シャーレの部長はブラックマーケットの代表   作:四脚好き

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162話

ティーパーティー テラス

────────────────────────―――――――――

 

「それで? ミカは相変わらずか?」

「ええ、ミカさんのいうこと全てが嘘だとは思いません。けど……なにか……」

「まだ言っていないことがある?」

「はい、そんな感じがしてならないのです」

 

 先生がシスターフッドの会議室でハナコやサクラコたちと会話しているのと同時刻、グランはティーパーティーのテラスでナギサと茶を飲んでいた。

 

「ミカさんの後ろ盾が無くなったことでアリウス分校への武器、弾薬の補給も途絶えました。エデン条約でのアリウス分校の脅威度はほぼなくなったとみて間違いないでしょう」

「ミカの言ってること、知っていることが全てだとしたらな……。この報告書にあった『スクワッド』とか言う奴等、全員がアズサ並だとしたらそこだけは注意だ」

 

 そこまで言ってひと段落ついたのか紅茶を口にする二人。ほう、と一息つきながら自分の隣で紅茶を飲むグランに目線を向けるナギサ。一つの机に供に腰掛け、紅茶を飲みながら会話する。一連の騒動の前では決して見られなかった光景だ。ふとナギサはそんなことを考えた。

 

「……」

「なんだよ?」

 

 そんなナギサの視線に気が付いたのかグランは不思議な物を見る目でナギサを見る。

 

「一連の騒動の前の私がもし今の私を見たらきっと仰天するだろうと思いまして」

「あー、ナギサは俺のこと苦手だったもんな」

「苦手どうこうというよりは関わらないように避けていましたから」

「ほほう?」

 

 少しだけグランは身を乗り出し目線でナギサに続きを促す。その視線に気が付いたナギサは紅茶をまた一口飲んでから話始めた。

 

「そもそも、統治している貴方がどう思っているのかはわかりませんがブラックマーケットというものはこのキヴォトスでもトップクラスの危険地帯、ゲヘナ学園の生徒ですら一部を除いて恐れ近づかない場所です。そんな場所を2年でまとめ上げ、その力と財力で連邦議会にブラックマーケット代表として参加する。……そんな存在警戒しない訳がないでしょう?」

「まぁ……そうだな」

「おまけに連邦生徒会の首席行政官、財務室の室長、とも繋がりがあるみたいじゃないですか?」

「おう」

「もっと言えば失踪前の連邦生徒会長ともなんどか秘密の会談があったみたいですが?」

「あったな」

「……ぜっっったい、政治的なゴチャゴチャとか、ドロドロしたものが出てくるに決まっているじゃないですか!? そこに下手に干渉すればトリニティだって巻き添えを喰らうかもしれない! 避けるに決まってるじゃないですか! 連邦生徒会の重役と繋がりを持っている人間がブラックマーケットの代表やってるなんてきな臭過ぎるんですよ!」

「……そう言われるとなんの反論も出来ないな」

 

 グランはナギサの怒涛の口撃に少し汗を垂らしながら紅茶を飲み目線をそらす。

 

「なのにミカさんは仲良くなってしまって本当に困りました。……えぇ、本当にミカさんには……困らされてばっかりです……」

「……」

 

 ナギサは僅かに顔を伏せる。

 

「余り思い詰めるな……。過去に囚われ過ぎると今が見えなくなるぞ」

「……あなたがそれを言いますか」

「経験則からの助言だ」

「嫌な経験ですね」

 

 二人して紅茶を飲み、一息入れ互いに苦笑を浮かべる。それからふとナギサはあることを思いだしてグランに視線を向ける。

 

「そういえばミカさんの面会を終えてこちらに来る途中、ハナコさんと会いました。何やら笑顔で変わった紙束を持っていたのですが何かご存知ですか?」

「あー、それ多分俺の問題集」

「問題集?」

 

 グランは苦笑いを浮かべながら思い当たるものを答える。

 

「ここに来る前ハナコに渡したんだよ。ほら、協力者という立場ではあったけど一応俺も補習授業部の一員だったから。アイツが本性……というより頭の良さを隠さなくなってから俺の学力向上のため態々作ってな」

「あら、あのハナコさんがですか」

「あぁ。というか、やっぱりお前もそう思うよな。あいつ、あぁ見えて一度気を許した奴には駄々甘なんだぜ」

「少しばかり意外ですね」

 

 グランはそれから補習授業部内であった色々なエピソードを語り出す。話題の入りや補習授業部でグランと多く関わったのがハナコだったため、かなりの割合がハナコとのエピソードだった。それをナギサは時に驚き時に笑いながら聞いていた。

 

「補習授業部に関して私からも一つ」

「む?」

 

 話が一つの区切りを迎えた所で今度はナギサが口を開いた。

 

「白洲アズサさんの件です」

「……」

「彼女の持つトリニティ総合学園の学籍ですがシスターフッドから正式なものとして扱うべきと申し立てがありました。これを受けてティーパーティーは白洲アズサさんを改めて転校生として迎え入れることになりました」

「つまりアズサは」

「これからもこの学園で友人たちと共に過ごすことが出来ます」

「ふぅー……良かった、良かった」

 

 ナギサの言葉を聞いてグランは深呼吸をして椅子の背凭れに寄りかかる。アリウスとの繋がりやそもそもの天候書類を用意したのがクーデターを引き起こしたミカの用意したものだったためアズサの扱いをどうするかという議題が頻繁に議論されているという話を耳に挟んでいたグランとしては嬉しい報告であり肩の荷が下りた気分だった。

 

「学力もトリニティ生として申し分ありませんし、彼女は行動をもってトリニティに尽くしてくれました。それを無下にするほど流石にトリニティも陰湿ではありませんよ」

「……ホンとか?」

「……えぇ」

 

 若干間があったナギサの返答にグランは苦笑しながら茶菓子にも手を付け始める。

 

「陰湿で思いだしたんだが今、ハナコはミカの監獄に言ってるんだよな?」

「"陰湿"というワードで想起したことをハナコさんに謝罪するべきだと思いますが……まぁ、はい」

「え、それってあれだろ。笑顔で調子いいハナコが監獄の中でイライラしていそうなミカと顔を突き合わせて一対一で話すんだろ」

「えぇ」

「……めっちゃ怖くない?」

「怖いですね」

 

 二人して眉間皺が寄る。恐らくミカも大人しくして監獄を壊してハナコに襲い掛かるなんてことはしないだろうが互いに笑顔のままギリギリの皮肉を言い合っている様子を想像するグランとナギサ。

 

「見張りの子、可哀そう……絶対空気悪いじゃん」

「……大事にならないことだけ祈っておきましょう。……先ほどのグランさんのように私も"空気が悪い"という言葉であることを思いだしました」

「ほう?」

 

 ナギサの言葉にグランが興味ありげな視線を向ける。

 

「最近、先生とグランさんの不仲説がシャーレに通っている生徒たちの間で流れ始めたそうですよ? なにか思い当たることは?」

「あー……マジ?」

「えぇ、マジです」

 

 ナギサから伝えられた事実にグランは『マジかぁ……』と小声でつぶやきながら頭を抱える。表面上はいつも通り過ごしているつもりでもどこかぎこちなさが出てしまっていたのか、シャーレに通っている生徒たちはその変化に気が付いていた。そして最初は何かあったのかと考えていたのだが、それが人から人から人へ噂は形を変えながら流れていき『なにかあった』程度のものから『不仲』とまで成長したのだった。

 

「あー、なんといか、今回の騒動で少しばかり互いのスタンスというか……方向性の違いが出て少し気まずいぐらいだよ。不仲ってほどではないと……俺は思う」

「先生がどう思っているかは分からない、と?」

「そーだよ」

 

 グランは少しばかり面倒そうに答える。

 

「しかし意外でした。グランさんでも先生の考えは分からないものなんですね」

「あったりまえだ。というか、お前も今回の事で分かっていただろう? どこまで行っても俺達は結局他人、いくら言葉を尽くしたとしても考えてることまでは分からないんだ」

「……そうでしたね」

 

 ナギサはその言葉に先ほどまでの監獄でのミカとの会話を思い出して顔を伏せる。

 

「だから俺たちは理解しようとし続けないといけない」

「理解?」

「あぁ。確かに相手が本当の事を言っているかは分からない。けど、最初から『嘘』と決めつけて耳を塞いだらもう分かり合えることなんか絶対できない」

「だから苦しくても理解し続けようと努力する、と?」

 

 グランは顔を上げ空を見上げながらそう話す。ナギサはその横顔を見ながらその言葉を自分の中に落とし込む。

 

「あぁ、そうすればきっといつかは先輩の想いも理解できるはずだから」

 

 

 




あ、グラン君。君、先輩の想いの解釈間違ってるよ。
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