シャーレの部長はブラックマーケットの代表   作:四脚好き

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132話

パテル寮 最上階 

────────────────────────―――――――――

 

「もおーっ、いきなり魔女は酷くない!? こんなにこんなに可愛い貴方のお嬢様だよ?」

「……ミカ、お前」

 

 なんだこいつ。()()は本当に俺の知っている聖園ミカか? カーテンが閉め切られた薄暗い部屋の中、俺の言葉にむくれ顔をさらし、その後その場で一回転して見せ自身をアピールするミカの表情に何故だか鳥肌が止まらない。

 出来るだけサッサと用件を済ませるべきだな。俺の勘がそう言っている。

 

「そうだったな。それでそんなお嬢様にお願いがあるんだが良いか?」

「補習授業部の本当の目的、でしょ?」

「……」

 

 ッッッ!? い、今の驚き表情には出てないよな? 大丈夫だよな!? は、はぁーっ? なんかミカが滅茶苦茶怖いんだが? さっきまでニコニコと笑っていたのに急に目を開いて真顔になってこっちの聞きたいことを当ててきやがった……。初対面の時に柱もって追い掛け回されたときといい勝負してるぞ、おい。

 

「驚いたよ、まさにその通りだ。あのとき、桐藤の説明を聞いていたがいくつか引っかかることがあった。何か補習授業部について教えてもらえることはあるか?」

「いいよ、これ、見せてあげる。けどナギちゃんには私が見せたこと内緒にしてね」

「ああ」

 

 そう言ってミカが机から紙束を取り出して俺に渡してくる。補習授業部設立についての資料だ。紙束を受け取りパラパラと目を通していく。……くっそ、流石のお嬢様学校、小難しい語句の並びに本当に俺が普段使っているのと同じ言語なのか疑いたくなる。あぁー、脳がバグる~。

 

「え、ええっと、グラン大丈夫?」

「……なん、とか?」

 

 俺の様子にミカが気が付いたのか心配そうに声をかけてくる。ここでミカに解説してもらうなんて情けなさすぎるし……ミカに何らかの情報を隠されていたとしたらそれに気が付けない。どうにかして自身の力で読み解くしかない。

 

「むむむ」

 

 そうして部屋には苦悩する俺とそれを椅子に座りながらニコニコと眺めるミカという構図がしばらく続いた。それから少しして、俺は手元の紙束を机の上に戻してミカに向き直る。

 

「読み終わったよ。……これはつまり、補習授業部は……」

「生徒を退学にするために作り上げた部活だよ」

「……」

 

 俺が言いよどむとミカが俺の言葉の後を引き継いで言ってくれる。

 

「本当はトリニティにもちゃんとした落第、停学、退学に関する校則があるんだけど、どれもこれも手続きとか、会議がたくさんあって面倒なんだよね。でも今回設立された補習授業部はそんな面倒なことをしなくて全く良いの! そこがナギちゃんの言ってた組み込まれた『シャーレの特権』だよ」

「そうか、そこだったか……」

 

 シャーレの持つ権限はとても強力だ。そんな権限を態々補習授業部に組み込んだ、そんな話を聞かされた時から怪しいとは思っていたがなるほどこんな事に使われていたのか……。

 誰よりも生徒の事を考える先生(ユメ先輩)に与えられた力をよりにもよって生徒たちを陥れる為に使ったのか……

 

「どうして……こんなことを……?」

 

 ギリギリと握りしめた手に力が入るのを意識しつつ、努めて冷静にミカに理由を尋ねる。

 

()()()()()()()()()()『トリニティの裏切り者』がその中にいるから、らしいよ」

「裏切り者? ……まさか条約関係か?」

「そう」

 

 俺が先ほど四人の会話の中で出てきた話題の中で『裏切り』という丹後が似合いそうなものを上げてみるとそれは見事に当たっていたようでミカが頷く。なぁにが補習授業部とは関係ないだ、がっつり関わってんじゃねぇか。

 

「裏切り者の狙いはエデン条約締結の阻止」

「……つまり裏切り者はゲヘナとトリニティにずっと争っていて欲しいってことか」

 

 エデン条約。それはトリニティとゲヘナの間で結ばれる予定の不可侵条約だ。ゲヘナとトリニティの中心メンバーが参加する中立機構『エデン条約機構(Eden Treaty Organization)』通称『ETO』を設立し、ゲヘナとトリニティの間で紛争が起きた場合はETOが紛争解決を行うことで、両者間の全面戦争を防ぐという構想……だとキッド1から聞かされた……はず。正直細かいところまでは覚えていない。

 

「だがエデン条約は発案者の連邦生徒会長が行方不明になったから白紙になったんじゃなかったのか?」

「そう。空中分解しかけたエデン条約をナギちゃんがどうにか締結直前まで持ち直したの」

「そりゃまた、ご苦労なこって」

 

 あの超人主導の条約のプロジェクトなんて死んでも引き継ぎたくないね。それをそこまで持ち直したとは桐藤ナギサの苦労はトンデモないものだったのだろう。

 

「でもね、そんな条約が締結される直前まできてあることが発覚したの」

「それが裏切り者……」

「うん。それが誰かは分からない。けどどうにかこうにかして容疑者を絞り込んで一か所に集めた。最悪その箱ごと捨てられるように。それが補習授業部だよ」

 

 やぶを突いたら蛇が出てきた。俺はただ桐藤ナギサがシャーレの権限を可笑しなことに使っていそう、それが先生を害するものなら……と考えていただけだったんだが思ったよりデカいヤマが出てきたぞ。

 

「それでお前は……」

「ん?」

「いや、やっぱりいい」

 

 ミカに"お前は裏切り者は誰だと思う?"と聞こうとしたがやっぱりやめた。こう言ったことは最初は自分の目と耳で情報を収集してから聞かないと、先入観が出来てしまうからな。

 

「このことは先生に伝えるのか?」

「うーん、私からは言わないかな。けど、そのうちナギちゃんから先生に伝えられると思うよ?"トリニティの裏切り者を探してください"って」

「……そうか」

 

 なら俺がすることはその時の先生の判断に従って支援することだな。正直俺はミステリーは苦手なんだ。キッド2やキッド3に聞けばすぐに裏切り者を見つけ出しそうな気がするんだがトリニティの機密にもかかりそうだしなぁ……。

 

「高度の柔軟性を維持しつつ臨機応変に、だな」

「どうしたの、急に? というか、それ具体的じゃ無さすぎない?」

「そうするしかないだろ、今の状況。ともかく情報はありがとな、俺は俺なりに考えてみる」

「うん、それじゃあ。またね」

 

 ミカの声を背中に受けつつ窓から跳び立つ。先生の位置情報を確認してその場に向かう。

 

 

補習授業部 教室

────────────────────────―――――――――

 

 私、下江コハルは補習授業部の部室としてあてがわれた教室の机に突っ伏しながら頭を抱えていた。先生と阿慈谷って子が何かを離してるけど関係ないわ。

 

「死にたい……本当に死にたい……」

 

 なんで、正義実現委員会のエリートの私がこんな奴等と一緒に……ッ! で、でも私が試験に堕ちたのはあくまで飛び級の為に2年生用のテストを受けたせいだから! 1年生用のテストなんかさっさと合格してこんな奴等とはお別れよ! 

 そ、それでさっさと新しく押収品に追加されたあのい、厭らしいビデオの続きを見るんだから! あくまで、押収品チェックの為、倉庫の目録を作るために中身をチェックするだけなんだから! 

 

「う、ぅぅ」

 

 そ、そんなことを考えてたら昨日少しだけ見たビデオの内容を思い出してきちゃった……。ビデオは確か男優の方に焦点が当たっている珍しいビデオだったわ……。でもキヴォトスは女性の方が多いしそっち向けの方が売れるのかしら……。ってそうじゃないわ! なんなのあの男優! 男の癖に変に色気があり過ぎでしょ。気になって調べてみてもあの人はこの作品にしか出てないみたいで他の出演作ないし! 一体どんな人なのだろ……少しだけあってみたい……って駄目よ! ダメダメ! AVに出てるんだし絶対エッチな人に決まってるじゃない! あったら最後、物陰に連れ込まれてあのビデオみたいにれちゃう! 

 

「先生、遅れた。補習授業部は全員揃ってるか?」

 

 ガラリ、と教室のドアが開く音がして男性の声がした。思わずそちらに視線を向けると……。

 

 

「え、エッチなのはダメ! 死刑!」

「……なんぞ」

 

 そこには昨日見たビデオの男優がいた!

 




・『ダウナー欠損お兄さんと新築ボロアパートでの日々』
 たまたまブラックマーケットの酒場で出会った裏ビデオの監督と話があったため、グランが酒の勢いとノリで出演したAV 女性向けを狙い、男女の絡みでありながらグランの方に多くカメラが向いている作品である。内容としては都会に憧れて出てきた女の子が主人公。しかし都会の現実は厳しく仕事で身体を酷使して、休みの日は安い新築ボロアパートで怠惰に過ごす日々。憧れていた都内での買い物なんてする気力すらわかない。そんなある日、気だるげな顔をして古ぼけた義肢を引きずりタバコを吸っているお兄さんと出会う。そのお兄さんは実は隣の部屋の住人で……。 仕事で疲れたあなたを全肯定してくれるダウナーお兄さんとのしっとりじっとりした排他的退廃ックス。 グランの細めでありながらしっかりと筋肉があると分かる身体にくっきりと残る傷跡と欠損のコントラストが一部で人気を博した。
 中でも『へぇ……そんな所舐めたいんだ、この変態♡ いいよ、何でも好きにしてあげる』とグランに囁かれながら女の子が欠損した手足の断面を舐め上げるシーンは当時鑑賞していた女性たちの癖を捻じ曲げた。

ちょっとした質問、ヒフミはグランのヒロインに……

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