、拘束、言葉責め、放置、道具、蝋燭、電流、露出なんでもできる。」
「なんで今日一スラスラ答えてんの!? え、今日の質問ずっと回答前に悩んでたよね! なのになんでこの質問はスラスラ答えれるの! 一番回答に戸惑う奴でしょこれ!」
「だって……キッド1の事だし」
グランの言葉に先生の脳裏をよぎるキッド1との思い出たち……。
「ちょっと納得しそうになった自分が嫌だ!」
「それにほら、収録室の外見てろよ」
「え?」
「自分の性癖が公開されたことに興奮して身もだえしてるぞアイツ」
「……うわぁ」
「先生のそんな声初めて聴いた」
初めて聞く先生の本気の引いた時の声に真顔で驚くグラン。実際先生自身も自分がこんな声を出すと思ってなかったのか発言した後に口に手を当てて驚いている。因みに今まで先生にこの声を出させたのは黒服だけである。
「んんっ! もう次のお便り行くよ! ペンネーム『無人アセンの動き』さんから『『ODI ET AMO』が支配しているエリアと、そこでどんな事をしているのかを教えて下さい。個人的には海上施設エリアで甲殻類を見て周りたい!』……すごい」
「何がだ?」
便りを読み終えた先生が凄いというので思わずどうかしたのかを問うグラン。
「まともだよ! 今日のお便り色々と互いに突っ込みどころがあった中で一番まともなお便りだよ!」
「あぁ、そう言う……。ともかく、説明に入るとするか。
まず最初にブラックマーケットは大きな括りで8つのエリアで分けられている。廃棄施設エリア、山岳基地エリア、市街区エリア、鉱山施設エリア、峡谷地域エリア、廃棄都市エリア、高層区エリア、海上施設エリアだ。その内『ODI ET AMO』が支配しているエリアは高層区エリア、海上施設エリア、鉱山施設エリア、廃棄都市エリア、そして新たに市街区エリアが加わった」
「ビーハイヴ事件のあとに吸収したんだね」
「あぁ、その通り。8つに分けられているが基本的に更に一つ一つのエリア内では更に細かくシマ争いが起きている。嘘か誠かはともかく一つのエリア内に300近いグループがいて日々鎬を削っているなんてのも聞いたことがある。ウチぐらいだぞ、しっかり一つのエリアが一つの組織に支配されてるのなんて、しかもそれを5つものエリアで成し遂げている。これが俺が代表と言われる理由だ」
ラジオの為決して伝わらないがどや顔を披露するグラン。
「それでエリアごとに何をやっているかだな。説明して行こう」
市街区エリア
「市街区は経済活動が最も盛んなエリアだ。金のない不良たち向けの簡易宿泊所や、裏仕事の斡旋所、武器などのショップ、銀行などもある。外部からブラックマーケットに流れ着く場合普通であれば最初に訪れるであろう場所だ。それゆえに外部との交流も大きい。
あまり強い言葉は使いたくないが、ここにいるのは基本的に表の世界でやっていけなくなった落伍者、かといって裏の世界でものし上れなかったクズどもが多い。そんな落伍者やクズがブラックマーケットにやって来たばかりで右も左もわからねぇ一般人や半グレをカモにする最も外部との交流が大きく、最も治安が悪い場所だった。
今はビーハイヴ動乱の後始末で復興作業中だ」
高層区エリア
「高層区はいわばブラックマーケットの首都。高層ビルが立ち並ぶオフィス街で、ウチの組織の本部もここにある。基本的に表の世界での闇取引や市街区の連中を裏で操るような身なりの良い一流の悪だけがいる。そういった奴等は基本的に机の上で考えを巡らせるほうが多くて直接ドンパチはしないから治安もブラックマーケット内では一番良い。
さっきも言ったがここにはウチの本部もあって基本的にやっていることは各部署、各基地から上がって来た書類の精査や今後の組織運営の会議とかの事務仕事ばっかりだな。一応高層区をぐるっと一周するようにレールが敷いてあってその上を装甲列車が巡回している。有事の際にはあの高火力を持って高層区を外敵から警護する」
鉱山施設エリア
「その名の通り鉱山があるエリアだな。資源の採掘する為の職場とそこの従業員、その家族たちが生活する為の街がこのエリア内にある。ここからとれる資源は俺達の重要な物資になるし、余った分を売り払って資金にも出来る。ここを手に入れてからウチの組織も豊かになったもんだよ。それだけ重要な場所だからな内の戦力の結構な数をここの防衛に当てている。
最悪他のエリアが落とされたとしてもここの資源があれば『ODI ET AMO』はあと10年は戦える!」
廃棄都市エリア
「恐らく、かつてブラックマーケットの首都であったであろう場所だ。海に面していて後述する海上施設エリアとの行き来に使われてるな。高層区と同じようにビルが立ち並んでいるがまともな都市機能は俺達が占領した時から残っていなかった。一見使えそうな建物も、レールも高架橋も全部廃墟で使いものになりゃしない。
どうしてこの都市が廃棄されたのかは不明だが、ともかく使えるモンは使うのがブラックマーケットの流儀だ、組織が軌道に乗ってからは多額の資金を投資して街にいくつかの施設を増やした。海辺近くという事を活かして各エリアからの物資を保管したり逆に移送したりする運送拠点であり、開発部門の本拠地もここにあり、港の端の方の工廠を使って日々研究しているし、内地の方では屋内栽培施設を作って食料の生産をしたり、飛行場まである。と、言う風になんでもできる港湾都市になっているな。
あぁ、あと重要なことと言えば『ODI ET AMO』はここで旗揚げした。……懐かしい」
海上施設エリア
「最後に海上施設エリアだな。メガフロートが幾つも存在する海域だな。このエリアの中で更にいくつかのエリアに分かれていて、産油エリア、鎮守府エリア、研究エリアの三つに分かれている。
産油エリアでは海底油田の採掘の為の場所で一番大きく、一番稼働率も高い。ここからとれる原油は廃棄都市エリアに向かい精製され、俺達の兵器の燃料になる。
鎮守府エリアにはウチの所有している軍艦の全てが集結しており、艦隊を編成している。一応鎮守府エリアのトップはキッド1だ。あんな変態だが、腕は確かだ。変態だが。まれにオデュッセイア海洋高等学校の船がやってきて取引したり、船の整備もしてやっている。
最後に研究エリア、ここは海に関する研究をしている。新たな海底資源を探して、採取したりもそうだし、新種の生物の調査だったり、魚の養殖も研究している。いくつかの種類の魚は実際に養殖に成功してブラックマーケット内の市場に流している。ある意味一番学園らしい事をしているエリアだな」
全てのエリアの説明を終えてグランは一息入れる。
「さてと、各エリアの説明は終わったがどうだった?」
「どのエリアも気になるところはあったけど、やっぱり私もペンネーム『無人アセンの動き』さんと同じように海上施設エリアが気になるかも! 観光ツアーとかは無いの?」
「ある訳ないでしょう……ブラックマーケットだぞ」
「ひぃん、残念」
「……」
こうして全てのお便りを読み終えた二人は最近あったことや、シャーレ業務の簡単な説明とカフェの宣伝などをして残り時間を過ごした。途中波乱はあったもののどうにかこうにか『代表の電波も支配しちゃうぞRadio』第二回は成功を収めたのであった。
キッド2がキッド1よりも抱かれた回数が多いのは単純に最初に出会ったのがキッド2で他のキッド達が来るまでは独占状態だったからです。
最後のグランの沈黙は先生が発した言葉が原因です。多分ホシノもラジオの前で固まってる。
ということで次回からエデン条約編です!
評価、感想は作者の承認欲求モンスターが満たされるので執筆速度向上につながります。どうぞよろしくお願いします。