シャーレの部長はブラックマーケットの代表   作:四脚好き

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145話

合宿所 ラウンジ

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 停電が解消し、空模様も回復した。ヒフミたちは改めて洗濯を終わらせた。そうして残り時間を自由に過ごして一日を終えようとしていた時……。

 

「まだです! まだ終わっていません!」

 

 ハナコが大きく身振りをしながら気迫さえ感じる声でそう言い放った。

 

「どうした? もう良い時間だろう?」

「いいえ、まだです! このまま一日が終わりだなんて、そんなもったいないことはさせません!」

「はいぃ……?」

「ᓀ‸ᓂ?」

「な、なに!? 急に大声出して、びっくりした……」

 

 ハナコの言葉に既に入浴を済ませ、洗濯したてで太陽と柔軟剤の香りのするジャージに身を包んであとは寝るだけの状態になっていたハナコ以外の補習授業部の面々は驚き、疑問を投げかける。

 

「突然のことでしたが、せっかくのお休みじゃないですか。みんな裸で交わったのに、このまま『はいお休みなさい』なんて―――」

「勝手に記憶を捏造しないで! 裸じゃないから!」

 

 コハルは途中から存在しない記憶を語り出したハナコに思わず突っ込む。

 

「それはともかく、このまま寝てしまうのはもったいないです。まだ火照っているといいますか、物足りないと言いますか……」

「具体的には?」

 

 アズサはハナコのしたがっていることが気になったのか説明を求める。

 

「うふふっ♡ 合宿と言えば、やはり合宿所を抜け出すこと……それも一つの醍醐味だと思いませんか?」

「え……?」

「あー、なんだったか……禁止されると逆にその行為をやりたくなるやつ? (か、カリ……カ○首効果だっけ?)」

 

 ハナコの言葉に脳内がフリーズを起こすヒフミ。ハナコの言いたいことがどことなく理解できたグラン。そんな名前の心理的な現象の名前を思い出そうとする。

 

「さあ! 今からみんなでこっそり外に出て、お散歩しましょう♡ トリニティの商店街は夜遅くまで営業している店も結構ありますし、食べ歩きとかショッピングとかもできます!」

「そ、そんなの校則違反じゃん! ダメッ!」

「細かい校則は知りませんが、結構みなさんこっそりやってると思いますよ? 意外とそういう方周りに居ませんか、ヒフミちゃん」

「あ、あはは……そ、そう、ですね……? ッ!?」

「……」

 

 ハナコに急に話を振られて思い当たる節があるのか目を逸らしつつ、肯定するヒフミ。しかし目を逸らした先にグランが先回りをしておりジト目でヒフミを見ていた。

 

「ほんと、意外にいるかもなぁ……ひ・ふ・みぃィ?」

「あ、あははは、ははははは」

 

 冷や汗を掻いて笑うことしかできないヒフミだった。

 

「で、で、すが普段であればまだしも、今は補習授業の合宿中ですし……良いんでしょうか……?」

「遠出するわけでもありませんし、すぐそこですよ。コハルちゃん、いかがですか? 楽しそうだと思いません?」

 

 露骨に話題を逸らしたヒフミ。そんなヒフミの背中に視線を送り続けるグラン。

 

「え、っと……きょ、興味はある、けど……」

 

 ハナコに誘われたコハルは興味を隠せずにしかし、僅かに恥ずかしがりながら返事をする。

 

「はい、ちょっと言って戻ってくるだけですから大丈夫ですよ。 いいですか、先生?」

「楽しそうだしね、行こっか」

 

 先生はそう言って外に出る準備を始める。

 

「い、良いの!?」

 

 そんな先生の姿に驚くコハル。そんなコハルの隣に立ってグランは話しかける。

 

「下江、こうなったら止まらないだろう。お前が正義実現委員会のエリートとしてみんながこれ以上変なことをしないように見張ってくれ。そう、これは監視だ」

「監視……。そうね! エリートであるこの私が変なことは絶対させないんだから!」

 

 グランの言葉にグッと拳を握って決意をするコハル。

 

「準備は出来た。もうすぐにでも出発できる」

「アズサちゃん!? いつの間に着替えて……!」

「では決定ですね♡ さぁ、早く準備して行きましょう! 楽しくなってきましたね、深夜に裸で散歩……!」

「さりげなくすり替えないで!! 服は着ろ!!」

 

 コハルは出かける準備をしながらおかしなことを口走るハナコに突っ込みを入れるのだった。

 

トリニティ 商店街

────────────────────────―――――――――

 

「うふふ♡」

「あはは……き、来ちゃいましたね」

「どうですか? もうすでに楽しくないですか? 禁じられた行為をしているというこの背徳感、そして同時にみんなで一緒にしているからこその安心感、この二つが合わさって……!」

 

 深夜徘徊の楽しさを説いてるハナコだが、ヒフミは理解しきれずに苦笑いを浮かべる。

 

「なるほど、深夜の街はこんな感じなのか……思ったより活気がある」

「そうなんですよ、24時間営業の店も多いですし」

「あれはスイーツショップ? 24時間開いてるところがあるのか……あ、喫茶店も開いてる」

 

 アズサは明るく照らされた街を見て興味深そうに当たりを見回す。

 

「ここからもう少し行くと、モモフレンズのグッズショップもあるんですよ。その向かいには限定グッズだけを取り扱う隠れたお店もありまして……」

「ふふっ、さすがはヒフミちゃん、詳しいですね」

「あ、あははは……」

 

 ヒフミは得意そうにモモフレンズを取り扱う店の場所を話すが、その隣でハナコがやっぱり、と言いたげな顔を浮かべてヒフミに話しかける。

 そんなやりとりをしている補習授業を一歩後ろから見守る先生とグラン。

 

「確かに深夜まで営業しているお店がたくさんあるね。お嬢様学校のトリニティの自治区だしそこらへんもっと厳しいかと思ったよ」

 

 歩きながら時折店を覗き込み先生はそう言う。すると隣のグランが先生の疑問に答える。

 

「逆だ、逆」

「逆?」

「トリニティのように規則や規律がしっかりしているからこそ、深夜営業が出来るんだ。確かに治安維持組織は24時間体制ではあるがそれでも日中よりかは確実に戦力は落ちる。けれどもその隙を狙って犯罪を犯す奴は少ない、それは紛れもなくトリニティが今まで築き上げてきた治安と規則によって作り上げられた一人一人の意識があるからだ。これがゲヘナだったらどうだ? 昼も夜も関係ない、暴れたい奴らが好き勝手して深夜営業している店に襲い掛かる。そして風紀委員が到着するころには略奪はすでに終わってる。だから逆にゲヘナは夜になればシャッターはきつく閉じられる。24時間営業なんて裏路地のヤバいところか、風紀委員会本部近くの店しかしない」

「成程ねぇ……」

 

 グランの言葉に納得していると、ふと前方の補習授業部の面々が立ち止まっていることに気が付く。

 

「どうしたの?」

 

 先生が何かあったのかと聞くとハナコが振り返って答える。

 

「いえ、スイーツ店がありまして、丁度食べ物の話をしていたのでお腹が減ってきてここで何か食べないか、という話になったんです」

「おや、私とグランが話している間に食べ物のお話を」

「ええ、ハスミさんのお話から少しだけ飛躍して」

「ハスミ……スイーツ……あ」

 

 ハナコの言葉に何か思い当たる節があるのか先生は一瞬固まる。

 

「ここの限定パフェすっごく美味しいんですよ! 24時間やってるとは知りませんでした」

「パフェか……うん、悪くない。行こう」

 

 ヒフミはこの店を知っているのか店先のスタンドに置かれたビニール加工されたメニュー表を開いてパフェのページを見せる。そのページをヒフミの隣から覗き込むアズサ。写真のパフェを見て目を輝かせた後、ヒフミの腕をとって店へと進む。その後ろを『あらあら♡』と笑いながらハナコが追う。

 

「え、えっ……!? う、ぅぅ」

「ほら、下江も行くぞ」

「おいでコハル」

 

 一人で遅れたコハルがオロオロしているのを見てグランは軽く彼女の背を押して店の中へと案内し、逆に先生はコハルの前にでて彼女の手を取って店へと連れていく。

 

「いらっしゃいませ」

 

 店内に入ると店員が丁寧に頭を下げる。店内は白と黒を基調としたモダン風でピアノがメインの落ち着いたジャズが流れており店内の雰囲気を作り出している。

 

「あはは、真夜中にスイーツだなんて……緊張もありますが、何だかすごくわくわくしますね」

「確かに」

「6名様でしょか? ご注文をどうぞ」

 

 注文を問われたヒフミはメニュー表からパフェのページを開いて店員に見せる。

 

「えっと……あ、限定パフェってまだありますか?」

「ああ、申し訳ございません……限定パフェはちょうど先ほど、べつのお客様が三つ購入されたのが最後でして……」

「あ、そうでしたか……」

 

 ヒフミは店員の言葉にがっくりと肩を下ろす。そうしている間にグランはメニューを眺めながらぼそりと呟く。

 

「かつ丼は無いか……」

「ここは喫茶店よ、ある訳ないじゃない」

 

 グランの呟きに反応したコハルはおかしなものを見る目でグランを見る。

 

「いや、まぁ、普通は……そうだよな」

「え、もしかしてあるの? かつ丼を置いてる喫茶店が?」

「ああ、知り合いの店がな……。ほんとうは静かな純喫茶を目指していたんだが、まかないのかつ丼が売れまくって今じゃ定食屋みたいな感じになっちまったそうだ」

 

 グランが黒髪のキレイな知人の店の有様を思い出していると聞き覚えのある声がかけられる。

 

「……あら? 先生。それに代表……?」

 

 声のした方に顔を向けるとそこには正義実現委員会のハスミがテーブル席に座っていた。そしてそのテーブルには多数のパフェがあったのだった。

 

 

 




 ある日のアビドスで……。

「劇?」
「はい♧ 近くの商店街で子供たちの為に劇をすることになったんです☆」

 グランはノノミに呼び出されてアビドスに訪れていた。そうして教室の長机に着きながらノノミの話を聞く。なんでも商店街活性化とアビドス高校の知名度上昇を目的とした取り組みらしい。

「それで俺にも出て欲しいと……」
「そうです! グラン先輩も、アビドスの一員ですし、力を貸してください☆」
「いや、俺は……」

 ノノミの言葉にグランは視線を逸らしながら机の上のお茶に手を伸ばそうとする。するとお茶を掴むよりも先にノノミの両手がグランの両手を包み込む。

「ね?」
「……劇は何をやるんだ?」

 そう言ってほほ笑むノノミ。その両手はとても暖かくグランは拒否できなかった。

「劇は私が考えたオリジナルです!」
「ほう……ノノミ監督という訳か」
「はい! その名も『水着忍者アビドス5人組』です☆」
「……へぇ」

 若干嫌な予感のしてきたグランは頬を引きつらせる。

「それでグラン先輩にはこの仮面を被って敵役をお願いします」
「おおっ本格的……」

 グランはノノミから渡された仮面を手に取る。

「鉄より硬い硬くて丈夫なブリキで作ったんです☆」
「へぇー」
「ブリキですよ☆」
「お、おぅ?」

 妙なノノミのブリキ推しにたじろぐグラン。若干の不安を感じつつも他の対策委員会のメンバーも集まり練習をすることなったのだった。





一体、何博士何だ……。そしてかつ丼の有名な喫茶店とは……? 
 
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