シャーレの部長はブラックマーケットの代表   作:四脚好き

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152話

補習授業部 合宿所 

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 次の学力試験まで残り一週間。補習授業部は第三次特別学力試験に向けて日々努力を続けた。何度も模試をして、苦手を見つけ、克服の勉強をする。そして再び模試へ……。そうして五回目の模試では遂に全員が90点以上を超える結果もでた。そしてその間グランもトリニティ各地で調査を行いナギサやミカ、そして裏切り者たちの目的を探る日々を過ごした。

 

「それでそちらの状況はいかがですか?」

 

 ある時、合宿所のラウンジにてハナコがグランにナギサやミカの捜索状況を聞いた。それに対してグランは予めナギサと話していた通りにいくつかのセーフハウスの位置を態とハナコに告げる。

 

「桐藤ナギサに関しては幾つかのセーフハウスを発見してこれのどれかに潜伏していると思う。聖園ミカに関しては全然見つからない、正直お手上げだ。……お前たちがしっかり点数という形で結果をを残せているのに……俺の方はこんなだよ。……ごめん」

「そうでしたか……。ここがセーフハウスなら、巡回パターンは……」

 

 嘘をつくときは全部嘘を吐くのではなく、いくつかの真実を混ぜること。それにより信憑性を誤認させられる。グランはハナコを騙せたことに内心ホッとする。しかし次の瞬間には真剣な表情になり自身が広げてトリニティの地図を睨みつける。

 

「(本当はナギサがどこにいるかは分かっている。けど、それをお前ら立ちに伝えることは出来ないんだ。……悪りぃな。にしても本当に聖園ミカが見つからねぇ。パテルの首長室にもいないみたいだし一体どこに消えやがった?)」

 

 グランは一向に見つからないミカの行方に頭を悩ませていた。

 

 

ナギサのセーフハウス 

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 また別の日、グランはナギサに呼ばれていくつかあるセーフハウスの一つにやってきていた。グランが部屋の中に入るとそこには優雅に紅茶の飲むナギサの他に人影があった。

 

「俺に合わせたい人がいるとは聞いていたが……。これはまた……」

 

 グランの入室しながらそう告げるとナギサは振り返らずに返事を返す。

 

「あら? でも予測はしていたのでは?」

「……まぁ、前回の会話の最後にシスターフッドの名前が出てたし……」

 

 グランはナギサの対面にやや緊張した面持ちで座っている人間、ウィンプルと金のエングレーブをあしらった白のフリルが付いたショートスカートタイプの修道福を身に纏う少女。歌住サクラコの方に視線を向ける。グランの視線に気が付いたサクラコは手に持っていた紅茶のカップを置いてグランに挨拶をする。

 

「シスターフッド所属の歌住サクラコです。今日も祝福があらんことを」

「連邦議会ブラックマーケット代表兼『ODI ET AMO』代表兼連邦捜査部シャーレ部長、水戸グランだ。……お前の所の神様は罪人も祝福してくれるのかい?」

「……えぇ、きっと。しっかりと祈りを捧げて今までの行いを悔い改めれば」

「そりゃ……無理そうだな」

 

 "俺はまだまだやらなきゃいけないことが多すぎる"グランはそう言いながら笑ってサクラコに手を伸ばす。それに対してサクラコは『祈りや懺悔を始めるのに遅すぎるということはありません。貴方の為すべきことがなされた後でも問題はありませんよ』と言ってサクラコも手を伸ばして二人は握手をした。

 

「それでナギサ、どうして歌住をここに?」

「サクラコ、で構いませんよ。私もグランさんとお呼びしますので」

 

 顔合わせが済み、グランの分の紅茶をナギサが淹れて三人仲良くテーブルに着いたことで話が進む。

 

「サクラコさんに……というよりシスターフッドに今回の件について協力していただきたくこの場にお呼びしました。グランさんは当事者でもありますし、シャーレという中立組織に間に入っていただきたくて……」

「成程理解した」

 

 ナギサの言葉に自分が呼ばれた理由を察したグラン。一方でサクラコは事情を理解しきれずに首を傾げている。

 

「ナギサさん、貴女が何を考えているのか私には理解できません。しかし、シスターフッドは伝統的に政治に対して不干渉を貫いてきました。私が何か手伝うというコトはその伝統を……」

「ええ、理解しています。けれども、このままではトリニティが無くなってしまうかもしれないのです。今まで政治不干渉だったシスターフッドだからこそ、安心して協力を要請できるのです。どうか話を聞いてください」

 

 そう言ってナギサは頭を下げる。そんなナギサの態度にコトの重大さを理解したのかサクラコは少し考えた後、口を開いた。

 

「……まず、話を聞かせてください」

 

 そうしてナギサはサクラコにエデン条約、セイアの暗殺、裏切り者、補習授業部とこの時点であったことほ説明した。

 

「そんなことが……」

「信じられないこともあるだろうが、全て真実だ。政治不干渉の伝統は理解はできるがトリニティ事態の存亡がかかっている。どうか力を貸してほしい」

「……わかりました。私も微力ながらお手伝いさせていただきます」

「ありがとう」

「ありがとうございます」

 

 サクラコは説明を聞いて驚き、補習授業部の目的を聞いた際には僅かに顔を顰めたが、自分もシスターフッドを収める者として、上に立つ人間の立場と言うもので理解したのか強くナギサを非難することは無かった。そしてサクラコも事態の解決に協力してくれる運びとなる。

 

「そうしましたら私はまず、シスターフッドの書庫でアリウスについての資料がないかを調べてみましょう」

「おねがいします」

「俺は変わらず補習授業部への潜入とアリウスの調査だな」

「はい。ミカさんについての捜索は私が引き継ぎます。……それではみなさん、よろしくお願いします」

 

 その様な日々を過ごしつつ、その日はやってくる。

 

 

 合宿所

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「……ついに明日ですね」

「はい……」

 

 緊張した面持ちのヒフミがそう呟くとハナコが似たような顔で返事をする。

 

「……」

「ま、まさかまた急に色々変わったりしないよね?」

 

 アズサは無言のままキュッと手を握りしめて、コハルは心配からか落ち着きがない。

 

「はい、今の所は……」

「そうですね。試験範囲は以前の通りですし、合格ラインも変わらず90点以上。場所はトリニティ第19分館の第32教室。本館からは離れていますが、そこまで遠くはありません。時間は午前9時からで、変わっていませんね。むしろ気になる点と言えば……昨日から本館が不自然なくらいに静かなことです。人怪我ピタッとなくなってしまったようで」

 

 ハナコは合宿所の窓から本館方向を見つめながらそう呟く。

 

「……念の為今晩も、私の方で掲示板をずっと見ておきますね」

「バカかお前は」

 

 ハナコが携帯を取り出しながらトリニティの掲示板を開こうとするのをグランが横から止める。

 

「……よりによってあなたがバカと言いますか」

「おい、なんだ『よりによって』って」

「言葉通りですが? まさかそれも分からないくらいに知能が下がりましたか? ここ最近かなりお忙しいようでほとんど補習授業に参加してないですし、当然でしょうね」

「……ホントに当たり強くないか?」

 

 ハナコの冷たい視線とトゲトゲ過ぎる言葉にグランは若干たじろいでハナコ以外の補習授業部の面々に同意を求める視線を送るが何故だか苦笑いやむしろハナコの方に共感しているような視線を向けられる。

 

「グラン、グラン」

「ん?」

 

 そんな視線に混乱していると先生が少し離れた位置からこっそりとグランを手招きしている。ハナコの方を見ればそっぽを向いていたため先生の方に向かうグラン。グランが隣までやってくるとハナコからは見えないように背を向けて話し出す先生。

 

「ハナコね、学力試験は受けないけどグランも補習授業部の仲間だからって実はヒフミの真似をしてグラン用に一週間分の問題集作ってたんだよ。だけどこの一週間グランは殆ど補習授業部に居なかったでしょだから拗ねてるんだよ。……ほら、これ」

 

 そう言って先生はくしゃくしゃになっている問題集をグランに渡す。それを受け取ったグランは"これはやってしまったな"と思い頭を掻いて困り果てる。先生に礼を言ってからハナコの隣に戻るグラン。

 

「悪かったよ。この問題集色々終わったらしっかりといてお前に渡すよ。……だからその時また勉強教えてくれるか?」

「……仕方がありませんね」

「ありがとう。それで話を戻すが、バカかお前は?」

「そこまで戻さなくていいでしょ!?」

 

 グランの言葉にコハルが思わず突っ込みを入れる。

 

「明日はお前もテストだろう? そういうときはしっかり休め、掲示板なら俺が見といてやる」

「そうだよ。それに私もいるし、みんなはしっかり休息をとって」

 

 先生もハナコを休ませようと説得する。

 

「休むのも戦略の内だ」

「はい、わかりました。けどそれはアズサちゃんも一緒ですよ?」

 

 アズサにもそう言われてハナコは携帯を手放しす。しかしそれと一緒にアズサの手を握る。

 

「……うん。今日くらいはゆっくり休もうと思う」

 

 ハナコに見つめられてアズサも休息を今晩はしっかり取ることになった。

 

「いよいよ明日……私たちの運命が決まります」

「もし……いや、演技の悪いことは言わないでおこう。必ず合格する」

「私も! 絶対に負けないんだから!」

 

 ヒフミの言葉にアズサとコハルが力強く合格を宣言した。

 

「そ、そうですね。泣いても笑ってもあと一回です。頑張りましょう」

「はい。ここまでしっかり頑張ってきたのですから、後は最後まで最善を尽くすだけです」

 

 ヒフミとハナコも自身をもって明日のテストに備える。

 

「今までの頑張りを信じよう。きっと大丈夫」

「はいっ」

「そうですね」

「うん」

「やってやるわ!」

 

 先生の言葉に補習授業部の面々は力強く返事をしたのであった。

 

 

 

その日の晩 ???

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「アズサ、日程が変わった」

「……?」

 

 アリウスの予備拠点でマスクと帽子を身に付けたリーダーらしき少女がアズサそう告げる。

 

「明日の午前中だ、約束の場所で命令を待て」

「ま、待ってサオリ、明日は……」

 

 サオリと呼ばれた少女の指定した時間帯にアズサは驚愕する。

 

「何か問題が?」

「ま、まだ準備が出来ていない。計画より日程を早めるのは、リスクが大きすぎる」

 

 サオリの言葉にどうにかして日程を遅らせようとアズサは説得をする。しかしサオリの表情は変わらず、淡々と命令を告げる。

 

「いや、明日決行だ。これは確定事項、しっかり準備しておけ」

「……どうして」

「どうして? 分かっているだろう? 以前の拠点に侵入者があった、一体誰の差し金かは知らんが、トリニティの誰かが私たちについて嗅ぎ回っている。これ以上計画を先延ばしにすれば私たちのたくらみが露呈する。そうなるまえに、早急に決着をつける」

「……」

「明日になればすべてが変わる。私たちアリウスにも、このトリニティにも、不可逆の大きな変化が起きることになる。トリニティのティーパーティーのホスト、桐藤ナギサのヘイローを破壊する……そのためにお前はここにいるんだ」

「……」

 

 サオリの言葉にアズサは何を言い返せずにただ俯いて地面を眺めていた。

 

「お前の実力は信頼している。上手くやれ、百合園セイアの時のように」

「……分かった。準備しておく」

 

 そう言ってアズサはその場を離れようとサオリに背を向けて歩き出す。

 

「アズサ」

「……?」

 

 その背にサオリは声をかける。アズサは立ち止まり一度振り返ってサオリを見つめる。

 

「忘れていないだろうな、『vanitas vanitatum』」

「全ては虚しいもの。どんな努力も、成功も、失敗も……すべては最終的に、無意味なだけ。……一度だって、忘れたことは無い」

 

 アズサはそう返事をして今度こそその場から歩き去った。そんな様子を少し離れた場所から眺めていた影が一つ。

 

「聞こえたかナギサ」

『ええ、遂に掴みましたね。決定的な証拠を……』

「……これから少し会えるか? 提案したいことがある」

『わかりました。窓の鍵は開けておきますので以前のように』

「あぁ」

『サクラコさんにも連絡を入れておきます』

「頼んだ」

 




 サクラコとの顔合わせ時
「(にしても……あの部屋、メッチャ良い匂いしたな。やっぱお嬢様って良い香水とか使ってんのかな。サクラコもナギサもザ・お嬢様って感じで滅茶苦茶綺麗だし、正直少し興奮した)」

 同時刻補習授業部教室
「(グランさんは確かこの系統の問題が苦手だしたよね……。けどこの問題を入れないと難易度が下がり過ぎちゃいますから……。適度な達成感を与えつつ、問題点を自覚させるためには……)

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