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ヒフミのご褒美の発表後、夜遅くまで勉強は続いた。
「コハル、質問」
「うん、え? 私? 私に!?」
アズサは勉強で分からないところがあったのかコハルに声をかける。コハルはまさか自分に聞かれるとは思っていなかったのか思わず聞き返してしまう。
「そう、コハルに。今同じところを勉強しているはずだ。この問題なんだけど……」
「う、うん……。あ、これ知ってる!」
アズサの質問に答えることが出来るのか、コハルは恐る恐ると言った様子でアズサの方に体を寄せて教科書を覗き込む。そこに掛かれた問題に覚えがあったのか顔を明るくするコハル。
「これはたしかこうやって、下の所と90度になるように、線を引いて……。そうすると、この三角形とこの三角形が一緒。わかった?」
「……成程、そう言うことか。助かった。これは確かに、正義実現委員会のエリートというのも頷ける」
コハルの説明での解したのか類似の問題を実際に解いてみるアズサ。そしてその問題の解答を確かめてあっているのを確認するとペンを置いてコハルに礼をするアズサ。
「……!? そ、そうよ! エリートだもの!! ……も、もし何かまたわからなかったら、私に聞いても良いから。アズサはその、特別に」
「ありがとう、助かる」
そんなアズサとコハルのやり取りを見つめるハナコ。
「あらあら……。さすが裸の付き合いをしただけはあると言いますか、もう深いところまで入った中なのですね……♡ ……それに比べてこちらは」
「……何が言いたい」
「いえ、何でもありません。あと、そこの小問2間違えてますよ」
「え」
「二次不等式を求める問題ですのでたすきがけを使ってください」
「たすき……がけ……?」
途中まで笑顔だったハナコの表情は自身の正面に座っている男の姿を捕らえるとドンドン真顔になっていく。それに対して正面に座る男ことグランはジト目で返すがハナコにそっぽを向かれてしまう。そっぽを向きながらもグランの勉強の間違いを指摘する。指摘されたグランは問題を見直すがどこが間違っているのかがまるで理解できなかった。それを予想してかハナコが解法を教えるがグランはそれも知らなかったようだ。
「……代表の功績の中にマーケット内の学籍がない生徒たちを受け入れた訓練校があると聞きましたが」
「『Nest』のことか?」
「貴方は通わなかったんですか? 通っていればこのくらいは問題なかったでしょうに……」
ハナコはジッとグランのことを見る。グランは問題用紙と自身の回答に集中しておりハナコが自身の方に向いてることに気が付かない。
「『Nest』も全員を受け入れられるわけじゃない。施設の大きさ、教員の人数、様々な要因で限界はある」
「当然のことですね」
「以前にも言ったが俺には優秀な部下がいるからな、基本的に俺自身の素質は殆ど必要ない。それなのに俺が『Nest』に入って見ろ、本来『Nest』に入れるはずだった生徒が入れなくなっちまうじゃないか。一人でも多くの生徒に居場所を作ってやりたくて『Nest』を作ったんだ。そんなことをしたら本末転倒だろう」
「……どうして」
その言葉にようやく顔を上げるグラン。グランは自身を見つめるハナコの奇怪な物を見る目線に疑問を抱きながらも当たり前のこととしてあっさりとした口調で言う。
「
「……」
沈黙。二人の間で今日だけで何度か目の沈黙が流れる。しかし今までの沈黙とは違いひりついた感覚は無かった。
「……たすきがけのやり方、教えますね」
「それは助かるが……急にどうした?」
「いえ、何でもありません。……それじゃあまず―――」
ハナコはしっかりとグランの正面に座り解法を教え始める。グランもハナコが真剣に教えていることに気が付いたのか真面目にノートをとってハナコの言葉を書き写す。
そんな二人を少し離れた位置から見守る影が二つ。
「なんとか大丈夫そうですね」
「うん。あれならもう大丈夫」
ヒフミと先生だった。二人は教室の端で顔を寄せ合い、グラン達の方に視線を向けながら小声で話す。
「朝起きたら、いつの間にか二人の雰囲気が悪化してて流石にびっくりしました……」
「ほんとに。昨日の夜……私がヒフミと話している間に何かあったのかな?」
「そんな感じのことはグランさんから聞きました。具体的に何があったのかは教えてもらえませんでしたけど」
「お互い年頃でもあるし、今日は様子見で明日にも続いているようだったら介入しようかなと思ったけど自然と解決しちゃった」
「良かったです……本当に」
ヒフミはそう言って胸を撫で下ろしたのだった。その後アズサに再び質問をされてコハルが参考書を取り出そうとして間違えてエロ小説を取り出すというひと悶着が起こる。コハルは私物ではなく、正義実現委員会の活動で押収した物品であると主張していたが事実は不明である。そして押収品ということなら返しに行こうとなり、先生とコハルは席を外すことになった。
残った面々は協力して勉強を続けることに。今度はハナコがアズサに着き、グランにヒフミが付いて勉強を進めていた。
「―――っとだからここは……。こうか?」
「はい! 正解ですよグランさん!」
「なんとか、成果が出始めたな……。いや、ホントに長かった」
「あはは、でも本当にすごいですよグランさん! 本来の予定の3割増しのペースですよ! これなら次の模試で十分合格範囲内狙えますよ!」
「いや、ヒフミの教え方が上手かったんだよ……。それから『ハナコ』の教え方もな」
グランはそう言いながらアズサに勉強を教えているハナコの方に目線を向ける。その視線の中には今朝ったような敵視はもう"殆ど"無かった。
「……ハナコちゃんと何があったか聞いても大丈夫ですか?」
その視線を見てヒフミは今なら大丈夫だろうと判断し、意を決してグランに問いかけた。グランはヒフミの問いに少し迷った後口を開く。
「実はハナコのことを『ODI ET AMO』に誘ったんだ」
「え? 『ODI ET AMO』にハナコちゃんを?」
「あぁ」
「それは……なんというか……」
予想外の話にヒフミは言葉を濁す。ヒフミはグランの周りに何名かの
「あれ? じゃあなんで朝はあんなにピリピリしていたんですか? 組織に入るのを拒否したからってあんなに起こるのはグランさんらしくない気がするんですけど……」
「……落とされたんだよ」
「え?」
「夜中のプールに着き落とされた。斬新な拒否り方だろ?」
「あぁ、それで……。大丈夫でした?」
「流石にまだ寒かった。お陰で凍えて部屋に戻るハメになったんだ。そりゃあピリピリもする」
グランは昨晩の事を思い出したのか身震いする。
「プールに着き落とすだなんて……。グランさん、どんな誘い方したんですか?」
「それは……いや、これはハナコの問題もあるからな。俺だけの判断では話せないな」
昨日の誘い文句を言うということはハナコが今はわざと低い点を取っていることを暴露することでもあるため、グランは口を噤んだ。
「そうですか。にしてもハナコちゃんを勧誘ですか……」
ヒフミはハナコの方を見ているグランをジッと見る。
「(そういえば、いつの間にか名前呼びにもなっていますね。私も名前で読んで貰えるのには大分時間がかかったのに……。ハナコちゃんはもう名前で読んで貰ってる……。私のほうがブラックマーケットのことは知っているのに、私の方がグランさんと長くいるのに……。総力戦でも頼ってもらったのに……。グランさんはハナコちゃんの方が……)」
ヒフミは無意識の内にグランの袖をキュッと握る。しかしグランはそれに気が付かなかったのだった。
グランへの評価
ハナコ→変な人。組織としては嫌いだけど彼個人はまだ検討中。
ヒフミ→親しいお兄さん。新しい友達に取られそう!
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