シャーレの部長はブラックマーケットの代表   作:四脚好き

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136話

トリニティ別館 合宿所

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「ようやく着きましたね、ここが私たちの……」

「はい、合宿の場所です。ようやく着きましたね、ふぅ……」

 

 合宿所の部屋に入ってハナコが部屋の中を見渡しながら呟く。それに返事をする形でヒフミは部屋の中に荷物を入れて一息つきながら答える。

 

「しばらく使われていない別館の建物と聞いたので、冷たい床で裸になって寝ないといけないのかと思いましたが……。広いですし、きちんとしてますし、可愛いベッドもあって何よりです。これならみんなで寝られそうですね、裸で♡」

「さっきからなんでちょいちょい『裸』を強調するの!? それにベッドの数もちゃんとあるんだから、みんなで寝る必要ないでしょ!?」

「仮にベッドが無くても床では寝させないだろ先生が。ウチのアレグロを使えば良いし」

 

 ハナコが何度も意味深な言葉をくり返し、それに対してコハルが顔を赤くしながら突っ込みを入れて、そんなやり取りを一歩離れた所から眺めていた先生とグラン。ハナコの発言にグランがもしもの時の想定を話して、先生もグランの意見に賛成のようでうんうん、と頷いている。

 

「あらあら、もしそうなったら代表さんとも一緒に寝ることになるんでしょうか?」

「なっ!? え、エッチなのは……ッッ!」

「ばーか、そうなったら俺は別の所で寝るに決まってんだろ」

 

 グランの提案にハナコは自身の身体を抱きしめる素振りを見せて流し目で色っぽさを演出しながら揶揄う。そんなハナコの様子にコハルはあることないこと想像してしまい瞬間湯沸かし器のようになるが、途中でグランが声をかぶせる形で否定する。

 

「別の場所ってグランさんはどこで寝るつもりなんですか?」

 

 ヒフミが恐る恐ると言った様子でグランに質問する。するとグランは詩人の小指を立てて見せる。

 

(これ)の所にお邪魔する」

「あらあら♡」

「ひぅ!」

「え、エッ、エッッッ」

「ᓀ‸ᓂ?」

「ちょっとグラン?」

 

 グランの発言にハナコは顔を赤くして微笑み、ヒフミは真っ赤になり目を手で覆う。コハルは衝撃的すぎて言葉に詰まり、アズサはハンドサインの意味が理解できずに首を傾げた。グランの女性事情を若干知っている先生だけが『まだいるの?』と言いたげにジト目をグランに向ける。

 

「せっかくの合宿ですし、そういうお勉強も必要でしょうか? お話を聞くだけでも……」

「ダメ! エッチなのは禁止! 死刑!」

 

 ハナコの発言にコハルは両手で大きなバツ印を使って力強く拒否する。

 

「まぁ今はまだ明るいですし、そういうコトにしておきましょう。夜は長いですからね……♡」

「えっ、は、ど、どういう意味!?!?」

 

 マイかい毎回良いリアクションをするコハルににっこり笑顔のハナコ。そんなハナコだけに聞こえるようにグランはぼそりと一言。

 

「よくそこまで言えるよ。……おぼこの癖に」

「ッッ!?」

 

 グランの発言にハナコは身体を震わせグランからササッ、と距離をとる。それは必然的にコハルからも距離を取ることになり今まで押せ押せで来ていたハナコが急に離れたことにコハルは疑問を感じる。一方でそんなハナコの様子にグランはクツクツと笑い、ハナコは赤くなった顔でグランのことをキッ、と睨んでいた。

 

「その、これから一週間寝食を共にするので、みなさん仲良く……ってあれ? アズサちゃんは……?」

 

 グランが何を言ったのかまではわからなかったが、グランとハナコの対立的な雰囲気にヒフミはどうにか場を収めようとするする。が、途中でアズサの姿が消えていることに気が付き疑問の声を上げる。

 

「あら、先ほどまでは一緒にいたのですが……」

 

 ヒフミの声でハナコもアズサがいないことに気が付いて辺りを見回す。全員が行方を知らず、探しに行こうかという雰囲気になった時、部屋の扉が相手アズサが姿を現す。

 

「偵察完了だ」

「て、偵察……?」

「トリニティの本校舎からはかなり離れているし、流石に狙撃の危険は無さそう。外への入り口が二つだけというところも気に入った。いざというときは片方の入り口を塞いで、襲撃者たちを1階の体育館に誘導した上での殲滅戦が有効になるかな。まぁ他に幾つかセキュリティ上の脆弱性も確認出来たけど、改修すれば問題無い範囲だ」

「え、えっと……」

「一体何と戦うつもりだ、オメー……」

 

 アズサは合宿所の案内図を広げて施設について解説を始める。あまりに実戦的な考え方にヒフミは引き気味になり、グランはあきれ顔で突っ込みを入れる。

 

「それから、ここが兵舎……いや、居住区か。……綺麗だな。 こんな施設を使わずに放置していたなんて……無駄遣いも良いところだ」

「あの、アズサちゃん……私たちはここへ戦いに来たのではなく、勉強をしに来たんですよ……?」

「うん、分かってる。一週間の集中訓練だろう? 外出禁止、自由時間は皆無、24時間一挙手一投足まで油断することは許されないハードなトレーニング」

「(わ、分かってる?)」

「そ、そこまででは無いと思いますが……」

 

 アズサのことばに先生は本当にこの合宿の意図が分かっているのだろうかと額に手を当てながら考え、ヒフミももう押されまくりだ。

 

「きちんと準備もしてきた。体操着や細かい着替え、衛生面の歯ブラシや歯磨き粉、石鹸、非常食、毛布、水筒……」

「さすがはアズサちゃん、用意周到ですね」

「当然だ。徹底した準備こそ成功への糸口」

「準備が徹底してあるのは良い事なんだが、お前が言うとヘンな感じがするな……」

 

 ハナコがアズサの頭を撫でて褒める。そんな様子を苦笑いしながら見つめるグラン。

 

「うふふ、みんなで一緒に食欲を見たし、睡眠欲を見たし、そしてみんなが欲する目標へと向かってわき目もふらず手を動かす……いいですね、合宿」

「……うん、そうだね」

 

 ハナコの言葉に同意し、撫でられたままを保っていたアズサが何かを思い出したように目を開く。

 

「あ、でも任務は確実に遂行する。きちんと勉強をして第2次特別学力試験にはどうにか合格する。その目標の為にここに来たんだ。……迷惑はかけたくない」

「アズサちゃん……」

「大丈夫、万が一の敵襲に備えて対人地雷とクレイモアも用意してきた。あとは即席爆発装置の材料になりそうなもの一式と、対戦車地雷も多少――「あ、アズサちゃん! ですからそういうのは……!」

 

 ヒフミがアズサの物騒な発言に苦言を呈しようとしたとき、グランが手を上げてヒフミの言葉を止める。

 

「まぁ、ヒフミの言いたいことも分かるが、俺はもう諦めた。白洲がそれで安心して勉強に集中できるならそれでいいだろう。その"敵襲"とやらが気になって勉強に集中できなかったらまた同じ結果になりそうだからな。たたじ、後でトラップの場所はしっかりと報告しろ、先生が引っかかったら目を当てられん。それから先生も白洲の報告が終わるまでは室内で待機、絶対外に出るな。俺はミンチになった先生なんて見たくないからな」

「わ、分かった」

「了解した。トラップの場所はこの地図に書き出せばいいか?」

「頼む」

「あと、それから……アズサでいい」

「……分かった。頼んだぞ、アズサ」

 

 グランの言葉に先生は緊張した面持ちで頷き、アズサは手に持っていた地図にトラップの場所と種類を書きだしていく。

 

しばらくして

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「……というわけで、あらためて。ナギサ様から言われた通りです。第1次特別学力試験には残念ながら落ちてしまったので……この別館で合宿することになりました。私たちは2次試験までの一週間、ここに滞在することになります。長い間放置されていたそうですが、少し掃除すれば全然使えそうですし、体育館やシャワー室なども充実しているようですし……」

「うん、そういえば外にプールもあった。しばらく使われていないようだったけれど」

「あ、そうだったんですね。あと、ここはトリニティの本校舎からも頑張れば歩ける距離ですし、地下に食堂の様なものもありましたから、特にお腹を空かせる心配も無さそうです」

「必要な食材やらはすでにアレグロに積み込んであるから後で移動させる」

「ありがとうございます! それれに私たちがここにいる間、先生たちもずっと一緒にいてくれる予定ですので、何かあっても大丈夫だと思います!」

 

 ヒフミは荷物を片づけた後、あらためて合宿の目標や施設を確認して他の補習授業部のメンバーに伝える。

 

「うん、任せて!」

 

 ヒフミの言葉に先生が自身の胸をドンっと叩いてウインクして見せる。

 

「ありがとうございます。えっと、通路を挟んで向かい側にもお部屋があるのですが先生とグランさんは―――」

 

 そこまで言うとハナコが一瞬で笑顔になり、ヒフミの近くに行って何かを吹き込もうとするが、それよりも早くコハルが大声を上げる。

 

「ダメっ、絶対ダメ! 同衾とかエッチじゃん! 死刑!!」

「えっと、コハルちゃん? 私ねまだ何も言っていませんが……?」

「何を言い出すのかだいたい分かるわよ! ダメったらダメ! そういうことはさせないんだから!」

「コハルちゃんは厳しいですねぇ……」

 

 タハハ、と力なく笑うハナコ。

 

「私は別に全員一緒でも一行に構わないけど? ベッドも余ってるし、無駄に部屋を幾つも使うこともない」

「まぁ、先生は同性だから良いとして俺は絶対にダメだからなアズサ。先生はどうする?」

「みんなで交流を深めておいて。何かあったら呼んでね?」

 

 グランはアズサの肩に手を置いてアズサの提案を拒絶する。肝心のアズサは拒否された理由がいまいち分かっていないようで首を傾げている。

 

「で、では一旦そういうことで。そうしたら、荷物を片付けて早速お勉強を……」

「あら、でもその前にやる事があると思いませんか? ヒフミちゃん?」

「えっ?」

 

 ヒフミが手をパンパンと叩いて注目を集めた後、この後の事を口にするがハナコが待ったをかける。

 

「それはですね……お掃除、ですよ♡」

「……お掃除、ですか?」

 

 ハナコの言葉にヒフミが今度は首を傾げる。

 

「はい。管理されていた建物とはいえ、長い間使われていなかったこともあって、埃なども多いように見えませんか? このままここで過ごすというのも健康に良くなさそうですし、今日はまずお掃除から始めて、気持ちいい環境で勉強を始めるというのはいかがでしょう?」

「それは……」

 

 ハナコの提案に渋い顔をするグラン。何故なら彼にはある経験があったからだ。勉強前に掃除をしようとしていつの間にか、勉強そっちのけで掃除に力を入れ、その掃除でさえ懐かしいものが出てきて一向に進まないまま時間を無駄にしたという経験が。

 

「なるほど、確かにそうですね。まずは身の周りの整理整頓から始めるのは定石ですし、そうでないと途中で気になってしまいますし……」

「うん、衛生面は大切。実際、戦場でもすごく士気に関わりやすい部分だ」

「戦場って……」

「お、お掃除……? えっと、まぁ、普通のお掃除なら……」

「はい、ハナコちゃんの言う通りかもしれません。やる気が空回りしても困りますし……。私たちがするのは一夜漬けではなく、きちんと用意された期間の中での試験勉強……つまりは長距離走のように、順番やペース、作戦も考えないとです」

 

 顎に手を置いて考え込みながら発言するヒフミ。そして少し考え込んだ後顔を上げる。その上がった顔をみてグランは掃除が決まったことを悟る。

 

「それではまず、大掃除から始めるとしましょう!」

 

 





・「(これ)の所にお邪魔する」
(第一候補はイチカだな。次に以前トリニティでひっかけたあの女子【モブ】、後はトリニティに潜伏中のBinocularsの所にも行けるな。それから……最終手段でミカ……か?)



評価、感想は作者の承認欲求モンスターが満たされるので執筆速度向上につながります。どうぞよろしくお願いします。

ちょっとした質問、ヒフミはグランのヒロインに……

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