シャーレの部長はブラックマーケットの代表   作:四脚好き

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134話

補習授業部 教室

────────────────────────―――――――――

 

 放課後の自習時間、補習授業部の面々と先生とグランは指定の教室に集まり勉強をしていた。

 

「ハナコ、この問題はどう解けばいい?」

「どれですか? ああ、なるほど。こういう時はですね、倍数判定法を用いてこのように……」

「成程……うん、理解した」

 

 アズサの疑問にハナコが手本を見せていく。その数式を見てアズサは理解したと頷く。

 

「……」

「……?」

「えっと、コハルちゃん? 何か分からない問題でもありましたか?」

「い、いやっ! 別に!?」

 

 コハルの挙動不審な様子にハナコが思わず声をかける。しかしコハル自身は何でもないと言ってペラペラと教科書を読み進める。

 

「ちなみに、今見ているそのページは、今回のテスト範囲ではありませんよ」

「えっ、うそっ!? やっ、ちが……っ! 知ってるし! 今回の範囲は余裕だから、先の所を予習してただけ!」

「あ、あはは……」

 

 ハナコの私的にコハルは驚愕するがすぐにキッ、とハナコの方を睨みつけて反論する。そんなハナコとコハルの様子に補習授業部の部長でもあヒフミは乾いた笑い声をあげるしかなかった。

 補習授業部の様子を教壇の上から見ている先生とその隣に控えるグラン。グランはそっと先生に耳打ちする。

 

「今の所、一応は順調……みたいだな。一人不安な生徒はいるが」

「そうだね」

「助けないのか?」

「うーん、最初は好きにやらせてみようかなって。もうどうしようもなくなった時とか、助けを求められたときに私は動こうかなって」

「そうかい」

 

 先生の言葉を聞いてグランは耳打ちを止めて、一応ということで渡されたトリニティの教科書を広げて中身に目を通す。

 

「(流石トリニティ……これ一年用だよな? 全っ然わかんねぇ……。アビドス離れてからは戦闘と話術やら、"アッチ"の方しか磨いてこなかったからなぁ……。)」

 

 トリニティの学力レベルの高さにアビドス一年中退のグランはついて行くことが出来ず、教科書の内容に思わずうげぇ、と顔を顰める。そしてそんなグランの表情を先生はチラリと見て、何かを考え始めた。

 先生とグランがそんなやり取りをしている間にも補習授業部は勉強を続けている。

 

「ハナコ、この文章は何?」

「古い叙事詩の冒頭の部分ですね。『怒りを謳え、神聖よ―――』という……」

「ああ、あれか。理解した」

 

 ハナコの解説に何か思い当たる節があるのかスラスラと回答を埋めていくアズサ。

 

「ハナコ、これは……」

「これは古代語を重訳したものですね。原文を理解するには辞書がないと……ちょっと待ってくださいね」

「ああ、なるほど。ならこれは恐らく『Gaudium et Spes』……喜びと希望、か」

「えっと……はい、そうみたいですね。これは第二回公会議における……いえそれよりも、アズサちゃんは古代語が読めるんですね?」

「ああ、昔習った」

 

 ハナコと共にスラスラと問題を解いていくアズサ。先生は自身も勉強しながら部員全体に目を配っていたヒフミの元に近づいて話しかける。

 

「良い感じみたいだね」

「はい! ハナコちゃんが何だかとってもすごくって…! それにアズサちゃんも学習意欲たっぷりです! コハルちゃんは実力を隠していたそうですし……これならもしかして、余裕で合格できてしまうかもしれません!」

「う、うーん。そうだね……」

 

 ヒフミの言葉に先生は若干の申し訳なさを感じながら頷くことにした。

 

「本当に良かった……実はすっごく心配していたんです……実は『もし1次試験で不合格者が出てしまったら、合宿をしてください』とティーパーティーから言われてまして……」

「合宿?」

「はい、そうなんです……それに、もし3次試験まで全て落ちてしまったら……あうう……」

 

 ヒフミの言葉と表情が何かおかしいことに気が付く先生。すぐに顔を引き締めてヒフミに3次試験ににまで落ちたら何が起こるのかを聞く。

 

「何か、不味いことがあるの……?」

「な、なんでもありません……! 心配は杞憂で終わりそうですし、暗い話はこの辺りにして……。とにかく、試験は問題なさそうです!」

「……」

 

 ヒフミは先生の質問になんでもないと言って首を振るがその態度は明らかに何かがあると言っているようなものだ。しかし先生もこれ以上ここで聞いてもヒフミは答えてくれないだろうと判断して引き下がることにする。

 

「それにしても、ハナコちゃんはどうやらすごく勉強が出来る感じなのですが、どうして落第してしまったんでしょう……? 私みたいにテストを受けられなくてとか、何か事情があったんでしょうか……?」

 

数日後

────────────────────────―――――――

 

 

 第1次特別学力試験、当日。

 

「な、なんで俺もテストを受けるんだよ!?」

 

 補習授業部の教室内に大きな声が響く。声の主は水戸グラン。彼は教室内で先生に渡された紙束を手に持ちながら驚愕の表情を浮かべていた。

 

「この数日間、補習授業部の子たちに勉強を教えている間たまーにだけどグランも教科書を開いてたでしょ? ただね、その時の表情がどれも芳しくない感じだったのが頭に残っちゃって。それで考えてみたらグランも今までちゃんと学校に通えてなかったでしょ? だからこの機にグランの学力も調べておこうと思って!」

「……見られてたか、クソっ」

 

 先生の言葉にグランは顔を逸らして悪態を付く。こんな事になるなら教科書なんて読むんじゃなかった、と後悔しながら手元のテストを見つめる。テストは冊子形式でその中身は見ることは叶わないが手に感じる厚みから問題数はそれなりにあると思われる。

 

「くぅ……ッ」

 

 僅かに冷や汗を浮かべるグラン。そんな彼の背中に声がかけられる。

 

「ま、まぁ、記念だと思ってグランさんも受けるだけ受けてみてはどうでしょう? 合否が関係あるのは私たちだけなのでもっと気楽に考えてください」

「そ、そうは言うがなヒフミぃ……」

 

 ヒフミが自分の席について筆記用具を準備しながらグランにそう話しかける。気楽にと言われたことで多少対交換は薄れたのかある程度態度は軟化したグラン。それでもヒフミと手元のテスト用紙に何度も視線をやり若干不安げな表情を浮かべるグラン。

 

「(あ、なんかちょっと可愛いですね)」

 

 グランのそんな表情を見て少しだけ可愛いと思ってしまい少し口角がにやけるヒフミ。一方のグランはなぜかニヤケだしたヒフミに困惑していた。ヒフミのいけない一面を見てしまったような気分がして少しばかり引いていたグランに更に声がかけられる。

 

「もしかして……怖いんですか?」

「何?」

 

 グランが声の方を向くと頬杖を突きながら笑顔でグランを見つめるハナコがいた。

 

「いえ、随分と試験を受けるのを渋っているので、テストで良い点取れなくてみんなの前で恥をかくのが怖いのかなー、と思いまして♡」

「……」

「沈黙は肯定ですよ♡」

「……かよ」

「あら?」

 

 ハナコの言葉にグランは青筋を立てた後、俯いてが何かを答えるがその声は小さくハナコは上手く聞き取れなかった。

 

「……じゃ……かよ」

「ぐ、グランさん?」

 

 ヒフミもグランの様子が変わったことを疑問に思い顔を覗き込もうとする。その瞬間グランは鬼気迫る表情で顔を上げて大声を出す。

 

「やってやろうじゃねぇかよ!」

「え、ええ!?」

 

 まさかの言葉にヒフミは驚く。しかしそんなヒフミを無視してグランはつかつかと空いている席についてテストを受ける準備を整える。先生も驚きは舌が結果としてグランはテストを受けてくれることになったのでこれで良いかと自分を納得させた。そして全員が席に着いた後、先生は一度教室を見回した後、口を開く。

 

「みんな、落ち着いて頑張ってね」

「え、エリートの力を見せてやるんだから!」

「あ、あはは……頑張ります」

「ふふっ、はい」

「準備は完璧」

「やるだけ、やって見せるさ……」

 

 鐘の音が鳴り、テストの開始を告げる。一斉に冊子を開きカリカリとペンが紙の上を滑る音が聞こえる。

 

「(あっ、これ、補習授業でやったところです……! 先生に解説していただいた内容や、皆で勉強した問題が、ほとんどそのまま……! それに、難易度としては初級……いえ、基礎のレベル! これまでいろいろと怖い事を言われてしまいましたが、もしかしてこれは、私たちへの救済措置ということでしょうか……!?)」

 

 ヒフミはテストの難易度とその内容に思わず顔をほころばせる。しかし決して慢心はせずに確実に問題を解いていく。

 

「こ、これは……え、ええっと……」

 

 そんなヒフミの様子とは反対にコハルは冷や汗を流し、目線が定まっていなかった。焦りと疑問で頭を埋め尽くされて少しばかり声まで出てしまっている。

 

「ふふっ……」

 

 そしてハナコはそんなコハルの後ろ姿を見て微笑んでいた。テストには回答し終わったのか既にペンを机の上に置いている。

 

「……ふむ」

 

 ペンの速度は速くはないが、一問一問丁寧に回答して着実に回答を進めていくアズサ。その表情はまさに二つ名『氷の魔女』に相応しい落ち着き払った表情だ。

 

「……ッ!?? ん? ……??? ……!」

 

 一方で順調なんだかそうではないのか分かりづらく、たびたび表情を変え百面相しているのがグランであった。自身がまだアビドスにいた頃の僅かな記憶を頼りに回答を進めるが所々抜け落ちたり中途半端に覚えている知識の故の不安定さが文字にハッキリと現れており、かなり乱れた文体がテスト用紙にはズラリと並んでいた。

 そうして各々が様々なリアクションを見せながらテスト時間は過ぎていった。

 

「試験の結果が届いたよ」

 

 テストが終了してから数十分後。教室で待機していた補習授業部とグランの前に解答用紙を抱えた先生が現れる。

 

「み、みなさんお疲れさまでした……! えっと100点満点で60点以上でしたら合格だそうです! 高得点は取れなくても、とりあえずそのラインだけ超えられれば大丈夫です。 それに内容も結構簡単でしたし……では、結果発表と行きましょう! 先生、お願いします!」

 

 ヒフミの言葉に先生は頷く。

 

「それじゃあ、発表していくよー。えーっと阿慈谷ヒフミ……72点! 合格!」

「あ、ありがとうございます! 何だか無難な点数ですが、良かったです! では次を!」

 

 先生の言葉に胸を撫で下ろし笑みを浮かべるヒフミ。そしてそのままの勢いで次の発表を先生に迫る。

 

「次は、白洲アズサ……32点! 不合格」

「……はいぃっ!?」

「ちっ、紙一重だったか」

「……ま、まってください!『紙一重』っていう点数じゃないですよ!? 結構足りてないですよ!?」

 

 先生の告げた点数にヒフミは仰天する。そして何故か惜しかったという表情を浮かべているアズサに突っ込まざるを得なかった。

 

「下江コハル……11点 不合格」

「!?」

「コハルちゃんんんっ!? ち、力を隠していたんじゃないんですか!? 今回はちゃんと1年生用の試験を受けたんですよね!? ま、まさかまた2年生用の……いえその点数3年生用の試験を受けたんですか!?」

「やっ、その……! か、かなり難しかったし……」

「すっごく簡単でしたよ!? 小テストみたいなレベルでしたよ!?」

 

 次に告げられたコハルの点数にヒフミはまた驚くハメになった。急いでコハルのテスト用紙を確認するがそれは確かに1年生用のテスト用紙だった。しかも内容やはり簡単な物ばかり。少しばかりヒフミはめまいがしてくるのを感じていた。

 

「あらあら……」

「うう……合格したのは私とハナコちゃんだけ、と言うことでしょうか―――「おい、ナチュラルに俺を不合格にするな」となるとまた次の二次試験を受けないと……」

「浦和ハナコ……2点 不合格」

「2点!!?!!?」

「2点、2点ですか!? 20点ではなく!? いえ、20点でもダメなのですが……! むしろ何が正解だったんですか!? と言いますか待ってください、ハナコちゃん物凄く勉強が出来る感じでしたよね!?」

「確かに私、そういう雰囲気あるみたいですね。まぁ、成績は別なのですが」

「雰囲気!? 雰囲気だけだったんですか!? 成績とは別ってどういうことですかッ!?」

 

 ハナコの点数を告げられた時には既にヒフミの脳はパンク寸前だった。

 

「そ、そうだ、グランさん、グランさんの点数は……ッ!? さっきはあんな風にしましたけど、きっとグランさんなら、グランさんならきっとまともな点数を……」

「水戸グラン、37点」

「きゅぅ……」

 

 ついにヒフミは耐え切れなくなり、倒れ込んだのであった。

 

 

 




アリス「はい! お兄様のステータスは統率75 武力70 知力34 政治62 魅力99 です!」


 評価、感想は作者の承認欲求モンスターが満たされるので執筆速度向上につながります。どうぞよろしくお願いします。

ちょっとした質問、ヒフミはグランのヒロインに……

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