シャーレの部長はブラックマーケットの代表   作:四脚好き

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159話

合宿所 

────────────────────────―――――――――

 

 聖園ミカは降参し、ツルギの連絡でこちらに到着した正義実現委員会によって捕縛された。トリニティ各地で活動していたアリウスの生徒たちもそのほとんどが撤退、捕縛されトリニティには再び平和が訪れた。次第に空が明るみ始めたころ、ミカは両手を拘束され正義実現委員会の本部へと連行されていく。その際先生とミカは一言、二言言葉を交わしていた。

 

「お前は行かなくていいのか?」

「……えぇ」

 

 その様子をグランとナギサは少し離れた場所で眺めていた。グランはナギサに先生のようにミカに話しかけなくていいのかと聞くが、ナギサはそれを少し苦しそうな、悲しそうな表情を浮かべながら拒否した。

 

「結局、私の言葉ではミカさんは止まってくれませんでした……。そのことがとても苦しくて、辛くて……。私はトリニティの為に、私がいなくなったとしても、ミカさんだけは、と思ってたのに……。事前に知ったとしてもやっぱり目の前にすると悲しくて……」

 

 次第に俯き、涙ぐむナギサ。

 

「胸でも貸そうか?」

「……肩でお願いします」

 

 そう言ってグランの肩に寄りかかるように頭を預けるナギサ。そんなナギサをグランは何も言わず暫く撫でていた。

 

「そういえば……」

「ん?」

「ミカさんに向かって言ったこと、本当なのでしょうか」

 

 少しナギサが落ち着いたころグランの顔を見上げながらナギサはそう問う。グランを下から見上げる上目遣いの姿勢だがその目には嘘は許さないという強い意志が宿っていた。

 

「あぁ、俺が殺した。これは嘘でも否定できない」

「なぜ?」

「理由は様々だな。生きる為、組織を大きくするため、ユメの為。色んな理由で色々な人を殺した。殺させてきた。俺が今こうして平然と日の下を歩けているのは一重にブラックマーケットの法が俺自身だからだ」

「……償おうという気持ちは?」

「ある。だが、今は出来ない。俺はどうしても叶えなきゃいけないユメがある。それが叶った暁にはどんな裁きも、罰も受け入れるさ」

「そうですか……。なら私は貴方がトリニティ内で何か罪を犯さない限りは何も言いません」

「良いのか?」

 

 ナギサの言葉にグランは少しだけ意外そうな顔をしてナギサのほうを見る。ナギサはグランに背を向けてゆっくりとトリニティ本校舎へと歩き出す。

 

「ええ、構いません。ですが……一つだけお伝えしたいことが」

「なんだ?」

 

 ナギサはそこで振り返りグランの顔を見つめる。

 

「この一週間あまり貴方と共に過ごし、支えて、支えられて、共に苦難を乗り越えて一つ、分かったことがあります。私、桐藤ナギサは水戸グランさんをお慕いしています」

「は?」

 

 グランは驚愕し目を見開く。確かにともに活動している間にかなり距離が縮まった気はグランもしていたがそれがまさかこんなことを言うまでになるとは流石のグランも予想していなかった。グランは少し頭を掻いて考えた後ナギサに自分の考えをぶつける。

 

「……お前みたいな美人に好かれるのはいい気分だが、多分その感情は間違いだと思う。ミカに裏切られたショック、戦場の空気に当てられた緊張の動機……まぁ、他にも色々あるだろうがそう言ったもろもろの興奮が『俺への

恋』という錯覚を起こしているだけだと思う」

「かもしれません。もしこの錯覚が溶けたならそのときは私からしっかりと謝罪させていただきます。ですから、それまでは私と共に『共犯者』でいてください」

 

 ナギサは妖艶な笑みを浮かべグランのもとを去り、校舎の中へと姿を消した。その後ろ姿を見ながらグランは苦笑いを浮かべる。

 

「イィ笑顔するようになりやがって……魔女はミカだけじゃなかったのか」

 

 グランがそうぼや悔いているとガシッ、と誰かに強く腕を掴まれる。何事かと思い腕をつかんだ人物の方を見ればそこには真剣な表情をしたアズサが居た。

 

「話は終わった? それなら試験開始まで時間がない走ろう。グランも来て」

「試験……あ」

 

 グランは最初何を言っているのか理解しきれていなかったが段々と記憶が呼び起こさされて第三次特別学力試験がこれからあることを思い出す。アズサの背後を見ればヒフミ、ハナコ、コハルに先生まで走って会場に向かっているのが見えた。

 

「これから走るのかぁ~」

「頑張ろう」

「やるしかないかー」

 

 そういってグランもアズサの先導で会場に向けて走り出した。

 

 

試験会場

────────────────────────―――――――――

 

「お待ちしておりました、補習授業部の皆さん」

 

 グラン達が会場に到着すると数名の正義実現委員会の生徒が待機しており水の入った紙コップやタオルを手渡してくれる。それらを受け取って息を整えていると一人の正義実現委員会の生徒が話しかけてきた。

 

「ハスミ先輩からの伝言です。『頑張ってください……』と」

「あらあら」

「は、ハスミ先輩……!」

 

 親愛の先輩からの激励の言葉にコハルは両手を握りしめて感激して気合をたぎらせる。

 

「それから『力になれなくてごめんなさい。この分はいつか必ず』とも」

「……そうか」

「ハスミにはあとで気にしないで、って伝えておかないと」

 

 続くハスミの伝言に淡々と返すアズサに少し悩まし気な表情を浮かべる先生。そしてそんなやり取りを終えて教室内に入る補習授業部。

 

「これが最後の試験だね」

 

 先生がそう言いながら問題を配る。

 

「……うん。どんな結果であれ、この試験ですべてが決まる」

「そうですね」

「あうぅ……」

「……ッ」

 

 退学か、否か。四人の運命はこの試験次第。その事実に僅かに震えるヒフミにコハル。

 

「ここまでいろいろありましたね」

「……気持ちは分かる、けど感傷に浸るのは試験が終わってからにしよう」

「はい、そうですね……とにかく、私たちの努力の成果をしっかり発揮しましょう」

「わ、私今度こそ満点取るからぴっきくり取っちゃうからね!」

 

 アズサの言葉にヒフミが頷いて全員に激を飛ばす。その言葉にコハルが奮起して満点宣言をして見せる。

 

「ええ。それから代表?」

「ん」

「貴方も、私が教えたことしっかり発揮してくださいね?」

「あぁ、分かってるよ」

 

「では第三次特別学力試験……開始!」

 

 カリカリとペンを走らせる音が響きわたる静かな教室。様々な思惑が交錯した補習授業部。思い起こされる今までの模試、試験。色々な思い出たち。楽しい事、辛い事、色々あった。それでも全員めげずに懸命に合格を目指して勉強してきた。数々の妨害を乗り越え、励んだ努力は決して無駄にはならなかった。

 

 

 

 第三次特別学力試験  結果

 

ハナコ 100点

アズサ 97点

コハル 91点

ヒフミ 94点

グラン 90点

 

 

 第三次特別学力試験 全員合格

 





 いやー、やっとここまできましたよ。エデン条約は本当に大変。勿論まだまだ書くことはたくさんありますがそれはそれとして山場を乗り切ると気分が良いですね!
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