シャーレの部長はブラックマーケットの代表   作:四脚好き

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おや? ハルナの様子が……。


147話

トリニティ 商店街

────────────────────────―――――――――

 

 俺たちが意気込んで向かった美食研究会の鎮圧作戦は思ったより簡単に終わった。俺たちは先生の予測した美食研究会の逃走経路上に張り込んだ。

 そして奴らが姿を現すと同時にハスミの正確な狙撃が美食研の車のタイヤを撃ち抜き、ふらつかせ、アズサの即席爆弾で車両を破壊した。その際、恐らく調理係として拉致されていた愛清フウカが車外へと放り投げられたがヒフミが須田役落下地点にペロロデコイを展開してクッション替わりにして救出した。あとは俺とアズサが前線を張って、残りの面子が援護をする形で美食研を撃退した。

 

「流石、ブラックマーケットの長だな。良い戦いだった」

「止めてくれ、俺より強い奴なんてこのキヴォトスにはいくらでもいるんだ。そういうアズサこそ良いセンスだ」

「良い、センス……」

「あぁ」

 

 マグロを失い、車両を失い、戦闘でも勝てないことを悟った美食研の連中は散開して各個逃走を開始した。しかしその後の追撃は正義実現委員会の委員長、剣先ツルギが出たらしく俺達の仕事は無かった。そうして10分もしないうちに美食研は一人を除いて捕縛された。正義実現委員会のメンバーが美食研の連中の護送準備をしているのをアズサと話しながら眺めているとハスミが俺達の方に歩いてくる。

 

「お疲れさまでした。先生、グランさん、そして補習授業部のみなさん。お陰様で、事態を無事に収拾することができました」

「あ、あはは……途中からはもう、無我夢中という感じでしたが……」

「正義実現委員会の戦術を目の前で見ることが出来て、いい勉強になった」

「や、役に立てたのかどうかは、分かりませんが……!」

 

 ハスミの言葉にヒフミ、アズサ、コハルがそれぞれの感想を言っている。そんな中、ハナコだけが薄目で美食研の連中を見ていた。

 

「ところで、あの方々はこの後どうなるのですか?」

 

 ハナコがそう言うとハスミは少し目を瞑り、苦虫を噛んだような表情を浮かべる。

 

「本来ならば私たちの方でこの後の処遇を決めるのですが……今回は時期が時期ですので、ゲヘナの風紀委員会に託そうかと」

「なるほど」

「はい。そこで、先生にもう一つお願いがあるのですが……」

「うん、何をしたら良い?」

 

 ハスミが遠慮しがちに先生に声をかける。しかし先生は笑顔でハスミのお願いを聞き入れる。……まだ内容も聞いていないだろうに。まぁ、そこが先生の良いところではあるからな。

 

「エデン条約のことを考えると、ここから先も私たちが能動的に動くのは少々避けたいところです。ですので、風紀委員会への引き渡し……この部分をシャーレにお願いできませんでしょうか? 『シャーレ』が生徒を引き渡す……この形でしたら、私たちにとってもゲヘナ側にとっても、政治的な憂慮が大分減るのです」

 

 ……まあ、そうだろうな。その気がないとはいえ、学園のトップ同士が和平へ向けている間に双方の武力組織が、夜中に、会っているだなんてゲヘナはともかくトリニティ側は大きな話題になりそうだもんな……。

 

「分かった、任せて。グラン、ゲヘナ側に連絡お願い」

「了解した」

「何から何までありがとうございます。それでは私たちは一旦引いた一に居ますので……よろしくお願いいたします」

 

トリニティ 境界線近くの橋

────────────────────────―――――――――

 

 

 チナツに連絡を入れてゲヘナとの境界線近くで待機して風紀委員会の車両の到着を待つ。

 

「うげっ」

 

 暫くしてゲヘナ側から現れた車両を見て俺は思わず声を上げる。そんな俺と現れた車両を交互に見て不思議そうな表情を浮かべる先生。それもそうだろう、俺達の前に現れたのは風紀委員会の護送車などではなく、救急医学部の緊急車両。そして中から現れるのは……。

 

「……お待たせしました、死体はどこです―――なんですか代表、その表情は」

「いや……うん。まぁ、予想外の車両が来て、予想通りの人物がやって来たなって……顔、かな」

「し、死体?」

「気にするな先生。こいつは死体と負傷者を偶に混同するんだ」

「ええっ!?」

 

 セナとの会話ではひの部分になれていないと疲れるぞ、先生。俺がセナの悪癖を説明している間にセナは車内からリストを受け取り中身を確認する。

 

「えー……納品リストには、新鮮な負傷者3名と人質1人……と書かれていましたが」

「新鮮な……?」

「……そう言えば、こうして直接顔を合わせるのはこれが初めてですね。貴女が先生で間違いありませんか?」

 

 セナがそう言って先生の顔をまじまじと見つめる。そんなセナの視線に苦笑いで後ずさる先生。

 

「そう、その人が『シャーレ』の屋浦ニイ先生」

「ヒナ!」

 

 びっくりしたぁ……。急に背後から声がしたと思ったらいつの間にか空崎ヒナが立っていた。

 

「久しぶりね、先生。いつぶりかしら。……ところで、ここで何をしていたの?」

「そうそう、実はね! ――――」

 

 そうして先生が事情を話す。

 

「なるほど。このタイミングでお互い政治的な問題にしないために先生が……。確かに、問題にしたくないのはこちらも同じ。だからこそ、公的には今回こうして風紀委員会ではなく、こっちの『救急医学部』が来たってことになってる。私は基本的に、ただの付き添い」

「……救急医学部の部長であり、そちらの男に後輩を二人寝取られた氷室セナです。以後よろしくお願いいたします、先生。死た……いえ、負傷者がいたらいつでもお呼び下さい。配送料は頂きませんので」

「言い方ァ!」

 

 お前、ホントにその自己紹介の仕方止めろや。

 

「よ、よろしくね……」

 

 ほら、先生もどう反応すれば良いのか分からなくて困惑してるだろうがよ!」

 

「『救急医学部』はゲヘナの中でも、得に政治的な部分に関わりが薄い立場にいる。だから今回、こうしてお願いしたの」

「政治ごっこは風紀委員長にお任せします。私は死体以外に興味はありませんので」

「『負傷者』でしょう? それに、本物の死体を見た事ないでしょうに」

「はい、負傷者でした。そのことについては、風紀委員長も無いでしょう?」

 

 ……もし本物の死体を見せたらセナはどうなるんだろう。今まで見た死体のどれが一番激しいリアクションするんだろうな……。仮にも医療関係者、綺麗な死体では反応は薄い気がする。……キッド3辺りに頼めば拷問の最中"事故"でなくなった奴等の写真を用意できそうな気も……。

 

「いや、写真じゃあんまり意味ないか?」

 

 俺がそんなくだらない事を考えている間にも話は進んでいたようで美食研の連中がドンドンと救急医学部の車両の中に連れられて行く。そんな中、美食研究会のリーダー、黒舘ハルナと目が合う。

 

「あら? 貴方は……」

「ん? ああ、こうして直接会うのは初めてだな。連邦議会ブラックマーケット代表兼『ODI ET AMO』代表兼連邦捜査部シャーレ部長『水戸グラン』だ」

「わ、グランのその長い自己紹介久々に聞いたかも」

「……俺も久々に言った気がする」

 

 先生が横で笑顔でそう話しかけてきた。長ったらしいからそんなに多用するもんでもないからな、この自己紹介。……というより黒舘ハルナはどうしてそんな不思議な物を見る目で俺を見るんだ?

 

「貴方……お腹は減っていなくて?」

「え? いや、満腹状態ではないが別に飢えてはいないぞ?」

 

 は? 急にどうした? 人にいきなり空腹状態を聞くだなんて護送中に頭でも打ったのか?

 

「あら? 私はどうしてこんな質問を……?」

「いや、自分でも分からんのかい」

 

 本当にどうしたんだ? だが、これ以上何かがあることもなくハルナは車両の中に消えていった。……また会いそうな気もするし、今度は飯にでも誘ってみるかな。

 そんな風に俺が考えていると先生とヒナが橋の端……ふふっ。端で二人で話していた。……橋の端で話あう、良いじゃないか。二人が何を話しているのかはわからなかったが表情からしてあまり穏やかでは無さそうだ。

 

「まったく、一時はどうなるかと。なんなかなって本当に良かった……」

 

 俺はそう呟きながら遠くで待機していた補習授業部の元へ戻るのだった。

 

 

 




「ちょっとハルナ! いきなり代表に話しかけるだなんてどうしたのよ!?」
「ふふふ、ハルナさんはああいう男性が好みなんですか?」
「いえ……ただ彼がお腹を空かしていないということが何故だか非常に安心しまして……いったいなんででしょう? それから……」
「それから?」
「彼の翼がとても美味しそうに見えまして……」
「ぇ?」
「それは……流石に、無いです☆」
「ちょっと! セナ部長! 頭! 今すぐハルナの頭の検査して! とびっきり精密な奴!」

 

 
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