シャーレの部長はブラックマーケットの代表   作:四脚好き

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130話

トリニティ 第1校舎 付近

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「……あぁ、そういうことだ。じゃ、頼む」

 

 トリニティについてからグランはどこかに電話をずっとかけている。相手が誰かまでは分からないが、その話し方、表情からかなり親しい人物なのは予測できる。……これはあくまで予測だけど多分相手は女子。

 なんというか、そもそも男子の絶対数が少ないキヴォトスでは仕方がない事なんだろうけどシャーレの部長であるグランの周りには少し女子が多すぎるんじゃないかと私は心配になってしまう。

 

「ところでお前の方はどうだ? 何か夢中になれる物は見つかったか? ―――― そうか、それならまた一緒に探そう。俺で良ければいくらでも付き合うさ。 ん、あぁ、またな」

 

 そう言って彼は電話を切る。

 

先生(ユメ先輩)、トリニティの知り合いに連絡して駐車場を一つ確保してもらった。アレグロはそこに止めよう。案内は任せろ」

「おぉ~、やっと見つかった。それじゃ、案内よろしくー」

 

 やっと車を止められる……。実はトリニティに着いたはいいもののその直後に私たちはある問題に直面した。『トリニティ、駐車場少なすぎ問題』である。古くからの趣ある建物、それに合わせて作られた優美な街並み、そう言った景観を大事にしているのか、まっっったくといって良いほどトリニティの中心、この第1校舎付近には駐車場がなかった。そんな中グランが知り合いに頼んでみると言って電話をかけ始めた、そして駐車場の確保に成功したみたい。グランの案内に従って車を走らせる。

 

「ここだな」

「え? こ、ここ?」

「あぁ、ある意味トリニティ一安全な駐車場だ」

 

 少し車を走らせると辿り着いたのはこれまた趣のある立派な建物……だったのだけれど……。

 

「なんか、重苦しくない?」

 

 なんか、少しここだけ空気が重いというか、ピリついているというか……。見た目は他の建物と変わらないのに他とは違う存在感を醸し出している建物。

 

「お、やっと来たっすね!」

 

 建物の前で若干戸惑っていると、見覚えのある制服をきた生徒が一人こちらに寄って来た。

 

「よっ、イチカ。悪いな急に」

「いやいや、構わないっすよ。そもそもこの付近で駐車場なんてないっすからねぇ。それならウチの格納庫を使った方が遥かに安全っすから」

「か、格納庫? それにその制服……ここってもしかして」

 

 恐る恐る私はグランに話しかける。

 

「あ、先生っすね。ちゃんと挨拶するのは初めてっすよね? 私は仲正イチカっす。ようこそ正義実現委員会本部へ!」

「あ、どうもどうも。私は屋浦ニイ、シャーレの先生です」

 

 やっぱり本部だったんだぁ……。グラン、いくら伝手を持っててもこんな所駐車場替わりにしちゃ駄目でしょう……。

 

トリニティ ティーパーティー本部

────────────────────────―――――――――

 

「はぁー、もう。正義実現委員会の本部の格納庫を駐車場代わりにするなんて……」

先生(ユメ先輩)に黙っていたのは悪かったが、こうするのが一番良かったんだよ」

 

 ティーパーティーのメンバーに案内され、トリニティの本部の建物内を進んで歩いていくグランと先生。グランはすでに何度か来たことがあるため平然としている。一方先生は一見グランと同じように平然としているが内心、廊下に置いてあるいかにもお高そうな調度品にビビりまくっている。

 

「こちらでお持ちです」

 

 先生たちを案内していた生徒が大きな扉の前で立ち止まる。

 

「分かった。案内ありがとうね」

「お疲れ」

 

 先生とグランがそれぞれ案内役の生徒に声をかける。案内役の生徒は扉をノックする。僅かに扉が開き、内側にいるであろう生徒と二、三言やりとりしたあとゆっくりと扉が開かれる。

 開かれた扉の先には明るいテラスが広がっており、大きなテーブルが置かれている。そんなテーブルに着いているのは翼を持ち、上品さを感じさせる二人の美少女。

 

「こんにちは、屋浦ニイ先生。こうしてお会いするのは初めまして、ですね。ティーパーティーのホスト、桐藤ナギサと申します。そしてこちらは、同じくティーパーティーのメンバー、聖園ミカさんです。あらためまして、お初にお目にかかります。私たちがトリニティの生徒会、ティーパーティーです。」

 

 そういって手に持っていたティーカップを置いてゆったりと頭を下げて挨拶したのは桐藤ナギサ。

 

「へー、これが噂の先生かー。あんまり私たちと変わらない感じなんだね? なるほどー、ふーん……うん、私は結構良いと思う!! ナギちゃん的にはどう?」

 

 反対にテーブルから立ち上がり物珍し気に先生の周りをクルクルと回って観察し、何かに納得した後柴文の席に戻ったのが聖園ミカ。

 

「……ミカさん、初対面でそういった話はあまり礼儀がなっていませんよ。愛が溢れるのは結構ですが、時と場所は選びましょうね」

「うぅっ、それはまぁ確かに……。先生、ごめんね? まぁ取り合えず、これからよろしくってことで!」

 

 そんなミカの態度を諫めるようにナギサは落ち着ていて、それでも僅かに圧の感じる声を出す。そんなナギサの圧を感じ取ったのかミカは少し首を顰めながら先生に謝る。

 

「ふふっ、気にしないで。知ってると思うけど屋浦ニイ、シャーレの先生だよ。こちらこそ、これからよろしくね」

 

 そう言って先生も手を上げて笑顔で挨拶する。その横で若干不服そうな表情を浮かべるグランであった。

 

「おいおい、桐藤ぃ。俺のことは無視かぁ?」

「……い、いえ、そんなことはありませんよ。ええ、お久しぶりです、水戸グランさん」

 

 グランが半分ウザがらみの様な形でナギサに声をかけるとナギサは僅かに頬を引きつらせながらグランに挨拶する。そんなナギサを見てやれやれとグランは内心呆れる。

 

「それからミカも、あの時以来か。部屋はあの後しっかり片付けたか?」

へぇー、私じゃなくてナギちゃんから話しかけるんだ。それに"それから"? 私はなに、ついでなの?もう! 私をなんだと思ってるの! あの後しっかり片付けたよ! 」

 

 グランは以前ミカと出会った時の壊れたライティングビューローの件を思い出してそれを話題にだす。それにミカは恥ずかしいところをナギサの前で暴露されたためか顔を真っ赤にし手を駄々っ子のように上下に振って抗議する。

 

「コホン……。キヴォトスの外の方が、このティーパーティーの場に招待されたのは、私の記憶では先生が初めてです。普段は、トリニティの一般の生徒たちも簡単には招待されない席でして……」

 

 どうにか、場の雰囲気をもとに戻そうとナギサが話を進める。が、

 

「あー、何それナギちゃんちょっといやらしい! 恩着せがましい感じー!」

「……失礼しました、先生。そういった意図は無かったのですが……それはさておき、ミカさん?」

「あー……ごめん、大人しくしてるね。できるだけ」

「ちなみに、俺も数回しか呼ばれたことはない」

 

 ジロリとミカを睨みつけ笑顔を浮かべるナギサ。その笑顔の意味を理解したのか縮こまるミカ。そんなミカの傍に先生に話しかけた後そっとよって話しかけるグラン。

 

「今のホストはナギサか?」

「うん、そうだね。だから静かにしてないと」

 

 グランとミカがこそこそと話しているが、ナギサは先生の方に集中しているためあまり気にしていない。

 

「……ではあらためまして。こうして先生をご招待したのは、少々お願いしたいことがありまして」

「お願い?」

「おおっ、ナギちゃんいきなりだね!? もうちょっとこう、アイスブレイクとか要らないの? ちょっとした小粋な雑談とかは? 天気がいいですねとか、昨日は何を食べたのですか、とか。そういうの挟まないの? ほら、ティーパーティーって、基本的には社交界なんだし?」

「……」

 

 またもやミカに話を遮られたことでナギの目が鋭くなる。しかし今度はミカもひるまず言葉を続ける。

 

「そんな綺麗な目で睨んでも、これはティーパーティーとしての在り方の問題なんだからダメー! きちんとしないと!」

「おい、ミカ。そこまでにしとけって」

「ミカさん、そういったことはあなたがホストになった際に追求してください。今は一応私がホストですので、私の方法に従ってくださいな」

「……」

「……」

 

 グランの忠告虚しく論争をするティーパーティーの二人。場に少しピリついた空気が流れ始めた頃、ナギサは大きく息をすって吐く。

 

「まぁ、お客様の前でこのような論争を広げるのもまた、望ましい姿ではないことは確かですね。……そうですね。ミカさんの言う通り、少し話の方向を変えましょうか」

 

 ナギサがそう言って自身のカップに紅茶を注ぎ直す。

 

「えっーと、あなた達が、トリニティの生徒会長なんだよね?」

「おお、先生の方から空気を読んでくれた! ほら、ナギちゃん見た!これが大人の話術だよ! 自然な会話への誘導!」

「ミカ! おい!」

 

 タイミングを見計らって先生の方から話題を切り出すが、ミカの出した大声によって場の雰囲気は搔っ攫われる。

 

「……はい。仰る通り、私たちがトリニティ総合学園の生徒会長()()です。『生徒会長たち』というのは耳慣れない言葉かもしれませんね……最初からご説明しますと、トリニティ総合学園の生徒会長は代々複数人で担っている物なのです」

「あれ、ナギちゃん無視? もしかして無視かなー? おーい?」

「昔……『トリニティ総合学園』が生まれる前、各分派の代表たちが紛争を解決するために『ティーパーティー』を開いたことから、この歴史は始まりました」

「え、ひどっ……くすん、私ちょっと傷ついた……。グラン慰めてー」

「うぇっ!? あー、ほら、よしよーし」

 

 対面で騒ぐミカを無視して先生への説明を続けるナギサ。そんなナギサの態度にミカは大げさにショックを受けたフリをして隣にいたグランの肩に寄りかかる。その瞬間にグランの首元に顔を埋めて匂いを嗅ぐことを忘れないミカ。グランは突然寄りかかって来たミカに驚きつつもポムポムとミカの頭を軽く撫でて慰める。

 

「……パテル、フィリウス、サンクトゥス……それら三つの学園の代表を筆頭にティーパーティーを開き、和解への流れが生み出されたのです」

「ナギちゃんが本当に無視した……嫌がらせだぁ……酷くない? 私たち一応十年来の幼馴染だよ? こんなこと今までに……結構あったもだけど……」

「あったのかい」

 

 ミカは更に騒ぐがそれでもナギサは気にせず更に説明を続ける。ミカの嘆きに思わずグランも声の大きさを気にせず突っ込みを入れてしまう。

 

「……その後から、トリニティの生徒会は『ティーパーティー』という呼称で呼ばれるようになり、各派閥の代表たちが順番に『ホスト』を―――ああもう五月蝿いですね!?

「ひぇっ」

「うおっ」

 

 騒ぎ続けるミカとグランに遂にナギサは切れてバンッと大きな音を立ててテーブルを叩いて立ち上がる。

 

「今、私が説明をしているんですよ!? それなのにさっきからずっと! 横で騒ぐわ、イチャイチャするわ……。 どうしても静かに出来ないのでしたら、その小さな口に……」

 

 

「ロールケーキをぶち込みますよっ!?」

 





「――っす! ―――っすね」
「(……キッド4を思い出すなぁ)」
「……(あぁ、また別の女のこと考えてる。私が目の前にいるのに……)」ギリィ

グランと話すとき、よく見ると彼女の目はうっすらと開かれているのだ。
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