シャーレの部長はブラックマーケットの代表   作:四脚好き

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148話

合宿所 教室

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「遅い! おはよう!」

「あ、アズサちゃん。早いですね?」

「日が昇る前には、すでにここで予習と復習をしていた」

「ふふっ、やる気満々ですねアズサちゃん」

 

 美食研究会の騒動を解決して次の日、グラン達が教室へと向かうとそこには既に準備万端のアズサが机に座っていた。ハナコがそんなアズサの様子を笑顔で指摘するとアズはフンッ、と自慢げな表情を浮かべる。

 

「当然だ、何せ今日も模擬試験がある。だよね、ヒフミ?」

「はい、そうですね。アズサちゃんはその様子ですと、もう模試への準備は万端という感じですね?」

「うん。第2次特別学力試験まで二日しか残っていないし、いつまでもみんなに心配をかけるわけにはいかない」

 

 アズサはそう言って視線をヒフミの後ろにあるご褒美のカートへ向けて手にギュっと力を入れる。

 

「そして、今回こそ……!」

「す、すごい気合入ってるじゃん……。そんなに"アレ"欲しいの?」

「ああ! 試験範囲の予想問題も、もう何週もしてある。準備は完璧だ」

 

 コハルが気合十分すぎるアズサの様子に自身も一応カートの方に視線を移す。そして数秒思案してやはりコハルにはモモフレンズの魅力はわからなかった。

 

「ふふふ♡ では、私も精一杯頑張るとしましょうか♡ 代表さんも大丈夫ですか?」

「……まぁ、ハナコのお陰で以前よりかはマシになってる。やるだけやってみるさ」

 

 ハナコが隣にいるグランに視線だけ向けて話しかける。それに対してグランは頭を掻きながら同じように視線だけをハナコに向けて返す。

 

「みくな、良い感じに張り切ってるね。 大丈夫そうならこのまま試験を始めちゃおうか?」

 

 教壇の先生が全員の調子を見てイケると思ったのだろうかこのまま模擬試験を始めてしまう事を提案する。

 

「はい……! 折角の勢いですし、早速模擬試験を始めましょう!」

 

 補習授業部の部長でもあるヒフミも同意して模試を始めることに決定した。全員がしっかりと着席して準備が整ったのを見て先生は問題用紙と答案用紙を配り、合図を出す。

 

「それじゃあ、スタート!」

 

「……」

「ふふっ……♡」

「こ、これ知ってるはず……! えっと、んと、んんん……っ!」

「(あ、ここたすきがけか)」

「(何だかみんな、手の動きが以前より早くなっているような……!)」

 

 それぞれが思考を巡らせながら以前の模試よりもはるかに順調に問題を解いていく。それからしばらくして模擬試験が終わり、みんなの採点結果が出る。

 

「先生……発表をお願いします!」

「それじゃあ、皆……行くよ」

 

第3次補習授業部模試、結果―――

 

 ハナコ――69点合格

 アズサ――73点合格

 コハル――61点合格

 ヒフミ――75点合格

 グラン――66点合格

 

「や、やりました……!?」

「ほ、本当っ!? 嘘ついてない!?」

「……!」

「あらあら♡」

「おぉ! 遂に……」

 

 発表された点数に大いに盛り上がるグラン達。

 

「すごいです! アズサちゃん、60点どころか70点を超えてしまいました! 本当にすごいです! 頑張りましたね……!」

「……うん!」

「コハルちゃんも! ギリギリでしたが、これは紛う方なき合格です! すごいです、やりましたね!」

「ゆ、夢とかじゃないよね……? ほ、本当に……! あはっ……こ、これが私の実力よ! 見たか!」

「はい、これぞ正義実現委員会のエリートです、流石です!……それに、ハナコちゃんも……」

「……運が良かったですね、うふふ。良い感じの数字です♡」

「……態とだろ」

 

 ハナコが自身の点数で笑っているのを見たグランは他の面子にバレないようにひっそりとハナコに耳打ちしてそう告げる。

 

「どうでしょう?」

 

 しかしハナコは笑みを浮かべてそう返してだけで真実を明らかにする気は無いようだった。グランもそれを感じ取ったのか肩をすくめてそれ以上の追求を辞める。

 

「良かったです……ハナコちゃん、うぅ……」

「ひ、ヒフミちゃん……?」

 

 そんなやりとりの痕正面に向き直るとヒフミが涙目になっていることに気が付いたハナコは狼狽える。

 

「ハナコちゃんに以前何があったのか、何を抱えているのかはまだ分かりませんが……でも、良かったです……」

「ヒフミちゃん……。はい、ありがとうございます}

「前の実力をすぐ取り戻せるよう、私もお手伝いしますね。ほんとうに、本当に良かったです……」

「はい……ごめんなさい。ご心配をおかけしてしまって……」

 

 そういってハナコは涙目のヒフミを抱きしめて慰める。その横で実はヒフミからの言葉をちょっと楽しみにしていたグランはとてもそういう雰囲気ではなくなってしまったのを見てがっくりしてしまう。それでも仕方がない、と納得して自分の席に戻ろうとすると先生がグランの前に立った。

 

「グランも合格おめでとう。ちゃんと勉強すればこうやって結果出せるんだからやっぱり勉強やって良かったでしょ?」

「今回だけかもしれないぞ?」

「そしたら復習をしっかりしよう、大丈夫! しっかり私が教えて上げるから!」

「それはどうも」

「でも、今はちゃんと合格を祝うのが先だよ。グラン、よく頑張ったね」

 

 そう言って先生はグランの頭に手を伸ばしてゆっくりと撫でる。

 

「……っ」

 

 気恥ずかしさから振り払うことも出来たが、どうしてもグランにはその気が起きず、しばらく先生にされるがままになるグランであった。

 

 

 

数分後

────────────────────────―――――――――

 

 

「……ということで、約束通りモモフレンズグッズの授与式を始めますッ!」

「……!!」

「あはは……」

「……」

「魑魅魍魎……」

 

 模試よりもはるかに気合が入っているように見えるヒフミの声で教壇の上には所狭しとモモフレンズグッズが敷き詰められる。アズサが目を光らせて、ハナコは引き笑いし、コハルがドン引きの目線を向けて、グランがぼそりと化け物扱いをした。

 

「さぁどうぞ! みなさん好きな子を、欲しい子を自由に選んで良いんですよ!」

「なるほど、となると……! むむ……!」

 

 ヒフミがにこにこと眩しい笑顔で皆にグッズを進める。

 

「えっと、私は謹んで遠慮しますね」

「わ、私も……」

「あ、あうぅ……そう、ですか……」

 

 ハナコとコハルが辞退したことでヒフミはがっくりと落ち込む。

 

「ど、どうしよう……私は、私は……!」

「……うーん」

 

 一方でアズサとグランは真剣に教壇の上のグッズを眺め、吟味している。まさかの真剣なグランにハナコがギョッとした目を一瞬向ける。

 

「ダメだ、この中から選ぶなんてそんな難しいこと……! あの黒くて角が生えたのも良いし、眼鏡のカバも……!」

「カバではなく、ペロロ様は鳥なのですが……」

「どうすれば……このどちらかを選ぶなんて、私には……!」

「……」

 

 葛藤が口から漏れ出すアズサと対照的に口元に手を当てて黙り込み思考を続けるグラン。

 

「私には、無理だ……頼むヒフミ。ヒフミが私の代わりに選んで……」

「わ、私がですか?」

「えっと、スカルマン様とペロロ博士ですよね。強いて選ぶとすると……。ではこちらの、インテリなペロロ博士でどうでしょうか!」

 

 ヒフミがペロロ博士のぬいぐるみを手に取り、それをアズサに手渡す。

 

「よし、じゃあこの子だ!」

「実はペロロ博士には、物知りで勉強もできるという設定何です。まさに今お勉強を頑張って、すごい成長をしている真っ最中のアズサちゃんにぴったりかなと!」

「なるほど、そうなのか」

「ちょ、ちょっとだけ勉強しすぎたせいで、少しおかしくなっているという裏設定もあるのですが……」

「良かったね、アズサ」

 

 ヒフミがペロロ博士について語って、先生がアズサに笑顔で話しかける。

 

「うん、気に入った。本当に可愛い、好き。えへへ。ありがとう、ヒフミ。これは一生大切にする」

 

 そう言ってアズサはペロロ博士の人形をギュっと抱きしめる。

 

「あ、ありがたいのですが、そこまで言っていただけるとちょっとびっくりしてしまいますね……!? ですが、私も嬉しいです。それは、アズサちゃんがやり遂げたからこそですよ」

「うん。それでも同時に、友達からもらった初めてのプレゼントだから……。これからはこのカバのことを、ヒフミだと思って大事にする!」

「そ、それはちょっと恥ずかしいですね……!? そ、それとカバではなく鳥でして……!」

 

 アズサの発言にワタワタとするヒフミに、それを微笑ましく見守る先生。それから更に一歩引いた場所にいるハナコが喋る。

 

「うーん……趣味の世界は広いですねぇ。ところで代表さんはもうお決まりになりましたか?」

「んー? これとかどうよ」

「ん゛ぷふっッ!?」

 

 今だに真剣にグッズの山を眺めているグランの背中に声をかけるハナコ。するとグランはスッと後ろを向いてハナコに自身の顔をよく見るように自身の顔に指さす。ハナコがグランの顔を見るとウェーブキャットのアイマスクをしていた。真剣な声ときりッと決めた口元、しかし正反対にマヌケな表情のアイマスクのギャップにハナコは思わず吹き出してしまうのだった。

 

 





 ブラックマーケット『塔』の一室。カタカタとタイピング音が響く暗い部屋の中でキッド3は呟く。

「いやー、参っちゃうな~……」
「貴女が私を呼び出すほどですか……なにか問題が? というよりまた電気を消して……、眼が悪くなると言っているでしょう」

 その呟きとほぼ同時にキッド2が部屋に入ってくる。キッド2は部屋に入るなり、暗闇に包まれた部屋に溜息をついてすぐに部屋の電気をつける。キッド3は一瞬電灯の明るさに顔を顰めるが何を言うでもなく自身の前にあるパソコンを指さす。キッド2が画面を除くとそこに映し出されていたのはグランの模試の結果だった。

「これは、これは……」
「僕の言いたいことわかるでしょ~? グランに変に頭よくなられると困っちゃうじゃん?」
「それは貴女発案のソイレント・グリンの『原料』がバレるかもしれないからですか?」
「……」

 キッド2の質問にキッド3は決して答えることは無かった。少しの沈黙が流れた後キッド2が口を開く。

「まぁ、それは後でも良いでしょう。確かに不味いのは私も同感ですので」
「でしょ~? やっぱ、代表に勉強なんか必要ないんだよ! なのにアンのクソババア(シャーレの先生)が……ッ」
「けれど、代表の意思は固い。少し知恵を付けた程度で揺るぐものですか。いずれにせよ、我々は先生と対立する運命にあります。そのストレスはその時にでもぶつけなさい」
「……はぁー、やっぱそうするしかないかぁ……。それで何時頃殺すのさ?」
「さぁ? それこそ代表の意思次第ですよ」
「そっかー……。早く死んでくれないかな、せ・ん・せ・い」

 キッド3の笑い声が部屋に満ちた。
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