シャーレの部長はブラックマーケットの代表   作:四脚好き

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Chapter 00 始まりの戦火
1話


◎・連邦生徒会 生徒会室・

 

「……私はミスをしました。結局、この結果に辿り着くまでなにもできなかった」

「……は? アンタがミス? 」

 

 幾重もの円が浮かぶ星空。その光が差し込む神聖さを感じつつも空調の利きが壊滅的に悪そうな部屋。

その部屋のソファにローテーブルを挿み対面し座る二人の男女。

 

「ええ、ですが既に対策も準備済みです。これならきっと……」

「準備って、まだ実行してないし、解決もしてないのか。……ミスの規模も聞いてないしこういうのは言うべきじゃないんだがな……。お前はキヴォトスの生徒会長なんだ、もっと確りしてくれ。その立場、責任を考えてほしい」

 

 女を睨みつける男。部屋内にピリピリとしたプレッシャーが満ちる。しかし女は何も気にせずテーブル上のカップを持ち上げ口をつける。中身を一口飲み息をついてから口を開き、

 

「ご心配どうも。今回あなたを呼んだのも『対策』の一つです」

「ほう?」

「貴方にはある部活の部長に就任していただきます」

「は?」

 

男の気の抜けた声が響いた。

 

 

 ◎・連邦生徒会 レセプションルーム・

 

 あの生徒会長に『シャーレ』とかいう部活の部長になって欲しい、と言われ前金も押し付けられてしまって数日たった。あの後、家で渡された資料を読み込んだがこの『シャーレ』という部活、かなりの権限が与えられている。『表』の世界では連邦生徒会と一、二を争う権力を持つ組織になる。一体何故こんな組織をアイツは作ったんだ。ちょうど『先生』というアイツが呼んだ人物も来るわけだし、迎えついでに真意を問いに再び連邦生徒会を訪れた。が、そこにはすでに何名かの生徒が訪れており騒ぎ立てていた。

 ミレニアム、トリニティ、ゲヘナ……。キヴォトスの名立たる学園がそろい踏みだな。見知った顔があったので声をかける。

 

「久しぶりか? チナツ」

「前回の医学交流会以来です、代表。それとムイ先輩はお元気ですか?」

「キッド2なら今日も領地内で怪我人の治療と後輩の指導に当たっているはずだ。伝言があれば伝えるが?」

 

 ゲヘナ学園風紀委員一年、火宮チナツ。『医療に境界なし』の考えの元、俺が主催した各校合同医学交流会、各校の医療関係者を集めて医療技術のさらなる発展を目指すための場。その場で俺とチナツは知り合った。

 

「いえ、私というよりセナ部長が……。代表に、と」

「あぁ……そうか」

 

 彼女の元上司とは医学交流会とは別件で知り合っているのだが。またか……。彼女の小言は表情は全く動かないくせに長時間ネチネチと攻め立ててくるので苦手だ。いっそのこと激情を露わにしてくれたほうが気が楽だ。目頭を軽く揉みながら俯くと、チナツがこちらを『この人も大変ですね』という目で見ていた。

 

「その目は止めてくれ」

「ふふ、すいません」

 

 レセプションルームのソファに座り、コーヒーを飲みながら連邦生徒会長を待つ。大分手間取ってるな……。

 

「チナツも生徒会長に用が?」

「はい、風紀委員長からの最近の事象についての詳しい状況説明の要求を伝えに」

 

 チナツを対面に座らせて雑談していると、上階からのエレベーターが止まった。そしてエレベーターから首席行政官である七神リンと見知らぬ女性が下りてきた。

 

 

 恐らく、アレが『先生』か。レセプションルームにいた生徒たちがここぞとばかりにリンの元に殺到する。勿論チナツも席を立ってこちらに一礼してからリンの元へ向かった。

 

 

「ちょっと待って、代行! 見つけた、待っていたわよ! 連邦生徒会長を呼んで来て!……隣の大人の方は?」

「首席行政官、お待ちしておりました」

「連邦生徒会長に会いに来ました、風紀委員長が現在の状況について納得のいく回答を要求されています」

 

 何人にも詰め寄られているせいかリンが露骨に表情を歪めている。その女性としてはあんまりな表情に笑いが出そうになる。それをコーヒーを口につけることで誤魔化す。すると思考でも読めるのかキッとした目つきでこちらを睨むリン。急いで目をそらす。

 

 「まったく……面倒な人たちに捕まってしまいましたね。こんにちは各学園からわざわざここまで訪問してくださった生徒会、風紀委員会、その他時間を持て余した皆さん。皆さんがここに来られた理由はよくわかっています」

「暇じゃなくて一応依頼できたんだが?」

「そこまで分かっているなら何とかしなさいよ! 連邦生徒会! 数千もの学園自治区が混乱に陥っているのよ!? この前なんか、うちの学校の風力発電所がシャットダウンしたんだから!」

「連邦矯正局で停学中の生徒たちについて、一部が脱走したという情報もありました」

「スケバンなどの不良たちが、登校中の生徒を襲う頻度も高くなりました。治安の維持が困難になっています」

「戦車やヘリコプターなど、出所のわからない武器の不法流通も2000%以上増加しました。これでは正常な学園生活に支障が生じてしまいます」

「うちの売り上げも2000%ほどじゃないがかなり高まってる。ありがたくはあるんだが」

「こんな状況で連邦生徒会長は何をしているの? どうして何週間も姿を見せないの? 今すぐに会わせて!」

 

 何週間? 待て、俺は数日前にアイツと出会っているんだが? 何週間も姿を見せていない? 俺はあいつに呼ばれアイツと話し、家に……。ん? 俺はどうやって連邦生徒会に行って、どうやって家に帰ってきた? 記憶が無い。いや、『元よりその過程が無かった』のか? 俺があの日いた場所は本当に生徒会室だったか? 何かがおかしい。そう唸っているといつの間にか話が進んでいた。

 

「連邦生徒会長は今、席におりません。正直に言いますと、行方不明です」

「……え!?」

「……!!」

「やはり……」

「結論から言うと、サンクトゥムタワーの最終管理者がいなくなった為、今、連邦生徒会には行政制御権がありません」

 

 キヴォトスの中心たる連邦生徒会、その行政機能が失われている。それが最近のキヴォトスの混乱の原因か。昔から頼りにならないね、連邦生徒会

 

「認証を迂回出来る方法を探していましたが……先ほどまで、そのような方法はありませんでしたが解決しました。――この先生が、フィクサーになってくれるはずです」

 

「!?」

「!」

「この方が?」

「やっぱり『先生』だったか」

「私?」

「ちょっと待って。そういえばこの先生はいったいどなた? どうしてここにいるの? というか、代表は知ってるの?」

 

  次々と疑問をぶつける青髪、早瀬ユウカ。ミレニアムサイエンススクールの生徒会であるセミナーの会計で『冷酷な算術使い』の異名を持っている……らしい。聞かないんだよなぁ、その異名。

 

「キヴォトスではないところから来た方のようですが……先生だったのですか」

 

 確かにヘイローがない。キヴォトスの外からの人間、なぜそんな存在を呼んだんだ? 当然の疑問をぶつけたのは、トリニティ総合学園の羽川ハスミ。トリニティの武力集団、正義実現委員会に所属している。リーダーのツルギが来てないのは……仕方がないか。

 

「はい。こちらの先生はこれからキヴォトスの先生と働く方であり、連邦生徒会長が特別に指名した方です」

「行方不明の連邦生徒会長が指名……?」

「こんにちは、私は屋浦ニイ。よろしくね」

 

 先生が一歩前に出て笑顔で挨拶をする。

 

「先生は元々、連邦生徒会長が立ち上げた、ある部活の顧問としてこちらに来ることになっていました。連邦捜査部『シャーレ』単なる部活ではなく、一種の超法規的機関。連邦組織のため、キヴォトスに存在する全ての学園の生徒たちを、制限なく加入させる事すら可能で、更に各学園の自治区での制約なしの戦闘行動も許可されています。なぜこれだけの権限を持つ組織を作ったのかはわかりませんが……」

「俺もそれを聞きに来たんだが?」

「シャーレの部室はここから約30㎞離れた外郭地区にあります。今は何もない建物ですが、連邦生徒会長の命令で、そこの地下に『とある物』を持ち込んでいます。先生をそこにお連れしなければなりません」

 

 リンはそこで一度言葉を区切り、手元の端末を操作して連絡を入れる。

 

「モモカ、シャーレの部室に直行するヘリが必要なんだけど」

『シャーレの部室? ……ああ、外郭地区の?……そこ今、大騒ぎだよ?』

「大騒ぎ?」

『矯正局を脱出した停学中の生徒が騒ぎを起こしたの。そこは今戦場だよ』

「……うん?」

『連邦生徒会に恨みを抱いて、地域の不良たちを先頭に、周りを焼け野原にしているみたいだよ。どこが売り払ったんだかR2Bまでいるみたいだよ』

「……ッ」

 

 ジロリとリンの目線がこちらに向けられる。R2Bは確かにうちの商品だが……睨まれても困る。

 

「何て、タイミングの悪い……」

『それで、どうやら連邦生徒会所有のシャーレの建物を占拠しようとしてるらしいの。まるでそこに大事なものがあるみたいな動きだけれど?まぁでももう滅茶苦茶な場所なんだから気にしなくても……あ、お昼ごはんのデリバリーが来たから、また連絡するね!』

「………」

 

 

 

 通信がブチ切りされた。沈黙が場を支配している。少しうつむきがちなリンの顔色は察するに難くない。その様子を至近距離で見ていたせいか、先生が少しだけ引き気味に心配の声をかける。

 

「だ、大丈夫そう?」

「……ええ、大丈夫です。……少々問題が発生しましたが、大したことではありません」

 

 顔上げ、問題ないというリン。声が少し震えてる、モモカさぁ……。それからリンはこちらを見つめてくる。なんとなくだが展開が読める。

 

「……?」

「……な、なに?どうしてこっちを見つめてるの?」

「ちょうどここに各学園を代表する、立派で暇そうな方々がいるので、私は心強いです」

 

「……え?」

「知ってた」

 

 ユウカの気の抜けた声が響く。

 

「キヴォトスの正常化の為に、暇な皆さんの力が今必要です。行きましょう、皆さん」

「え、ちょ、ちょっと待って!? どこ行くのよ!?」

 

 リンが歩き出したところにユウカの声がかかる。その声を聞いてリンが一度立ち止まり言った。

 

「戦場です」

 

◎・キヴォトス郊外付近上空・

 

 現在俺が連邦生徒会に来るために乗ってきていたヘリでシャーレに向かっている。

 

「さて、そろそろ着陸地点だ。最後にもう一度目標を確認する」

「もう!何で私達が不良たちと戦わなきゃいけないのよ!?」

「サンクトゥムタワーの制御権を取り戻す為に、部室の奪還が必要ですから……」

「それは聞いたけど! 私これでも、うちの学校では……」

「すまないが話を続けさせてもらう」

 

 ぶーたれるユウカの声を遮り連邦生徒会から預かった地図を広げる。

 

「現在地はここ。着陸地点はシャーレから約1.3㎞離れた公園。最初にB-44 ROKH 2機が別方向からシャーレと公園の間に壁を作るように爆撃を行う。爆炎の壁で目くらましをしている間に着陸、シャーレに向かう。今のところ敵に対空兵器持ちはいないし、仮にジャベリン、スティンガーがあったとしてもこのF12C STORKは落とせんよ。我々の目標は先生をシャーレに送り届けること。敵部隊は全員相手する必要はない、現在うちが制圧部隊を編制している。次に敵兵力。事前にAS-12 AVES による偵察を行った。敵は約一個小隊。ただ、R2B SHCHIT が一台確認できた。……うちの商品だ」

 

 ヘリ内の空気が若干凍った気がする。というか視線が少し痛い。

 

「ち、着陸後は先生を護衛を優先してシャーレに向かう。フロントは俺と早瀬。その後ろに守月、羽川。チナツは先生の護衛で行きたい」

「あ、そのことなんだけど」

 

 ヘリ内で話し合っていると、先生が手を挙げて声をかけてきた。

 

「着陸してからは私が指揮するから従ってほしい」

「え、ええっ? 戦術指揮をするということですか?」

「わかりました。先生の指揮に従います」

「先生の言葉に従うのは自然な事、よろしくお願いします」

「よろしくお願いします、先生」

「了解です。お手並み拝見させていただきます。こちらを」

 

 アイツがシャーレの顧問として選んだ人その実力、確かに気になる。その手際を確認するためにも指揮権を預け、連邦生徒会より借り受けた周辺地図を先生に渡す。先生は地図を受け取り小さく『ありがと』とつぶやく。

 

「これからよろしくお願いします、先生。私はトリニティ総合学園、正義実現委員会の羽川ハスミです」

「同じくトリニティ総合学園。トリニティ自警団の守月スズミです」

「私はゲヘナ学園、風紀委員の火宮チナツです、よろしくお願いします」

「ミレニアムサイエンススクール、早瀬ユウカです。先生よろしくお願いします」

 

 皆の視線が集まる。さっきもこんなのあったぞ。しかも先生は何かを期待するように目をキラキラさせている。

 

 

「ブラックマーケット代表、水戸グラン。連邦生徒会長からの任命でシャーレの部長になりました。よろしくお願いします、先生」




主人公の名前は『ミグラント』のアナグラムです。大して深い意味は持っていません。彼が名乗ったり、呼ばれている『代表』というのはブラックマーケット代表として連邦議会に出席することがあるためです。もちろんブラックマーケットに生徒会なんてありませんし、議会もありませんので単に『代表』と呼ばれます。

評価、感想は作者の承認欲求モンスターが満たされるので執筆速度向上につながります。どうぞよろしくお願いします。

 

いつか考えているイベント回グランが若返ります。1年や幼児は体の年齢。記憶は頭の中身、なしだとその体の当時の記憶しかない。ケガは主に四肢欠損のありなし。

  • 一年、記憶あり、ケガあり
  • 一年、記憶なし、ケガあり
  • 一年、記憶あり、ケガなし
  • 一年、記憶なし、ケガなし
  • 幼児、記憶あり、ケガあり
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  • 幼児、記憶あり、ケガなし
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